帰ってきた百獣戦隊ガオレンジャー 19YEARS AFTER 伝説を継ぎし者 作:竜の蹄
戦いを終えた後、陽は大神と共にガオズロックへ帰還した。戦う事を了承したとは言え、陽はまだ何も知らない……ガオレンジャーの事を、パワーアニマルの事を、オルグの事を……。
「お疲れ様、上々の戦いぶりだったわよ」
戻った際に、テトムから賞賛を受けた。だが、褒められても素直に喜べない陽だった。
「……正直、勝てたと言うか……」
「言いたい事は分かるわ。でも、貴方の活躍でオルグを退けたのは事実よ」
「……かなり、ギリギリだったがな……」
テトムに反し、大神は相変わらず素っ気無い口調だ。だが、陽の事は以前に比べ認めた感じはあった。
「…闘ってくれる決意をしてくれたのね…」
テトムは嬉しそうに微笑む。しかし、陽には腑に落ちない点がある……。
「……あのパワーアニマルは……味方じゃ無いんですか……?」
陽の質問は、自分達の前に現れながら、オルグごと、ガオシルバーを倒そうとしたパワーアニマル達の事だった。彼等は味方の筈の、ガオシルバーさえに敵意を見せ、あまつさえ、最後には自分にも明確な怒りを見せた。彼等の意図が読めない。テトムは顔を俯かせる。
「…ごめんなさい…私も彼等の事はよく知らないの…。全てのパワーアニマルは、封印されて生き残りは居ない、と考えていたから…」
「…そう…ですか…」
テトムさえも知り得ない情報…なら、知る事は不可能だろう。そう陽が諦めた時、大神が口を開く。
「……奴等は、俺がオルグに攻撃しようとした時、明確に敵意を向けてきた…。『手を出すな、余計な真似をするな』…と言った具合にな…」
大神の言葉を察するに、彼等が自分達の味方とは言い難い。だが、陽は左腕のG−ブレスフォンを見せた。
「……僕が初めて、ガオゴールドに変身した時……巨大化したオルグから僕を守ってくれたのは、彼等だった。恐らく、これも彼等が僕にくれたんだと思う……」
陽の言葉に、テトムは何かを思い出そうとしている様子だ。大神は、様子がおかしいテトムを見る。
「……どうしたんだ、テトム?」
「ちょっと待って。何か思い出しそうなの……竜の姿をしたパワーアニマル……ずっと昔に、聞いた覚えが……」
テトムは必死に考えるが中々、出てこない様子だった。無理もない。テトムは普通の人間を遥かに上回る年月を生きている為、彼女の言う昔に聞いた話は遥か大昔の話なのだ。
「ごめんなさい、今日の所は帰って。何かあったら、こっちから連絡するわ。シロガネのG−ブレスフォンと貴方のなら、すぐに繋がるから」
それを聞くと陽は、ドッと疲れが押し寄せて来た。昨日の今日だけで、疲労は積もりに積もっていた。こんな事じゃ、またしても祈に心配を掛けてしまう……その時、陽の頭の中で祈の顔が浮かぶ……。
「大変だ‼︎ 祈の事、すっかり忘れてた‼︎」
オルグとの戦いで大切な事を忘れてしまってた。祈に家で寝ている様に言われていたのだ。もし、祈が帰って姿の居ない自分に気付いたら……。陽は、スクッと立ち上がる。
「すいません! 僕、帰ります!」
「ちょっと待ちなさい!」
走り去ろうとする陽に、テトムが厳しい面持ちで立っていた。
「……分かっていると思うけど、貴方がガオレンジャーである事は秘密よ! 貴方の妹にもよ‼︎」
「人間には、オルグやガオレンジャーの秘密を嗅ぎ付けられて、面倒な事になる事もある。妹を、そういった事に巻き込みたくないなら、秘密にしておけ」
