帰ってきた百獣戦隊ガオレンジャー 19YEARS AFTER 伝説を継ぎし者 作:竜の蹄
中々、本調子に戻れずに遅筆になってしまって……
それでは、本編をどうぞ‼︎
「親方様‼︎ 指令通りに行いました‼︎」
ビルの上に、集結し跪く鬼灯隊。その彼女達を見回す様に立っていたのは、ヤミヤミだ。
「ウム……ご苦労。これで、全ての布石は整った」
ヤミヤミは満足げに言った。それに反し、コノハは不満そうだった。
「結局、ガオレンジャーとは戦えず仕舞いだよ……」
「文句を言うな、コノハ。我々は、飽くまで鬼還りの儀を完遂させる事を考えていれば良いのだ」
ホムラが、コノハを嗜めた。
「けど……親方様。ガオゴールドを仕留める為とは言え、私達の傀儡を用いるとは、名案でした…で、ございます」
ミナモは、ヤミヤミの最初に出した指令内容を改めて感服した。
「ま、どちらにせよ、鬼還りの儀が執行されたら、ガオレンジャーは一網打尽や。遅かれ早かれ、そうなる運命やったけどな」
ライは、嘲る様に言う。
「……早く戦いたい……」
リクは、ウズウズとした様子だった。
「……焦るな。ガオゴールドは今や虫の息。残ったガオシルバー、ガオグレー、ガオプラチナ……奴等を倒すのみだ……」
「親方様……ガオマスターも、残っております……」
ホムラが付け加える。ヤミヤミは、ウームと唸る。
「そうだな……奴も危険だ……始末しておかねばなるまい……」
「呼んだか?」
突如、ヤミヤミ達の背後から語り掛けて来る声。振り返ると、其処にはガオマスターが立っていた。
「ガオマスター……‼︎」
「其方から出向いて来たか! 飛んで火にいる夏の虫、とはこの事‼︎」
ホムラは忍刀を構えながら、威嚇する。しかし、ガオマスターは動く事は無かった。その代わり、強い覇気を滲ませて来る。
「止めておけ。お前達では私には……勝てん!」
そう言いながら、ガオマスターはフルムーンガードを構える。突然、飛来して来た苦無を受け止めたのだ。
「ウフフ……この前、邪魔した……お返し……ウフフ……‼︎」
「……相変わらず、躾のなってない……」
苦無を投げたのは、リクだった。顔を邪悪に歪ませながら、多数の苦無を手に持ち、次から次へと投擲して来る。
しかし、ガオマスターはフルムーンガードで全ての苦無を弾き落とし、防御した。だが、その隙を突いて、コノハが短刀を振り上げつつ、マスターの首下に狙いを定めた。
だが、その刃は届く事無く弾かれた。いつの間にやら抜いたルナサーベルが、短刀の刃のみを破壊して、コノハの首筋にサーベルを突きつける。
「無駄だ。貴様達の技を持ってしても、私には傷一つ付けれまい……」
「チィっ‼︎」
ガオマスターの強い言葉に、コノハは顔を歪ませる。
「止めろ、コノハ、リク! お前達の手に負える奴では無い‼︎」
「…けど…‼︎」
「二度は言わぬ‼︎」
そう言うと、ヤミヤミは前に出る。
「…ガオマスターとやら…。我々、オルグの目標である鬼還りの儀を邪魔するつもりか?」
「ああ、そのつもりだ」
「ふん…笑止な。ガオネメシスに勝てなかった貴様如きが、オルグ忍術を極めた拙者に勝てると思うてか⁉︎」
「……試して見るか?」
そう言って、ガオマスターはルナサーベルを構え直す。
「……ふむ、出る杭は早めに抜いておこう……
「「ハッ‼︎」」
ヤミヤミが呼び掛けると、金色のカブトムシの姿をしたオルグ魔人と銀色のクワガタムシの姿をしたオルグ魔人が現れた。
