帰ってきた百獣戦隊ガオレンジャー 19YEARS AFTER 伝説を継ぎし者   作:竜の蹄

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quest5 怒れる幻獣

 戦いを終えた後、陽は大神と共にガオズロックへ帰還した。戦う事を了承したとは言え、陽はまだ何も知らない……ガオレンジャーの事を、パワーアニマルの事を、オルグの事を……。

 

「お疲れ様、上々の戦いぶりだったわよ」

 

 戻った際に、テトムから賞賛を受けた。だが、褒められても素直に喜べない陽だった。

 

「……正直、勝てたと言うか……」

「言いたい事は分かるわ。でも、貴方の活躍でオルグを退けたのは事実よ」

「……かなり、ギリギリだったがな……」

 

 テトムに反し、大神は相変わらず素っ気無い口調だ。だが、陽の事は以前に比べ認めた感じはあった。

 

「…闘ってくれる決意をしてくれたのね…」

 

 テトムは嬉しそうに微笑む。しかし、陽には腑に落ちない点がある……。

 

「……あのパワーアニマルは……味方じゃ無いんですか……?」

 

 陽の質問は、自分達の前に現れながら、オルグごと、ガオシルバーを倒そうとしたパワーアニマル達の事だった。彼等は味方の筈の、ガオシルバーさえに敵意を見せ、あまつさえ、最後には自分にも明確な怒りを見せた。彼等の意図が読めない。テトムは顔を俯かせる。

 

「…ごめんなさい…私も彼等の事はよく知らないの…。全てのパワーアニマルは、封印されて生き残りは居ない、と考えていたから…」

「…そう…ですか…」

 

 テトムさえも知り得ない情報…なら、知る事は不可能だろう。そう陽が諦めた時、大神が口を開く。

 

「……奴等は、俺がオルグに攻撃しようとした時、明確に敵意を向けてきた…。『手を出すな、余計な真似をするな』…と言った具合にな…」

 

 大神の言葉を察するに、彼等が自分達の味方とは言い難い。だが、陽は左腕のG−ブレスフォンを見せた。

 

「……僕が初めて、ガオゴールドに変身した時……巨大化したオルグから僕を守ってくれたのは、彼等だった。恐らく、これも彼等が僕にくれたんだと思う……」

 

 陽の言葉に、テトムは何かを思い出そうとしている様子だ。大神は、様子がおかしいテトムを見る。

 

「……どうしたんだ、テトム?」

「ちょっと待って。何か思い出しそうなの……竜の姿をしたパワーアニマル……ずっと昔に、聞いた覚えが……」

 

 テトムは必死に考えるが中々、出てこない様子だった。無理もない。テトムは普通の人間を遥かに上回る年月を生きている為、彼女の言う昔に聞いた話は遥か大昔の話なのだ。

 

「ごめんなさい、今日の所は帰って。何かあったら、こっちから連絡するわ。シロガネのG−ブレスフォンと貴方のなら、すぐに繋がるから」

 

 それを聞くと陽は、ドッと疲れが押し寄せて来た。昨日の今日だけで、疲労は積もりに積もっていた。こんな事じゃ、またしても祈に心配を掛けてしまう……その時、陽の頭の中で祈の顔が浮かぶ……。

 

 

「大変だ‼︎ 祈の事、すっかり忘れてた‼︎」

 

 

 オルグとの戦いで大切な事を忘れてしまってた。祈に家で寝ている様に言われていたのだ。もし、祈が帰って姿の居ない自分に気付いたら……。陽は、スクッと立ち上がる。

 

「すいません! 僕、帰ります!」

「ちょっと待ちなさい!」

 

 走り去ろうとする陽に、テトムが厳しい面持ちで立っていた。

 

「……分かっていると思うけど、貴方がガオレンジャーである事は秘密よ! 貴方の妹にもよ‼︎」

 

「人間には、オルグやガオレンジャーの秘密を嗅ぎ付けられて、面倒な事になる事もある。妹を、そういった事に巻き込みたくないなら、秘密にしておけ」

 

 陽は2人の言葉を受け万が一、自分の正体が周囲に知れれば、祈だけで無く、大切な人間全てを巻き込む事態になり兼ねない。陽は理解し、深く頷いた。

 

「……分かっています……」

 

