帰ってきた百獣戦隊ガオレンジャー 19YEARS AFTER 伝説を継ぎし者   作:竜の蹄

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※今回はリクエストに応えた回となった為、一度、完成させた話を再構築していた為、時間が掛かってしまいました。
少々、ショックな内容となりますが、ご了承下さい!


quest51 目醒める鳳凰と銀狼の死!

 陽、美羽はガオゴッドに導かれる様に、異様に歪んだ空間の中を突き進んでいた。周りを見れば、様々な時代の風景、建造物が泡状のビジョンの中に浮かんでは消えて行く。

 

『一体、此処はどうなってるんだ⁉︎』

 

 あまり気分の良い空間では無い為、陽は苦言を漏らす。すると、美羽が話し掛けて来た。

 

『此処は私達の暮らす世界の少し外れた狭間にある場所だよ。だから、此処に移る風景は、様々な時代の事象が入り混じって、ごちゃごちゃになってるんだ…』

 

 美羽は随分、この風景に詳しい様子だった。まるで以前に見た事がある様だ。

 

『美羽は、此処へ来た事があるの?』

 

 考えて見れば、美羽は自分より、ガオマスターから事情を聞かされていた筈だ。ならば、邪馬台国についても知っていたのでは無いだろうか?

 

『ガオマスターに一度だけ、見せて貰ったんだ……私に力をくれたパワーアニマル、ガオフェニックスの現在の姿を……。

 でも、その時は全部は見せて貰えなかった……。陽が、力を付ける時期まで教える訳に行かないって……』

 

 その言葉にて、ガオマスターも全ては知らないらしい……。しかし、陽は邪馬台国について、様々な考察を上げてみる。

 邪馬台国は歴史上に伝え残される物では無く、人間とパワーアニマルの楽園として築かれた理想郷だと、ガオマスターは言った。

 そして、邪馬台国の女王として伝えられる卑弥呼は、原初の巫女アマテラスその人だと言う。

 つまり、全ての伝説は邪馬台国から始まった…と言う事となる。 

 

 やがて、入り混じる様な空間に、出口が現れた。

 

 〜着いたぞ。あれが邪馬台国の入り口だ〜

 

 ガオゴッドが語り掛ける。陽と美羽は、遂に辿り着いた、と感じた。やがて、ガオゴッドを先頭にゲートを潜り抜けた。

 

 

 陽と美羽が降り立った場所は酷く荒れ果てた廃墟だった。石造りの家は崩れ、所々に苔むしている。木造の家屋もあったが、完全に倒壊して家としての形を成していない。

 池があった場所は枯れ果てて、亀裂の入ったクレーターとなっていた。 

 

『此処が……邪馬台国……⁉︎』

 

 陽は絶句した。二千年以上と言う昔の筈だが、確かに国があった遺跡として残っていた。

 突如、風太郎に姿をに変えたガオゴッドが降り立つ。

 

『此処が、君達に取って始まりとなった国の成れの果てだよ。

 アマテラスは、ガオフェニックスを始めとするレジェンド・パワーアニマル達を率いて、古代のオルグ王として君臨した雄呂血を迎え撃った。

 闘いは当時の戦士だった、スサノオとツクヨミが前線に立って、多勢にて攻めて来たオルグ達を倒して行った……その過程で、アマテラスはオルグに迫害されていた人達を集めて、この国を建国したんだよ。

 やがて、闘いはアマテラス達が勝ち、雄呂血が倒れた事で彼の配下も全て、消滅した……そうして、世は平和となった……筈だった……』

 

 だった、と不自然に切った風太郎は顔を曇らせる。

 

『……その平和な長続きしなかった……。雄呂血は死にゆく最期の瞬間、世に毒を放った。その毒は人間の精神を蝕み、大地を汚した。

 人々は懐疑心に取り憑かれ、その狂気はアマテラスの弟にして、最初のガオの戦士スサノオへと向けられた。

 強大な力を持って、雄呂血を倒したスサノオ……その力が自分達に向かれるかも知れないと言う恐怖……遂には、スサノオも鬼では無いのか、と言い出す輩も現れ始めた……。

 アマテラスとツクヨミは荒れ狂う人々を説得したが、精神の均衡を崩された彼等に、その言葉は届かない。

 遂に、スサノオは自らが邪馬台国から出る事を決意した。それで人々が落ち着きを取り戻し、アマテラスの治世で国が穏やかとなるなら、と……』

 

