帰ってきた百獣戦隊ガオレンジャー 19YEARS AFTER 伝説を継ぎし者   作:竜の蹄

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※スマホが故障し、PCもない為、小説の投稿がまたしても遅れてしまい、誠に申し訳ございません‼︎


quest44 オルグ忍者の罠‼︎

 ガオゴールドは、目の前にて立ち塞がるオルグくノ一達を、睨みつけた。何れとも、曲者揃いで単体による対決でなら、何とか太刀打ち出来る。しかし、五人一組による息のあったチームプレイを駆使する彼女達の陣を崩すのは困難だ。

 何とか一対一に持ち込みたいが、それさえもままなら無い、

 

「ガオレンジャー……今宵は貴様等の命日となる……今日に至る迄、数多の同胞を葬ってきた己の罪深さを悔いるが良い…‼︎」

 

 ホムラは印を結ぶ。すると、下忍オルゲットの数が明らかに増えた。通常のオルゲットと異なり、彼等は強い。

 ガオゴールドは、ソルサモナードラグーンを銃形態にして構えた。

 

「シルバー! 援護を‼︎」

「了解‼︎」

 

 ガオシルバーは、その指示に従いガオサモナーロッドを構える。しかし、ミナモは印を結び…

 

「オルグ忍法! 炸裂水泡弾‼︎」

 

 と、ミナモの口から吐き出される水泡。さっきより数が多く、迂闊に飛び出そう物なら、また爆発に巻き込まれてしまう。

 

「私に任せて‼︎ フェニックス・アロー‼︎」

 

 ガオプラチナの射撃したフェニックス・アローに、水泡は覆い被さろうとする。と、その際…

 

「トラッキング‼︎」

 

 と、プラチナが指示を出すと矢は意思を持った様に空中へ舞い上がり、水泡は一縦直線に並列した。すると、矢は折り返す様に戻って来て、水泡を串刺しにする様に破壊して行った。

 矢の放つ高熱に水は蒸発し、不発となった。しかし、下忍オルゲット達は構わずに襲い掛かって来る。

 

「雑魚は散れィ‼︎ ハンマー・ブーメラン‼︎」

 

 ガオグレーは、グリズリーハンマーを持ってゴルフのスイングさながらに振り回した。すると、柄の先端から外れたハンマーは、下忍オルゲット達を叩き伏せて行く。

 やがて、全てのオルゲット達が泡となって消えるけど、柄の先端よりガオソウルの鎖が射出され、ハンマーに装着、そのまま柄へと戻って来た。

 

「さて……雑魚は片付いたな……後は、貴様等じゃ‼︎」

 

 ガオグレーは、高々と宣言した。しかし、ホムラ達は顔色一つ変わっていない。寧ろ、不敵な笑みを浮かべている。

 

「愚かな……オルグ忍法の真髄は、まだここからだ‼︎ 全員、行くぞ‼︎」

 

 ホムラ達は再び印を結ぶ。すると、彼女達の身体に黒煙が立ち昇り始めた。

 

 

 〜臨・兵・等・者・皆・陣・列・在・前……‼︎ オルグ忍法・極! 変幻武身の術‼︎〜

 

 

 煙の中から響く声……やがて、煙が晴れたかと思えば、鬼灯隊の姿は跡形も無くなり……

 

「な、馬鹿な⁉︎」

「こ、これは⁉︎」

 

 ガオゴールド、ガオシルバーは驚愕した。何と、鬼灯隊の面々はガオの戦士の姿に変わっていたのだ。

 ホムラはガオレッド、ミナモはガオブルー、ライはガオイエロー、コノハはガオブラック、リクはガオホワイトの姿である。

 

「鬼灯隊が……ガオレッド達に……⁉︎」

「げ、幻覚か⁉︎」

「これは幻覚じゃ無い、現実だ‼︎ 我々は、貴様等の内に存在する“最も強い存在”へと変身する事が出来る‼︎」

 

 ガオレッドに扮するホムラが得意げに言った。ミナモも続く。

 