「故奴等は、甲丸と鍬丸。オルグ忍軍でも指折りの実力者達だ……甲丸、鍬丸‼︎ ガオマスターを始末せい‼︎」
「「御意‼︎」」
ヤミヤミの命令に、二人のオルグ忍者は応えた。
「……では、行くぞ‼︎ 鬼灯隊、我に続け‼︎」
『ハッ‼︎』
そう言って、ヤミヤミと鬼灯隊は一斉に姿を消した。ガオマスターは後を追おうとするが、甲丸と鍬丸が遮る。
「此処を通りたくば、俺達を倒して行けィ‼︎ なァ、弟よ‼︎」
兄の甲丸は両刃の剣を構えながら、ジリジリと近付く。
「応よ、兄者‼︎」
弟の鍬丸も刺又状の槍を振り回して、構える。ガオマスターは、ルナサーベルを右手に、フルムーンガードを左手に構えた。
「さて……この“身体”、果たして持つだろうか…?」
と、ガオマスターは駆けて行く。甲丸、鍬丸も、それに応戦した。
その頃、病院では……ヤミヤミの罠により、瀕死の重傷を負った陽は病院に担ぎ込まれるや否や、緊急手術を行われた。
幸い急所は外れていたが、ヤミヤミの苦無は内臓を傷付け、出血が著しかった。あと数分、遅かったら本当に危なかったらしい。
待合の廊下で大神、佐熊、美羽、テトム、こころは悲痛な面持ちで座っていた。テトムは
「……私の所為だわ……オルグ達の罠に気付けなかったなんて……‼︎」
と、懺悔に項垂れる。そもそも、鬼灯隊が集結している、と言うのも全ては、ガオレンジャーの注意を引く為に過ぎなかった。
「……テトムだけの所為じゃ無い……‼︎ 俺達、全員が騙されたんだ…‼︎」
大神も悔しげに歯軋りさせる。全ては、ヤミヤミの掌の上で翻弄されていたに過ぎなかった。鬼還りの儀を阻止する事にばかり考え、仲間を的に掛けてくると言う盲点を突かれる結果となった。
「結果には全て、原因がある……! ムラサキの口癖だった……! 此処に、オルグの策略に倒れた陽と言う結果と、オルグの策略を重要視しなかったと言う原因がある……‼︎」
佐熊も拳を握りしめたまま、唸る。確かに、ここ最近は水面下にて作戦を進めるオルグより、表だって活動するオルグ達にばかり、目をやっていた。件のツエツエと恐竜オルグも然りである。
「……ねェ、そう言えば、摩魅は?」
ふと、美羽は顔を上げながら言った。そう言えば、試合前から姿が見えなかった。
「まだ、会場に居るんじゃ無いかの? しかし、今は……‼︎」
「兄さん‼︎」
病院の廊下に響き渡る声が、木霊した。声の方を見ると、制服に身を包んだ祈が血相を変えて走ってきた。看護師に見られたら、注意されそうだ。
「祈ちゃん……試合はどうしたの?」
テトムは尋ねたが、祈は今にも泣き出しそうな顔になる。
「そんな場合じゃありません‼︎ 兄さんが怪我をして、病院に担ぎ込まれたって……‼︎ 兄さんは大丈夫なんですか⁉︎」
「祈、ちょっと落ち着いて……」
完全に取り乱した祈を宥める様に、美羽が肩に手を置くが、祈は…
「触らないで‼︎」
と、乱暴に払い除けた。その際に美羽を見る祈の目は、仇を見据える様な厳しい眼差しだった。何故、祈に睨まれるのか理解出来ない美羽は困惑した。
「ちょっと此処は病院ですよ⁉︎ 他の患者様の体調に差し支えるので、お静かに‼︎」
年配の看護師が目くじらを立てながら飛んできた。しかし、祈は看護師に縋り付き…
「兄は…兄は助かるんですか⁉︎」
と、涙を流しながら聞いた。
「落ち着いて、祈ちゃん! 今、もうすぐ手術が終わるから‼︎」
看護師は優しく祈を宥めた。彼女は、かつて祈が病弱だった際、この病院に何度も担ぎ込まれた折、何度か担当になってくれたのだ。
