帰ってきた百獣戦隊ガオレンジャー 19YEARS AFTER 伝説を継ぎし者   作:竜の蹄

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quest42 暴竜の侵撃‼︎

 その頃、竜胆中学校では……剣道部が、体育館に集まっていた。部員達は各々に相手を組み、掛かり稽古に励んでいる。

 内の二人、祈と千鶴もそうだ。

 

「宜しくお願いします‼︎」

「行くよ…!」

 

 先には対立関係にあった二人だが、今では良き部員仲間だ。特に祈を、先輩としても異性としても意識している千鶴からすれば、彼女と組めるのは最高の御褒美である。

 とは言え稽古だとしても、痩せても枯れても剣道家の娘の千鶴は決して手を抜かない。何時しか、他部員達も掛かり稽古を中断し、緊迫した空気を醸し出す二人を見守っていた。

 先に踏み込んだのは千鶴だ。祈の間合いに入り、得意の早斬りで彼女の小手を狙う。しかし、祈は千鶴の態勢に合わせる様に後退し、竹刀を振り下ろした千鶴の面に竹刀を当てた。

 やっぱり強い。千鶴は改めて、祈の強さに感服した。これ迄、自分は生まれついての天才である、と自負があった。

 だが今となっては、それは単なる驕りであった、と千鶴は痛感せざるを得なかった。祈も天才だった。

 しかし、それは千鶴の様に天賦の才と有名な剣道家の娘と言う恵まれた環境に育った“生まれついての天才”では無く、祈の場合は絶え間ない努力と訓練の積み重ねの末に身に付いた“汗と涙の天才”だった。

 彼女が、この領域に達するのは決して楽では無かった筈。それこそ、長い年月を経て、積み重ねに更に積み重ねた末に漸く、これだけの強さを得たのだろう。

 

「はい、其処まで‼︎ 」

 

 小手川先生が声を張り上げる。部員達は漸く休める、と肩を伸ばした。

 

 

 面を外し、10分間の休憩後に掃除をして解散だ。祈は長い髪を稽古中は結ってあるが、ヘアピンを外して髪を下ろした。

 

「祈せーんぱい!」

 

 相変わらず、千鶴は稽古が終わるとスキンシップを図ってくる。自分を慕う千鶴には、いい加減に慣れて来たが矢張り同性とは言え、ベタベタと纏わりついて来られるのは、抵抗がある。

 

「ね、先輩? 今日、この後、暇ですか? 来週の交流試合の打ち合わせをしません?」

「え? 良いよ、じゃあ部室で先輩達と……」

 

 珍しく真面目な理由だった、と祈は安堵した。しかし、千鶴は首を振る。

 

「部室じゃ無くて! 今日、私の家、誰も居ないんです。だから、二人っきりで…ね?」

 

 やっぱりか…と千鶴は暑さから来る目眩と共に、同時に頭痛に襲われた。

 

「…なんで、千鶴の家で二人っきりでなの」

「…もう…分かってる癖に♡ 打ち合わせしたら、一緒に……♡」

 

 最近、千鶴のスキンシップが過剰になって来た気がする。二人の様子に他部員達は苦笑していた。

 

「…あんた達、仲良くなったわねェ…。つい最近まで敵対していたなんて嘘みたい」

「垂水部長、止めて下さいよ‼︎」

 

 垂水部長の茶化する口ぶりに対し、祈は猫の様に戯れついて来る千鶴を引き離す。

 その際、他部員の女生徒が会話に参加して来た。

 

「そう言えばさ…祈、さっき男子剣道部の先輩に告られてたじゃ無い」

 

 その言葉に対し、千鶴は慌てふためいた。

 

「そ、そんな⁉︎ 誰ですか、祈先輩‼︎ 名前は誰ですか⁉︎」

 

 さっきとは打って変わり、動揺している千鶴に対し、祈は苦笑する。

 