「断っておきますけど……姿だけの変身だとは思わないで下さいな! 私達は事前に、ガオレンジャー達の戦闘データを事細かに分析している、でございます‼︎」

「更に、鍛え抜いたウチらの戦闘力が合わされば、本物のガオレンジャー以上の戦闘力を発揮する‼︎」

 

 ミナモに続いて、ライも言った。

 

「ついでに言えば、お前等、仲間を攻撃出来ねェだろ⁉︎」

「……皆、やっつける……‼︎」

 

 コノハとリクも挑発する様に言った。確かに、ガオゴールド達も今迄、倒して来たオルグ達では無く、先人のガオの戦士であるガオレッド達と戦う事には抵抗がある。

 ましてや、それで無くても鬼灯隊は手強いのに、ガオレンジャーの力を取り込んで来たのは非常に、厄介極まりない。

 だが……此処で負ける訳には行かない! 鬼還りの儀を何としても防がなくてはならないのだ‼︎ 祈を、友達を、大切な人達を守る為に……‼︎

 

「皆、行くぞ‼︎ 鬼灯隊を迎え撃つ‼︎」

 

『了解‼︎』

 

 ガオゴールドの指示に従い、他の仲間達も力強く応える。しかし、鬼灯隊扮する偽ガオレンジャーは不敵な態度だった。

 

 

 

 夢を見ていた。自分が幼い頃、鬼子と呼ばれ、忌まわしい存在と石を投げられて逃げた、あの頃……。

 何時しか彼女は雨が降り注ぐ中、一人で歩いていた。其処は捨てられてた廃村……雨が降り注ぐ中、哀れな少女は歩き続ける。行く宛も、帰る場所、頼る人も無い。ただただ……歩き続けるしか出来ない……。

 ふと、ぬかるんだ泥道に足を踏み入れた少女は、泥水の溜まりに顔から突っ伏した。起き上がる彼女の顔には泥がこびりつき、両目から滴り落ちる涙が、泥を流して行く。

 その時、彼女の頭上に傘が掛けられた。少女は誰が掛けてくれたのか、と主人を探す。それは、浪人風の出で立ちをした侍だった。

 腰に差した刀を見た少女は、ビクリと身体を強張らせる。侍は、笑った。

 

『刀が怖いか? 案ずるな、此れは竹光だ。廃刀令が出てから、刀を持つ事を禁じられてな……今や、武士などと名乗る者は一人といまい……』

 

 侍の言葉に少女は首を傾げる。はいとうれい、とは?

 

『……こんな所で、子供一人で何を? 両親はどうした?』

 

 侍の質問に対して、少女は首を振る。

 

『……そうか……なら、名前は?』.

 

 名前……思い出せば、母は自分に名前を付けてくれなかった。ひょっとしたら、付けてあったかも知れないが、母の死んだ今となっては確かめる術も無い……。

 

『名前も分からない、か……。某の生まれた国、摂津には摩耶と言う美しい山が有る……昼は、その頂きより見下ろす地上の風景で、夜は夜闇に瞬く星屑が登山中の旅人達を魅了する……。そなたも、摂津に行く事が有れば見てみると良い…。

 昼と夜、時によって違う形で人を魅了する摩耶の山に因んで……

 

 

 摩魅……と、言うのはどうだ?』

『ま…み…?』

 

 自身の名前すら知らずに生きてきた混血鬼の少女は、名を知らぬ通り掛かりの侍から、名前を貰った。

 その後、侍は歩み去っていったが、残された少女は…

 

『私は……摩魅……』

 

 初めて受けた人からの労り、優しさ、温もりに困惑しながらも、名付けられた自身の名前を愛おしげには呟き続けた……。

 

 

「う、う〜〜ん……」

 

 摩魅は漸く意識を取り戻す。ふと、昔の事を思い出す夢を見ていた………どの位、自分は眠っていたのだろうか?