だから祈の事も、すっかり顔馴染みなのだ。
その時、手術中のランプが消えて、扉が開く。
「……終わったみたいだな……」
大神は顔を上げながら言った。すると、手術室から車輪付きのベッドに載せられた陽と執刀した医師、付き添いの看護師が出て来た。
「先生‼︎ 兄は……⁉︎」
医師に駆け寄る祈。初老の医師は笑顔を見せた。
「大丈夫。急所も外れていたし、出血も止めた。今は麻酔が効いて眠っているが、直に目を覚ますだろう」
「良かったァ…‼︎」
祈は力が抜けた様に、ヘタヘタと腰を抜かしながら椅子に座った。耐えていた涙が、止めどなく溢れ出て来る。
「暫くは入院だな。しかし、白昼堂々と通り魔に襲われるとは、付いてないな……」
医師は麻酔で、こんこんと眠る陽を見ながら言った。そして、看護師に病室へ連れて行く様に指示を出し、入院後の手続きを祈に話すと言って歩いて行った。矢張り祈は、すれ違い様に美羽を鋭い目で睨み、後を去る。
美羽は困惑気味に、祈の背を見た。
「……さっき、祈に睨まれた……」
「きっと陽が、怪我をして取り乱してるんだろう……」
大神は気にするな、と美羽に言ったが、美羽には気になって仕方が無かった。
「行ってあげたら? 陽の事が気になるんでしょう?」
「わ、私は……」
テトムの不意に掛けられた言葉に、美羽は戸惑う。佐熊も、ニヤリと笑う。
「…隠さんで良いわい。皆、知っとる。お前さん、陽に惚れとるんじゃろう?」
佐熊の直球発言に、美羽は口をパクパクさせた。
「…陽が動けない今、俺達も無闇と動けない。オルグ達の事は、俺達が見ておく…行け」
大神の後押しに、美羽は意を決して病室へと向かった。大神は、佐熊とテトムとこころに声を掛ける。
「行くぞ‼︎ 陽の分も、俺達が動かなくてはな‼︎」
「応‼︎」
「そうね‼︎」
「…ん…」
そう言って大神達は、戦場へと向かって行った…。
病室では、祈は眠り続ける陽の傍に座っていた。陽は点滴をチューブで繋がれて、まるで死んだ様に眠っている。
祈は目を覚さない兄の手を強く握る。今朝まで元気だった兄が、今は病院のベッドの上に居る……。
「兄さん……」
祈は、陽を握る手の上に、ぽたり…と涙を落とす。兄は、こんなになるまで戦ってくれていたのだ。それなのに、自分は何をしているんだろう?
その際、病室のドアが開いた。祈は振り返ると、其処には美羽が居た。
「美羽……さん……」
美羽の顔を見た祈は、涙を乱暴に拭う。と、同時に心の中にささくれた様な刺が生まれてきた。
「祈……陽は……」
「近付かないで‼︎」
突然、祈は金切り声を上げた。美羽はびくりとして、足を止める。
「……兄さんに……近付かないで……‼︎ 兄さんが、貴方の為に、こんな目に遭ったのに……よくも抜け抜けとやって来れたわね⁉︎」
「祈……何を言ってるの⁉︎」
美羽は祈が、兄を怪我させられた事を怒っていると思っていた。だが、彼女の様子を見るに、そうでは無いらしい。
「陽が怪我したのは、オルグとの闘いでの負傷だよ‼︎ 私を庇った訳じゃ無い‼︎」
そう言いながら、美羽は感情的になった。祈の言う事も、あながち間違っていないからだ。ヤミヤミの仕掛けた罠を見抜けず、陽に負傷させてしまったのだ……祈の言う通り、自分にも少ならからず責任はあるかも知れない。
「……どうして……兄さんを守ってくれなかったの? オルグを倒す為なら、兄さんの命も取るに足らない物って事⁉︎」
「祈、落ち着いて…‼︎」
「離して‼︎」