「別に慌てる必要なんか無いよ。男子剣道部の松胴先輩、千鶴も知ってるでしょう?」

「ま、松胴先輩? 駄目です、祈先輩‼︎ あの人、大の女たらしで有名なんですよ‼︎ 気に入った女子には取っ替え引っ替え、声を掛けてるって噂だし、交流試合先の部員にも色目使ってるって……‼︎」

 

 千鶴は必死になって松胴と言う男子部員のネガティブな部分をアピールした。

 

「だ、大丈夫だから‼︎ 別に松胴先輩と、お付き合いするつもりは無いの‼︎ もう丁重に、お断りしたから‼︎」

「ほ、本当ですか⁉︎ 本当に本当ですか!?!?」

 

 完全に千鶴は取り乱していた。他部員達も、これが最近まで傲慢な態度で反抗していた千鶴と同一人物か、と疑う程だった。

 例えるなら、まるで飼い主の捨てられる寸前の飼い猫の様だ。

 

「うん、本当だってば‼︎」

「良かったァァ……祈先輩! 浮気なんてしないで下さいね‼︎」

 

 千鶴は心底、ホッとしていたが、祈が松胴の告白を断ったのは理由があった。そもそも、祈が男子から告白を受けたのは、此れが初めてでは無い。自惚れるつもりは無いが、祈は其れなりにモテるのだ、

 しかし、其れ等の告白は全て断って来た。祈の心の中には既に意中の人が居るからだ。兄の陽……祈にとっては、彼が理想の男性だ。

 兄ではあるが、血は繋がっていない。その想いは歳を重ねれば重ねる程に大きくなって行く。しかし、この想いを吐き出すつもりは無い。

 陽は自分を妹として愛しては居るが、異性として意識はしていない。それは明白だった。無理に詰め寄って、今の心地良い関係を崩したくは無い。兄と妹……それだけで十分だった……。

 等と考えていると、途端に陽に逢いたくなった。今、また陽は、オルグとの戦いに身を投じているのだろうか……? 自分に出来る事は、何も無いのか? ガオの巫女アマテラスの力を受け継ぐが、戦いに傷付く陽の為にしてやれる事は無いのか……そんな無力な自分が嫌になる…。

 

「…んぱい…‼︎ 祈先輩‼︎」

 

 思案に暮れていた祈は、千鶴の呼び掛ける声にて我に帰った。

 

「どうかしたんですか? 」

「エッ? あ、ゴメン! 大丈夫!」

 

 千鶴に心配を掛けまい、と祈は笑顔で返した。

 

 

 

 その頃、ガオレンジャーの前には、ツエツエに召喚された、ティラノオルグが迫っていた。以前、戦った時より、ずっと大きく、ずっと屈強な肉体となっており、百戦錬磨のガオゴールド達は思わず後退した。

 

「オホホホ‼︎ どう⁉︎ これが、あらゆるオルグを喰らいまくった結果、より強大に進化したティラノオルグの姿よ‼︎」

 

 ツエツエは高らかに宣言した。ティラノオルグは血走った目で、ガオレンジャー達を見据える。

 更に、ツエツエは懐から大きなオルグシードを取り出す。

 

「これが何が分かる? 私が、恐竜オルグや様々なオルグ達の邪気をの凝縮させて造り出した改良種オルグシードよ‼︎

 此れを食したティラノオルグは、更に凶暴性を増して暴れ回り、お前達を襲い掛かるのよ‼︎ さァ……お食べ‼︎」

 

 そう言うと、ツエツエに大きく開かれたティラノオルグの口内に投げ入れた。途端に、ティラノオルグは激しく咆哮する。

 すると背中にプテラオルグの翼を模した突起が、胸部にトリケラオルグの顔が浮かび上がった。更に皮膚上には、様々なオルグと思しき異様な顔がびっしりと現れ、さながら人面瘡の様な醜悪な容姿となった。

 ティラノオルグは牙を剥き出しにして、ガオレンジャーを威嚇した。

 

