帰ってきた百獣戦隊ガオレンジャー 19YEARS AFTER 伝説を継ぎし者 作:竜の蹄
体調自体は完璧に戻ったわけではないので、また投稿が遅れる場合がありますが、なるべく遅れない様に頑張りますので、これからも小説を宜しくお願いします‼︎
ガオズロックは竜胆市上空を飛び回り、ヤミヤミ達の足取りを探していた。しかし、肝心のガオの泉は一向に反応しない。
同じ所を行ったり来たり、と目的地が定まらない。搭乗している大神、佐熊、テトム、美羽の顔に焦りが見え始めていた。
このまま、グズグズとしていたら、鬼還りの儀が行われてしまう。最早、一刻の猶予も許されないのだ。
「テトム! まだ見つからないのか⁉︎」
業を煮やした大神は怒鳴る。さっきから、ウロウロしているのに、手掛かりの一つも掴めない事に対する苛立ち、ひいては陽を負傷させてしまった事に対する後悔から、大神もまた余裕の無い言動が目立った。
「今、探してるわよ‼︎ 苛々しないでちょうだい‼︎」
テトムも感情的になって返した。その言葉に、大神は立ち上がる。
「分かってるのか⁉︎ 早くしないと、鬼還りの儀が行われてしまうんだぞ⁉︎ 俺達は、ガオの巫女であるテトムしか頼りが無いんだ‼︎」
「分かってるわよ‼︎ お願いだから、少し静かにしてて‼︎」
大神とテトムは無言のまま、睨み合った。二人は比較的に気の合う間柄だった。二十年前の戦いで苦楽を共にし、ガオレッド達に対する思い入れも強かった。
それだけに極端に追い詰められた二人は、互いに引くに引けなくなってしまったのだ。
「二人共、止めてよ‼︎ 仲間割れしている場合じゃ無いじゃん⁉︎」
ギスギスした空気に耐え切れなくなった美羽は、二人の間に仲裁に入る。しかし美羽もまた、精神的に余裕が無かった。
先程、祈と対立した際、陽が怪我したのは自分の力不足か原因だと断じられた美羽は、心に迷いが出てしまっていた。
「だったら、美羽! このまま、鬼還りの儀が行われても構わない、とでも言うのか⁉︎」
「はァ⁉︎ 別に、そんな事は言って無いでしょ⁉︎」
「止めんかァァ!!!」
突然、今まで無言を貫いていた佐熊が、怒声を上げた。その大声は、ガオズロックが揺れた様にすら感じた。
「月麿! 苛立つからと言って、仲間に当たるな! 美羽もじゃ、己の個人的な感情を持ち込むな‼︎」
佐熊の一喝により、さっきまで興奮していた大神、美羽、テトムは落ち着きを取り戻した。
「……スマン、美羽……どうかしてた……」
「いや…私こそ、ごめん……」
普段、冷静な人間ほど頭に血が上れば、必要以上に感情的になってしまう。その際 最たる礼を示してしまった大神と美羽は、己の感情をコントロール出来ないまでに追い詰められていた事を反省した。
それは、テトムも同様である。
「……力丸、ありがとう……」
陽の負傷……それは此れ迄、鋼鉄の如しの堅い結束で結ばれていたガオレンジャーに、一筋の亀裂を生じる結果となった。
当初は戦士としてもリーダーとしても、全てに於いて未熟だった陽。だが、其れ等の至らぬ部分を陽は、時には敵であるオルグにさえも手を差し伸べる優しさや決して諦めない不屈の意志でカバーし、自分達を引っ張って来たのだ。
ガオレッド/獅子走の様な、戦士としてズバ抜けた“何か”こそ持ってはいないが、それでも陽は既に、ガオレンジャーの立派な一員であり、レッド不在に於けるガオレンジャーのリーダーとなっていた。
決して欠いてはならない。オルグとの戦いに決着を付ける為には、陽の存在は必要なのだ。今回の一件で、それを改めて再確認した四人だった。
