帰ってきた百獣戦隊ガオレンジャー 19YEARS AFTER 伝説を継ぎし者   作:竜の蹄

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※今回も大幅に掲載が遅れてしまい、申し訳ありません‼︎
年末ゆえ、忙しくて執筆も滞ってばかりで……。
それでは、お待たせしました‼︎ quest52、どうぞ‼︎


quest52 聖なる鳳凰

 陽とメランが対峙し始めた時、ガオズロックが降り立って来た。中から、テトムが血相を変えて飛び出して来る。

 

「シロガネ! 」

 

 テトムは変わり果てた姿となった大神に膝を突いて呼び掛けた。しかし、大神は言葉を発さない。すっかり冷たくなっていた。

 

「……ああ……まさか、こんな事に……‼︎ 嘘だと言って、シロガネ‼︎」

 

 現実を受け入れられずに、テトムはさめざめと泣き崩れた。共に苦楽を乗り越えて来た仲間が死んだ……しかも、大神は二十年前を共に戦った大切な仲間の一人だ。その彼が、今や物言わぬ骸となって目の前に横たわっている。

 

「……済まぬ、テトム……私が彼を行かせる様に言った……。あの時、止めていれば、この様な事態には……‼︎」

 

 ガオマスターも項垂れながら、謝罪した。そもそも、敵陣に突っ込む様にと提案したのは彼だった。

 しかし、風太郎はテトムの横に立つ。

 

「僕の責任だ、テトム……もっと早く、テンマの居所を探っていれば……陽の強さに甘えていた……」

 

 風太郎もまた後悔していた。着々と力を付け、四鬼士を次々と撃破していく彼に希望を見出していた。

 ひょっとしたら、彼ならオルグ達を殲滅させる事が出来るかも知れない、と……。だが、其れ故に千年前からの大切な友を死なせる結果となった。

 ガオズロックから降りて来た猛達は居た堪れない様子で見ていたが、舞花は陽と相対するメランを見て叫ぶ。

 

「あ、あいつ⁉︎」

 

 舞花は思い出す。少し前、祈と共に居た自分を襲って来たオルグに間違い無い。

 

「何だよ、舞花⁉︎ 知ってんのか⁉︎」

「前に、アタシと祈を襲った奴‼︎」

「ま、舞花先輩……あれ……‼︎」

 

 千鶴が恐る恐ると、舞花を呼び掛けた。すると、大多数のオルグ魔人やオルゲットが、ゾロゾロと湧き出て来た。

 

「侵略が、さっきから静かだと思ったら、こんなに居たんか……‼︎」

 

 佐熊は睨み付ける。すると、オルグ達は悪辣に笑った。

 

「見ろよ‼︎ ガオレンジャーが居やがるぜ‼︎」

 

 火炎放射器の姿をしたオルグ魔人、火炎放射器オルグが言った。

 

「コイツは良いぜ‼︎ 奴等の首を取ったとありゃ、デュークオルグに取り立ててくれると聞いたぜ‼︎」

 

 ナックルダスターの姿をしたオルグ魔人、メリケンオルグが叫ぶ。

 

「今日は、燃えるぜ‼︎ 何しろ、人間を幾ら殺しても良いってんだからなァ‼︎ 我等が偉大なる主君、テンマ様のお墨付きだからよォ!!」

 

 スタンガンの姿をしたオルグ魔人、スタンガンオルグが頭部をバチバチと鳴らしながら笑う。

 何れも、オルグとしては地位の低い二本、三本角のオルグ魔人揃いだったが、其れを上回る程に、オルゲットも多数に居た。

 

「……テトム、退がっとれ……‼︎」

 

 佐熊は、オルグ達を人睨みしながら言った。テトムは大神の亡骸を抱え上げると、猛達にも告げる。

 

「貴方達も、ガオズロックの中へ‼︎」

「ウッス……テトムさん、結構、力持ちなんすね……」

 

 女性でありながら、大神を抱え上げる程の怪力を発揮したテトムに感心しながら猛達も後に続く。

 残された佐熊は、美羽とガオマスターに語り掛けた。

 