陽は2人の言葉を受け万が一、自分の正体が周囲に知れれば、祈だけで無く、大切な人間全てを巻き込む事態になり兼ねない。陽は理解し、深く頷いた。
「……分かっています……」
陽は否応も無く理解するしか無い。もう自分は今迄の様な日常は送れない。戦いに生きる、まかり間違えば死ぬ。そんな非日常の世界に足を踏み入れてしまったのだ……。
「ハァァ〜〜〜……」
街外れの廃工場内……ヤバイバは大きな溜息を吐いた。
「ヤバイバ、何を溜息なんか……」
隣に座るツエツエも、そう言いながら浮かない顔だ。
「ツエツエ……俺たちゃ、このままじゃ、鬼ヶ島に帰れんぜ……」
「そんな事、言われなくとも分かってるわよ…」
ツエツエだって、かなり自分達がマズイ状況に陥っている事は分かっている。2度目は無い、とテンマに釘を刺されたのも束の間、いきなり2度目の敗北を喫してしまったのだ。はっきり言って最悪だ。
「テンマ様は、おかっねェからな……。このまま、ノコノコ帰って行ったら、俺達は……また怒鳴られるな」
「怒鳴られるなら、まだマシよ。あの方は、シュテン様やウラ様、ラセツ様の様に甘く無いわ。何とか結果を出さないと……」
『ハァァァァ……』
今度は2人揃って溜息を吐く。その姿は、さながら哀愁漂う中間管理職、と言った感じだ。
「……クスクス、大のオルグが溜息なんて付いちゃってまァ……」
闇から響く声に、ツエツエ達は振り返る。闇からツカツカと歩いて来たのは、ゴスロリ調のメイド服を着た少女だった。頭にオルグの証たる角が生えている為、彼女も、オルグの様だ。
「ニーコ……」
ツエツエは心底から嫌そうに、彼女を見た。ニーコは、小馬鹿にした様な顔で笑う。
「あ〜〜んまり、嫌そうな顔しないでよ。私達は仲間なんだから。い・ち・お・う♡」
「そのネチっこい喋り方を止めろって言ってんのよ‼︎」
ツエツエが熱り立ちながら、ニーコを睨み付ける。だが、ニーコはクスクスと笑うだけだ。
「やだ怖〜い。やーね、ツエツエちゃん、怒ってばかり居ると顔が小ジワだらけになるわよ?」
「……んですって〜〜‼︎」
完全に、おちょくりまくった態度に、ツエツエは我慢ならなくなり、ニーコに掴みかかろうとするが、ヤバイバが羽交締めにして止めた。
「離して、ヤバイバ‼︎ あの小娘を八つ裂きにしなきゃ気が済まない‼︎」
「落ち着け、ツエツエ‼︎ ニーコ、お前、俺達にそんな事言う為に来たのか⁉︎」
「まっさか〜。私、そんなに暇じゃ無いもん。テンマ様からの言伝を預かって来たのよ?」
ヤバイバの言葉に、幾分か落ち着きを取り戻したツエツエはキッと、ニーコを睨み付けつつも話を聞く態勢に入った。
「テンマ様から言伝です。ガオゴールド、ガオシルバーの首を取るまで鬼ヶ島に帰って来る事を禁ずる、ですって♩」
「な、なによそれ……」
「あと追伸。『貴様等、無能共の顔なんか当分、見たく無いから鬼ヶ島に帰って来るな、バ〜〜カ』ですって♡」
ダメ出しで締めくくられ、またしても、ツエツエは怒り出すが、既にニーコは姿を消していた。
「……ヤバイバ、さっさとガオレンジャー倒すわよ」
「つ、ツエツエさん?」
様子のおかしいツエツエに違和感を感じるヤバイバ。すると其処には、ハイネスも裸足で逃げ出す位に激怒したツエツエが居た。
「このまま、バカにされたままで良い訳無いでしょ‼︎ ガオレンジャーの首を持って帰って、あの小娘を見返してくれるわァァァ‼︎」
「お……おう……」
