帰ってきた百獣戦隊ガオレンジャー 19YEARS AFTER 伝説を継ぎし者   作:竜の蹄

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またしても、新作の投稿が遅れてしまった事を謝罪します‼︎
体調も、そうですが、仕事が忙しくて……申し訳ありません。

余談ですが、ガオドラゴンの外見はマジドラゴン(ゴーカイジャー仕様)と考えて下さい‼︎


quest48 鬼ヶ島、浮上‼︎

 ガオゴールドが、ヤミヤミとの死闘を繰り広げている最中、病院…。

 祈は病室へと向かっていた。陽へのジュースを買って、彼に会いに戻るのだが……先程の一件が、まだ彼女の頭の中で残っており、どの様な顔をすれば良いか分からない。

 ドサクサに紛れて、陽への思いを告げたが、これまで通りに行くかどうか自信が無い。幾ら、義兄妹とは言え、長年に渡り兄妹として過ごして来た自分達が急に恋人同士にはなれない。

 それは、陽だって同じだろう。けど……もう目を逸らしたく無い。陽の事を自分は愛している、兄としてでは無く一人の男性として……。

 と、気が付くと祈の前に1人の女の子が立っていた。

 

「摩魅…ちゃん…?」

 

 それは摩魅だ。さっきは姿を見せなかったが、何処に居たんだろう? と、祈は尋ねようとする。

 

「祈さん……来て下さい……」

 

 唐突に、祈の腕を掴み歩いていく摩魅。どうも様子の可笑しい摩魅に、祈は怪訝な顔をする。

 

「ちょ、何処にいくの?」

「いいから、早く!」

 

 少し強めな口調で急き立てる摩魅。やはり、何かが変だ。気が付けば、病室とはまるっきり見当違いな方角へと進んでいく摩魅。

 やがて、階段を昇り、幾つか扉を開けると何故か屋上へと来ていた。

 

「先にどうぞ…」

 

 摩魅に促され、祈は黙ったまま屋上に入る。その後に、摩魅も続いた。

 

「……ねェ、摩魅ちゃん……こんな所に連れて来て、どうする気?」

 

 背を向けたままの摩魅に尋ねる祈だが、その際に扉がバキッと音がする。

 

「⁉︎」

 

 何かを壊した様な音に、祈は絶句した。ゆっくり振り返る摩魅の手には、外されたドアノブが握られていた。

 

「…これで、邪魔は入らないわ…」

 

 そう言った摩魅の顔は口角を吊り上げて、笑っていた。彼女らしく無い、不気味な笑みだ。

 身の危険を感じた祈は逃げ出そうとするが……。

 

「駄目ですよォ、逃げたりしちゃァ♡」

 

 いつの間にか、回り込んでいたニーコに塞がれていた。

 

「に…ニーコ‼︎」

「ンフ♡ チャオ、祈ちゃん♡ それより、跪きなさい‼︎ 貴方は今、オルグの支配者の御前にいるのよォ♡」

 

 ニーコがクスクスと笑うと、彼女の横に鬼門が開く。中から出て来たのは、巨大な一本角を携え、背中に翼の如く巨大な掌が二つ生えた大柄なオルグ魔人だった。

 

「此方におわす御方こそ、オルグの頂点に立たれる存在。ハイネス・デューク、テンマ様ですよォ!」

「ハイネス…デューク⁉︎」

 

 ニーコの紹介に対し、テンマはジロリと祈を睨む。その威圧感溢れる視線に、祈は腰が抜けそうになった。

 

「この娘か……巫女の生まれ変わりと言うのは……」

「はァい♡ そして、我がオルグの最大の仇敵にして、四鬼士の三方を死に追いやった怨敵、ガオゴールドこと竜崎陽の妹ですわァ♡」

 

 テンマは、フンと高慢に鼻を鳴らした。

 