「オホホホ‼︎ サァ、恐竜キマイラオルグの誕生よ‼︎ ティラノオルグ、ガオレンジャー達を喰らい散らすのよ‼︎」

 

 ツエツエは命令を出す。だが、ティラノオルグは動かない。反対に、ツエツエの方を見た。

 

「何をしているの⁉︎ さっさと、おや……」

 

 業を煮やしたツエツエは、ティラノオルグを怒鳴る為、振り向く。すると、ティラノオルグの巨大な口が、ツエツエに迫っていた。

 

「えッ?」

 

 間の抜けた声を出すツエツエ。その瞬間、ティラノオルグの口がツエツエに喰らいつき、持ち上げる。

 

「な、ち…違う‼︎ コッチじゃ無い…‼︎」

 

 ツエツエは杖でティラノオルグの顔を叩きつけるが、既に手遅れだった。その鋭い牙が、ツエツエの身体を貫いた、

 

「があァァァッ!!?」

「ツエツエぇぇ⁉︎」

 

 ツエツエの絶叫と重なる様に、ヤバイバが叫ぶ。しかし、ティラノオルグは血を流すツエツエをゆっくり咀嚼した。

 

「……は、早過ぎたの⁉︎ て…敵と…味方の…区別も付かない…なんて……‼︎」

 

 噛み砕かれながら、ツエツエはティラノオルグの凶暴性を見誤ってしまった事を悔いる。元々の凶暴性は、ツエツエの術で封じ込めていたが、多数のオルグを捕食し、かつ、オルグシード改を喰らった事で、ティラノオルグの凶暴性が跳ね上がり、ツエツエの術さえも無力化してしまったのだ。しかし、気付いた時は、もう遅い。

 凄まじい顎の力でツエツエの身体は、嫌な音を立てつつ口の中に吸い込まれていく。苦しげに、ツエツエは口から血を吐き手に持っていた杖を取り落とした。

 

「ツエツエッ! テメェ、ツエツエを離せ! お前を封印から解いてやったのは、俺達だぞ‼︎」

 

 ヤバイバは相棒を飲み込まんとするティラノオルグに怒鳴るが、彼の悲痛な声はティラノオルグには届かない。その際、ツエツエは足下で喚き散らすヤバイバを見て、ツエツエは涙を流す。

 

「ご…ゴメン…ヤバイバ……私が……ば、馬鹿だったわ……‼︎ あ、アンタ…だけでも……逃げ…て……‼︎」

 

 ツエツエは恐竜オルグと言う切り札さえあれば、オルグの支配者になれると信じていた。だが、それは、とんだ間違いだったのだ。

 考えて見れば、百鬼丸や名だたるハイネス達でさえ、手を持て余した怪物を、自分が完全に制御出来る筈が無かったのだ。しかし、テンマやニーコ、四鬼士と言う力の強い者達に対抗するには、それを上回る力が必要だった。詰まる所、ツエツエは恐竜オルグに手綱を掛ける所か、その手綱で目一杯、自分の首を絞めている他無かったのだ 

 と、己の浅はかさを呪いつつ、ティラノオルグの牙が彼女の内部まで達し、五臓六腑を噛み潰した。

 

「グフゥゥッ!!?」

 

 最期の断末魔を上げ、ツエツエはティラノオルグの口の中へ消え去り、その骸は彼の胃袋の中に収められた。

 ツエツエを飲み込んだティラノオルグは満足気に喉を鳴らし、舌に残されていた物を、ぺっと吐き出した。

 呆然と佇むヤバイバの足下に転がり落ちたのは、ツエツエのツノだった。

 

「そ、そんな……嘘だろ? ツエツエ……」

 