 風太郎の言葉は悔やみとも、嘆きとも捉えられる悲痛な物だった。

 

『スサノオが国を出て暫く立った後……今度は、邪馬台国内にて血生臭い内乱が勃発した。

 人間同士が傷付け合い、憎み合い、殺し合う……さながら、地獄絵図だった……』

『今の竜胆市と同じだ……』

 

 陽はポツリと漏らす。オルグの進撃により、竜胆市はメチャクチャにされつつある。それと同様に、邪馬台国もオルグの毒牙に侵され崩壊した。

 今回は、この邪馬台国の崩壊以上の惨事が起きようとしている。それも世界規模で……。

 

『……もう此処には生き物は住んでないの?』

 

 美羽は荒れ果てた家々を見渡しながら、尋ねた。確かに、この様子では人間どころか、動物さえも住んでいるか怪しい。

 

『さっきも言ったけど、此処は時間の外れた……言うなれば、ガオフェニックスの創り出した結界の中にあるんだ……。

 だから、遺跡が辛うじて形を保っているのも、そのお陰。フェニックスが此処から離れたら、この遺跡は風化してしまうだろうね……』

『でも……それじゃ……』

 

 陽は邪馬台国が消えてしまう、と言う事実に驚く。しかし、風太郎は寂しく笑った。

 

『さァ、急ごう……陽、美羽! ガオフェニックスが、君達を待っている』

 

 風太郎は気を取り直して、陽達を促す。それに対して、陽も彼の後に続いた。幾つもある廃屋を通り過ぎて行きながら、進んでいく陽達。

 やがて一際、立派な屋敷の前に辿り着く。しかし老朽化が進み、辛うじて形を保っている有り様だ。

 風太郎は二人を招き寄せる。屋敷の中に入ると、広々とした空間が広がり、その真ん中に置かれた台座に目を奪われる。その台座の上には赤みがかった人の顔と同サイズの卵が置かれていた。

 

『まさか……この卵が、ガオフェニックス⁉︎』

 

 陽は愕然としながら、卵を見る。ガオドラゴン達と同様、レジェンド・パワーアニマルとしての姿かと思っていたが、その実態は卵のそれだった。

 

『まだ眠ってるんだよ……ガオフェニックスは再生と死を繰り返しす永遠の象徴……私達が、やってくるのを待ち続けてたんだ……』

 

 美羽は、卵に手を当てる。すると卵は僅かに動く。

 

『陽……君の持つ宝珠を卵の前に……』

 

 風太郎は陽に言った。言われるままに、ガオドラゴン達の宝珠を卵の前に置いた。美羽は首から紐に付けていた宝珠を持ち祈る。

 そして、風太郎は語り掛けた。

 

 〜原初の巫女アマテラスに従属した六柱の聖なる獣王達の頂点に立つ無限の鳳凰よ……今、再び世界に崩壊の危機が迫って来た……今こそ、長き悠久の時を経て、その大いなる翼を復活させる時が来た‼︎〜

 

 目覚めよ‼︎ ガオフェニックス‼︎〜

 

 風太郎のバックに一瞬だけ、ガオゴッドの姿がフラッシュバックした。

 そして、宝珠も順番に輝き出す。五つの光は卵を照らしていき、美羽の手に持つ宝珠と卵の間に光の線が繋がれた。

 すると卵はピシッと亀裂が入る。やがて亀裂は見る見る間に広がって行き、卵はカタカタと激しく揺れた。

 

 

『ピョォォォォッ!!!!!』

 

 

 卵が割れたかと思えば、中から赤い体色の雛に似た動物が出てきた。

 

『これが……ガオフェニックス?』

 

 陽は陽気に囀ってまわる動物を、キョトンとしながら見つめた。ガオドラゴン達に比べれば、ずっと小さくて、とても強大な力を持っているとは思えない。

 しかし、美羽は宝珠を手に取り、動物に近付けた。すると動物の身体は煌めく炎に包まれて行く。

 そして球体に変わったかと思えば天へと舞い上がり、炎は激しく爆発した様に広がった。

 