 少しずつ意識を取り戻すと、どうやら、自分が暗い部屋の中に居る事を理解した。身体を動かそうとすると、両手がガチャガチャと音を鳴らす。目が慣れてきたら、自分の両手は背中の後ろに手枷で拘束されている様だった。

 思い出してみる……確か、自分は陽達の祈の試合を観戦しに行って、その際に急に眠気に襲われて……で、気が付いたら、此処にいて……。

 だが、やがて摩魅は思い出す。この部屋は自分にとって一番、思い出したく無い場所だった。摩魅の身体はガタガタと震え始め、更には全身の穴と言う穴から、冷や汗が溢れ出てくる。

 

「クスクス……思い出しましたかァ?」

 

 ふと部屋の隅から声がした為、見てみるとニーコが厭らしい笑みを浮かべている。

 

「そうですよォ? 此処は貴方の為に当てがわれた……拷問部屋ですよねェ?」

「あ…あ…」

 

 ニーコは、トラウマが頭に流れ込んで来て声が出て来ない。そんな様子に、ニーコは益々、上機嫌に笑う。

 部屋の中には、正しく拷問部屋と呼ぶに相応しい品が多々、置かれていた。鎖、鞭、抱石、三角木馬……何れも自分が無理矢理、強要された物ばかりだ。それも、オルグ達の『暇潰し』と言う、ただそれだけの理由だけで……。

 

「やっと目を覚ましたか?」

 

 部屋に入って来たのは、ガオネメシスだ。マスクの内側から、冷酷な光が覗き見る。

 

「……さて……何故、貴様を再び、此処へ呼び戻したか……分かっているかな?」

 

 ガオネメシスの質問に、摩魅は首を横に振る。

 

「理由は簡単だ。貴様を、ガオゴールド攻略の為に役立てようと思う……」

「こ、攻略?」

 

 訳の分からないままに、摩魅は尋ねた。ガオネメシスは、クックッと含み笑いを上げた。

 

「貴様を、ガオゴールドの元に行かせたのは、別に奴の動向を探らせる為ではない……奴の弱点とする物を増やす為だったのだ?」

「その弱点が……私?」

 

 すると、ニーコがクスクスと笑いながら割り込んで来た。

 

「ガオゴールドさんはァ…優しい人だから、貴方みたいな半端者にも優しくしたでしょォ? 其処が、ガオネメシス様の作戦だったんですよォ?」

「……奴は敵に対しては、オルグ顔負けの鬼となれる……しかし、気を許した仲間には拳を振り上げる事が出来ない……それは、狼鬼の一件で理解していた……。其処で、貴様を奴の下に送り込んだ訳だ……。

 今の貴様と奴には、深い繋がりがある……最も、貴様の一方的な繋がりに過ぎんがな……」

「‼︎」

 

 ガオネメシスの発した言葉に、摩魅は顔を赤くした。その様子に、ニーコは嘲笑う。

 

「ウフフ! 貴方、ガオゴールドに対し、劣情を抱いてるのですねェ? お馬鹿さん♡ 混血鬼の貴方を、ガオゴールドが相手にすると思っているのですかァ?」

 

 ニーコの容赦無い言葉は、摩魅の心を踏み躙る。更に、ガオネメシスは続けた。

 

「哀れだな、混血の娘……人にもオルグにもなれず、愛する者を選ぶ事も出来ず……貴様は、ガオゴールドが他に愛する者と幸せそうに、過ごす様を見せつけられながら、孤独の中で生きていくしか無い……。

 諦めろ……それが貴様の運命だ……」

「じ、じゃあ……貴方は……幸せなの?」

 

 摩魅は最後の力を振り絞って、ガオネメシスに語り掛ける。

 

「人を捨てて、オルグにもなり切れない……貴方だって、私と同じ……」

「何が言いたい?」

 

 ガオネメシスは口調こそ静かだが、怒りのオーラを滲ませていた。

 

「貴方は私を……哀れだと言うけど……人の温もりも優しさも全部、捨てて鬼になろうとしている貴方の方が……よっぽど、哀れに見える……」

 

 最後まで言い切る事なく、摩魅の腹部に衝撃が走る。ガオネメシスが、ヘルライオットで彼女の横腹を打ち据えたからだ。

 

「貴様ァ……半端な小娘の分際で……この俺を哀れむだと? ふざけた事を……抜かすなァァ!!!」

 

 ガオネメシスは激昂しながら、ヘルライオットで彼女を背を殴り付けた。摩魅は芋虫の様に身体をくねらせながら、呻く。

 