感情的になる祈を宥める様に肩を掴む美羽。しかし、祈は振り払った。
「闘いは、私から兄さんを奪った……今度は貴方が兄さんを奪いに来るの⁉︎」
その祈の言葉に美羽は理解した。祈は陽を愛しているのだ。兄としてでは無く、一人の男性として……。その気持ちが陽の怪我によって、美羽に対する怒りへと変わってしまったのだろう。
何一つ、言い返せない美羽に対し、祈はらしく無い冷たい声で嘲笑う。
「ほら……何も言えない、図星だったんでしょ? 貴方は私から兄さんを奪って……慌てふためく私を見て笑っていたんでしょう?」
「祈……陽の事が好きなんだ……」
突然の返しに、祈は言葉を詰まらせる。だが、すぐに毅然とした態度になる。
「そうよ、悪い⁉︎ 私は兄さんの側にずっと居たの‼︎ 幼なじみだからって、ガオの戦士だからって、ぽっと出の貴方に兄さんを盗られたくない‼︎」
祈は、そう言って、美羽に背を向けた。
「…出て行って…もう、兄さんに近付かないで……お願いだから……‼︎」
そう言いつつ、祈は小さく肩を震わせていた。恐らく泣いているのだろう。美羽は今、祈に何を言っても理解して貰えない、と悟り病室を後にした。
外に出た美羽は、ひっそりと涙を流す。確かに、自分も陽を愛していた……自覚はしていなかったが……。
ふと、美羽はポケットから宝珠を取り出す。そして、宝珠を握りしめた。
「お願い……貴方の力で陽を……助けて……‼︎」
そう呟くと、美羽はその場から逃げ出す様に足早に走り去った……。
ガオマスターと、オルグ忍者兄弟、甲丸と鍬丸の闘いもまた大掛かりとなっていた。揃って、オルグ忍軍に要であり個人の実力のみなら、ヤミヤミには及ばずとも、二人が組めば鬼灯隊の面々をも倒してしまう。
しかし、ガオマスターもまた原初のガオの戦士にして、ガオネメシスとの闘いでは不意打ちにて破れ掛けたが、本来なら並大抵のオルグを寄せ付けない実力者である。
だが、2対1と言う非常に不利な状況であるのは事実であり、流石のガオマスターも苦戦を強いられている。
しかも……ガオマスターには、誰にも明かしていない“秘密”がある。その秘密故、彼は従来以上の力を発揮しない…いや、発揮出来ないのだ。
甲丸は、彼が遅々として自ら攻め入って来ない事に苛立ちを覚えた。
「おい、ガオマスター! さっきから攻撃を交わしたり、受け流したり……真面目に戦う気があるのか⁉︎」
甲丸は、闘いを不真面目に行うガオマスターに対し、罵声を浴びせて来た。しかし、ガオマスターは無言を貫く。
だが、血の気の多い兄に対し、冷静な弟の鍬丸は何かを閃いた。
「落ち着け、兄者よ。どうやら、ガオマスターは本気を出せない理由があるらしい。ならば、敢えて本気を出す前にケリを付けようでは無いか‼︎」
そう言って、鍬丸は甲丸にこっそり耳打ちした。それを聞いた甲丸は、ニィィッと笑う。
「成る程な……そりゃ名案だ…‼︎」
そう言って、甲丸は自身の髪の毛を引き抜き息を吹きかけた。すると、たちまち赤紫色に血管の様な物が浮き出た瓢箪を取り出した。瓢箪の中央には、閉じられだ瞼の様な紋様がある。
「鍬丸! 頼むぞ!」
「任せろ! オルグ忍法! 蠱毒殺‼︎」
すると鍬丸の口から多数の蟲が飛び出してきた。百足、蠍、蜂、蛾……何れ共に毒を持ち、場合によっては並の人間を死に至らしめる毒虫ばかである。
虫達は、ガオマスターの周りを取り囲み始める。しかし、マスターは構う事なく虫達を蹴散らすが、数が多く更に小さい虫達を全て蹴散らすのは骨が折れた。