付き合いの長い相棒に火が付いた事に、ヤバイバは黙って付き従う事にした。こうなったら手が付けられない事は知っているからだ。ヤバイバは1人、気苦労を背負い込む事となった。
陽は家に慌てて帰ると、いつの間にか夕方になっていた。携帯を持って出るのを忘れた為、連絡が出来ない。まだ祈が帰っていない事を願いながら、陽は玄関のドアを開けた。
「お帰りなさい……兄さん……」
玄関先では、顔を恐ろしい迄に笑顔にした祈が立っていた。周りにはユラユラと黒いオーラが立ち昇っている。
「あ……ただいま……」
陽は、頭の中でマズイと警報が鳴っているのを感じた。だが既に遅かった。
「大人しく寝ててって言ったのに……何処へ行ってたの‼︎」
その後は祈の特大級の雷が落ちた。家に帰ってみれば、ベッドは空っぽだし、携帯は置きっ放しで連絡は付かないし、知り合いに電話を掛けても来てないと言われ、近所迷惑も顧みずに怒鳴られる有様となった。
それから数時間、祈の機嫌を直す事に陽は苦心するが、祈は一切、弁解を聞いてくれない。かと言って、さっき、祈達を助けに入った、等と言える訳も無く、陽は思いつくままの言い訳を使うが、すっかり、へそを曲げた祈は、プイッとそっぽを向いたまま、一言も口を利いてくれない。夕食を終えた後、無言のまま食器を洗う祈に陽は居た堪れなくなって、食器を下げつつ話し掛けた。
「い、祈?」
恐る恐る、祈に話し掛けた陽に対し祈は仏頂面で「何?」と返して来た。
「えっと……ゴメン……」
「何に対して?」
まだ怒っている様子の祈は、冷ややかに言った。長い付き合いだが、こう言う時の祈は取り付く島はない。
「……心配掛けて……ゴメン……」
悪戯をした子供が母親に謝る様に、ボソボソと喋る。そうして、やっと祈はキッと、こちらを見た。
「当たり前でしょ⁉︎ どれだけ心配したと思ったの⁉︎」
食器を洗う手を止め、祈は詰め寄ってきた。
「兄さんに、もしもの事があったらどうしようって私、怖くて……辛くて……そんな私の事、考えたの?」
気が付けば祈の瞳から、ポロポロと涙が溢れていた。たった1人、残った肉親にして大切な人……祈からすれば、兄が自分の目の前から去られるのは身を裂かれるより辛い事だ。
「お願いだから……私を一人ぼっちにしないでよ……」
祈は陽の胸に飛び込み、咽び泣いた。陽は子供の様に泣きじゃくる妹の頭を優しく撫でた。
何時からだろう? 祈が大人の真似をし始めたのは……。両親を揃って亡くし悲観に暮れていた、あの葬儀の日……まだ小学生だった祈は小さく弱々しかった。親戚達が揃って自分達が2人を引き取ろう、と言い合う姿……。中学生だった陽は、そんな大人達を心底から嫌悪した。皆、自分達の事など欠片も心配してない。両親が遺した莫大な遺産が目当てなんだ……子供ながらに、そう感じた。醜い争いを続ける大人達を尻目に陽は誓った。
「僕が、祈を護る」
大人達の決めた事に従って、祈を悲しませるなんてゴメンだ。昔見た映画にも幼い兄妹が身を寄せ合いながら、逞しく生きようとしていた。あの映画の結末で、幼い兄妹は悲劇的な最期を迎えたが、自分はそうならない。そうなって堪るか‼︎
陽は祈を抱き寄せ、親戚達に啖呵を切ったのを覚えてる。
「僕が祈を護ります‼︎ 貴方達の世話にはなりません‼︎」
あの後も親戚達は懲りずに、自分達の世話を焼いてこようとする。貴方達は、まだ子供なんだから……大人を頼りなさい、なんて取って付けた様な常套句を立て並べて……。