「混血鬼がァ……混血鬼がァァ……混血鬼がァァァ!!!!!! この俺をォ…見下すだと⁉︎ ふざけるな! ふざけるなァ‼︎」

 

 構う事なく、ガオネメシスは何度も何度も摩魅の全身を強かに打ち続けた。だが、摩魅は抵抗も叫び声も上げない。蹲ったまま、ネメシスの折檻に耐え続けた。

 

「どうだ、クズめ⁉︎ 少しは見に染みたか⁉︎」

 

 珍しくヒステリックなまでに肩で息をしながら、ガオネメシスは睨み付ける。しかし、ボロボロになった彼女は痣だらけになった顔を上げた。

 やはり、彼女は憐みに満ちた視線をネメシスに向けてくる。

 

「まだ……そんな目で……!!!!」

 

 再び怒りに震えながら、ガオネメシスはヘルライオットの銃口を彼女の頬に押し付け、撃ち出そうと引き金に指を当てた。

 しかし、その手を何者かが止めた。

 

「何の真似だ、メラン?」

 

 何時の間にか、彼の背後に回り込んでいたメランが、彼の腕を押さえていた。ネメシスは苛立たしげに、彼を睨む。

 

「そいつを殺すのは貴様の勝手だ……だが殺せば、鬼還りの儀に支障をきたすのでは無いかな? それでも良いなら、この手を離すが……どうする?」

 

 メランは有無を言わさず程の迫力を発しながら、ガオネメシスに言った。ネメシスは、チッと舌打ちして、ヘルライオットを消失させた為、メランは手を離す。

 

「ニーコ……そいつを手当てしろ‼︎」

「はァい♡」

 

 そう命令して、ガオネメシスは部屋から乱暴に出て行った。残されたニーコは、摩魅の傷を見ながら、メランにクスクスと笑う。

 

「どーして、こんな混血鬼を庇うんですゥ? 貴方からすれば、虫ケラ以下の存在なのにィ?」

「……さァな……気紛れだ」

 

 メランは壁に凭れ掛かりながら、気怠そうに言った。しかし、ニーコは続けた。

 

「そもそも、テンマ様と手を切る、とか宣っていながらァ……ガオネメシス様と手を結ぶなんて、プライド無いんですかァ?」

 

 小馬鹿にした様な、ニーコの発言にメランは、メラディウスの刃を彼女の首筋に突き付けた。

 

「……ペラペラ、よく回る舌だな……その減らず口ごと、焼き斬られたいのか?」

「あら? お気に障ったなら、失礼?」

 

 怒りを滲ませつつ、メラディウスの切っ先を向けるメランに対し、悪びれる様子なく肩を竦めるニーコ。

 

「刃を引っ込めて下さいな? 治療が出来ませんわ?」

 

 ニーコはメラディウスを指差しながら言った。メランは、剣を炎に戻す。

 

「勘違いするなよ? 我は、ガオネメシスに仕えている訳でも、元よりテンマに頭を垂れたつもりも無かった。

 我にとって、ガオゴールドとの雌雄を決することのみが最優先だ」

「拘りますねェ? 確かに、ガオゴールドは強くなりましたけど、はっきり言って、これ迄の戦いはパワーアニマルの力に頼って掴んだ薄氷の勝利。本気を出した貴方じゃ、5分と保たずに消炭と化すのが関の山では?」

 

 ガオゴールドの強さとは……即ち、他者を守る為に我が身を犠牲にする自己犠牲精神の強さである。結論から言えば非常に危うい、メランの様な真の強者と呼ぶには程遠い物である。

 

「だからこそだ。我は半端者だろうが何だろうが、その様な者と引き分けたままで居たくは無い。どちらが真の強者に呼ぶに相応しいか、はっきりさせておきたい。我にとって、それが重要なのだ」

 

 それだけ吐き捨て、メランも部屋から出て行った。メランが居なくなった所を見計らい、ニーコはニヤリと笑う。

 そして胸元に隠してあった、豆粒くらいの大きさしか無いオルグシードを取り出した。それを自身の舌に載せる。

 