しかし、鍬丸の目的は攻撃では無い。兄の得意とする術を行わせる為、その布石をガオマスターに悟らせない為の撹乱に過ぎなかった。
そして遂に、その準備が整った。甲丸は、瓢箪を構えて、ぶつぶつと唱え始める。
「……急急如律令……オルグ忍法・極! 蠱毒封じの術‼︎」
甲丸が叫ぶと、瓢箪の目がカッと見開かれた。すると吸口の部分が開き、口の様な物が現れた。
「鍬丸、俺の後ろに退がれ! お前まで封印しかねん‼︎」
「分かった、兄者‼︎」
咄嗟に、甲丸の背後へと飛び移る鍬丸。すると、吸口が大きく開かれ、ガオマスターの身体をすっぽりと飲み込んだ。マスターは一切、抵抗せずにされるがままに飲み込まれていき…やがて、口は元の大きさへと戻った。蓋が閉まる刹那、吸口は大きくゲップを放った。
「ククク……馬鹿め‼︎ あっさりと封じられよった‼︎」
「流石、兄者の術は見事よの‼︎ 使い手以外の全てを封印してしまう、オルグ忍具『鬼瓢箪』は‼︎」
甲丸は鍬丸の褒め言葉に小気味良く、鬼瓢箪を揺らした。
「ククク…! ただ封印するだけでは無い! 一緒に封じた毒虫共と一緒に、ジワジワと毒で溶かされていく。しかも、この瓢箪は内側からは決して破壊される事はない‼︎ 閉じ込められれば最期、骨も残さずにドロドロに溶けていくのみだ‼︎」
甲丸は瓢箪を掲げながら、高笑いを上げた。最早、ガオマスターは瓢箪の中で他の虫達と共に溶かされていくしか無いのか?
勝利を確信した最中、突然に鬼瓢箪はガタガタと震え始めた。
「な、何だ⁉︎」
驚いた甲丸は、思わず鬼瓢箪を手放す。しかし、瓢箪は益々、震えが強くなっていった。
その様子に、鍬丸は嘲笑う。
「無駄だ‼︎ その瓢箪は、パワーアニマルをも封じてしまう代物! 押しても引いても決して……!」
自信満々に言い放つ鍬丸を他所に、鬼瓢箪は膨張し始め爆発した。すると、中からルナサーベルを構えたガオマスターが姿を現す。
「な⁉︎ そんな馬鹿な! 鬼瓢箪を破壊するとは⁉︎」
甲丸は予想に反した出来事に驚愕する。しかし、ガオマスターは何事も無かったかの様に、動き出す。
「この様な子供騙しで、私を封印しようとは……ガオの戦士も甘く見られた物だ」
ガオマスターは余裕のある口調で言った。鍬丸は刺又を構え…
「ほざくな‼︎ 」
と、ガオマスターに突きかかる。しかし、マスターの構えたフルムーンガードによって、刺又は弾かれてしまい、粉々に砕けた。
「残念だったな、オルグ忍者。確かに力を与えたくらいでは、かの瓢箪は壊れない。しかし……絶対零度の前には無力だったのだ‼︎」
力強く叫ぶガオマスターは飛び上がり、鍬丸の腹部にサーベルを突き刺した。
「グッ……何の、これしき……‼︎」
「凍り付け‼︎ 氷結の牙‼︎」
そのまま振り下ろしたサーベルは、鍬丸の身体を斬り抜いた。すると、鍬丸の切り口から溢れ出た体液が、たちまち凍り始めた。
「が…がらだが……ごおっで……⁉︎」
身体の異変に気付くが、時既に遅かった。あっという間に、鍬丸は氷像と化してしまい、やがて粉々に砕け散ってしまった。
「く、鍬丸ゥゥゥ!!!!」
甲丸は砕けて死んだ弟に叫び声を上げた。オルグとは言え、兄弟に対する情愛はあったのか、弟を死に追いやったガオマスターに対し、甲丸は激怒した。
「お、おのれ! よくも、俺の弟を‼︎」
「意外だな……お前達にも、兄弟を思いやる気持ちがあったのか?」
「思いやる? ち、違う‼︎ 鍬丸は、俺と連携を合わせる為の存在‼︎ そもそも我々、オルグに兄弟愛など……⁉︎」