 ヤバイバは、ティラノオルグに噛み砕かれて、見る無残な有様になったツエツエのツノを持ち上げ、がくりと膝を突いた。

 ヤバイバが、ツエツエの死を直面したのは、これで二度目だ。前の戦いで、オルグ忍者ドロドロの作戦で盾にされ命を落とした、あの時と…。

 あの時は、ヤバイバの努力で、ツエツエは生き返った、しかし、二度死んだツエツエは、もう鬼地獄より引き上げる事は叶わない。

 通常、オルグは死ぬと鬼霊界に堕とされるが、ツエツエはデュークオルグだ。ハイネス達と同様、鬼地獄に堕ちる。

 しかし、二度死んでしまったオルグは、鬼霊界にも鬼地獄にも行かない。邪気の残り滓の様な状態で現世を彷徨い続け、やがて消滅するしか無い。これは、オルグの巫女であるツエツエから聞いた話だ。

 一度は切り捨てられたが、それでもヤバイバにとってツエツエは長年に渡り苦楽を共にした仲だ。簡単に諦め切れる物ではない。

 しかし、もう、どう足掻いてもツエツエには二度と会えないのだ。ヤバイバの足下に転がる彼女の杖が、力無く転がるのみだ。

 

「……ヤバイバ……」

 

 ガオゴールドは敵ではあるが、彼の余りに報われない結末に同情せざるを得ない。そもそも、恐竜オルグの力を図り損ねたのは、彼等の失態だ。しかし、それでも彼等の信頼は本物だった筈だ。

 強大な力を得て慢心したツエツエだが、それでも最後に見せた彼女の顔は紛れも無い、ヤバイバを気遣う顔だった。

 と、その際、ティラノオルグは笑っていた。裂けた口を捲りあげ、笑っている。いや、そう見えただけに過ぎないが……ガオゴールドの中で怒りが込み上げて来る。

 

同族(ツエツエ)を殺していて……何を笑っている……?」

「ゴールド?」

 

 様子のおかしいガオゴールドを、ガオシルバーは尋ねる。しかし、変わらずままティラノオルグを厭らしい笑みを浮かべながら、歩み寄って来る。遂に、ゴールドの怒りが爆発した。

 

 

「笑うなァァァッ!!!!!!!」

 

 

 ガオゴールドは怒りに任せて怒鳴り付けた。

 

「許さない……‼︎ お前を……僕は……絶対に……許さない…‼︎」

 

 幾ら、オルグと言えど命を無碍に扱っていない筈が無い。しかし、このティラノオルグは、命を軽々しく踏み躙った。決して許せる筈がない。

 あの時と同じだ。祈を殺そうとした魏羅鮫オルグに対し、やり場の無い怒りを抱いた、あの時と……。

 ガオゴールドは、ソルサモナードラグーンを構えた。

 

 

「幻獣召喚‼︎」

 

 

 撃ち出された宝珠が天に舞い上がり、ガオドラゴン、ガオユニコーン、ガオグリフィンが召喚される。やがて、合体しガオパラディンへと姿を変えた。ガオパラディンに搭乗したガオゴールドは、ティラノオルグの前に対峙する。

 

「ユニコーンランス‼︎」

 

 ガオパラディンの右腕であるユニコーンランスがティラノオルグの身体に突貫するが、堅牢な皮膚には傷一つ付ける事が出来ない。

 

「グリフカッター‼︎」

 

 左腕のグリフカッターを全弾、ティラノオルグに命中させても、怯ませるには至れない。それ所か、ガオネメシスに巨大な尻尾を叩き付けて来た。ガオパラディンは堪らず、吹き飛ばされてしまう。

 ティラノオルグは倒れたガオパラディンにマウントを取る様に両腕を叩き付けて来る。激しい火花が走り、ガオパラディンは右に左にと転がされた。

 

「な、何という力だ……‼︎」

 

 ガオシルバーは、ティラノオルグの強さに絶句するしか出来ない。しかし、このまま放置しては置けない。

 

『百獣合体‼︎』

 