「ンフフ……オルグに成り切れない混血鬼……恋慕う者に想いを告げる事も出来ない混血鬼……ならば、せめてオルグとしての幸福を味合わせてあげますよォ♡」

 

 そう言いながら、ニーコはグッタリとする摩魅の口を強引に抉じ開け、オルグシードを含んだ口を彼女の唇に押し付けた。そして、舌を通してシードを流し込む。やがて、口を離し唾液を糸の様に伸ばしながら、ニーコは舌で口周りをペロリと舐め、悪辣に北叟笑んだ……。 

 

 

 

「うう……‼︎」

 

 その頃、ガオゴールド達は鬼灯隊との戦いに苦戦していた。彼女達は見た目だけでなく、ガオレッド達の破邪の爪を駆使して攻撃してくるのだ。

 

「諦めろ、ガオレンジャー‼︎ 今の貴様達では、私達を倒す事は夢のまた夢だ!」

 

 ホムラは、ガオレッドの破邪の爪ライオンファングを構えながら、ふらつくガオレッドに接近した。

 

「ブレイジングファイヤー‼︎」

 

 ライオンファングから放たれた炎が、ガオゴールドを吹き飛ばす。マスクは砕け散り、陽の顔が覗く。

 

「ゴールドォォ…! くそ、こんな事が……!」

「ほらほら‼︎ よそ見しとる場合やないで‼︎ ノーブルスラッシュ‼︎」

 

 ライが、ガオイエローの破邪の爪イーグルソードで、ガオシルバーを斬り付ける。激しい火花が散った。

 

「まだまだ、でございます‼︎ サージングチョッパー‼︎」

 

 ミナモが、ガオブルーの破邪の爪シャークカッターを構えて、数回に分けてガオシルバーを斬り刻む。

 ガオグレーは、シルバーを助ける為に駆け付け様とするが……。

 

「ベルクライシス‼︎」

 

 リクが、ガオホワイトの破邪の爪タイガーバトンで、ガオグレーを殴打した。

 

「ぐふゥゥッ!!?」

 

 背面からの奇襲を受け、堪らずにガオグレーは崩れ落ちる。ガオプラチナは、フェニックス・アローを構えるが……。

 

「させるかよ!アイアン・ブロークン‼︎」

 

 コノハが、ガオブラックの破邪の爪バイソンアックスを振って、プラチナを吹き飛ばした。

 

「…くゥゥ…!!!!」

 

 ガオレンジャー達は、苦境に立たされていた。まさか、先人達の力さえも、オルグに利用される等、夢にも思わなかった。

 ホムラは、ガオゴールドの前に立ち、勝ち誇る。

 

「フフフ……何とも無様だな、ガオゴールド? だが、全ては貴様が悪いのだぞ? 偉大なるオルグの意志を背いたりするから、こうなる。

 だが、光栄だろう? 貴様達の先人であるガオレッド達の得物にて介錯されるのだからな‼︎」

「……知った風な……口を叩く……な‼︎」

 

 ガオゴールドは動くのも苦しいだろうが、辛うじて顔を上げて、ホムラを睨みつけた。

 

「……その武器は……その技は……ガオレッド達が命を賭けて……地球の未来を守る為に、使って来た物だ……!

 人の命を……地球の命を何とも思わない、お前達が……気軽に使って良い物じゃ……無い……‼︎」

「フン…! まだ、そんな減らず口を叩けるのか? 宜しい、我々の使う力が紛い物だと言うなら……この技を受けてからにするんだな‼︎」

 

 そう言って、ホムラ達は集結し、破邪の爪を合体させていく。5つの破邪の爪は、巨大な剣へと姿を変える。

 

『邪鬼百獣剣! 正気、退散‼︎』

 

 ホムラ達の放った邪鬼百獣剣の斬撃が、ガオゴールド達に迫る。しかし、その斬撃はガオゴールド達に届く事なく消失した。

 

「な、何や⁉︎ 何で、攻撃が効かんのや⁉︎」

 

 自分達の攻撃がかき消された事に、ライが叫ぶ。すると、ガオゴールド達の前に立つ人影があった…。

 