「元より、四鬼士の連中など当てにはしておらんわ。所詮、奴等など鬼還りの儀が無事に済むまで、ガオレンジャーの気を引く為の繋ぎに過ぎん……。だが、ヤミヤミは良くやってくれた。お陰で、鬼還りの儀は滞りなく完遂する……。後は、この娘だけだ」

 

 そう言うと、テンマは、祈に近付く。

 

「わ、私をどうする気⁉︎」

 

 オルグの中でも最高位の座に冠するハイネスを前にしても、祈は毅然とした態度を崩さなかった。陽と違い、オルグに関わった事は数少ない彼女だが、彼等が人間と敵対する者である事は重々、承知しているつもりだ。しかし、彼女の様子にテンマは不敵に笑う。

 

「クハハハ! このオルグの王たる余を前にして中々、気丈な娘よ……しかし、貴様の恐怖心は隠し切れて居らんぞ……これから、自分がどうなるか? その先の読めない恐怖に、早鐘の如く心臓が鼓動を上げているのが、此処まで聴こえてくるわ‼︎」

 

 祈の本心に勘付いたテンマは嘲る様に言った。祈は後ずさるが、摩魅が後ろを遮って来る。

 

「摩魅ちゃん、どうして⁉︎」

「その娘は、人の血が敗れオルグの血が勝ったのだ。つまり……我々の忠実な僕となったのだよ‼︎」

 

 勝ち誇るテンマの声に、祈は絶望した。祈は完全に追い詰められてしまった。

 

 

 

 祈の危機を知った陽は、ガオズロックに乗って病院へと向かった。自分が病院から離れた隙を見て、オルグ達の奇襲に来るとは……。

 陽は祈の安否が気掛かりだった。だが、それ以上に……先程のダメージが残っており、立っているのがやっとの状態の陽だった。

 

「陽、大丈夫か⁉︎」

 

 大神は青ざめた表情の陽を見ながら、不安気に尋る。全く、大丈夫では無いが、自分の身体に鞭を打ち…

 

「祈の危機なんだ……行かないと……‼︎」

 

 と、倒れそうになるのを必死で堪えた。美羽は、フラフラの状態の陽を見て、思い切って言った。

 

「陽、さっきの変身は、もう二度とやらない方が良いよ……身体への負担が酷そう……」

「確かにのォ。これ以上、身体を酷使したら、ガオレンジャーに変身出来なくなるぞ?」

 

 美羽に続いて、佐熊も言った。だが、陽は作り笑いを浮かべ…

 

「平気だ…! 早く行かなきゃ…‼︎」

 

 と急かす様だった。しかし、テトムも顔を曇らせた。

 

「(仲間達に不安にさせない様に気丈に振る舞っているけど……陽のここ最近の肉体的ダメージと精神的負担が、余りに著しいわ…! これ以上、限界を無視して戦い続ければ、陽は……‼︎)」 

 

 テトムは一縷の不安が胸中に過ぎる。さっきのヤミヤミと戦闘でも陽は、かなり不安定な戦い方だった。

 自分でも制御し切れない程の力を使い続ければ、必ず破滅する。あの、ツエツエもそうだった。打倒ガオレンジャーの為に、恐竜オルグと言う度の超えた力を持った怪物達を復活させた結果、その力を暴走させて自らの首を締める結末となってしまった。

 もし、陽もそうなったら……そんな不安が、テトムを苛めた。

 

「見えたぞ、病院だ! あ、あれは⁉︎」

 

 大神は指を差す。眼前には、黒煙の立ち昇る病院の姿が見えた。

 

 

 病院の前に降りた時、彼等は目を疑った。オルゲット達が鬼門より湧き出て、逃げ惑う人々に襲い掛かって居た。

 

「な、何だ⁉︎ この騒ぎは⁉︎」

 

 大神も、此処まで大掛かりに起きた事態に声を荒げる。それは、陽も同様だ。まさか、オルグ達が此処までするなんて……病院のホームに入ると、中は更に大変な事態だった。

 

「あ…舞花ちゃん! 千鶴ちゃん!」

 