「行くぞ‼︎ 奴等、一人たりとも逃さん‼︎ 全員、叩き潰す‼︎」

「ああ、勿論‼︎」

「……行こう‼︎」

 

 佐熊の勢いに乗じて、二人も頷く。しかし、そんな二人をオルグ魔人達は大笑いだ。

 

「ギャハハハ‼︎ この兵力差が見えねェのか⁉︎ こっちは、オルゲット含めて100以上、テメェ等は三人‼︎ これじゃあ、どっちが有利かは火を見るよりも明らかじゃねェか‼︎」

「……今の内に笑わば笑え……! ワシは今、機嫌が悪い……故に……手加減なぞ、期待するなよ‼︎」

 

 大切な友を殺された一頭の熊の憤怒の咆哮が、オルグ魔人達を威嚇した。

 

 

 気が付けば大神は見知らぬ場所を立っていた。それは地平線の果て迄も続く草原と花畑……空を見上げれば、雲一つ無い青空が広がっている。

 

『何処なんだ、此処は……? だが……こんな穏やかな気持ちは久方ぶりだ……』

 

 大神は深呼吸して、腰を下ろした。戦い続きの日々、苦痛に苦痛を重ねる毎日……とても、こんな風に休憩をする暇も無かった……。

 と、その際に自身の目の前に座っている人影が居た……。

 

『あ…貴方は⁉︎』

 

 大神は、その人物を見て息を呑んだ。

 

『お久しぶりですね、シロガネ……』

 

 その人物は、自分を本名であるシロガネと呼んだ。『大神月麿』と言う仮の名では無い、自分の本当の名前を知る者、そして呼ぶ者は生きている人間では、今代のガオの巫女であるテトムと戦友の佐熊だけだ。

 そう……生きている人間では……だ。

 それは、大神にとって忘れられない顔だった。かつて、自分をガオの戦士へと誘い、戦いに中に於いて自分や仲間達の心的な支えとなってくれた、家族を失った自分にとって母とも姉とも言える大切な存在……。

 

『ムラ……サキ?』

 

 白銀色に輝く長い髪をたなびかせ、頭に金の冠をかぶり、巫女らしい白い装束を身に纏った女性……

 

 先代のガオの巫女ムラサキ、その人だった。

 

『どうして?』

『忘れたのですか? 貴方はオルグとの戦いで、不意打ちを受けて……命を落としたのですよ?』

 

 その言葉に、大神は思い出した。そうだ……自分は死んだのだ。だから……。

 

『では、ここは……あの世か?』

『正確には、この世とあの世の境目……この先に死者の魂が辿り着き、黄泉へと流されていくのですが……多くの者は必ず、この場所を通るのです……。此処は生前、此岸にて心残りを残した者達は、その未練を断ち切る為の場所でもあるの……ほら、皆が迎えに来ました……』

『皆……』

 

 ムラサキの指差す方を見れば懐かしい顔触れ、懐かしい声の者達の姿が歩いて来るのが見えた。

 大神は彼等の姿に自然と笑みを浮かべた。最早、今生では邂逅する事は叶わない、と諦めた懐かしき仲間達に向けて……。

 

 

 

 陽とメランは長い事、互いに互いを睨み合っていた。二人の間には緊迫した空気と、吹き抜ける風の音だけだ。

 メランは至極、上機嫌と言った具合だ。まるで、最高の御馳走を目の前に用意された様に……。

 

「ガオゴールド……今、我がどんな気分か分かるか?」

 

 先に言葉を発したのは、メランだ。益々、機嫌良さげに振る舞っているが、対して陽は彼への敵意しか湧いて来ない。

 

「知るか」

「……フッフッフ……我は今日と言う日を、どれ程に待ち侘びた事か……。初めて貴様と対峙した、あの日……貴様は、力を使い熟して居ない、殻をつけたばかりの雛鳥さながらだった……。

 しかし、我は確信した! この男は、何れ強大な敵となる、と! だから、我は貴様を殺さなかった……殺せる機会など、何度もあったにも関わらずに、だ……‼︎」

 

 メランは、目に見えて歓喜している。自身がライバルと認めた男が、睨んだ通りの存在となって、自分の前に居る。これ以上に素晴らしい事は無い……常に、陽を対等なライバルと見做し、成長を見守り続けて来た彼からすれば、正に今日は記念すべき日であった。

 

「……しかし、力を付けたのは貴様だけと思うなよ? 我も、貴様と再び対峙する日に備え、自身を鍛えて来た……!