そんな自分の姿を見ていたからか、祈は少し背伸びを始めた。気が付けば、祈が料理を作り始めた。友達と遊びたい時間を惜しみもせずに、家事に費やしてくれた。だから、陽は高校進学と同時にバイトを始めた。少しでも祈の負担を無くしたかったから……。
「祈……僕は何処にも行かないよ」
「……本当?」
胸に埋めて泣いていた祈は顔を上げる。綺麗な顔は涙で、ぐしゃぐしゃだ。陽は祈を強く抱き締めた。
「……僕が祈に嘘なんか吐いた事あるか?」
「……今日、嘘吐いた……」
少し不貞腐れた様に、祈は言う。ああ、そうだ。嘘を吐いた。そして、これからも嘘を吐かなくちゃならない。
「約束する……。例え、どんな事があっても祈を護るから……」
それだけ言うと、陽は祈に背を向け部屋に向かった。祈は兄の背に向かい声を掛ける。
「兄さん……」
「どうした?」
陽は振り返る。祈は兄の顔を見ながらも悩んだ。朝にあった事を話そうかと……。自分を助けた金色の戦士が兄なんじゃ無いか、と……。
「……ううん。何でも無い……おやすみなさい」
「? 何だよ、変な奴だな。おやすみ」
結果、祈は黙っておく事にした。もし聞いてしまったら、陽は永遠に居なくなってしまう様な気がした。
部屋の中に消えていく兄の姿を見つめながら、あの出来事は自分の胸の中に仕舞っておこうと決めた。それで、兄と自分のいつも通りの日常があるなら、それで良いじゃないか、と言い聞かせて……。
部屋の中で陽は長い事、途方に暮れていた。妹を騙さなくてはならないと言う罪悪感と自己嫌悪……本当の事を祈に打ち明けてしまいたい……だが、真実を知れば祈は自分を拒絶するんじゃ無いか? そんな恐怖が、陽の口を閉ざしてしまう。でも……これから、祈に隠れて戦い続けなければならないのか? オルグが居なくなるまで? 左腕に嵌められたG−ブレスフォンが、手枷の様に思えて来る。ガオレンジャーと言う囚人に隷従される自分……乾いた笑いが込み上げて来るのを感じた。
「祈を……護る為……か」
ガオレンジャーとして戦う決意をしたのは、偏に祈を護る為だった。今更、後悔したって仕方が無い。
その際、左腕のG−ブレスフォンが唸り始めた。
「はい…」
『ゴールド‼︎ オルグが現れたわ‼︎ 直ぐに現場に急行して‼︎』
G−ブレスフォンから聞こえて来るテトムの声……もう、悩んでいる暇は無い。意を決した陽は窓を開けて飛び出した。
「さァ、壊すのよ‼︎ 壊しまくるのよ、オルゲット達‼︎」
「ゲットゲット‼︎ オルゲットゲット‼︎」
夜の中で、ツエツエの命令に従い暴れ回るオルゲット。目に映る車や器物を次々に破壊して行く。
彼等の目的は、ガオレンジャーを誘き寄せる事……。これだけ派手にやれば、間違い無く現れる。ツエツエには確信があった。
「コラ、貴様等‼︎ 何をしている⁉︎」
騒ぎを聞きつけて、やって来たのは警官だった。銃を構えながら、ツエツエ達を威嚇する。
「今すぐ凶器を捨てろ‼︎ 捨てたら大人しく……」
「お呼びじゃねェんだよ‼︎」
警官の背後から、ヤバイバが忍び寄り殴り付ける。彼等は、ガオレンジャーを倒す事。唯の人間なぞ、この際、どうでも良い。
「其処までだ‼︎」
暴れ回るオルグ達の前に、陽と大神が駆け付けた。ツエツエはニヤリと笑う。
「待ってたわよ、ガオレンジャー‼︎ 出番よ、ジッポオルグ‼︎」
ツエツエが号令を掛けると、後ろから現れるオルグ魔人。身体が、ジッポライターを模した鬼。キャップが開くと、炎に覆われた顔と角が露わになる。
「さァ、ジッポオルグ‼︎ ガオレンジャー達を火達磨にしてお仕舞い‼︎」
「カッカッカッカ〜‼︎」