その時、大神のG -ブレスフォンが鳴り響く。すかさず、大神はブレスフォンを取った。
〜シルバー⁉︎ ヤミヤミ達の居場所が分かったよ‼︎〜
ブレスフォンの話し相手は、こころだった。ソウルバードであるこころは、ガオレンジャー達と別行動を取って、ヤミヤミ達を探していたのだ。
「本当か⁉︎ それで場所は何処だ⁉︎」
こころの言葉に反応し、仲間達も耳を傾けた。
〜場所は…‼︎〜
その頃、ヤミヤミ達は竜胆市一の大公園の中にある森の中に立っていた。後ろには鬼灯隊の5名、多数の下忍オルゲット達が控えている。
先頭に立つヤミヤミは、チッと舌打ちした。
「番狂わせだ……甲丸と鍬丸がやられた……」
ヤミヤミの失望に満ちた言葉に、鬼灯隊は酷くどよめいた。
「まさか…⁉︎ 我がオルグ忍軍きっての実力者にして、二枚看板が⁉︎」
ホムラは驚愕した。甲丸、鍬丸兄弟の実力は嫌と言う程に知っているからだ。彼等と手合わせした際、鬼灯隊が五人掛かりで挑んでも手傷一つ負わせられ無かった。彼等と、まともに戦闘出来るのは頭領であるヤミヤミだけだった筈だ。
その甲丸、鍬丸が倒されたのだから、鬼灯隊の驚きは隠せない。
「それは……計画に支障をきたすのでは…で、ございます」
「
ミナモ、コノハも予想に反した事態に慌てふためいた。特に、コノハは二人を兄弟子として慕っていた為、その兄弟子二人が倒された事への驚愕以上に悔しさも滲み出ていた。
「こら、拙いとちゃうんか⁉︎ 鬼還りの儀どころとちゃうで⁉︎」
「……ガオマスター、私が倒す?」
ライも計画実行が出来ないかも、と言う焦りと、実力者二人を倒したガオマスターへの興味がある、ひいては戦闘意欲が湧いて来た。
「えェェいッ!! 鎮まれェェい!!!!」
混乱の渦中にある鬼灯隊に対し、ヤミヤミは怒声を上げて黙らせた。
「戯け共が‼︎ 混乱している場合か‼︎ 多少の被害が出る事など、周知の上だった‼︎ 我等、忍びとは闇より主を支え、決して表に出ずに目的を全うする事を極みとする‼︎ 甲丸と鍬丸の犠牲は、必要ある犠牲だった‼︎
二人の犠牲に報いようとするなら、この身を犠牲にしてでも目的を達成する事だ‼︎」
ヤミヤミの発した言葉は、鬼灯隊の面々に届いた。忍びとして生きる以上、決して名を残してはならない。決して利を求めてはならない。
求めるは、仕える主への敬服、時には命さえも投げ出さんとする忠誠心のみである。
「さァ、我等、オルグは……長きに渡り、闇に隠れて生きてきた……だが、それも今日で終わる‼︎ これより、我々が大地に闊歩し君臨する時代が始まるのだ‼︎
今こそ、楔を打ち込もうぞ! 鬼灯隊よ、配置に付けィ‼︎」
ヤミヤミが号令を掛ける。すると、鬼灯隊達はヤミヤミを中央に立たせる様に円陣を組んだ。そして、ホムラは指を組み、術を唱え始める。
〜大いなる鬼達の祖、雄呂血の系譜を受け継ぐ末裔の名代とし、この地に刻まん! 鬼の紋を‼︎〜
それに続き、ミナモも唱え始めた。
〜更に続けよう‼︎ 我等の中に流る血肉、魂の欠片を大いなる雄呂血に捧げん事を〜
次には、ライが唱え始めた。
〜そして、今こそ目が醒めん! 地の底に蠢く事を余儀なくされた、よろず鬼達よ‼︎〜
更に、コノハも唱え始めた。
〜時は満たされり! 地上と地底に隔てた壁、今、開かれん‼︎〜
最後に、リクが唱え始めた。
〜動き出せ! 鬼の血族よ‼︎〜
鬼灯隊の面々が唱えた呪文は、少しずつ大気を歪め始めた。すると、ヤミヤミは頭上に巨大な苦無に似たレリーフを召喚し、其れを大地に突き付けた。
〜いざ、鬼冥の城へ!