 今の我は、あの日に見せた我の力を大きく超えている、と自負している……。さァ、見るが良い……我の真の力を‼︎」

 

 メランはメラディウスを天に掲げると切先から爪先まで漆黒の炎に包まれていく。炎がメランの腕を、脚を、身体に燃え広がると、ワインレッドの光沢のある体色は、黒みがかったディープレッドへと染まる。

 肩の骨が変形して外部に露出、スパイクの付いた肩当ての様な形となり、胸部には鎧状の外骨格が覆われた。

 最大の特徴はツノだ。元々の一本ツノは更に伸縮し、両側頭部より新たなツノに似た装着品が現れていた。

 得物であるメラディウスも、より刺々しく形状が変わり、新たに腕に出現した手甲状の外骨格と融合している形だ。

 遂に、メランの真の姿が露わとなった。

 

「実に久方ぶりだ……この姿で戦うとは……良い戦いをしよう……‼︎」

 

 今の彼から放たれるのは異常な程の邪気と闘気だった。その両方を帯びた気は、ビルやアスファルトに亀裂を入れる。

 更に彼が一歩、前に踏み込んだだけで、コンクリートの道が砕けた。

 

「(これが……メランの真の力……‼︎)」

 

 陽は、その強大な姿に戦慄した。彼以外の四鬼士と対峙した時も、此処までに感じた事は無かった。

 だが、恐れている場合では無い。メランの次には、テンマやガオネメシスと言った更に上に位置する強敵が居るのだ。

 奴に恐れて居ては、テンマには歯が立たないだろう……陽は、G -ブレスフォンを起動させた。

 

「サモン・スピリット・オブ・ジ・アース・ビヨンド‼︎ ガオアクセス‼︎」

 

 掛け声と共に、ガオゴールド・レインボーへと変身する。ソルサモナードラグーンを手に、メランへと先手を仕掛けた。

 メランは、メラディウスでソルサモナードラグーンを防いだ。

 

「フフフ……良い腕だ……。力も以前とは、比べ物にもならぬ程に上がっている……。しかし……‼︎」

 

 回転させたメラディウスで、ソルサモナードラグーンを弾いて剣戟を浴びせ始める。だが、ガオゴールドは其れを受けて凌いだ。

 

「良いぞ、良いぞ‼︎ 反応も良くなっているぞ‼︎ ならば……これなら、どうだ‼︎」

 

 狂喜に身を震わせながら、メラディウスを袈裟斬りにした。すんでの所で後退し直撃は回避したが、刃から発せられた剣風がゴールドを吹き飛ばした。

 

「‼︎」

 

 凄い勢いで、吹き飛ばされたガオゴールドはビルの壁に叩きつけられた。胸部から腹部に掛けて袈裟状の切り傷が付けられ、痛みと共に火を押し付けられた様な熱さを感じる。

 一挙一動、全てを攻撃とするメランには一切の隙は無い、正面に、メランが歩み寄って来る為、立ちあがろうとするが背部に走る痛みにより阻害される。

 咄嗟にメラディウスを振り上げようとしたメランに対し、ゴールドは先手を取って、ソルサモナードラグーンをガンモードにして、狙い撃った。しかし、其れに対し、目にも止まらぬ速さで躱すメラン。

 その刹那、一瞬の隙を見出したゴールドは素早く起き上がり、メランの顔に刃を振り下ろす。右目を含め、顔半分に切り傷を付けて、片目を潰す事に成功した。メランは顔から夥しい量の血を垂れ流している。

 しかし、その様子に関わらず、メランは口角を吊り上げて笑った。

 

「……フフフ……矢張り、良い物だな……‼︎ 己と肩を並べる、若しくはそれ以上の強者と対峙する、と言うのは……‼︎」

 