『……来る……‼︎』

 

 美羽は呟く。すると燃え広がった炎は虹色に輝く翼となり、鷹や鷲に似た猛禽類の頭が形成される。そして、二本の脚が現れると……

 

 最後の六聖獣にして、不死鳥のレジェンド・パワーアニマル、ガオフェニックスが復活した。

 

『これが……ガオフェニックス……なんて雄大な姿なんだ……』

 

 改めて、ガオフェニックスの姿を見た陽は言葉を失う。その姿は、正に神と形容するに相応しい神々しさを放っていた。

 全てのパワーアニマルにとって、彼女は母親であり創造神であると言う。その意味が納得した陽だった。

 

 〜ガオドラゴン……ガオユニコーン……ガオグリフィン……ガオナインテール……ガオワイバーン……懐かしい顔触れですね……〜

 

 〜ガオフェニックス……お久しゅうこざいます……〜

 

 突然、宝珠からガオドラゴンを筆頭としたレジェンド・パワーアニマル達が出現した。

 ガオドラゴンは、ガオフェニックスを前に低姿勢にて深々とお辞儀をした。普段はパートナーである自分は元より、ガオゴッドにさえ対等な口調を崩さない筈のレジェンド・パワーアニマル達が敬服している……如何に、このガオフェニックスが規格外な存在であるかを物語っていた。

 

 〜二千年……私達が、それぞれの道を歩み袂を分かってから、長き時が流れました……。最早、願っても叶う事ない、かつて幸せだった日々と共に……〜

 

 〜ガオフェニックス……我々は昔話に花を咲かせる為に、邪馬台国に舞い戻った訳ではありません……〜

 

 突如、ガオドラゴンは切り出す。

 

 〜……変わりませんね、ガオドラゴン……。そう……貴方がたが、この地を離れた理由は知っていました……。辛い思い出を断ち切りたかったからでしょう……分かっていますとも。貴方がたは必ず、この地に再び集結する日が来る……。そして、その日は遂に来てしまった……。

 

 ガオフェニックスの言葉は多くは語らなかった。しかし、その内には深い慈しみと暖かい思いやりに満ちていた。

 出会った当初、ガオドラゴン達、レジェンド・パワーアニマル達は人間への不信から、取り付く島も無かった。陽やテトムの説得も聞く耳持たなかった。

 だが、それは地球の環境を破壊し、オルグを生み出す遠因を作る人間への怒りだけでは無かった。

 彼等もまた、悲しんでいたのだ。共に歩んだアマテラス姉弟の辿った悲劇、その結末に……。

 の悲しみを忘れようと、彼等は頑なになっていた。陽は生まれて初めて彼等の心に刻まれた傷に触れ、理解した。

 

 〜竜崎陽……ガオゴールドよ……私は、ツクヨミを介して貴方の全てを見てきました。貴方が、人間へ見切りを付けた彼等に寄り添い、再び人間を守る為に戦う事を決意させてくれた事も……。

 ありがとう……心より感謝を申し上げます……〜

 

『僕は……何も……。今日まで戦い抜く事が出来たのは、仲間達やガオドラゴン達が居てくれたからです……。

 僕一人では……何も守れなかった……』

 

 そう……それは、陽の心から本音であった。戦いを知らず、ただ平和の中に生きて来た自分……祈と共に生きる、ありふれた日常を享受して来た自分……そんな自分が、ガオレンジャーとなって戦い今、全てのパワーアニマルの頂点に立つ存在の前に居る……なんとも滑稽な話だ。

 

 〜……貴方を見ていると……かつての、スサノオを思い出す様です……。彼も、かつては貴方の様に平和を愛し理想を尊び、姉を心から愛する優しい戦士でした……。

 しかし……非情な運命が、彼を変えてしまった……。唯一の支えだった姉と引き離され、孤独な戦いを続けて来た彼は、精神的にも疲弊していました……。そして……最愛の姉を失い、彼女が命を張って守って来た者達が守るに値しない物だと言う矛盾に耐えられなかった彼は、歪んでしまいました……。人間を怨み、パワーアニマルを怨み、そして地球そのものを怨んで……〜