 気が付くと、オルゲット達に囲まれて身を寄せ合いながら怯えている二人を見つけた陽は駆け出し、オルゲット達を蹴散らした。

 変身してないとは言え、凄まじい気迫を放ちながら突っ込んで来る陽に、オルゲット達は怯み逃げ出した。

 

「二人共‼︎ 大丈夫⁉︎」

 

 屈みながら、舞花達に呼び掛ける陽。見た感じ、目立った怪我はしてない様だ。

 

「わ、私は大丈夫……それより、祈が……‼︎」

 

 舞花は恐怖に耐えながら、陽に事の顛末を告げた。陽は、舞花達を立たせる。

 

「祈は僕が助ける…‼︎ 舞花ちゃん達は、安全な所へ‼︎」

「で、でも……まだ兄貴達が……‼︎」

「舞花ちゃん‼︎」

 

 どうやら、猛達はまだ病院内に居るらしい。心配そうに渋る舞花を叱咤し、テトムに振り返った。

 

「テトム! 舞花ちゃん達を頼むよ‼︎」

「……ええ、分かったわ‼︎ 陽……くれぐれも無茶しないでね……‼︎」

 

 走り去っていく陽達の背に呼び掛けるテトム。陽は振り返り、親指を立ててサムズアップをした。そして再び、祈の下へ向かう陽達。

 

「あ、陽さん……‼︎」

「大丈夫よ……‼︎ 彼は大丈夫だから……‼︎」

 

 テトムは、そう諭しながらも、自身に言い聞かせる様に呟いた。彼女には嫌な予感が拭い去れなかったからだ。

 

 

 

 陽達は病院内を走りながら、辺りを探す。しかし、患者や医師、看護師は大半が避難したらしく、残っているのはオルゲットだけだ。

 佐熊が襲い掛かるオルゲット達を拳で殴り飛ばしながら、道を切り開いていく。と、廊下にもたれ掛かっている人影を見つけた。

 

「昇‼︎ 大丈夫か⁉︎」

 

 昇の姿に陽は絶句した。陽は命に別状はない様だが、左腕を抑えながら苦み走った顔をしている。

 

「怪我してるのか⁉︎」

「……大丈夫だ……ほんの擦り傷だ……‼︎」

「猛は⁉︎」

「……祈を追い掛けて行った……恐らく、屋上だ……‼︎」

 

 昇は屋上へと続く階段を指差す。陽は昇を気に掛けながらも、階段へと走り出す。美羽は屈んで、昇の負傷している左腕に引き裂いたハンカチで応急処置し、大神と佐熊と共陽の後に続く。

 陽は階段を休みなくに駆け上がって行く。疲れも痛みも忘れて、屋上を目指す。祈に万が一の事があったら……と言う焦りから、陽は正常な思考も困難になっていた。

 やがて、屋上へと入るドアが見えて来る。恐らく、あの向こう側に祈が居る筈だ。陽は一人、駆け出そうとしたが……。

 

 

「うわあァァッ!!!!」

 

 

 絶叫と共に、ドアが急に開かれて誰かが投げ出されて来た。見下ろすと、それは猛だった。

 

「猛⁉︎ 大丈夫か⁉︎」

 

 陽は地面に蹲る猛に声を掛ける。猛は頭部から、薄ら血を流しながら陽を見る。 

 

「あ…陽…‼︎ い、祈ちゃんが…‼︎」

 

 絞り出す様に、ドアの向こう側を指差しながら猛は気を失ってしまった。陽は猛を壁にもたれ掛けさせて、開かれたドアを潜り抜ける。

 

 

 ドアの向こう側では、祈が壁際に迄、追い詰められていた。その後ろにはニーコと摩魅が祈を羽交い締めにし、目の前には禍々しい雰囲気を放ったオルグ魔人が迫っている。

 

「や、止めろォォ!!!」

 

 堪らずに、陽は叫んだ。祈は陽の姿に気付き……

 