オルグ忍法・奥義!
やがて、苦無はグルグルと回転を始め、地面に飲み込まれて行く。掘って行く、と言う物理的な物ではなく、まるで地面そのものに吸い込まれて行く、と言った表現が正しい。
「これで、完了だ。後は、扉が開かれるのを待つばかり……」
「そこまでだ‼︎」
突然、空を裂く怒声が響く。其れは、大神を筆頭にしたガオの戦士達だった。しかし、ヤミヤミは北叟笑む。
「…ほう…よく、此処が分かったな……しかし、もう手遅れだ‼︎ たった今、楔は打ち込んでしまったぞ!」
「くそッ! 遅かったか……⁉︎」
完全に出遅れてしまった事に、大神達は悔やむ。だが、楔を打ち込んだばかり……ならば、儀式そのものは未だ、終わっていない。
大神は、ヤミヤミに凄む。
「今すぐ、儀式を中断するんだ‼︎」
「戯けが。一度、打ち込んだ楔を取り出せる筈が無かろう。だが……そうだな。地中に打ち込んだ楔が完全に動き出すには、あと一時間と少々、掛かる。其れ迄に術者である拙者を倒す事が出来たなら……或いは、儀式を中断させれるかも知れんぞ?」
それは、逆に言えば決して倒される事は無いと言う、ヤミヤミの大きな自信からだった。だからこそ、これ程に鬼還りの儀についての内情を話し、余裕のある態度にて接する事が出来るのだ。
「大した余裕だな……ならば、遠慮なく倒させて貰う‼︎」
その余裕に対し、大神も応えた。だが、ヤミヤミは何を思ったか、鬼灯隊を退かせた。
「貴様等は手出し無用ぞ。此奴等は、拙者一人で料理する!」
「親方様……でも……‼︎」
「くどい! 鬼還りの儀を完遂する迄、気を抜くな‼︎」
飽くまで儀式を達成する事に拘るのか、或いはガオレンジャーに対し自分一人で対峙出来る絶対な自信があるのか、ヤミヤミからは圧倒的なオーラが立ち昇った。
思えば、これまでに四鬼士と呼ばれるデュークオルグは風のゴーゴ、水のヒヤータ、焔のメランと三人の力を見てきた。
だが、このヤミヤミは未だに底の知れない。彼の弟に当たるデュークオルグ、ドロドロとは対峙した事がある大神だが彼も、それまで闘ったオルグ達と一線を画す実力者だった。
ならば、このヤミヤミはそれ以上の力を持っている筈だ。
「いいか? 今は陽が居ない状況だ……気を抜くな‼︎」
「おう‼︎」
「任せて‼︎」
大神の呼び掛けに、佐熊と美羽も応える。戦力的には陽が抜けた分、かなり不利だが、今はそんな事を言ってる場合では無い。
三人は、G−ブレスフォンを起動させ……
『ガオアクセス‼︎』
と、同時にガオスーツを着用、ガオレンジャーに変身した。その様子に、ヤミヤミは忍刀を両手に構え、更に背中から出現した二本の腕が更に忍刀を持ち、四刀流を成した。
「先に言っておくが、ガオシルバーとやら……拙者の強さを、ドロドロと同じに考えているなら……御門違いも甚だしいぞ?