 

『その末が、ガオネメシスか……』

 

 ガオネメシスは、かつて、スサノオとして生きていた時、受け入れ難い苦痛と絶望を味わった。己の無力さと世界の不条理さを彼は憎む内に、自分以外の全てを憎む様になった……そうしてる間に、彼は身も心も荒み……差し伸べる手を払い除けてしまい、救国の英雄スサノオは、叛逆の狂犬ガオネメシスへと転じてしまったのだろう。

 自分から姉を奪った世界に復讐する為に……。

 

 〜……スサノオは、もう決して振り上げた拳を下ろさないでしょう……世界の全てを破壊し尽くす迄……。宝珠を出しなさい、美羽……〜

 

 ガオフェニックス賞に促され、美羽は宝珠をガオフェニックスに差し出した。

 

 〜私の力を……アマテラスが最後に遺した力を、貴方達に託します……。その力で、憎しみに取り憑かれた彼を止めて下さい……〜

 

 そう言うと、ガオフェニックスは光となって消えた。すると薄暗く曇っていた宝珠は虹色に輝き始める。 

 

 〜其れが……アマテラスやスサノオに対しての、唯一の贖罪です……〜

 

 虚空に木霊するガオフェニックスの言葉……陽は遂に、最後の六聖獣の力を手に入れた。

 これで手札は揃い、戦力は整った。陽は振り返り、美羽と風太郎、そして、レジェンド・パワーアニマル達を見る。

 

『行こう……竜胆市へ……‼︎ これを最後の戦いにする為に‼︎』』

 

 覚悟など、とうに出来ている。後は、テンマやガオネメシスの野望を阻止するだけだ! その強い意思が、彼の中にあった。

 美羽、風太郎、六聖獣達は深く頷いた。

 

 

 

 竜胆市の戦いでは……ガオシルバー、ガオグレー、ガオマスターと言う三人の戦士達が決死の攻防をしていた。機関銃オルグ、手榴弾オルグ、バズーカオルグと言う切り込み隊長格のオルグと大多数のオルゲット達……倒しても倒しても、オルゲットの数は一向に減らない。

 

「クソッ‼︎ 次から次へと、虫の様に湧いてくる‼︎」

 

 ガオグレーは毒吐きながら、オルゲットをグリズリーハンマーで叩き伏せた。ガオマスターもルナサーベルで、オルゲットを斬り捨てて行った。

 

「このままでは、埒が開かん‼︎ 雑魚は無視し、隊長クラスのオルグを叩くしか無い‼︎」

 

 オルゲットの放った砲撃をフルムーンガードで防ぎながら、ガオマスターは提案した。それは、ガオシルバーも理解していた。

 しかし、オルゲット達により築かれた陣形により、三体のオルグ魔人に迄、ガオハスラーロッドによる狙撃は届かない。

 つまり、誰かが敵中に突っ込み、奴等と直接対決するしか無いのだが、それは、かなりのハイリスクを伴う。

 言ってみれば、それは囮以外に何物でも無い。ましてや、デュークオルグにも匹敵する実力者である奴等の懐に入れば、間違い無く無傷では済まないだろう。

 

「俺が行く! グレーとマスターは、オルゲット達を頼む‼︎」

「待て、シルバー‼︎ 一人で乗り込むのは危険じゃ‼︎ 」

 

 敵陣に特攻を仕掛けようとするシルバーに、グレーは止める。

 

「危険なのは百も承知だ‼︎ だが、突破口を作るには多少の無茶でも、行かなくてはならない?」

「なら、私が行こう‼︎ 君は、此処で倒れる訳には行かないだろう?」

 

 ガオマスターも止めに入る。だが、シルバーは首を横に振る。

 

「……頼む……俺に行かせてくれ‼︎」

 

 ガオシルバーは頼んで来た。彼は、陽不在の中、リーダー代行を引き受けた時から、覚悟は決めていた。

 例え、自分が命を落とし兼ねないとしても、もう逃げない、と決めていた。そんな彼の強い覚悟を知った二人は、とうとう折れる。

 

「……分かった……死ぬなよ、シロガネ……」

「死ぬものか!カイ…… 戦いが終わったら……ハンバーガーを好きなだけ奢ってやるよ!」

「フライドポテトも頼むぞ‼︎」

 