 陽は否応も無く理解するしか無い。もう自分は今迄の様な日常は送れない。戦いに生きる、まかり間違えば死ぬ。そんな非日常の世界に足を踏み入れてしまったのだ……。

 

 

 

「ハァァ〜〜〜……」

 

 街外れの廃工場内……ヤバイバは大きな溜息を吐いた。

 

「ヤバイバ、何を溜息なんか……」

 

 隣に座るツエツエも、そう言いながら浮かない顔だ。

 

「ツエツエ……俺たちゃ、このままじゃ、鬼ヶ島に帰れんぜ……」

「そんな事、言われなくとも分かってるわよ…」

 

 ツエツエだって、かなり自分達がマズイ状況に陥っている事は分かっている。2度目は無い、とテンマに釘を刺されたのも束の間、いきなり2度目の敗北を喫してしまったのだ。はっきり言って最悪だ。

 

「テンマ様は、おかっねェからな……。このまま、ノコノコ帰って行ったら、俺達は……また怒鳴られるな」

「怒鳴られるなら、まだマシよ。あの方は、シュテン様やウラ様、ラセツ様の様に甘く無いわ。何とか結果を出さないと……」

 

 

『ハァァァァ……』

 

 

 今度は2人揃って溜息を吐く。その姿は、さながら哀愁漂う中間管理職、と言った感じだ。

 

 

「……クスクス、大のオルグが溜息なんて付いちゃってまァ……」

 

 闇から響く声に、ツエツエ達は振り返る。闇からツカツカと歩いて来たのは、ゴスロリ調のメイド服を着た少女だった。頭にオルグの証たる角が生えている為、彼女も、オルグの様だ。

 

「ニーコ……」

 

 ツエツエは心底から嫌そうに、彼女を見た。ニーコは、小馬鹿にした様な顔で笑う。

 

「あ〜〜んまり、嫌そうな顔しないでよ。私達は仲間なんだから。い・ち・お・う♡」

 

「そのネチっこい喋り方を止めろって言ってんのよ‼︎」

 

 ツエツエが熱り立ちながら、ニーコを睨み付ける。だが、ニーコはクスクスと笑うだけだ。

 

「やだ怖〜い。やーね、ツエツエちゃん、怒ってばかり居ると顔が小ジワだらけになるわよ?」

 

「……んですって〜〜‼︎」

 

 完全に、おちょくりまくった態度に、ツエツエは我慢ならなくなり、ニーコに掴みかかろうとするが、ヤバイバが羽交締めにして止めた。

 

「離して、ヤバイバ‼︎ あの小娘を八つ裂きにしなきゃ気が済まない‼︎」

 

「落ち着け、ツエツエ‼︎ ニーコ、お前、俺達にそんな事言う為に来たのか⁉︎」

 

「まっさか〜。私、そんなに暇じゃ無いもん。テンマ様からの言伝を預かって来たのよ?」

 

 ヤバイバの言葉に、幾分か落ち着きを取り戻したツエツエはキッと、ニーコを睨み付けつつも話を聞く態勢に入った。

 

「テンマ様から言伝です。ガオゴールド、ガオシルバーの首を取るまで鬼ヶ島に帰って来る事を禁ずる、ですって♩」

 

「な、なによそれ……」

 

「あと追伸。『貴様等、無能共の顔なんか当分、見たく無いから鬼ヶ島に帰って来るな、バ〜〜カ』ですって♡」

 

 ダメ出しで締めくくられ、またしても、ツエツエは怒り出すが、既にニーコは姿を消していた。

 

「……ヤバイバ、さっさとガオレンジャー倒すわよ」

 

「つ、ツエツエさん?」

 

 様子のおかしいツエツエに違和感を感じるヤバイバ。すると其処には、ハイネスも裸足で逃げ出す位に激怒したツエツエが居た。

 

「このまま、バカにされたままで良い訳無いでしょ‼︎ ガオレンジャーの首を持って帰って、あの小娘を見返してくれるわァァァ‼︎」

 

「お……おう……」

 

 付き合いの長い相棒に火が付いた事に、ヤバイバは黙って付き従う事にした。こうなったら手が付けられない事は知っているからだ。ヤバイバは1人、気苦労を背負い込む事となった。

 

 