 ガオシルバー、ガオグレーも宝珠を撃ち上げ、ガオアキレスとガオビルダーとして加勢を始めた。

 ガオアキレスは、ティラノオルグの背面に回り込み、グランパスソードで斬り付けるが、刃は皮膚に通らない。ガオビルダーも、リンクスパンチやボアーショットで正面からぶつかるが、逆に怒ったティラノオルグは、尻尾でガオアキレスを転倒させ、その巨大な口でガオビルダーの右腕に噛み付いた。ガオビルダーは左腕で引き離そうとするが、とうとうティラノオルグの渾身の力で噛みちぎられてしまい、そのまま吹き飛ばされてしまう。

 ガオパラディンは、戦闘不能寸前にまで追い込まれたガオビルダーに替わって、再び立ち上がる。

 

「百獣武装‼︎」

 

 倒れたガオビルダーの両腕、ガオボアーとガオリンクスを百獣武装にて装備した。

 

「ガオパラディン・ストロングアーム‼︎」

 

 パワー型のティラノオルグには、パワーで対抗せんとして、リンクスパンチやボアーパンチを撃ち込んでいく。ガオアキレスも、激しく飛び回りながら翻弄しようとする。

 だが突然、ティラノオルグの背中にプテラオルグの巨大化した翼が出現し、空へと舞い上がる。

 空中へと逃れたティラノオルグの口内からは、凝縮された邪気の塊が吐き出された。塊はガオアキレスに衝突し、倒されてしまう。

 

「…なんて力だ‼︎」

 

 ガオゴールドは凄まじい力を持つティラノオルグに戦慄を覚えた。空中から、二発目の邪気弾を放とうと口を開けるが……。

 突如、ティラノオルグの翼が片方、炎に包まれ切断された。ティラノオルグは、そのまま地面に落下してくる。

 すると、ティラノオルグの背に降り立ったのは、メランだ。炎の剣メラディウスに炎を纏わせている。

 

「…フン…身体が大きければ、有利と言う事は無い。寧ろ、的が当たりやすくなって好都合だ…」

 

 メランは、ニヤリと笑う。遥かに体躯の異なるティラノオルグを一刀の下に斬り伏せるとは……ティラノオルグ以上に、メランも規格外の化け物だ。しかし、怒り狂ったティラノオルグは牙を剥き出しにして起き上がる。メランは飛び上がり、メラディウスを逆手に持つと纏わせていた炎が伸びた。

 

「炎に決まった形など、ある筈がない……小さな燻り火だろうが、燃え広がれば、やがて全てを飲み込み焼き尽くす……故に万物を侵略し歯止を知らぬ炎こそ……最強なのだ…‼︎」

 

 メランは長く伸びたメラディウスを降り下ろす。すると、ティラノオルグの両眼を焼き抉った。

 凄まじい激痛に、ティラノオルグは苦しげに、のたうち回った。だが、メランは手を緩める事なく、今度は巨木の如く太い尻尾に降り下ろした。尻尾は焼き斬られ、吹き飛ばされると同時に灰となった。

 精霊王三体を寄せ付けない強さを持つティラノオルグを、等身大の体躯であるメランは、まるで赤児の手を捻るかの様に手玉に取り、まるで試し斬りする様に部位破壊して行く。

 しかし、当のメランは不服そうだ。

 

「……ふむ……やはり、この程度か。実戦を怠ると、勘が鈍るか。だが……暇潰しにはなったわ……」

 

 メランは不満そうだが、何処か満足げにゴチる。暇潰しを兼ねて、ティラノオルグと一戦、交えたが彼の期待に沿う物では無かったらしい。

 しかし、間近で自身の終生のライバルである、ガオゴールドの強さを再確認出来た事には満足したらしい。

 メランは、メラディウスを炎に戻して鬼門を出現させた。

 

「……さて、我は帰る事にする。出来れば今日、貴様との因縁にケリを付けたかったが、まだまだ楽しみは後になりそうだ。

 ガオゴールド! 次に相対する日までに精々、腕を磨いておけ。我を失望させてくれるなよ?」

 