 互いに本名で呼び合ったら後、ガオシルバーは走り出した。オルゲット達の攻撃は全て掻い潜り、最後の一体に強力な鉄拳を喰らわせた。

 そして、三体のオルグ魔人の前に立つ。

 

「ほう……! 正面から来るとは、かなりの自信家だな……」

 

 機関銃オルグは厭らしい笑みを浮かべながら言った。

 

「其れとも、ただの馬鹿なのか…!」

 

 手榴弾オルグは侮蔑した様に言った。

 

「どちらにせよ、生かしちゃおかねェ…‼︎」

 

 バズーカオルグは荒々しく笑いながら言った。ガオシルバーは、ガオハスラーロッドを構えて走り出す。先ずは正面に居る機関銃オルグだ。

 機関銃オルグは右腕の銃を構えて、シルバーを撃ち抜こうとしたが如何せん、素早さでシルバーに追い付く筈が無い。発砲するより先に、シルバーのガオハスラーロッドによる斬撃でわ右腕ごと銃を斬り落とされた。

 

「がァァァ!!? 痛ェ、痛ェェ!!!」

 

 斬り落とされた右腕を庇いながら機関銃オルグは、のたうち回る。しかし、バズーカオルグが隙を作ったガオシルバーに砲口を向けた。

 

「木っ端微塵になれやァァ!!!」

 

 今の状態なら躱す事は出来ない。そう判断したバズーカオルグは砲撃した。しかし、シルバーは躱す気など無い。懐から取り出したムラサキの守り刀をバズーカオルグの生身の腕に投擲した。

 

「グッ!!?」

 

 腕に走る鋭い痛みに、バズーカオルグは思わず砲口の向きを逸らす。すると、シルバーの背後にいた手榴弾オルグに見事、命中してしまう。

 

「うがァァァ!‼︎?」

 

 手榴弾オルグは情け無い悲鳴を上げながら吹き飛ばされた。バズーカオルグは、仲間を砲撃した事に気付く。

 

「あァァ!? しまったァァ!!?」

「フン……敵と味方の区別も付かないのか? 頭の中に脳みその代わりに、火薬でも詰まってるらしいな…‼︎」

「な…何だと、このォォ……‼︎」

 

 侮辱されたバズーカオルグは怒り心頭になり、改めて砲口をガオシルバーに定めようとした。しかし、彼の背後に衝撃が走る。

 

「グゥッ!!? な、何だ?!!」

 

 バズーカオルグは振り返る。すると自身の周りには、緑色のビリヤードのプール状に描かれたフィールドが完成しており、浮遊していた宝珠をシルバーは掴む。

 

「俺の狙いは、これだった‼︎ 貴様等の連携を壊し、確実に一人ずつ始末していく方法を狙ったんだよ‼︎

 

 破邪聖獣球! 邪気…玉砕‼︎」

 

 ガオハスラーロッドのブレイクモードで撃ち込まれた宝珠が、バズーカオルグに全て激突した。

 すると、バズーカオルグの身体から火花がほと走り、爆発した。

 急成長したガオゴールドによって差を付けられたものも、ガオレンジャーとしてのキャリアは、シルバーは方が上だ。

 機関銃オルグは立ち上がり、残った左腕でガオシルバーを構える。

 

「犬っころが、舐めた真似をしやがってェェ‼︎ 蜂の巣にしてやるぜ‼︎」

 

 そう叫ぶと、機関銃オルグの左腕のマシンガンが火を噴いた。弾は一発も外す事なく、ガオシルバーに命中する。

 

「ギャハハハァ!!! もう、お前等、ガオレンジャーの時代なんざ古いんだよ‼︎ これからは、オルグの時代だァ‼︎」

 

 勝ち誇りながら、機関銃オルグは狂笑した。しかし砂煙が晴れると、ガオシルバーの無傷の姿を確認した。

 

「オルグの時代が…何だって?」

「は、はあァ!!??」

 

 全く傷付いてないガオシルバーに、機関銃オルグは驚愕した。その筈、シルバーは弾が当たる瞬間、ガオハスラーロッドのサーベルモードで全て打ち落とすと言う離れ業で防いだからだ。