ジッポオルグが口をカッカッと開くと火が上がる。陽、大神はG−ブレスフォンに手を当てた。
『ガオアクセス‼︎』
光が収まり変身するガオゴールドとガオシルバー。ジッポオルグとオルゲット達は、同時に襲い掛かって来た。
オルゲット達をドラグーンウィングで蹴散らして行き、ジッポオルグへと刃を振り掛かる。だが、ジッポオルグが口を開くと火炎放射器の様に、炎が吐き出された。間一髪で、ガオゴールドは躱す。
「カッカッカ〜‼︎ オレの炎に死角は無ェ‼︎」
そう言って、ジッポオルグの前に巨大な炎の壁が出現した。炎が邪魔になり、攻撃が届かない。
「カッカ〜‼︎ 焼き具合はレアか、ミディアムか、ウェルダンか〜? 加減によっちゃ、命拾い出来るぜ〜‼︎」
そう言いつつ、炎をガオゴールド達に嗾けて来た。ジッポオルグが前に進み出る度、炎の壁も接近して来る。ガオゴールドは、ドラグーンウィングを連結させると、回転し始めた。
「カッカッカ〜‼︎ 今更、何をする気だ〜‼︎ 諦めて消し炭になれ〜‼︎」
ジッポオルグがジリジリと近付きながら、炎を押し当てようとする。だが、回転によるドラグーンウィングから強風が発生し、反対に炎が吹き飛ばされてしまった。
「アチアチ‼︎ このままじゃ、俺達が丸焼きだ、ヤバイバ〜‼︎」
「くッ……ジッポオルグ‼︎ 炎を緩めるのよ‼︎」
反対に危機に陥ったツエツエ達が逃げ惑うが、ジッポオルグにも止めようが無い位、火は燃え盛っていた。だが、周囲に飛び火した影響で、ジッポオルグが丸裸となってしまう。ガオゴールドは、そのチャンスを逃さなかった。
「シルバー、今だ‼︎」
ガオゴールドに作られた隙を、ガオシルバーは頷き、ガオハスラーロッドを構えた。天に投げた3つの宝珠を次々に打ち出し、ビリヤードのプールを作り出す。
「破邪聖獣球‼︎ 邪気玉砕‼︎」
打ち出された宝珠が全て、ジッポオルグに直撃した。それと同時に、ジッポオルグは大爆発を起こした。
「カッカッカ〜〜‼︎ 火の用心、ジッポ一個、火事の元ォ〜〜……‼︎」
ジッポオルグは断末魔を上げながら、木っ端微塵に吹き飛んだ。すかさず、ツエツエはオルグシードを投げ入れ呪文を唱え始める。
「オルグシードよ‼︎ 消え行かんとする邪悪に再び巨大な力を‼︎ 鬼は内‼︎ 福は外‼︎」
やがて、オルグシードを核にジッポオルグが再生して行く。みるみる巨大な姿となって、辺りに炎を吐き散らす。このままでは大惨事は必至だ。
ふと、ガオゴールドは気付いてしまう。ジッポオルグの足元に2匹の猫と子猫が居た事を……。我を忘れたガオゴールドは走り、2匹の猫に覆い被さる様に庇った。
「ゴールド⁉︎」
ガオシルバーは驚いて助けに走る。だが間に合わない。ジッポオルグの巨足が迫っていた。
「カッカッカ〜‼︎ その甘さが命取りよ〜‼︎」
ジッポオルグが、ガオゴールド諸共、踏み潰さんとした。だが、それを邪魔するかの様に、横から攻撃を仕掛けてくる者が居た。
「カ〜〜〜ッ‼︎⁉︎」
倒れたジッポオルグの前に立つのは、竜の巨人だ。目にはギラギラと怒りを滾らせ、ジッポオルグに追い打ちする。
「カカカ⁉︎」
圧倒的な攻撃力を前に、ジッポオルグは成す術なく追い詰められる。しかし竜巨人は手を緩めず、徹底的に痛めつけんとばかりに攻撃する。反撃として、ジッポオルグはゼロ距離から火炎放射を放つが、竜巨人は微動だにしない。右腕の剣でジッポオルグの腹部を刺し貫き持ち上げると、そのまま剣を螺旋状に回転させ投げ飛ばす。そして落ちて来たジッポオルグに目掛け、剣を構えた状態で全身を錐揉み回転しながら、ジッポオルグを貫徹した。腹部から抉り切られ、ジッポオルグは空中で大爆発してしまった。