オルグ忍者の極意たるは『幻術、忍術、体術』の三つを極めて『心・技・体』を会得とする。しかし、奴は幻術と忍術にばかりかまけて、体術を怠った‼︎ だから、ガオレンジャーに敗北する等と言う醜態を晒す羽目となったのだ……‼︎」
ヤミヤミは、亡き弟を蔑みに満ちた口調で罵倒した。
「だが、拙者は幻術、忍術、体術の全てを限界まで鍛え、研ぎ澄ましている……。さァ、来るが良い……オルグ忍軍『最強』にして『最恐』と謳われた男、影のヤミヤミ……推して参る‼︎」
そう言って、ヤミヤミは刀を振り回して、ガオシルバー達に襲い掛かった…。
その頃、病院では陽は祈と共に過ごしていた。側では、祈が林檎の皮を剥いている。内臓に損傷があった為、陽が食べ易い様に細かに切って皿に載せる祈。そんな彼女の様子を陽は、何処か浮かない面持ちで眺めていた。
麻酔が切れ、薄れていた記憶が鮮明に呼び起こされてくる。鬼灯隊を倒したと思った矢先、急に現れた祈に刺されたのだ。
その重傷で薄れゆく意識の中、ヤミヤミが祈に姿を変えて近づいてきた事を、そして自分達がやっとの思いで倒した鬼灯隊が、ヤミヤミの用意した偽物だった事を痛みの中、知る事が出来た。
詰まる所、自分達はヤミヤミの計画通りに踊らされていたに過ぎなかった。我ながら情けなくなる……。
「兄さん、剥けたよ……」
祈が呼び掛けて来た。陽は我に返り、祈の顔を見る。目元には泣き腫らした跡が残り、余計に痛々しく思える。
事の顛末は祈から聞いた。自分は、ヤミヤミに刺されて重傷を負ったのち、病院に担ぎ込まれたのだ。腹部には縫われたばかりの傷口が鈍く痛む。きっと、自分が怪我をしたと聞かされた祈は心底、悲しんだに違いない。陽は自分の浅はかさを激しく嫌悪した。
これ迄、無傷に済まなかった戦いは一度も無い。だが、その度に祈に辛い思いを強いていた。
「祈……試合は?」
陽の尋ねた言葉に、祈は薄く笑う。
「……私の試合は勝った。でも、兄さんが怪我をしたと聞いて、途中で抜け出して来ちゃった……。瀧さんに、また嫌味を言われちゃうな……」
「…ごめん…」
「兄さんは悪くないよ……でも……怖かった……」
そう言って、祈は陽の胸に額を押し付けた。
「……兄さん……美羽さんの事が好きなの?」
「エッ?」
突然、祈が発した言葉に、陽はキョトンとする。
「……さっき、兄さんが美羽さんと仲良さそうに話していたのを見たの……。その時、凄く……辛かった……‼︎」
絞り出す様な声で祈は言った。肩を震わせ、泣いている様である。
「……兄さんは居なくなる事よりも……兄さんが誰かに取られる事の方が、ずっとずっと……辛いんだから……‼︎」
「えっと…祈?」
困惑しながら、陽は祈を見つめる。すると、祈は顔を上げた。涙に汚れた顔を隠そうとせず、陽の目を見た。
「……好き……私、兄さんが……好きなの……」
突然、放たれた告白に対し、陽は困惑した。祈が、自分を好き? 頭の中がグルグルし、思考が纏まらない。
「僕だって好きだよ、祈は妹なんだし……」
「妹としてじゃ嫌……私達、血は繋がってない……‼︎」
陽の言葉を遮り、長年に渡って抱え込んでいた想いを吐露する。そうまでされて、陽は漸く祈の気持ちに気付いた。
ガオゴールドとして戦う内に、麻痺していた祈への気持ち……そうだった……祈は確かに義妹ではあるが、血は繋がってない……だが……
「……やめろよ、祈……」
「私の事、嫌いなの……? それとも、兄さんにとって私は……ただの妹でしか無い?」
「そうじゃ無い……そうじゃ無いんだ、祈……。だけど、僕は……」
陽は優しく、祈の肩に手を置いた。
「僕は……ガオの戦士なんだ……。今回だって、まかり間違えば命を落としていた……。これが初めてじゃ無い……そして、これからも……」