「お前達が、如何にガオの戦士の力を使っても無駄だ! それは地球を守る心を持つ戦士が使って、初めて真価を発揮する‼︎」

「ガオマスター‼︎」

 

 ピンチに応じ、自分達にすれば5人目の戦士であるガオマスターが姿を現す。彼の左手に掲げるフルムーンガードで、彼女達の攻撃を防いでくれたのだ。

 

「何をしている、若きガオの戦士達! 奴等は、ガオの戦士では無い偽物に過ぎん! 諦めてはいかん!」

 

 そう言って、フルムーンガードをガオゴールド達に向ける。すると、盾から放たれる光が、ガオゴールド達の身体を癒した。

 

「痛みが……傷が消えた……‼︎」

 

 ガオゴールドは再び、立ち上がる事が出来て、ソルサモナードラグーンを構えた。対して、ホムラは苛立ちながら、叫ぶ。

 

「チィ‼︎ ならば、オルグ忍者としての力を使うまでだ‼︎ 行くぞ‼︎」

 

 そう言って、ホムラ達は一斉に襲い掛かってくる。しかし、ガオゴールド達は仲間達と頷き合う。

 

「皆、行くぞ‼︎」

「応‼︎」

 

 ゴールドの言葉に、他のガオレンジャー達も走り出す。ガオマスターは、その様子に満足しつつ、若きガオレンジャー達に加勢した。

 

 

 第二戦は、先程とは比べ物にならない戦いとなった。鬼灯隊は破邪の爪を使おうとするが、さっきの様な力がどうしても発揮出来ずに居る。

 

「クソ! 何だよ、このポンコツが‼︎ あたい達に使える様に改造したんじゃ無いのかよ⁉︎」

 

 コノハは、バイソンアックスを叩き付けながら、毒吐く。其処へ、ガオグレーがグリズリーハンマーを振り上げながら突進して来た。

 

「分からんか⁉︎ お前達が使っとるから、破邪の爪が嫌がっとるんじゃ‼︎」

 

 と、言ってグリズリーハンマーを力一杯に振り落とした。バイソンアックスで受けるコノハだが、力負けして吹き飛ばされてしまう。

 

 ガオシルバーは、ライとミナモに対峙する。二重殺法を仕掛けてくるが、力を取り戻したシルバーの敵では無かった。

 

「銀狼満月斬り‼︎」

 

 ミナモの攻撃を掻い潜り、ライを斬り付ける。ライは崩れ落ちた。

 

 ガオプラチナは、フェニックス・アローでリクに狙いを定める。リクはタイガーバトンを使って攻撃を仕掛け様とするが、先手を仕掛けたプラチナは矢を精製する。

 

「鳳凰の飛翔‼︎」

 

 フェニックス・アローから放たれた矢が、火の鳥を模した巨大な炎となって、リクを飲み込んだ。

 

 最後に、ガオゴールドはソルサモナードラグーンで、ホムラと対峙していた。しかし、ホムラは…

 

「オルグ忍法! 陽炎分身の術‼︎」

 

 再び、複数に分身するホムラ。しかし、ガオゴールドは動じる事なく、ソルサモナードラグーンを銃形態にした。

 

「そこッ‼︎」

 

 一人だけ、明らかに違う動きをしていたホムラを、狙撃する。そして、ホムラの分身は消失した。

 

「クッ……まさか、我々が……‼︎」

 

 予想外の反撃に合い、鬼灯隊は逆に追い込まれてしまう。更に畳み掛ける様に、ガオゴールド達は集結し、武器をかざす。

 すると、4つの武器は合わさって、ガオソウルで構成された巨大な光剣が出現した。

 

「コレが、破邪神獣剣だ‼︎ 行くぞ、邪鬼……退散‼︎」

 

 ガオゴールドの掛け声で、振り下ろされた巨大な刃が、鬼灯隊を飲み込んで行った。

 

「あああァァァッ!!!!」

 

 打ち出されたガオソウルの光剣が、鬼灯隊を呑み込んで行く。力を出し尽くしたガオゴールドは、膝をついた。

 やがて、光が収まると倒れ伏す鬼灯隊の姿があった。

 