 そう言い残し、鬼門の中へと消えていくメラン。彼の後ろ姿を見送りながら、ガオゴールドは改めて彼の強さを間近で見た。

 自分達が苦闘する敵も、メランにとってはや暇潰しの延長でしか無いと言う事実。実際の所、メランは先程のティラノオルグに対しても、本来の実力の半分も出していない。その上で、あの強さである。

 何れにしても……ティラノオルグと梃子摺っている様では、メランに勝つ等とは夢のまた夢である。

 ガオゴールドは体勢を直し、右腕のガオボアーに突き出す。

 

「ボアーガトリング‼︎」

 

 ガオボアーの鼻から発射されるエネルギー弾が、ティラノオルグの身体に直撃する。先程はダメージを与えられているとは思えなかったが、メランに痛めつけられて、相応に弱体化したのか、大きく揺らぐティラノオルグ。

 しかし、目を潰されても尻尾を失っても、ティラノオルグは未だに倒れる事は無い。腐ってもオルグ……と言う事か……。

 更に言えば、先程からの連戦でガオパラディンはかなりのガオソウルを消費し疲弊している。あと残されている、ガオワイバーンとガオナインテールを出すしか無いが、果たしてティラノオルグにどれ程のダメージが見込めるか……次で決めなければ、ガオゴールド達が危ない。

 

 と、その時、ガオパラディンの頭上から光が差す。何事かと見上げれば、空間が歪んでいるのが見えた。

 すると、ガオプラチナが戦場の真下に立ち、空間に向かってフェニックスアローを射掛ける。

 飛び立った矢が空間を切り裂くと、隙間から巨大な幻影が覗く。

 

「ガオゴッド⁉︎」

 

 其れはパワーアニマルの神、ガオゴッドだ。神々しい上半身を見せながら、ティラノオルグを見据える。

 

 〜すまぬ、ガオプラチナ……古より蘇りし鬼の眷属よ……これ以上の狼藉は許さぬ…〜

 

 ガオゴッドが手を振ると、降り注ぐ雷がティラノオルグに直撃した。雷の雨に、苦しむティラノオルグ。

 と、更にティラノオルグの足元に結界が現れ、巨大な下半身が瞬く間に凍り付いた。

 

「ガアァァァッ!!?」

 

 ティラノオルグは巨木な氷柱に身体を貫かれ、動きを封じ込められてしまう。

 見上げれば、ガオズロックがガオゴッドの側を飛来し、亀岩の上にガオマスターが立っている。手にはフルムーンシールドを持っている。

 

 ~行け、若き戦士達よ‼︎ 活路は見出した、後はお前達が止めを刺せ‼︎〜

 

 〜ガオゴールド、行って‼︎〜

 

 ガオマスターとテトムが叫ぶ声がした。ガオゴールドは内心で感謝した。ガオゴッド、ガオマスター、そして、メラン…。

 神様や始祖の戦士、そして敵であるメランにまで御膳立てされるとは……居た堪れない気持ちになって来る。だが、落ちこぼれだからこそ、出来る事がある。

 それは最後まで諦めない事。例え、危機的な状況にあったとしても、諦めずに突き進む。それだけだ。

 

「ガオシルバー、ガオグレー‼︎ まだ戦えるか‼︎」

 

 マスクを通じて、二人の仲間に呼び掛ける。すると、シルバーとグレーの言葉が返って来た。

 

 〜ああ! ガオアキレスも、戦えるそうだ‼︎〜

 

 〜ガオビルダーもじゃ‼︎〜

 

 二人の意思を聞き、ガオゴールドはガオナインテールとガオワイバーンの宝珠を取り出す。

 

「幻影武装‼︎ ガオパラディン・アロー&ウィップ‼︎」

 

 右腕にガオナインテールを左腕にガオワイバーンを武装し、ガオパラディンはワイバーンアローにテールウィップを番える。

 

「風雷一矢! テールスティンガー‼︎」

 

 撃ち出されたテールウィップに風と雷のエネルギーが纏わり、ティラノオルグの大きく開かれた口内から侵入し、上顎を貫通した。

 矢張り……身体は恐ろしく強固でも口の中は柔らかい。ならば、奴の体内を集中して攻撃すれば……。

 