陽は思い起こす。ガオゴールドとなってから、陽は何回も死ぬ様な目に遭いかけた。その度に、もし自分が死ねば、祈は…? と言う恐怖が付いて回る様になった。
陽にとって、ガオの戦士として戦うのは「大切な人の為に」と言う思いが強い。地球を守る為なら、我が身を投げ出しかねない大神や佐熊とは一線を画す物だ。
大切な人の為に、陽は必ず生きて戻らねばならない……何時からか、そう考える様になっていた。
けど……もう今更、戦いから退く事は出来ない。祈の事は大切だ、だが祈を守るには戦わなければならない、しかし戦い続ければ、また祈を悲しませてしまう……考えれば考える程、頭の中でグルグル絡まってしまうのだ。
どちらが正しいかなんて、分からない。選択肢なんて、何時だって少ないし選んでいる暇も無かった。
気が付いたら、陽は祈を強く抱きしめていた。陽も泣いている。
「……ゴメンな、祈……僕がもっと、しっかりしてれば……お前を悲しませる事なんて無かったのに……‼︎ 兄、失格だよ……」
「…兄さん…‼︎」
陽の腕の中で、祈は泣きじゃくった。思えば、自分が祈に対して恋心を抱き始めたのを知ったのは、中学に上がったばかりの頃だった。あの頃、まだ恋について、まるで理解していなかった陽は、祈をそう言う目で見始めた自分に自己嫌悪を感じていた。その為、祈への気持ちを気づかないフリをして来た。必要以上に兄として振る舞っていたのは、そんな妹への劣情を悟られたくなかったからだった。
だが、その抑え込んでいた気持ちが、この一件でバスタブの栓を抜き水が勢いよく流れ出す様に、止められ無くなった。
「祈……愛してる……」
「私も……」
世間から見れば許されざる関係なのかも知れない。だが、そんな事、知った事では無い。自分が祈を愛し、祈も自分を愛してくれている。
どちらかとも無く、顔を上げるとゆっくり唇を近づけ始めた……。
「陽ァ‼︎ 大丈夫か⁉︎」
突然、病室のドアが開かれた。外には猛、昇、舞花、千鶴が立っており、舞花の手には花束が握られている。
二人は慌てて距離を離した。
「バカ兄貴! ここ病院だよ! ……あれ? なんか話し中だった?」
非常識な態度の兄を叱責しつつ、挙動不審な態度の二人に舞花は尋ねる。祈は慌てふためいた様子で、陽も黙したままである。
「…災難だったな、陽……通り魔に遭うなんて」
昇は話を変えようと、話題を振る。最も、猛と昇は陽の秘密を知っている為、事情は察しているのだが…。
「千鶴、ごめんね……試合中に飛び出して……」
祈は千鶴に謝罪した。しかし、千鶴は笑顔で……
「平気ですよ、先輩! 試合は無事に終わりましたし、先生や部長も気にするなって、言ってましたから」
「瀧さん、怒ってたでしょ?」
恐る恐ると尋ねる。プライドの高い彼女の性格からすれば、自分との試合で勝って直ぐに居なくなった祈に対し、良い感情を抱いているとは思えない。だが、千鶴は首を振る。
「事情を話したら、あっさりしてましたよ。『試合で負けたのは事実だから、勝ち逃げしたなんて思わないで。次は必ず負かすから‼︎』っですって」
如何にも、負けず嫌いな彼女らしい捨て台詞だった。張り詰めた雰囲気だった祈は、プッと吹き出す。
「タカビーな人だと思ってたけど結構、潔い性格なんだね。見直しちゃった」
舞花は素直に、瀧を褒めた。負けた事を逆恨みする狭量な小者では無く、負けは負けと認める正々堂々とした人物だった、と再確認出来た。
「でも先輩‼︎ さっきの格好良かったですよ‼︎ 素敵です〜♡」
「ちょ、千鶴! 此処は病室だってば‼︎」
人前に関わらず、ベタベタと引っ付きたがる千鶴に困惑しながら、祈は引き離そうとする。
「舞花、悪いけど、祈ちゃん達と一緒にジュース買って来てくれ。俺、コーラな」
「は⁉︎ 妹をパシラせる気⁉︎ 自分で行けば!」
「俺も頼む、メロンソーダで」
「う〜〜、昇さんに頼まれたらな〜。しょうがない……行ってくるわよ‼︎」