 淡々と語り始めるメランに対し、ガオゴールドは黙ったまま、傾聴した。

 

「弱き者を叩き潰した所、勝利に酔い痴れる高揚感も……戦いを制した達成感も湧いて来ん……。

 己が勝つか……敵が勝つか……。その間に、計略も駆け引きも脅しも必要無い……ただ、最後に立って居た者が強者と言う証……‼︎

 実に単純だが……これ以上に、心地良い戦いを我は他にて、遂に味わえなかった……決着は直ぐに付いてしまうからな……‼︎

 ああ……漸く、見つけたよ……我を倒し得る者を……‼︎」

 

 メランは心の底から満足している様子だった。オルグとしては最上位の立場に位置し、力も手に入れながらも彼は満たされた事は無かった。

 自身と肩を並べ、かつ自身を倒せるかも知れない戦士……彼は、ずっとそれを探していた。

 しかし、その様な戦士は現れず、メランが少し撫でただけで、あっさりと壊れてしまう程に脆弱な者達ばかりだった。

 故に、メランは力を持て余し、退屈していた。そんな矢先、目の前に現れたのが、ガオゴールドだった。

 甘さの抜けきらない戦士の真似事をしただけの若造……それが、ガオゴールドを見たメランの最初の印象だった。

 しかし、数多の強敵を打ち破っていく内に、彼は強くなって行く。時には、自身が教えを授けた事もあったが、それをも彼は吸収し、四鬼士達をも倒す程となった

 彼が、ヤミヤミに勝ったと聞いた時は、驚き以上に歓喜した程だ。ヤミヤミは自身が認めた数少ない友にして、好敵手だった……その彼を倒す程の実力を、ガオゴールドが手に入れた……ならば、彼と戦う好機は今しかない……そう決したメランは、オルグリウムを後にして、彼の前に現れた……。  

 

「……我はな、ガオゴールド……この世に生まれ落ちた時、二本、三本角のオルグ魔人に、少し勝る程度の力しか無い脆弱なオルグだった」

「それが……なんだ?」

「本来なら、デュークオルグになり得ぬ我が何故、デュークオルグとなって四鬼士などと言う大層な異名を付けられているか……。

 答えは簡単だ、ガオゴールド……。我は、生きている全ての行動を、力の求道へと傾けた……。ゴーゴはオルグ本来の凶暴さで、ヒヤータは卑劣かつ狡猾さで、ヤミヤミは忍耐さで……それぞれの力を磨いて来た……。

 しかし、我は……己の力を高める事を一点に集中させた‼︎ 純粋な力は、研ぎ澄まされた技さえも凌駕する‼︎

 其れこそ貴様等、人間が一生、鍛錬を続けても、到達出来ないであろう境地に我は達する事が出来たのだ‼︎」

 

 メランは誇らし気に豪語した。今の自分が居るのは、他のオルグにある生まれついての才能などでは無く、純正にメラン自身の努力の賜物である事だと語る。

 そう言った意味では、メランはオルグよりも寧ろ、人間に近しい感情を持っていた。人とオルグの狭間で苦悩しつつ、人間でありたいと願った摩魅の様に……。

 

「……破壊する事を本能とするオルグの生き方に背いてまで、己を強くして……アンタは何になりたいんだ? メラン」

「……そんな事を知って、どうする? 我が、人間の味方になり得る、と甘い期待を寄せているのか?

 だとしたら無理な相談だな……。我は確かに、破壊にも支配にも興味は無い……強いて言えば、己を鍛え続ける事こそが、我自身の本能であり矜持だ。貴様が、飽くまで人間として戦う事と同じくな……。

 貴様が倒して来た、あの三人も……思想や経緯は異なれど、己の矜持を持ち、その矜持の果てに散っていった筈だ……」

 

 ばっさりと切り捨てるメランの言葉に陽は、やはり人間とオルグは別の生き物だと痛感させられた。

 しかし……それでも、諦める訳には行かない。摩魅、ガオネメシス……あの二人を救うには、彼を始めとしたオルグ達の根底にある『オルグ至上主義』を叩き潰してやらなきゃ、ならない……。