「ティラノオルグの口の中を狙え‼︎」

 

 ガオゴールドが叫ぶ。両腕を復活させたガオビルダーが右に、回復したガオアキレスが左に並び立つ。

 

 

『獣神三烈! アニマルトリニティー‼︎」

 

 

 それぞれの精霊王の胸部…ガオドラゴン、ガオグリズリー、ガオダイルは口から放たれる三つの光線が合体して、一つの巨大な光線となって放たれた。その光線は、ティラノオルグの口内に直撃する。

 膨大なエネルギーが体内に蓄積して行き、苦しげに口を閉じようとするが、既に溜まりに溜まったエネルギーはオルグの身体から漏れ出ていき……。

 凄まじい爆音と共に立ち上がる巨大な火柱……。やがて、頭部を破壊されたティラノオルグが、ズルズルと崩れ落ちて行き、やがて身体に亀裂が生じたかと思えば、風化した化石の様に風に撒き散らされて行った。

 

 

「やったァァ!!!」

 

 

 ガオゴールドは勝利に歓喜した。同時に、ガオソウルを使い果たした事で変身は解けてしまったが、辛うじて勝つ事が出来た。

 大神、佐熊も変身がギリギリで解除されたが、勝利を掴めた事に歓喜する。三体の精霊王は、各々の右腕を掲げて天を衝く。

 

 

 

 ティラノオルグを倒した事で、陽達は姿を消した精霊王を尻目にガオズロックへ帰還した。テトムも笑顔だ。

 

「皆…良くやってくれたわ‼︎」

 

 美羽もボロボロになった陽に駆け寄る。目には薄っすら涙を浮かべている。

 

「……陽、無事で良かった……‼︎」

 

 ツクヨミも、三人の戦士達の健闘ぶりに感心している。

 

「見事! しかと見届けたぞ‼︎」

 

 皆から称賛を受けて、陽は今更になって疲労が押し寄せて来た。

 

「……僕一人の勝利じゃ無いよ……。大神さんや佐熊さん、美羽やガオマスター、ガオゴッドの力が有って初めて勝てたんだ!」

「……私は?」

 

 いつの間にか、陽の背後に回り込んでいたソウルバードのこころが不満そうにしていた。

 

「そうだね……こころもありがとう……‼︎」

 

 そう言われて、初めてこころは照れ臭そうに笑顔を見せた。急に、テトムは真剣な表情を見せる。

 

「でも、戦いはこれからよ‼︎ 本当に倒さなくてはならない敵は未だ居るわ‼︎」

「ああ、そうだな……戦いは、まだまだ終わらない……‼︎」

「確かにのォ……!」

 

 疲れを身に受けながらも、ガオネメシスやテンマと言った、これから戦うであろう敵達を思い浮かべる。

 奴等を倒さない限り、ガオレッド達を救い出す事は出来ない。それを成し遂げたとき、改めて真の勝利となるのだ。

 

「あ! そう言えば、ヤバイバは⁉︎」

 

 陽は思い出した様に、戦いの渦中に居たヤバイバの名を言った。あの戦いは騒ぎの中、ヤバイバの姿を確認出来ていないからだ。

 

「問題無いだろう。あいつ一人では大した事は出来ん」

 

 大神はサラッと、ヤバイバに対して失礼な言葉を言った。だが実際に、ツエツエと言う知能派と行動して、初めてヤバイバは厄介さを見せるが、単体では戦闘力も行動をさしたる問題にはならない。

 現在、最も危険視すべきなのは、ヤバイバ等より、鬼ヶ島に居るテンマ率いるオルグ本隊と、ガオネメシスだ。

 だが…陽は内心、嫌な予感が、どうしても拭えずに居た。ヤバイバは大きな災いにはならないだろうが、ツエツエを失った彼を放置して本当に良かったのか、と言う不安が胸中に騒めく。しかし、今は勝利を素直に喜ぶ事にした。