 陽は家に慌てて帰ると、いつの間にか夕方になっていた。携帯を持って出るのを忘れた為、連絡が出来ない。まだ祈が帰っていない事を願いながら、陽は玄関のドアを開けた。

 

 

「お帰りなさい……兄さん……」

 

 

 玄関先では、顔を恐ろしい迄に笑顔にした祈が立っていた。周りにはユラユラと黒いオーラが立ち昇っている。

 

「あ……ただいま……」

 

 陽は、頭の中でマズイと警報が鳴っているのを感じた。だが既に遅かった。

 

 

「大人しく寝ててって言ったのに……何処へ行ってたの‼︎」

 

 

 その後は祈の特大級の雷が落ちた。家に帰ってみれば、ベッドは空っぽだし、携帯は置きっ放しで連絡は付かないし、知り合いに電話を掛けても来てないと言われ、近所迷惑も顧みずに怒鳴られる有様となった。

 それから数時間、祈の機嫌を直す事に陽は苦心するが、祈は一切、弁解を聞いてくれない。かと言って、さっき、祈達を助けに入った、等と言える訳も無く、陽は思いつくままの言い訳を使うが、すっかり、へそを曲げた祈は、プイッとそっぽを向いたまま、一言も口を利いてくれない。夕食を終えた後、無言のまま食器を洗う祈に陽は居た堪れなくなって、食器を下げつつ話し掛けた。

 

「い、祈?」

 

 恐る恐る、祈に話し掛けた陽に対し祈は仏頂面で「何?」と返して来た。

 

「えっと……ゴメン……」

 

「何に対して?」

 

 まだ怒っている様子の祈は、冷ややかに言った。長い付き合いだが、こう言う時の祈は取り付く島はない。

 

「……心配掛けて……ゴメン……」

 

 悪戯をした子供が母親に謝る様に、ボソボソと喋る。そうして、やっと祈はキッと、こちらを見た。

 

「当たり前でしょ⁉︎ どれだけ心配したと思ったの⁉︎」

 

 食器を洗う手を止め、祈は詰め寄ってきた。

 

「兄さんに、もしもの事があったらどうしようって私、怖くて……辛くて……そんな私の事、考えたの?」

 

 気が付けば祈の瞳から、ポロポロと涙が溢れていた。たった1人、残った肉親にして大切な人……祈からすれば、兄が自分の目の前から去られるのは身を裂かれるより辛い事だ。

 

「お願いだから……私を一人ぼっちにしないでよ……」

 

 祈は陽の胸に飛び込み、咽び泣いた。陽は子供の様に泣きじゃくる妹の頭を優しく撫でた。

 何時からだろう? 祈が大人の真似をし始めたのは……。両親を揃って亡くし悲観に暮れていた、あの葬儀の日……まだ小学生だった祈は小さく弱々しかった。親戚達が揃って自分達が2人を引き取ろう、と言い合う姿……。中学生だった陽は、そんな大人達を心底から嫌悪した。皆、自分達の事など欠片も心配してない。両親が遺した莫大な遺産が目当てなんだ……子供ながらに、そう感じた。醜い争いを続ける大人達を尻目に陽は誓った。

 

 

「僕が、祈を護る」

 

 

 大人達の決めた事に従って、祈を悲しませるなんてゴメンだ。昔見た映画にも幼い兄妹が身を寄せ合いながら、逞しく生きようとしていた。あの映画の結末で、幼い兄妹は悲劇的な最期を迎えたが、自分はそうならない。そうなって堪るか‼︎

 陽は祈を抱き寄せ、親戚達に啖呵を切ったのを覚えてる。

 

「僕が祈を護ります‼︎ 貴方達の世話にはなりません‼︎」

 

 あの後も親戚達は懲りずに、自分達の世話を焼いてこようとする。貴方達は、まだ子供なんだから……大人を頼りなさい、なんて取って付けた様な常套句を立て並べて……。

 

 そんな自分の姿を見ていたからか、祈は少し背伸びを始めた。気が付けば、祈が料理を作り始めた。友達と遊びたい時間を惜しみもせずに、家事に費やしてくれた。だから、陽は高校進学と同時にバイトを始めた。少しでも祈の負担を無くしたかったから……。

 

「祈……僕は何処にも行かないよ」

 

「……本当?」

 