 ガオゴールドは、ソルサモナードラグーンを直立に構える。

 

「……ならば、僕は……お前を越えて行く‼︎ お前を倒して、オルグを倒して……地球を救う‼︎」

 

 その言葉に、メランはニイィィッと口角を吊り上げた。

 

「……宜しい……。では、我が断ち斬ってやろう……‼︎ 貴様の甘い信念と共にな……‼︎」

 

 それと同時に、メラディウスに灯る黒い炎が益々、燃え盛る。相対するは、黒々と燃えて全てを焼き尽くす漆黒の炎、相対するは、煌びやかな光と虹色の後光で全てを照らす金色の太陽……。 

 

 

 

「そいやァァ‼︎」

 

 ガオグレーは、グリズリーハンマーで火炎放射器オルグの頭部から叩き下ろした。その後ろから、メリケンオルグがグレーを殴りつけようとしたが……

 

「甘いわァァ‼︎」

 

 ガオグレーは左手でメリケンオルグの腕を鷲掴みにし、多数のオルゲット諸共、投げ飛ばした。

 その姿は正に暴れ回る熊と呼ぶに相応しい姿だった。

 

「荒れてるわね、グレー……‼︎」

 

 ガオプラチナは遠方より、フェニックスアローで援護しながら、怒りに任せて暴れ回るグレーの姿に思う所がある様子だった。

 長年の友にして、千年前からの付き合いである大神を殉死と言う形で喪った。だから、そのやり場の無い怒りを、オルグ達にぶつけているのだろう。

 と、その際に、スタンガンオルグがガオプラチナの背後から迫ってきた。

 

「死ねやァァ‼︎」

 

 スタンガンオルグは奇声を発しながら、ガオプラチナに飛びかからんとする。其れを横から飛んできた剣に両腕が斬り落とされた。

 

「ぐあァァ!!?」

 

「月光の氷剣‼︎」

 

 その状態でスタンガンオルグの腹部を突き刺す。すると、スタンガンオルグは一瞬で凍りつき、粉々に砕け散った。

 

「油断するな! 一瞬の気の迷いが命取りとなるぞ‼︎」

 

 ガオマスターは油断していたプラチナを叱責した。ガオプラチナはかぶりを振る。自分は今、ガオの戦士なんだ‼︎ 逃げたり、怖気付いたら行けない……そんな思いが、彼女に鞭を打つ。

 

「(岳おじさん……‼︎)」

 

 弱気になりそうな時、浮かぶのは大好きだった叔父の顔……こんな時、彼ならどうするのだろう?

 ガオマスターから聞いた鷲尾岳は、ガオレッド不在の時のリーダーとして、時にはリーダーに喝を入れる役割を持っていた。

 だが、今ここには岳は居ない。だから、自分がしっかり戦士として務め上げなければ……と、美羽は折れそうになってい自分を奮い立たせた。

 

 

 ガオゴールド、メランの戦いは佳境と向かいつつあった。互いの刃を打ち合い、時には廃車と化した車や瓦礫を巻き込む攻撃を繰り出し、激しい斬り合いの内に場所は、更地となりつつある。

 ゴールドはソルサモナードラグーンでメランの首を狙った。しかし、彼の首には刃は通らない。

 

「生憎だな……我の五体は限界まで研ぎ澄まし、鍛え上げられている‼︎

 貴様の攻撃では、我が身を裂くには……温い‼︎」

 

 そう言って、メランは強烈な蹴りを浴びせ、ゴールドの体勢を崩した。其処へ、ガオゴールドの首を鷲掴みにし、万力を込めて締め上げる。苦しげに呻きながら、ゴールドはソルサモナードラグーンでメランの負傷している右目を撃ち抜き、力を抜いた所で追い討ちを仕掛ける。

 その様な攻防一体の激戦を繰り広げながら、二人の戦いの余波で瓦礫は取り除かれ、互いに取って足場の取れた地の利を活かし易い環境となった。

 メランはメラディウスを逆手に持ち、ゴールドを睨み付ける。ゴールドも然りだ。

 

「……腕を上げたな、我が好敵手よ……」

「……お前もな……」

 