 

 

 その頃、ヤバイバは戦いはドサクサに紛れて廃墟と化したビルに潜んでいた。手にはツエツエのツノと彼女の形見たる杖がある。

 

「待ってろよ、ツエツエ……‼︎」

 

 そう言って、ヤバイバは彼女のツノと共にオルグシードを即席の台座の上に置いた。そして杖を持って、何やらブツブツと唱え始めた。

 

『死したるオルグ、ツエツエの魂を宿す欠片よ……再び、邪気を取り込み此岸へと蘇り給え……』

 

 そう、ヤバイバはツエツエを蘇らせようとしていた。現在、彼女の魂は四散しているが、オルグにとっては命の次に大切な存在であるツノを回収出来たのは不幸中の幸いだった。

 ツノには彼女の邪気と魂の情報が残されている。それとオルグシードを使えば、時間は掛かるが死んだオルグを蘇らせる事が可能だ。

 オルグ巫女であるツエツエから、そのやり方を聞いていたが、この復活にはデメリットがある。必ずしも復活出来るとは限らないし万が一、復活出来たとしても、其れは全く別のオルグ……下手をすれば、ツエツエとしての記憶、人格さえも損なわれてしまう可能性がある。

 だが、それでもヤバイバはツエツエに蘇って欲しい。その一心で杖を振るう。しかし、ヤバイバの苦労は報われず、ツノもオルグシードも変化は無かった。深い絶望感に苛まれたヤバイバは座り込む。

 

「チクショウ…‼︎ ガオレンジャーは倒せねェし、ツエツエも生き返らせれねェ……鬼ヶ島にだって帰るに帰れねェし……こんなもの……‼︎」

 

 完全に自棄に陥ったヤバイバは苛立ち紛れに、杖を投げ捨ててしまった。その後、座り込む。

 

「……スマネェな、ツエツエよォ……俺一人じゃ、どうする事も出来ねェ……」

 

「そうでも無いぞ?」

 

 ふと声がした為、振り返ると、其処には意外な人物が居た。

 

「お前は…ガオネメシス?」

 

 其れは、ガオネメシスだった。彼は、ヤバイバに近寄る。

 

「ヤバイバ、だったな? もし、お前が望むなら、ツエツエを蘇らせる方法を教えてやらんでも無いぞ」

「ほ、本当か⁉︎」

 

 ヤバイバは思いに寄らない提案に食い付いた。すると、ガオネメシスは、ヤバイバの眼前に迫る。

 

「もし貴様に、その気があるなら……この俺の今から言う事を手伝え。全てが終われば、ツエツエを生き返らせてやる……」

「ど、どうしろってんだ⁉︎」

「クックッ……それはな……」

 

 訳の分からないままでいるヤバイバに反し、ガオネメシスのマスクの奥では妖しい光が、チラついていた……。

 

 

 〜烈戦の末、遂に恐竜オルグを討ち滅ぼしたガオゴールド達。しかし、相棒を失い、茫然自失となるヤバイバに、ガオネメシスが近づいてきました! 果たして、彼の企てる新たな計画とは何なのでしょうか⁉︎〜




ーオリジナルオルグ
−ティラノオルグ
ツエツエが蘇らせた古のオルグ、恐竜オルグの一角。最強の肉食獣ティラノサウルスの化石に邪気が宿り誕生した。
元々、知性の欠片も無い制御不能の怪物だが、ツエツエの術で操られていた。しかし、大多数のオルグ魔人を食し、更にオルグシード改を食べた事で、絶大な力と引き換えに、ツエツエの掛けた術を無力化し、ツエツエまで捕食してしまった。
トリケラオルグやプテラオルグの邪気を取り込み、外見にはトリケラオルグの頭部やプテラオルグの翼を有する、恐竜キマイラオルグと化している。

キャラモチーフは、星獣戦隊ギンガマンに登場した魔獣ダイタニクス。
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