 胸に埋めて泣いていた祈は顔を上げる。綺麗な顔は涙で、ぐしゃぐしゃだ。陽は祈を強く抱き締めた。

 

「……僕が祈に嘘なんか吐いた事あるか?」

 

「……今日、嘘吐いた……」

 

 少し不貞腐れた様に、祈は言う。ああ、そうだ。嘘を吐いた。そして、これからも嘘を吐かなくちゃならない。

 

「約束する……。例え、どんな事があっても祈を護るから……」

 

 それだけ言うと、陽は祈に背を向け部屋に向かった。祈は兄の背に向かい声を掛ける。

 

「兄さん……」

 

「どうした?」

 

 陽は振り返る。祈は兄の顔を見ながらも悩んだ。朝にあった事を話そうかと……。自分を助けた金色の戦士が兄なんじゃ無いか、と……。

 

「……ううん。何でも無い……おやすみなさい」

 

「? 何だよ、変な奴だな。おやすみ」

 

 結果、祈は黙っておく事にした。もし聞いてしまったら、陽は永遠に居なくなってしまう様な気がした。

 部屋の中に消えていく兄の姿を見つめながら、あの出来事は自分の胸の中に仕舞っておこうと決めた。それで、兄と自分のいつも通りの日常があるなら、それで良いじゃないか、と言い聞かせて……。

 

 

 部屋の中で陽は長い事、途方に暮れていた。妹を騙さなくてはならないと言う罪悪感と自己嫌悪……本当の事を祈に打ち明けてしまいたい……だが、真実を知れば祈は自分を拒絶するんじゃ無いか? そんな恐怖が、陽の口を閉ざしてしまう。でも……これから、祈に隠れて戦い続けなければならないのか? オルグが居なくなるまで? 左腕に嵌められたG−ブレスフォンが、手枷の様に思えて来る。ガオレンジャーと言う囚人に隷従される自分……乾いた笑いが込み上げて来るのを感じた。

 

「祈を……護る為……か」

 

 ガオレンジャーとして戦う決意をしたのは、偏に祈を護る為だった。今更、後悔したって仕方が無い。

 その際、左腕のG−ブレスフォンが唸り始めた。

 

「はい…」

 

『ゴールド‼︎ オルグが現れたわ‼︎ 直ぐに現場に急行して‼︎』

 

 G−ブレスフォンから聞こえて来るテトムの声……もう、悩んでいる暇は無い。意を決した陽は窓を開けて飛び出した。

 

 

 

「さァ、壊すのよ‼︎ 壊しまくるのよ、オルゲット達‼︎」

 

「ゲットゲット‼︎ オルゲットゲット‼︎」

 

 夜の中で、ツエツエの命令に従い暴れ回るオルゲット。目に映る車や器物を次々に破壊して行く。

 彼等の目的は、ガオレンジャーを誘き寄せる事……。これだけ派手にやれば、間違い無く現れる。ツエツエには確信があった。

 

「コラ、貴様等‼︎ 何をしている⁉︎」

 

 騒ぎを聞きつけて、やって来たのは警官だった。銃を構えながら、ツエツエ達を威嚇する。

 

「今すぐ凶器を捨てろ‼︎ 捨てたら大人しく……」

 

「お呼びじゃねェんだよ‼︎」

 

 警官の背後から、ヤバイバが忍び寄り殴り付ける。彼等は、ガオレンジャーを倒す事。唯の人間なぞ、この際、どうでも良い。

 

 

「其処までだ‼︎」

 

 

 暴れ回るオルグ達の前に、陽と大神が駆け付けた。ツエツエはニヤリと笑う。

 

「待ってたわよ、ガオレンジャー‼︎ 出番よ、ジッポオルグ‼︎」

 

 ツエツエが号令を掛けると、後ろから現れるオルグ魔人。身体が、ジッポライターを模した鬼。キャップが開くと、炎に覆われた顔と角が露わになる。

 

「さァ、ジッポオルグ‼︎ ガオレンジャー達を火達磨にしてお仕舞い‼︎」

 

「カッカッカッカ〜‼︎」

 

 ジッポオルグが口をカッカッと開くと火が上がる。陽、大神はG−ブレスフォンに手を当てた。

 

 

『ガオアクセス‼︎』

 

 