 敵対し適合する事はなくとも、互いに認め合う節のあるガオゴールドとメラン。ゴールドは誰かを守る為、メランは己の矜持を守る為……。

 細かい部分は異なるが、何かを守る為に剣を奮う二人の戦士は、長き戦いの中で、とうとう単なる『敵』では無く、好敵手として意識する事となった。

 

「……それだけに惜しい‼︎ 我は貴様との戦いの因縁を断ち切らねばならないとは‼︎ 出来れば、貴様とは、この世の果てまで戦い抜きたいがな‼︎」

「……悪いが、お断りだ‼︎ 僕は、お前の後ろに居る敵を倒す使命がある‼︎」

「……そうか……ならば……‼︎」

 

 メランは手に持つメラディウスを正しく持ち直す。すると刃に漆黒の炎が立ち上がり、ビルを越す巨大な刃と化した。

 かつて、ティラノオルグを一刀の下に叩き伏した、あの技だ。

 ガオゴールドも同時にソルサモナードラグーンを構えた。すると、六つの宝珠が、弾倉へと装填された。

 すると、刃が虹色に輝き出し、メラディウスと同様に肥大化した。

 

 

「虹陽竜剣・極ィィ!!!」

 

「煉獄……豪剣!!!」

 

 

 虹色と漆黒の刃が、衝突する。すると、ぶつかり合った二振りの刃が激しい火花を散らしながら、空間にて拮抗し合う。

 この時点で、ガオゴールドとメランの互いの力は、ほぼ互角となっていた。

 

「ぐぐぐ……!!!!」

「ヌウゥゥゥッ!!!!」

 

 互いに苦悶の表情を浮かべながら、鍔迫り合う二人。その余波で、ガオゴールドのマスクにヒビが入り、砕けた部位から陽の表情が僅かに見えた。メランも全身に裂傷が入る程、力を入れている。

 しかし、ガオゴールドに力を貸す六聖獣達のガオソウルが、ソルサモナードラグーンに力を上乗せした事で、ガオゴールドに軍配が上がる。

 徐々に、虹色の光刃が漆黒の炎刃を押し戻して行く。

 

「うおォォッ……!!?」

「これで……終わりだァァ!!!」

 

 ガオゴールドが全身の力をぶつける。そうして、虹色の光刃がメランの身体を包み込んだ。

 

「ぐあァァァァ………!!!!!!」

 

 メランは、虹色の光刃の中に消えて行った……。残されたガオゴールドは肩で息をしながら、跪く。

 

「はァ…はァ……勝った…‼︎」

 

 苦戦こそしたが、強敵を倒した事に、ガオゴールドは喜ぶ。しかし、その考えも束の間、メランの声が聞こえて来る。

 

 

「……フッフッフッ……。見事だ、ガオゴールド……‼︎」

 

 

 砂煙の中から姿を現すのは、ズダボロとなったメランだ。虫の息となりながらも、生きていた。しかも、笑っている。

 

「……まさか、我を此処まで追い込むはな……やはり、貴様は我の睨んだ通りの男だ……。

 認めようでは無いか……貴様は確かに強い……しかしな……」

 

 そう言葉を切った瞬間、メランはメラディウスの刃を握り潰した。すると、メラディウスから溢れ出た炎がメランの身体に吸収され始めた。

 見る見る間に、メランの身体は巨大化して行く。

 

 

「我は貴様以上に強い」

 

 

 巨大オルグ魔人と化したメランの傷付いた身体は再生し、両掌に新たなメラディウスが握られていた。

 しかも背部から、炎が翼の様に形成され、その姿は炎を身に纏う有翼の悪魔そのものだった。

 その二振りのメラディウスを連結させ、両刃の大剣として装備したメランは、ガオゴールドを見下ろす。

 

「さァ……呼ぶが良い、貴様の切り札達をな‼︎ 貴様とは飽くまで、対等に勝負する事に意味がある‼︎」

 

 メランが高らかに宣言する。確かに巨大オルグ魔人と互角に渡り合うには、パワーアニマルしか居ない。しかし、自らパワーアニマル達を呼ぶ様に促したのは、メランが初めてだ。