 

「あと、俺は犬じゃ無い……俺は……‼︎」

 

 ガオシルバーは走り近付いて来る。機関銃オルグは狙撃しようと構えるが……既に手遅れだった。

 

 

「銀狼満月斬りィィ‼︎」

 

 

 至近距離から放たれる真円を描く月の如し斬撃で、機関銃オルグを一閃した。機関銃オルグの身体は細切れに刻まれる。

 

「ち、畜生……‼︎」

「俺は狼だ…‼︎」

 

 放たれた言葉と同時に機関銃オルグは爆発した。これで全てのオルグ魔人を倒した。

 

「シルバー、やったのォ‼︎」

 

 ガオグレー、ガオマスターもオルゲット達を蹴散らして、駆け付けてきた。疲労しながらも勝つ事は出来た。そんな満足感が、シルバーの緊張を緩ませる。

 しかし、それ故に見逃してしまった。倒れていた手榴弾オルグが、まだ生きていた事に……。

 手榴弾オルグは、ガオシルバーに忍び寄り背後から羽交い締めにした。

 

「残念だったなァ‼︎ まだ、俺が居るぜ‼︎」

「グッ⁉︎ き、貴様ァ‼︎」

 

 動きを封じられたシルバーはもがくが、ガッチリと捕まってしまい逃げる事が出来ない。

 と、その際、手榴弾オルグの頭部にある安全装置が外れた。

 

「へ、へへへ…‼︎ 死なば諸共だ‼︎ 今、俺の中にある安全装置を外す事で、間も無く爆発するぜ‼︎」

「な、何⁉︎」

「この位置、この動きじゃ逃げられんだろうが‼︎ 俺達、オルグは時を経たら再生する……だが、貴様等はそうはいかねェ‼︎」

 

 そう言ってる間に、手榴弾オルグの身体から火薬の匂いが放たれ始めた。ガオシルバーは、ガオグレーに叫んだ。

 

「く、来るな、カイ‼︎」

 

 ガオシルバーの叫びで、ガオグレーは足を止める。その刹那、手榴弾オルグは大爆発した。

 

「し…シロガネェェェ!!!」

 

 ガオグレーの悲痛な叫びが木霊した…‼︎

 

 

 

 その時、空間が歪み始めた。其処に立っていたのは陽、美羽、風太郎だ。三人は何処に降り立ったのか、と辺りを見回す。

 町は悲惨な有様であり、陽は絶句する。

 

「あ、あれ‼︎」

 

 風太郎が指を差す。其処には、ガオグレーとガオマスターの姿があった。陽は駆け寄る。

 

「グレー‼︎ 街の様子は……‼︎」

「其れ所では無い‼︎ シルバーが……‼︎」

 

 グレーが指を差した先には巨大なクレーターが出来ていた。陽が確認すると無惨に砕け散った手榴弾オルグの亡骸と、力無く横たわる大神の姿があった。

 

「大神さん‼︎」

 

 陽は慌てて駆け寄り、大神の揺り起こした。すると、微かに目を開けて大神は反応した。

 

「あ…陽…か?」

「は、はい‼︎」

 

 全身に裂傷を負い、口からは一筋の血が流れていた。また目の焦点が合ってないのを見ると、大神は目をやられているらしい。

 

「い、今すぐに手当てを‼︎」

「そ、そんな事より……早く、オルグを倒しに……行け……‼︎」

「そんな事って……大神さんを放って行けないですよ‼︎」

「どの道……もう、俺は……助からん……それよりも……地球を……守る為に……戦うのが……俺達が使命……だろう?」

「な、仲間を守れずに……何が地球を守る……ですか……‼︎」

 

 何時しか、陽は泣いていた。瞳から流れ落ちる涙が、大神の顔に落ちる。

 

「……馬鹿……泣くな……。お前は……戦士だ……」

「大神さんッ……‼︎ どうか死なないで‼︎ 貴方が居なかったら、僕達はどうすれば……‼︎」

「……もう……お前に、俺の力は必要無い……それより、此れを……‼︎」

 

 大神は右腕を持ち上げ、陽の手に三つの宝珠を持たせた。

 