ガオマスターの指摘に対し、甲丸は混乱した。其処を、マスターはトドメを刺す様に…
「分からないか? それが兄弟愛、と言うんだ……」
そう言った、ガオマスターの言葉は深く、そして何処か哀しげだった……。彼も願っていた。叶う事ならば時を巻き戻し、かつての兄弟に戻りたい、と……。しかし、幾ら願っても叶う事は無い……。
「ううう……おのれ‼︎ 許さん! 許さんぞ、ガオマスター‼︎」
完全に我を忘れた甲丸は、懐からオルグシードを取り出し、それを口に入れた。
すると、甲丸は巨大化して生き、ガオマスターの前に立ちはだかる。
「グハハハ‼︎ ガオマスター、この俺を本気で怒らせた報いを受けて貰うぞ‼︎ 」
そう言って、ガオマスターを掴み上げようとする甲丸。すると、ガオマスターはフルムーンガードを天へと翳す。
「神獣召喚‼︎」
すると、ガオマスターの翳した盾から放たれる光が天を裂き、その隙間から現れた光の道を伝う様に姿を現す5つの影……。
「あ、あれは⁉︎」
それは、千年前のガオの戦士達と共に戦ったパワーアニマル達……
獅子型のパワーアニマル、ガオレオン…
禿鷲型のパワーアニマル、ガオコンドル…
鋸鮫型のパワーアニマル、ガオソーシャーク…
水牛型のパワーアニマル、ガオバッファロー…
豹型のパワーアニマル、ガオジャガー…
何れとも、過去に於いてガオの戦士達に力を貸したパワーアニマル達だった。そして彼等は、ガオマスターの周りに集結する。
「済まない、百獣の神よ……今一度、私に力を貸して欲しい…‼︎」
ガオマスターの言葉に、ガオレオンは吠える。すると、ガオレオンが胸部に、ガオコンドルが腰部に、ガオバッファローが下半身に、ガオソーシャークが右腕として、左腕をガオジャガーが構成する。
そして、ガオレオンの頭頂部から顔が出現し、ガオコンドルから外れた尾羽な当たる部位が、その顔へて装着された。
「誕生! ガオゴッド‼︎」
ガオゴッドの体内に、ガオマスターが収納されていく。すると、ガオゴッドの内部にあるコクピットに当たる場所には、幻想的な空間が広がっていた。其処へ、ガオマスターは座禅を組む様に搭乗する。
同時に、ガオゴッドに身体から溢れ出んばかりのガオソウルが放出された。
〜百獣の神に、原初の戦士たるガオマスターが搭乗する事により、秘められた神々の力を解放します〜
「フン、ガオゴッドだと? 既に神の力も衰えた貴様が、この甲丸に勝てるものか‼︎ 七星の太刀を喰らえェ‼︎」
舐めてかかった甲丸は、ガオゴッドに斬り掛かって来た。しかし、ガオゴッドは、右腕のガオソーシャークが変形した鋸で、七星の太刀を受け止めた。
〜神の力が衰えた、だと? ならば、その目で確かめると良い‼︎〜
「ああ、そうさせて貰う‼︎ 喰らえェェ‼︎」
そう言って、ガオゴッドの鋸を弾き飛ばすと、一気に斬り落とした。途端に、ガオゴッドは消滅した。
「グハハハ‼︎ 何だ、呆気ない‼︎ 所詮は苔生した旧時代の化石か⁉︎」
勝ち誇りながら、甲丸は言い放つ。だが、その時、ガオゴッドの笑い声がした。
〜ハハハハハハ‼︎ まだ勝ち誇るのは早いぞ⁉︎〜
「な、何⁉︎ 馬鹿な⁉︎」
甲丸は、ガオゴッドの声に辺りを見回す。そして、振り返ると……甲丸を更に上回るくらい、巨体となったガオゴッドが見下ろしていた。
「あ…あ…あ…‼︎」
〜甲丸よ、お前の力とは、その程度か? 貴様が斬ったのは、私の幻影に過ぎぬ‼︎ この、愚か者が‼︎〜