「兄さん‼︎ 逃げて‼︎」

 

 と、陽の安全を確保すべく叫ぶ。すると、目の前に居たオルグ魔人は振り返る。

 

「次から次へと邪魔者ばかり……小賢しい……‼︎」

 

 オルグ魔人は苛立ちを露わにしながら、陽を睨み付ける。明らかに、これ迄に見てきたオルグとは違う。

 

「お前は⁉︎」

「ほう……貴様が、ガオゴールドか……。我々の計画を度々と邪魔してくれた、小煩い羽虫めが……‼︎

 余の名前は、テンマ。現在に生きる唯一のハイネス・デュークにして、オルグ族の頂点に立つ者だ!」

 

 テンマは高々に名乗りあげる。と、同時に祈を拘束する摩魅の姿を見て、陽は目を疑った。

 

「ま、摩魅ちゃん⁉︎ 何で、祈を⁉︎」

 

 オルグ達から裏切り者のレッテルを貼られて居る筈の摩魅が、どうして? 陽の情報が追い付かない。すると、同じく祈を捕まえていたニーコをクスクスと嗤う。

 

「摩魅ちゃんはァ、今や立派なオルグと化したのですよォ? 本人だって本望でしょ? 人にもオルグにもなれない半端な混血鬼が、名実共にオルグとなれたのですからァ♡」

「き、貴様等ァ…‼︎」

 

 陽は、はらわたが煮え繰り返りそうな程に怒りを滾らせる。彼女が、オルグの血を引くが故に、どれ程に苦しんで生きてきたか知らない筈がないのに、こんな非道い真似を、よくも……。

 その時、陽に遅れて飛び込んで来た大神、佐熊、美羽も、テンマの姿に身構える。

 

「テンマ、貴様……‼︎」

「ほう? 天空島にて狩り損ねた、負け犬では無いか? 仲間達に背を向け、オメオメと生き延びたか……」

 

 テンマは大神に侮蔑の言葉を吐き捨てた。大神は、かつての負け戦の屈辱を思い出し、苦い顔を浮かべる。

 

「コイツが、テンマか……なんと、禍々しい奴じゃ‼︎」

「この男の為に、岳叔父さんは……‼︎」

 

 佐熊は初めて対峙したハイネスを警戒し、美羽は叔父である岳を倒し、封印した仇とも言える彼に敵意を露わにした。

 

「なんの理由があって、此処を襲った‼︎」

 

 陽は、怒りに任せてテンマに怒鳴る。しかし、当のテンマは涼しげに笑った。

 

「理由なら、ある。貴様等が邪魔立てしなければ、鬼還りの儀はもっと早く完遂していたのだ……。これは、余の計画を狂わせてくれた礼だ」

「だったら、僕達を狙えば良いじゃ無いか‼︎ 無関係の人達を巻き込むなんて……‼︎」

 

 この病院を襲撃した為、祈だけでなく、猛や昇、舞花や千鶴、病院に居た人達全員が巻き込まれる結果となったのだ。それだけは、陽は決して許せないのだ。自分にとって、大切な人達を的に掛けて来る様な卑劣なやり方は…。

 

「これは洗礼だ。鬼還りの儀を行う為のな……そして、これ迄の貴様等に対する見せしめでもある…」

「何だと……⁉︎」

「こんな物は小手調べ……間も無く、鬼還りの儀が行われると同時に、鬼地獄から何千何万と言うオルグ達が這い上がって来る。

 締めには、オルグにとって憎むべき原初の巫女の血を引きし生娘の血を大地に流す……此処に、鬼還りの儀は完了とする!