「た〜〜ま〜〜や〜〜……‼︎」
断末魔を上げつつ灰燼に帰すジッポオルグ。ツエツエ達は悔しそうに地団駄を踏む。
「きィ〜〜、またしても……‼︎」
「ツエツエ、今日の所は引き上げるぜ‼︎」
切り札を倒され、2人は一目散に逃げていった。一先ず、オルグは倒したが目の前にいる竜巨人は、ガオゴールドの前に歩み寄る。
「貴方達は一体……‼︎」
ガオゴールドが問いかけるより先に、テトムが現れた。
「貴方達は、レジェンド・パワーアニマルですね?」
「何だ、それは?」
ガオシルバーが尋ねると、テトムは教えた。
「レジェンド・パワーアニマルは、ガオ神話に登場する伝説のパワーアニマルよ。昔、おばあちゃんが話してくれた昔話を思い出したの。世界の危機に姿を現し悪を滅する三体の幻獣……そして彼は、精霊の騎士王ガオパラディン……」
〜成る程……我等を知っているとは、流石はガオの巫女だな……〜
「喋った⁉︎」
「違う……恐らく、俺達の頭の中に話し掛けているんだ。テレパシーの様な物でな……」
ガオシルバーの言葉に納得する。ならば、こちらの話も分かる筈だ。ガオゴールドはガオパラディンに話し掛けた。
「僕にガオレンジャーの力をくれた貴方達ですね?」
〜如何にも〜
ガオゴールドの質問に、ガオパラディンは応えた。
「だったら何故、僕達に協力してくれないんですか⁉︎ 何故、ガオハンターを攻撃したんですか⁉︎」
ガオゴールドが捲し立てる様に問い詰めると、ガオパラディンは冷徹に言った。
〜我等にとって、人間は守る対象では無いからだ〜
「なッ⁉︎」
ガオパラディンの言葉に、3人は絶句した。地球の化身であるパワーアニマルが、人間を守る対象じゃ無いと言い切ったのだから……。
〜我等が守るのは地球だ。地球に仇なすオルグは敵だが……その、オルグを生み出す人間も我等にとって害悪でしか無い〜
「……そ、そんな……」
余りに非情な言葉に、テトムはショックを受けた。だが、ガオゴールドは尋ねる。
「人間を害悪だと言うなら‼︎ 何故、僕にG−ブレスフォンを⁉︎」
〜お前達が戦えば、オルグが現れる。それを我等が倒す。何より……貴様の存在が我等、パワーアニマルの潜在能力を限界まで引き出す事が可能だからな〜
「そんな理由で⁉︎ 身勝手だ‼︎」
ガオゴールドは怒るが、ガオパラディンは気にしていない態だ。
〜自然を壊し、人間同士で殺し合い、オルグを生み出す格好の状況を作り出す貴様等、人間の方が余程、身勝手では無いか?〜
「クッ……」
悔しいが言い返せない。確かに人間は、文明の発達と共に山や海、果てには宇宙へ進出し、森を切り開き海を汚し、人間同士で血を流し合う始末……正に、人間がオルグを生み出していると言っても、過言では無いからだ。
〜我等には我等のやり方でやる。貴様等の指図など受けぬわ〜
そう吐き棄てると、ガオパラディンは姿を消した。彼等が去った後も、ガオゴールド達は立ち尽くすしか無かった……。漸く、手を取り合えると思った刹那……ガオパラディン達、レジェンド・パワーアニマルの目的と思想……彼等と分かり合う道は無いのか? ガオゴールドは1人、思案に暮れた。
〜漸く名を明かた、レジェンド・パワーアニマルと精霊の騎士王ガオパラディン。しかし、人間を害悪だと蔑む彼等と、ガオレンジャーが共に戦える日は来るのでしょうか?〜