「……俺の……想いを……お前に託す……頼むぞ、陽……」

「嫌だ‼︎ そんな風に言わないで‼︎」

「……だが、最後に頼みがある……ガオレッド達やガオウルフ達を……助けてくれ……そして……あいつ等に……会ったら……伝えてくれ……仲間を守る為に……無様に逃げ出し続けて……最期は命を投げ出した……馬鹿な男が居た事を……。

 地球を……頼むぞ……ガオ……ゴールド……‼︎」

 

 最後に力を振り絞り、言葉を発した大神は、そのまま目を閉じて、そのまま眠る様に息を引き取った。

 

「大神……さァん……‼︎」

 

 陽は、冷たくなっていく大神の手を握り締めながら泣いた。

 また、守れなかった……祈、摩魅、そして大神……自分にとって大切な人達を誰一人と守れなかった……そんな後悔で、陽の心はグシャグシャになる。

 

「陽よ……泣いとる場合では無いぞ……‼︎ ワシ等が、為すべき事をしなくてはならん‼︎ そうで無くては、大神の死が無駄になってしまう‼︎」

 

 近寄って来た佐熊が、陽の肩に手をやり言った。そして、大神を見つめる。

 

「ど阿呆が……ワシより先に逝きよって……‼︎」

 

 そう言った佐熊の目からも涙が流れ落ちていた。共に千年の時を越えて再会した友は、逝ってしまった……最期まで、戦士としての矜持を持って……。

 と、その際、ガオマスターが何かに気付く。

 

「新手だ‼︎」

 

 マスターの指差す方角には一つの鬼門……其処から姿を見せたのは……。

 

「やっと雑魚は散ったか」

 

 それは最後の四鬼士にして、陽とは最も因縁深い相手である焔のメランだった。

 

「さて……これで漸く、心置きなく戦えるな……ガオゴールドよ……」

 

 メランは楽しげに言った。しかし、陽は動こうとしない。その姿に、メランは、つまらなそうに言った。

 

「そんな負け犬風情に涙を流すのか、貴様は? 哀れな奴だ、そいつは……千年もオルグとして身を窶した結果、仲間を救えず、地球を守れずに逝ってしまった……負け犬の末路としては、最も誂え向きではあるがな……。そう思わんか?」

「き、貴様ァァ……‼︎」

 

 地球を守る為に命を差し出した大神の死を侮辱するメランの発言に、佐熊は怒りを滲ませた。

 其れは陽も同様だ。怒りの炎がメラメラと、胸中を焦がして来る。大神を寝かせた後、陽はメランを睨み付ける。

 

「……取り消せ……‼︎ 大神さんは命を賭けて、闘った勇敢な戦士だ! お前に、彼の何が分かる‼︎」

「死んだ後に勇敢だ、立派だのと讃えた所、そんな物は単なる敗者への慰めでしか無い‼︎ 大神月麿は、負けて死んだ‼︎ ただ、それだけの事だ‼︎」

「黙れェェ! 黙れェェェ!!! 僕の大切な仲間を侮辱するなァァァ!!!」

 

 陽は涙を強引に拳で拭い、メランと対峙する。

 

「やっと、決着を付ける気になったか?」

「お前だけは……僕の全てに替えても……絶対に倒す‼︎」

 

 優しき竜は逆鱗に触れられた事で、全てを焼き尽くす焔の戦鬼に牙を向けた。それに対して、メランは待ち侘びたと言わんばかりに、メラディウスの刃を舐めた。

 

「では……始めようか、ガオゴールド……。我と貴様の戦いを……真の強者を決める戦いを‼︎」

 

 メランが戦いを宣告した。陽の目には一切の迷いは無かった……。

 

 〜戦いの中、仲間を守る為に命を落とした大神。そんな彼の前に現れたのは、陽にとって避けうる事の出来ない強敵、メラン!

 遂に、荒ぶる竜と血に飢えた鬼の終末の決戦が幕を開けたのです‼︎〜




ーオリジナルオルグ
−機関銃オルグ、手榴弾オルグ、バズーカオルグ
地球攻略の為、派遣されたオルグ魔人達。実力ならば、デュークオルグにも引けを取らない実力者達。
手榴弾オルグは自らの安全装置を外す事で、自爆する事が可能。

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