甲丸は絶句する。この自分が、たった一人の精霊王の掌で踊らされていたなんて……。すると、ガオゴッドは再び姿を消す。
「ま、また消えた⁉︎ 何処に…⁉︎」
姿を消したガオゴッドを探して回るが、その先、自身の右側にガオゴッドの姿が見えた。
「其処かァ⁉︎」
と、七星の太刀で斬り付けた。だが、刃は当たらず空を斬った。
「また幻影か⁉︎ ん、そっちか⁉︎」
左に、後ろに、そう思えば前に、と不規則に移動するガオゴッド。甲丸は苛立ちながら、叫ぶ。
「ええい、じれったい‼︎ 本物のガオゴッドは何処にいる⁉︎」
甲丸は叫ぶ。すると、彼の目の前に、再びガオゴッドが姿を見せた。
「チィ‼︎ どうせ、また幻影だろ‼︎ 隠れてないで出て来たら…」
甲丸は叫びながら、七星の太刀を振り下ろす。その際、ガオソウルを纏わせた鋸が、七星の太刀の刃を打ち砕いた。
「これが幻影か⁉︎ 痴れ者めが! 百獣の神の怒りを知れ‼︎
神獣灼熱斬‼︎」
ガオゴッドの鋸が激しく燃え上がる。そして、その圧倒的な力を前に茫然とするままの、甲丸を斬り伏せた。
「ぐ…が…‼︎」
〜悔い改めろ…南無三‼︎〜
甲丸の切り口が燃え上がり、甲丸は全身が炎に包まれて行く。
「グォォォ‼︎ この俺が負けるとはァァ‼︎ 許せ、鍬丸ゥゥゥ……‼︎」
炎の柱の中で、甲丸は断末魔を上げながり崩れていった。残されたガオゴッドは、目の前に降り立ったガオマスターを見る。
「済まなかったな、ガオゴッド。其方の力を煩わせる事になり…」
〜何をおっしゃいますか、ツクヨミ殿。原初の戦士たる貴方に、私の力が役立つので有れば、幾らでも……〜
ガオゴッドは、それだけ言い残し、虚空へと姿を消した。残されたガオマスターは、直ぐにヤミヤミ達の後を追わねば…と走り出した……。
陽の眠る病室では、祈が傍で見守っていた。陽は何時に目を覚ますか判らない。しかし、きっと目を覚ましてくれる……そう信じていた。
間も無く、目が覚ますだろうと看護師は点滴を取り替える為、新しい点滴を用意しにいった。
祈は試合の疲れがドッと出て、ウトウトとしていた。と、その際、祈の真上から何かが舞い降りた。
其れは鳥の様な姿をしていた。鳥は祈と陽を交互に見渡しながら、やがて自身の身体を小さな宝珠へと変えると、陽の真上をグルグルと回り始めた。やがて、宝珠は陽を胸元に降り立ちわ陽の体内へと吸い込まれていった。そうすると、陽の頬に赤みが差し始め、呼吸も安定して来た。
やがて……陽は、ゆっくり瞼を開けて行く。そして、横に座っていた祈に声を掛ける。
「祈?」
陽の声に、祈は目を覚ます。そして、陽が起きていた事に驚くが、直ぐに涙を流しながら
陽に縋り付いた。
「兄さん‼︎」
祈は、さめざめと泣き続ける。そんな祈を、陽は黙って頭を撫でてやった……。
〜ガオゴッドと共に、強大な力を見せつけたガオマスター。その時、陽の覚醒と同時に現れた鳥の幻影の正体は?
鬼還りの儀は、もう寸前まで来ている! 陽は間に合うのでしょうか⁉︎
ーオリジナルオルグー
−甲丸と鍬丸
オルグ忍軍に所属するオルグ忍者。兄の甲丸がカブトムシ、弟の鍬丸がクワガタムシをモチーフにしている。
その実力は高く、ヤミヤミからも太鼓判を押されている。
必殺技は甲丸の持つ鬼瓢箪に、対象を封じ込める『蠱毒封じの術』と鍬丸の体内に飼っている多種多様な毒虫を吐き出す『蠱毒殺』。
オルグ故、性格は非情だが、兄弟同士を思いやる気持ちはある。
キャラモチーフは、ハリケンジャーのゴウライジャーと、西遊記に出てくる金角と銀角。