 光が収まり変身するガオゴールドとガオシルバー。ジッポオルグとオルゲット達は、同時に襲い掛かって来た。

 オルゲット達をドラグーンウィングで蹴散らして行き、ジッポオルグへと刃を振り掛かる。だが、ジッポオルグが口を開くと火炎放射器の様に、炎が吐き出された。間一髪で、ガオゴールドは躱す。

 

「カッカッカ〜‼︎ オレの炎に死角は無ェ‼︎」

 

 そう言って、ジッポオルグの前に巨大な炎の壁が出現した。炎が邪魔になり、攻撃が届かない。

 

「カッカ〜‼︎ 焼き具合はレアか、ミディアムか、ウェルダンか〜? 加減によっちゃ、命拾い出来るぜ〜‼︎」

 

 そう言いつつ、炎をガオゴールド達に嗾けて来た。ジッポオルグが前に進み出る度、炎の壁も接近して来る。ガオゴールドは、ドラグーンウィングを連結させると、回転し始めた。

 

「カッカッカ〜‼︎ 今更、何をする気だ〜‼︎ 諦めて消し炭になれ〜‼︎」

 

 ジッポオルグがジリジリと近付きながら、炎を押し当てようとする。だが、回転によるドラグーンウィングから強風が発生し、反対に炎が吹き飛ばされてしまった。

 

「アチアチ‼︎ このままじゃ、俺達が丸焼きだ、ヤバイバ〜‼︎」

 

「くッ……ジッポオルグ‼︎ 炎を緩めるのよ‼︎」

 

 反対に危機に陥ったツエツエ達が逃げ惑うが、ジッポオルグにも止めようが無い位、火は燃え盛っていた。だが、周囲に飛び火した影響で、ジッポオルグが丸裸となってしまう。ガオゴールドは、そのチャンスを逃さなかった。

 

「シルバー、今だ‼︎」

 

 ガオゴールドに作られた隙を、ガオシルバーは頷き、ガオハスラーロッドを構えた。天に投げた3つの宝珠を次々に打ち出し、ビリヤードのプールを作り出す。

 

 

「破邪聖獣球‼︎ 邪気玉砕‼︎」

 

 

 打ち出された宝珠が全て、ジッポオルグに直撃した。それと同時に、ジッポオルグは大爆発を起こした。

 

「カッカッカ〜〜‼︎ 火の用心、ジッポ一個、火事の元ォ〜〜……‼︎」

 

 ジッポオルグは断末魔を上げながら、木っ端微塵に吹き飛んだ。すかさず、ツエツエはオルグシードを投げ入れ呪文を唱え始める。

 

 

「オルグシードよ‼︎ 消え行かんとする邪悪に再び巨大な力を‼︎ 鬼は内‼︎ 福は外‼︎」

 

 

 やがて、オルグシードを核にジッポオルグが再生して行く。みるみる巨大な姿となって、辺りに炎を吐き散らす。このままでは大惨事は必至だ。

 ふと、ガオゴールドは気付いてしまう。ジッポオルグの足元に2匹の猫と子猫が居た事を……。我を忘れたガオゴールドは走り、2匹の猫に覆い被さる様に庇った。

 

「ゴールド⁉︎」

 

 ガオシルバーは驚いて助けに走る。だが間に合わない。ジッポオルグの巨足が迫っていた。

 

「カッカッカ〜‼︎ その甘さが命取りよ〜‼︎」

 

 ジッポオルグが、ガオゴールド諸共、踏み潰さんとした。だが、それを邪魔するかの様に、横から攻撃を仕掛けてくる者が居た。

 

「カ〜〜〜ッ‼︎⁉︎」

 

 倒れたジッポオルグの前に立つのは、竜の巨人だ。目にはギラギラと怒りを滾らせ、ジッポオルグに追い打ちする。

 

「カカカ⁉︎」

 

 圧倒的な攻撃力を前に、ジッポオルグは成す術なく追い詰められる。しかし竜巨人は手を緩めず、徹底的に痛めつけんとばかりに攻撃する。反撃として、ジッポオルグはゼロ距離から火炎放射を放つが、竜巨人は微動だにしない。右腕の剣でジッポオルグの腹部を刺し貫き持ち上げると、そのまま剣を螺旋状に回転させ投げ飛ばす。そして落ちて来たジッポオルグに目掛け、剣を構えた状態で全身を錐揉み回転しながら、ジッポオルグを貫徹した。腹部から抉り切られ、ジッポオルグは空中で大爆発してしまった。