そう言って、舞花は渋々ながらも立ち上がる。
「ほら、祈も行こう! 陽さんは、何か飲む?」
「あ…僕はいいや…」
「そ。ほらほら、早く‼︎」
舞花は祈と、未だに彼女にくっ付く千鶴を促す。祈は陽の方を少し見たが、千鶴を連れて病室を後にした。
昇が祈達が離れた事を確認すると、再び陽の横に座る。
「……済まないな。祈はともかくとして、舞花や千鶴には知られる訳に行かないだろう?」
「ん……ありがとう、昇……」
陽は親友の機転の良さに感謝した。猛も深刻な顔をしていた。
「ガオレンジャーの戦いで、そうなっちまったのか?」
珍しく声のトーンを落としながら、猛は尋ねてくる。陽は顔を曇らせた。「やっぱり…」と言った具合になった。
「お前さァ……あんま無茶すんなよな? 祈ちゃん、お前が病院に担ぎ込まれたって聞いた時、ぶっ倒れそうになったんだぜ?」
「祈ちゃんからすれば、お前はただ一人の家族だしな……」
「……分かってるよ……けど……」
二人の言葉に、陽は罰が悪そうにした。このまま戦い続ければ、祈をまた不幸にしてしまうかもしれない。だが今更、戦いから逃げられない。
オルグが居続ける限り、自分は戦い続けなくてはならないし、祈もまた平和に暮らす事は出来ない。
「お前が居なくなってみろ。祈ちゃん、一生、立ち直れないぜ?」
「心底、惚れている男だったら、尚更な」
「エッ⁉︎」
陽は驚いた様に二人を見る。二人共、ニヤニヤしていた。
「いやァ、知らなかったぜ! 浮いた話一つ聞かねえ、と思ったら、まさか本命は陽だったとはなァ!」
「ま、人の恋愛に口を挟む事ほど、野暮な事も無いしな…」
「き、聞いてたのか⁉︎」
陽は思わず叫ぶ。よりによって、あんな恥ずかしい一幕を他人に見られていたなんて……。
「おう、一部始終な! お前等が強〜く抱き合って、熱〜いキッスを交わそうとした瞬間までな!」
「余計なお世話かも知れないが、あんな熱烈に抱き合うなら時と場合を考えた方が良い……事情を知らない奴に見られると、面倒だぞ?」
茶化す様に言う猛と、冷静にアドバイスする昇。陽は穴があれば入りたい、と言わんばかりに赤面した。
と、その際、陽のG−ブレスフォンが激しく鳴り始めた。だが、何時もの仲間からの連絡とは違う。
「何だ、それ?」
猛は、陽の右腕に嵌められているブレスフォンを覗き込む。出ようか出るまいか、と悩んでいると昇が……
「出てみたら、どうだ?」
と勧める。陽は意を決して、ブレスフォンを起動させた。途端に、陽は意識を失った様に、ドサリと倒れた。
「お、おい⁉︎ 陽、どうしちまったんだよ⁉︎」
急に気を失った陽に驚いて呼び掛ける。昇も同様だが、陽は目を覚ます素振りは無かった……。
陽は意識を取り戻す。すると何もない真っ白な空間で目を覚ました。
「此処は?」
陽は辺りを見回す。周りは白いペンキをぶちまけた様に真っ白であり、遥か地平線までも白い。
「此処は、君達の暮らす世界から一つ外れた場所に位置する狭間の世界だ……」
聞き慣れた声が耳に入り振り返ると、其処には……
「ガオマスター‼︎」
陽達の仲間である原初の戦士ガオマスターが立っている。
「済まない……病み上がりだと言うのに……」
「気にしないで下さい。ヤミヤミの策謀を見抜けなかった僕の不手際でした……」
「……そうではない……私は君に嘘を吐いた……」
そう言うと、ガオマスターはヘルメットを外す。ヘルメットの下からは、原初の戦士ツクヨミの顔が現れた。
「鬼還りの儀を事前に防ぐ、と言ったが……残念ながら、儀式を防ぐ事は叶わない……既に、布石は盤石に整っている……」
「そ、そんな⁉︎」
陽は絶句した。鬼還りの儀を防ぐ為に死力を尽くしてきたのに最早、手遅れだったなんて……。
もう、地球はオルグの支配下に落ちるしか無いのか…?