 そして……地上は我々、オルグの君臨する世界となるのだ‼︎」

「そんな事……させるものか‼︎」

 

 テンマの発した狂気の計画に、陽は激怒した。許さない、この男だけは……‼︎

 

「だったら、止めてやるさ‼︎ それが僕達、ガオレンジャーの使命だ‼︎」

「クハハハ…‼︎ 止めてやる、とな? ならば、止めて見せよ‼︎ この、ハイネス・デューク、テンマの力を見て同じ事が言えるのならな‼︎」

 

 そう叫んだテンマの背面にある巨大な二つの掌が展開した。すると、二つの掌は分離したかと思えば、真ん中に巨大な眼球が出現した。

 そして、テンマの右手には禍々しい気を発する大剣が握られている。

 

「これは『修羅怨鬼剣』‼︎ 貴様等に殺されたオルグ達、ひいては歴代の全オルグの怨念が込められている。当然、ゴーゴ、ヒヤータ、ヤミヤミの怨念もな。この剣に余が力を込めれば、万物を腐らせる邪気を垂れ流す‼︎」

 

 そう言った通り、修羅怨鬼剣から濃密な邪気が放たれた。すると、コンクリートの壁に亀裂が生じ、下に生い茂る木々が枯れて行った。

 

「そして余が振るえば、放たれた斬撃は立ちはだかる物を全て破壊する‼︎」

 

 続けて、テンマが修羅怨鬼剣を縦に振り下ろした途端、ドス黒い斬撃が光線の様にして放たれ、軌道を残しながら陽達の横を擦り抜けた。

 その斬撃は貯水槽に直撃し、タンクを真っ二つに切断した。吹き上がる水しぶきが、陽達を濡らす。

 

「これが、余と貴様等の間に存在する差……この世の全てに君臨するに相応しき力だ‼︎」

 

 圧倒的な力を見せつけ、テンマは勝ち誇る。陽は左頬に痛みを感じ、手で押さえると、頬はパックリと裂けて血が溢れ出ている。

 掠っただけで、この威力だ。あんな技を、まともに受けよう物なら一溜りも無いだろう。

 この時、陽は自身の掌が震えている事に気付く。恐ろしい……目の前に居るオルグに、陽は恐怖を抱いていた。

 四鬼士、恐竜オルグと言った多種多様な強敵達と刃を交えて来た陽だが、このテンマだけは違う。勝てる、勝てない云々では無く、次元が違い過ぎる……メランやガオネメシスの様な実力を出し切っていない故の底の知れなさとは更に違う、テンマの力は青天井の様にさえ錯覚してしまう。だが、ニーコに捕まる祈の姿を見た陽は、折れそうになっている自身の心に喝を入れた。

 自分が逃げれば、倒れれば、祈を守る事が出来ない。勇気を振り絞った陽は、G -ブレスフォンに手を伸ばす。  

 

「ガオアクセス‼︎」

 

 光が収まり、ガオゴールド・レインボーに変身する。ガオシルバー、ガオグレー、ガオプラチナも援護に入る。

 新たに身に付けた変身と技で、テンマの修羅怨鬼剣にソルサモナードラグーンを打ち付けるゴールド。

 しかし、テンマの力の方が上で押し負けそうになってしまう。

 

「ガオハスラーロッド、スナイパーモード‼︎」

「フェニックス・アロー‼︎」

 

 ガオシルバーとプラチナの二名が、旗色の悪いゴールドを助けるべく遠距離より射撃してきた。しかし、二人の放った光弾と光矢は、宙を浮く巨大な掌の握り拳で叩き消されてしまう。

 

「うつけが! そんな子供騙しで、このテンマを倒せるか‼︎」

 

 すると、掌は大きく開いたかと思えば中央の眼球が見開かれた。眼球から緑色の血の涙を流し始め、次の瞬間、仄暗い緑色の光線が放たれた。

 ガオシルバー、ガオプラチナは諸に受けて吹き飛ばされてしまう。

 

「シルバー、プラチナ‼︎」

「他人の心配をしている場合か?」

 

 ゴールドは、吹き飛ばされた二人を気遣うが、目の前のテンマがそれを許してくれない。修羅怨鬼剣を押し付け、ゴールドをジリジリと追い詰めようとする。

 