 余程に自信があるのか、其れとも裏があるのか……だが、今はそんな事を考えている暇は無い。

 メランを倒し、オルグ達の本拠地へ乗り込まなければ、この惨劇は何時迄も終わらない。寧ろ、被害を甚大させるばかりだ。

 ガオゴールドは、ソルサモナードラグーンを銃形態にして天に掲げる。

 

「幻獣召喚‼︎」

 

 召喚されるは、ガオドラゴン、ガオユニコーン、ガオグリフィンの三体。合体し、精霊の騎士ガオパラディン・レインボークロスへと変形した。

 

「誕生! ガオパラディン・レインボークロス‼︎」

 

 ヤミヤミを葬った虹の鎧を纏う聖騎士が、炎の鎧を纏う悪鬼に相対する。

 先手を取り、ガオパラディンが、ユニコーンランスをメランに突き出すが、漆黒の炎により阻まれてしまう。

 続いて、グリフシールドを展開して、グリフカッターを放つ。だが、メランの防御を崩せない。

 

「どうした、ガオゴールド‼︎ 貴様の力は、その程度か⁉︎ 我を、失望させるな‼︎」

 

 メランは挑発しながら、メラディウスで幾度と斬り捨てる。グリフシールドでも防ぎ切れない凄まじい威力だ。

 

「クッ……‼︎ 幻獣武装! ガオパラディン・ウィップ&アーチャー‼︎」

 

 すかさず、ガオナインテールとガオワイバーンのコンボを召喚する。

 遠距離からの狙撃で距離を取り、攻撃しようとするが……。

 

「小賢しい……。そんな付け焼き刃が通用するか‼︎」

 

 メランが剣を振るうと、炎の弾幕が放たれてガオパラディンに命中する。ありとあらゆる局面にて、メランには隙が無い。

 

「どうやら、勝負あった様だな‼︎」

 

 勝ち誇りながら、メランはガオパラディンの首元にメラディウスを突き付ける。悔しいが、戦闘力はメランの方が上回っていた。

 

「ううゥ……このままじゃ……‼︎」

 

 度重なるダメージにより、ガオゴールドは台座を支えに辛うじて立って居る状態だ。

 と、その際に、ゴールドの脳裏に声が聞こえて来た。

 

 〜ガオゴールド……私を召喚なさい‼︎〜

 

 それは、ガオフェニックスの声だ。ゴールドの目の前に、ガオフェニックスの宝珠が浮かび上がる。

 と、それと同時に、ガオプラチナの声もする。

 

 〜ゴールド、早く‼︎ ガオフェニックスの力を‼︎〜

 

 どうやら、プラチナの想いがガオフェニックスの宝珠を届けてくれたのだ。ゴールドは意を決して、その宝珠を手に取る。

 これが最後だ。ガオゴールドは宝珠を台座にセットする。

 

「幻獣武装! ガオフェニックス‼︎」

 

 ガオゴールドの叫びが、コクピットに木霊した。すると宝珠は輝き出す。その際、曇天を掻き分け、天から一羽の巨大な鳥型のパワーアニマルが飛来する。

 ガオフェニックスだ。

 

「ぬゥ⁉︎」

 

 メランは、ガオフェニックスの登場に驚いたが、何処か楽しんでいる様子だ。ガオフェニックスが一声、叫ぶと、その長い首を直立させて翼を真っ直ぐに展開した。

 その状態で、ガオパラディンの背面へと幻獣武装され……

 

「誕生‼︎ ガオパラディン・エタナールクロス‼︎」

 

 ガオゴールドの掛け声と同時に、無限の生命と消えぬ聖火を持つ、聖獣の騎士王が誕生した……。

 

 

 〜窮地に追い込まれたガオパラディンに、ガオフェニックスが幻獣武装、新たなる変身形態、エタナールクロスへと至りました‼︎

 この新たな力が、メランの漆黒の炎を打ち破るのでしょうか⁉︎〜




※本当は今回で、メランと決着を付けるつもりだったのですが、自分的に納得行かなかった為、決着は次話へ持ち越します‼︎

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