 

 

「た〜〜ま〜〜や〜〜……‼︎」

 

 

 断末魔を上げつつ灰燼に帰すジッポオルグ。ツエツエ達は悔しそうに地団駄を踏む。

 

「きィ〜〜、またしても……‼︎」

 

「ツエツエ、今日の所は引き上げるぜ‼︎」

 

 切り札を倒され、2人は一目散に逃げていった。一先ず、オルグは倒したが目の前にいる竜巨人は、ガオゴールドの前に歩み寄る。

 

「貴方達は一体……‼︎」

 

 ガオゴールドが問いかけるより先に、テトムが現れた。

 

「貴方達は、レジェンド・パワーアニマルですね?」

 

「何だ、それは?」

 

 ガオシルバーが尋ねると、テトムは教えた。

 

「レジェンド・パワーアニマルは、ガオ神話に登場する伝説のパワーアニマルよ。昔、おばあちゃんが話してくれた昔話を思い出したの。世界の危機に姿を現し悪を滅する三体の幻獣……そして彼は、精霊の騎士王ガオパラディン……」

 

 

 〜成る程……我等を知っているとは、流石はガオの巫女だな……〜

 

 

  「喋った⁉︎」

 

「違う……恐らく、俺達の頭の中に話し掛けているんだ。テレパシーの様な物でな……」

 

 ガオシルバーの言葉に納得する。ならば、こちらの話も分かる筈だ。ガオゴールドはガオパラディンに話し掛けた。

 

「僕にガオレンジャーの力をくれた貴方達ですね?」

 

 

 〜如何にも〜

 

 

 ガオゴールドの質問に、ガオパラディンは応えた。

 

「だったら何故、僕達に協力してくれないんですか⁉︎ 何故、ガオハンターを攻撃したんですか⁉︎」

 

 ガオゴールドが捲し立てる様に問い詰めると、ガオパラディンは冷徹に言った。

 

 

 〜我等にとって、人間は守る対象では無いからだ〜

 

 

「なッ⁉︎」

 

 ガオパラディンの言葉に、3人は絶句した。地球の化身であるパワーアニマルが、人間を守る対象じゃ無いと言い切ったのだから……。

 

 

 〜我等が守るのは地球だ。地球に仇なすオルグは敵だが……その、オルグを生み出す人間も我等にとって害悪でしか無い〜

 

「……そ、そんな……」

 

 余りに非情な言葉に、テトムはショックを受けた。だが、ガオゴールドは尋ねる。

 

「人間を害悪だと言うなら‼︎ 何故、僕にG−ブレスフォンを⁉︎」

 

 

 〜お前達が戦えば、オルグが現れる。それを我等が倒す。何より……貴様の存在が我等、パワーアニマルの潜在能力を限界まで引き出す事が可能だからな〜

 

 

「そんな理由で⁉︎ 身勝手だ‼︎」

 

 ガオゴールドは怒るが、ガオパラディンは気にしていない態だ。

 

 

 〜自然を壊し、人間同士で殺し合い、オルグを生み出す格好の状況を作り出す貴様等、人間の方が余程、身勝手では無いか?〜

 

 

「クッ……」

 

 悔しいが言い返せない。確かに人間は、文明の発達と共に山や海、果てには宇宙へ進出し、森を切り開き海を汚し、人間同士で血を流し合う始末……正に、人間がオルグを生み出していると言っても、過言では無いからだ。

 

 

 〜我等には我等のやり方でやる。貴様等の指図など受けぬわ〜

 

 

 そう吐き棄てると、ガオパラディンは姿を消した。彼等が去った後も、ガオゴールド達は立ち尽くすしか無かった……。漸く、手を取り合えると思った刹那……ガオパラディン達、レジェンド・パワーアニマルの目的と思想……彼等と分かり合う道は無いのか? ガオゴールドは1人、思案に暮れた。

 

 

 〜漸く名を明かた、レジェンド・パワーアニマルと精霊の騎士王ガオパラディン。しかし、人間を害悪だと蔑む彼等と、ガオレンジャーが共に戦える日は来るのでしょうか?〜


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