「ゴールド! あまり、調子に乗るなよ‼︎」

 

 ガオグレーは、グリズリーハンマーを振り回しながら、テンマに特攻を仕掛ける。だが、もう片方の掌がグレーを背後より握り締めた。

 

「ヌゥ⁉︎」

 

 グレーは抵抗したが、掌は万力込めてグレーを絞め殺そうとした。彼の全身から、ギシギシと嫌な音がする。

 

「…フフフ…掌の分際で、ワシに力比べを仕掛けるとは……上等じゃ‼︎」

 

 不敵に笑うと、グレーは力を込めて掌に開かせようと試みた。拳は徐々に開かれて行くが……

 突如、もう片方の掌が人差し指で、グレーの腹部を刺し貫いた。

 

「グフっ⁉︎」

 

 不意を突かれたグレーは、指を抜かれた後、その場に崩れ落ちた。この短時間で、ガオゴールド以外の戦士が全滅する事態となり、祈は我が目を疑った。

 

「そ、そんな…⁉︎」

「ンフフ‼︎ 流石のガオレンジャーも、テンマ様の前には形無しですわねェ⁉︎」

 

 ニーコは勝ち誇った様に笑う。

 

 

 

「諦めよ、ガオゴールド‼︎ 貴様の仲間は、誰も居なくなった‼︎」

 

 テンマは、倒れて行ったガオシルバー達を指し、嘲る。何時しか、戦いは天空島で、ガオレッド達の戦いを彷彿する物となっていた。

 全身を斬り裂かれながらも、ヤミヤミとの戦いで身体が疲弊し切っていたが、ガオゴールドは倒れなかった。此処で自分が倒れる訳には行かない……そんな意地が、湧き上がって来る。

 と、その際、空から鬼門が現れ出現する巨大な影……。

 

「あれは、ガオインフェルノ⁉︎」

 

 その姿を現したのは、かつてガオネメシスの尖兵として現れ、圧倒的な力でガオハンターを叩き伏せた悪の精霊王にして、冥府の王ガオインフェルノだった。一度、倒した筈だが、またしても蘇ったのか?

 いや、それ以前に奴が此処にいると言う事は……‼︎

 

「フフフ……ガオネメシスの有無を案じているなら、心配無用だ……奴は、此処には居ない。あれは、余の命令で召喚されたのだ‼︎」

 

 テンマがそう言った刹那、ガオインフェルノはムンガンドセイバーを振り回して暴れ始めた。テンマだけでなく、ガオインフェルノと二重に相手をしなくてはならないのか……と、その時、ガオゴールドから宝珠が飛び出して、ガオインフェルノの前にガオパラディンが立ちはだかった。其れに呼応し、ガオハンター、ガオビルダーも参戦する。

 

「ガオパラディン⁉︎ 何を⁉︎」

 

 〜此奴は、我々が食い止める‼︎ お前は、テンマを倒すのだ‼︎〜

 

 ガオドラゴンの声だ。パワーアニマル達も自発的に助けて暮れているんだ。だったら、その気持ちに応えないと‼︎

 ガオゴールドはソルサモナードラグーンから光の刃を出現させて、テンマに向かって走り出した。

 

「地球の命を弄んだ報いを受けろ‼︎ 虹陽…竜剣‼︎」

 

 飛び上がりながら、虹色に輝く斬撃を繰り出す。虹の刃はテンマの胴体を真っ二つに分けた。

 バランスを崩したテンマは、そのまま倒れて行った。

 

「…やった‼︎ ハイネスを倒した‼︎」

「うつけめ……貴様の目は節穴か?」

 

 テンマの声がした。ガオゴールドは慌てて見ると、真っ二つに倒れるテンマの姿は跡形もなく消えていた。

 代わりに、元の状態のテンマがピンピンしていた。

 

「そ、そんな⁉︎」

「貴様如きに倒される余では無いわ‼︎」

 