「慌てるな、まだ絶望では無い。鬼還りの儀を行えば、直ぐにオルグ達が鬼地獄から這い上がって来る訳では無い……」
「どう言う事ですか?」
「そもそも、人間達の住む地上とオルグ達の棲む鬼地獄との間には、眼には見えぬ壁で隔てられている。その壁がある限り、鬼地獄に居るオルグ達は地上に進出できないのだ。そうでなければ今頃、地上はオルグで溢れかえっているからな」
「た、確かに……」
ツクヨミの説明に、陽は納得した。
「しかし、鬼還りの儀とは……その壁に穴を空けて、地上と鬼地獄を繋ぐトンネルを築く事に、他ならない。
そうすれば、鬼地獄のオルグ達は特殊な手段無しで地上に進出できるのだ」
「じゃあ、そのトンネルが開通すれば……‼︎」
「地上は阿鼻叫喚の地獄と化す。だが元々、閉じている壁に無理に穴を開けるのだから、その穴は完璧な物では無い。オルグ達は開いたトンネルを固定する術を用いる様だが万が一、しくじれば空間同士に再生により、巨大なエネルギーが働き、トンネルは塞がれてしまう……」
陽は理解に難しかったが、少なくとも鬼還りの儀は、オルグ達にとってもハイリスクな物だと分かった。
とは言え……オルグ達の侵入を防ぐ事が出来ないなら、本末転倒では無いのか?
「……奴等の侵入は事前には防げない……ならば、鬼地獄へ我々が出向き、鬼地獄のオルグ達を指揮する者……閻魔オルグ、ヤマラージャを倒すしか方法は無い……」
「‼︎ そうか‼︎ トンネルが開通していると言う事は、僕達が鬼地獄へ乗り込む事も可能なのか‼︎」
「その通り……しかし……」
此処まで話して、ツクヨミは話を切った。
「鬼地獄に巣食うオルグ達は、地上のオルグ達とは桁違いの強者ばかりだ。乗り込めば、先ず無事には済むまい……」
「……覚悟は出来てますよ」
陽は強い瞳を覗かせる。
「ガオレンジャーとなったあの時から……戦い抜く覚悟は出来てます……‼︎」
「その言葉に二言は無いな?」
ガオマスターが言葉を発した瞬間、陽の懐から宝珠が浮かび上がる。すると、陽の周りに飛び交う。
〜陽……。ガオネメシスを……スサノオを倒すには、お前自身が“覚醒”せねばならない……〜
ガオドラゴンの厳かな声だ。続いて……
〜これ迄、貴方は覚醒する機会は幾度とあった……。しかし、貴方自身が戦士として未成熟だった故、そり日に恵まれなかった…〜
ガオユニコーンの優しい声だ。更に……
〜逆に言えば……我々が、お前の力を強引に覚醒させる事は出来た……。しかし、それを行えば、お前自身の精神を破壊してしまい兼ねないのだ……〜
ガオグリフィンの勇ましい声だ。そして……
〜正直……妾は、其方が日輪の戦士となるとは思えん……其方は優し過ぎる……。しかし……妾達は賭けてみたい! 其方こそ、地球をオルグの魔手から守ってくれる、と……〜
そう言って、五体のパワーアニマルの宝珠から五筋の光が放たれた。その光ば、陽の身体に吸収されて行く。
〜さァ、目を覚ますのだ‼︎ 新たなる力を持って‼︎〜
陽の身体に吸い込まれた光は、全身の血流に沿って流れて行き満たされて行く。そうして、陽は再び意識を失った……。
〜ガオマスター、レジェンド・パワーアニマル達に導かれて、新たなる境地へと覚醒しようとする陽。
鬼還りの儀が阻止不可能である、と断じられた今となっては、全ての黒幕である閻魔オルグを倒す他ないが、果たして陽とガオレンジャー達は、オルグ達の侵攻を留める事が出来るのだろうか⁉︎〜