「や、やったのか?」

 

 予想以上に強敵だったが、何とか勝つ事が出来た。やがて、ガオソウルが切れて変身が解けてしまい、同様に変身が切れたガオシルバー、グレー、プラチナもやって来る。

 

「ああ……まさか、ガオレッド達の力を使うとはな……」

 

 大神は複雑そうに言った。

 

「だが……勝つ事は出来た……」

 

 耐久力には自信のある佐熊も疲労困憊の様子だ。

 

「……ガオマスターが……居ない?」

 

 美羽は、戦いに手を貸してくれたガオマスターの姿が消えた事に驚く。その時、後ろから…

 

 

「兄さん‼︎」

 

 

 道着を身に付けた祈が駆けて来る。

 

「祈⁉︎」

 

 どうして、祈が? 陽は違和感を覚えながら、疲労により思考が纏まらなかった陽は駆けて来る祈を抱きしめてやろうとする。

 すると、祈は陽の胸に軽く体当たりを仕掛ける様に、身体をぶつけて来る。と、陽は腹部に鋭い痛みが走った。

 

「グ⁉︎」

 

 陽は祈から身体を離す。すると、祈の手には血糊が付いた苦無が握られていた。

 

「い、祈……どうして…⁉︎」

 

 どうして、祈が自分を? 訳が分からないまま、陽は崩れ落ちた。大神が陽に駆け寄る。

 

「何の真似だ⁉︎」

 

 常軌を逸した行動を取った祈に対し、大神は怒鳴る。しかし、祈は邪悪に笑い……

 

「残念だったな……拙者は祈では無い……」

 

 と言いながら、祈は背後にジャンプした。すると、そこに居たのは……

 

「お前は、ヤミヤミ⁉︎」

 

 何と、ヤミヤミが祈に化けていたのだ。ヤミヤミは、クックッと含み笑いを浮かべる。

 

「これで、拙者の仕事は終わりだ。彼奴等も各々の使命を果たした……」

 

 そう言って、ヤミヤミは指を鳴らす。すると、倒れていた鬼灯隊が煙の様になっでは消えて行った。

 

「な、消えた⁉︎」

「戯けが。あれは、拙者の作り出した傀儡よ。貴様等は、最初から傀儡相手に戦っていた訳だ。

 無論、傀儡達も、わざと負けさせた。貴様等を油断させる為にな」

「そ、それじゃ……此処に最後の楔を打ち込む、と言うのは?」

 

 美羽の言葉に、ヤミヤミは嘲笑う。

 

「それも、ハッタリだ。目的の場所は此処では無い……しかし、計画の邪魔となるガオゴールドのみは此処で刺し違えてでも倒す必要があった……しかし、その計画も無事に終わりだ……」

 

 そう言うと、ヤミヤミは姿を消す。

 

 〜では、さらばだ‼︎ お前達は、鬼還りの儀が行われるその瞬間まで、指を咥えて見ているが良い……ハッハッハッハッ……〜

 

 ヤミヤミの声が木霊した。大神は悔しそうに地を叩く。

 

「クソッ‼︎ 俺達は嵌められた‼︎」

 

 悔しいが敵の方が一枚、上手だった。何より、ガオマスターをも騙し切ったのだから、気づける筈が無かった。

 

「それより‼︎ このままじゃ陽が‼︎」

 

 美羽は腹部から血が大量に溢れ出て来た陽を、介抱しながら叫んだ。このままでは、陽が失血死してしまう。

 

「月麿‼︎ テトムを呼べ‼︎」

「もう、呼んでいる‼︎」

 

 佐熊に言われる迄も無く、既に大神はテトムに連絡を取っていた。

 

「陽……陽ァ……‼︎」

 

 美羽は涙を流しながら、陽に呼び掛ける。彼女の頬から伝う涙が、陽の額に落ちた。

 

 

 〜辛うじて倒した鬼灯隊は偽物であり、更にヤミヤミの仕掛けた狡猾な罠により、陽は負傷してしまう‼︎

 果たした、陽の運命は⁉︎ そして、鬼還りの儀は阻止できないのか⁉︎〜


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