 テンマの底知れぬ強さに、ガオゴールドは絶句する。

 その時、ガオパラディン達も危機に立たされていた。ガオインフェルノの侵攻を止める為、三体の精霊王は決死に挑んだが、パワーアップしたガオパラディンでさえ、ガオインフェルノの敵では無かった。

 やはり、自分達が搭乗しないと駄目なのか……悔しげに唸る。

 

「これで分かっただろう? 貴様では何も倒せぬし、何一つ守れぬ。妹一人も満足に守れない様で、地球を守るだと? 笑わせるな‼︎」

 

 テンマの侮蔑と嘲りの言葉が響く。ガオゴールドは我を忘れて、テンマへと斬りかかった。最早、作戦も段取りも無い。テンマを倒せさえすれば……その思いだけで、テンマを斬り続けた。

 しかし、その刃が、テンマに届く事はない。まるで、刃がどう来るか分かっているかの様に、受け流されてしまうからだ。

 

「まだ抗うか、諦めの悪い男よ……。貴様に教えてやろう……正義だの悪だのと、建前を並べ立てる様な奴は小物に過ぎん。ガオレンジャーの真似事をして正義の味方ごっこをしているだけの貴様も然り……仮染めの正義など、真の強者の前には紙屑以下だ…!」

 

 真っ向から、自身の生き方を否定されたガオゴールドはマスクの下で苦い顔を浮かべる。自分が、ガオレンジャーの真似事をしているだけの小物? それだけは聞き流せない。少なくとも、今まで戦ってきた中で、一度も生半可な覚悟で戦ったつもりは無い。

 

「僕の力を……見縊るな……‼︎」

「無駄だと言うのが分からんか‼︎」

 

 尚も食い下がらんとするガオゴールドに、遂に怒髪天を突いたテンマは激怒の表情を見せて、ゴールドの腹部を修羅怨鬼剣で薙ぎ払った。

 その余波で、ガオスーツはボロボロに破れ、マスクも半壊した。

 

「貴様と言い、ガオレッドと言い、勝てる見込みの無い敵に命を投げ打ってまで戦いに身を投ずる、人間の心理を疑う……。恐怖から逃げ出すも良し、首部を垂れて従属するも良しにも関わらず、自らを死に追いやるとはな……」

 

「……それが分からないのは、お前はオルグだからだ……‼︎」

 

 ガオゴールドは絞り出す様な声を出した。テンマは、意味不明と言った感じで傾聴した。

 

「……例え、勝ち目の無い敵だとしても……自分が死ぬかも知れないと分かっていても……後ろに傷付いて欲しくない人が居れば、命に変えても守り抜きたい人が居れば……人間は戦えるんだ‼︎ 壊す事しか知らない、お前達には絶対に理解出来ないだろうがな…‼︎」

「……呆れ果てた奴よ……貴様は、他人の為に死ねると言うのか? 愚の極みだ……。だが……それが貴様の矜恃と言うならば、仕方あるまい……。来い、ガオの戦士よ……せめて最後は、戦士として死なせてやる……‼︎」

 

 相入れないながらも、ガオゴールドの『諦めない闘志』にある種の感銘を受けたテンマは修羅怨鬼剣を両手に構える。

 更に分離した両掌が、テンマの背後に降り立った。

 これが最後……ヤミヤミとの戦いで傷付き、今日だけで二度も肉体を酷使した以上、次は保たないだろう。だが、ガオゴールドはソルサモナードラグーンに、ありったけのガオソウルを込め、走った。

 

「竜の剣よ……光を呼べ……! 虹陽……竜剣!!!」

 

 再び、ソルサモナードラグーンに力が宿る。すると、ガオソウルを装填した光の刃は肥大化し、遂には天に届かん程に伸びた。

 

「こ、これは⁉︎」

 

 流石のテンマも驚愕した。脆弱な人間と見下した者が、死に瀕した時に見せる力……振り下ろされた光の刃は虹を描きながら、テンマに直撃した。光が、包み込んで行く。

 やがて、光が晴れると……其処には変身の解けた陽の姿があった。

 

「に、兄さァァァん!!!」

 

 祈は、あらん限りの声で叫んだ。

 

「……い、祈……‼︎」

 

 最後に妹の名を言い残した陽は、その場に倒れ力尽きた。

 

「……見事……この、テンマをここ迄に追い込むとはな……」

 

 陽の目の前には、ほぼ無傷のテンマの姿があった。しかし、片方の掌は破壊され、煙となって消失した。

 

「しかし、これが限界だ……だが、このテンマと渡り合った事は敬意を表しよう……貴様は、人間として上出来だ……‼︎」

 

 それは、オルグでありながらも、陽の力を彼なりに評価した結果に送る賛辞だった。だが、ガオゴールドの全てを賭けた力は、テンマに届くには至らなかった。

 

「テンマ様ァ♡ 準備が整いましたわァ♡」

「うむ……こちらも用件は済んだ……。これより鬼ヶ島に帰還する……‼︎」

 

 そう言って、テンマは鬼門を作り出した。

 

「その娘を連れて来い……まだ、やって貰わねば、ならない事があるでな……。ガオインフェルノ、消えよ‼︎」

 

 テンマが号令を下すと、三人の精霊王が対峙していたガオインフェルノは消失した。元より、ガオパラディン達の足止め用に連れて来ただけらしく、インフェルノ自身も本気を出していなかった様だ。

 

「兄さん、兄さァァァん‼︎」

 

 陽の下へ駆け寄ろうとする祈だが、ニーコは彼女の口元を押さえ込む。すると、祈はぐったりとした。

 

「おやすみなさァい、眠り姫ちゃん♡ さ、帰りましょう?」

 

 そう言って、ニーコは歩き出す。摩魅も、祈を抱えたまま続いた。

 

「……テメェ、祈ちゃんを離せ……」

 

 ふと声がすると、階段を這い上がって来た猛が、近付いて来た。しかし、テンマは……

 

「ゴミに興味は無い……消えよ……」

 

 と、だけ吐き捨てた。そして、鬼門の中へと消えて行く。最後に摩魅が通ると、鬼門は完全に消失した。

 

「……陽……‼︎」

 

 崩れ落ちた猛は意識を失った陽を呼び掛けるが、そのまま自分も気を失ってしまった。

 

 

 

 鬼ヶ島に帰還した、テンマは玉座に居た。其処には、ニーコとガオネメシスが居た。

 

「フン……どうやら、ガオレンジャーは全滅したか……だが、人に断りなく、ガオインフェルノを使うとは……」

 

 自身の相棒を勝手に使われた事に、ネメシスは苛立っていた。

 

「貴様とて、余に断りなく勝手に動いていたでは無いか? お互い様だ……‼︎」

「チッ…‼︎」

 

 ネメシスは舌打ちをした。すると、ニーコがテンマを見た。

 

「テンマ様、何時でも行けますわよォ‼︎」

 

 何処か、テンション高めのニーコに対し、テンマは嗤う。

 

「時は満ちた……これより、鬼還りの儀を執り行なう‼︎ 浮上せよ、鬼ヶ島‼︎」

 

 テンマの掛け声で、鬼ヶ島全体が揺れ動く。すると島は突然、浮かび上がる。外部の岩が崩れ落ちた、城壁に似た造りを見せた。

 鬼の顔を模した岩も崩れ、まるで砦の様だ。島全体が、まるで戦艦に似た姿へと変形する。

 

「天空城塞オルグリウム! 発進‼︎」

 

 鬼ヶ島改め、天空城塞オルグリウムは空高々と浮上して行った……。

 

 

 〜姿を現したテンマの力に敗北したガオレンジャー達。そして、鬼還りの儀執行と共に、鬼ヶ島は天空城塞オルグリウムと真の姿を現したました‼︎ 地球の未来は、どうなるのでしょう⁉︎〜

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