帰ってきた百獣戦隊ガオレンジャー 19YEARS AFTER 伝説を継ぎし者   作:竜の蹄

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※また掲載が一週間も遅れました‼︎
職場を異動になり、思うように執筆できませんでした、すいません‼︎

今回は、スサノオの過去編に入ります‼︎


quest59.5 堕ちる須佐男、叛逆する狂犬

 ガオレンジャー達が、テンマと戦っている時……

 

 ガオゴッドとガオインフェルノによる攻防も繰り広げられていた。ガオマスターの搭乗するガオゴッドは、これ迄で最高の出力を発揮した。

 だが、ガオネメシスの搭乗するガオインフェルノも負けていない。ムンガンドセイバーを伸ばし、ガオゴッドへと攻撃を仕掛けるが、その刹那、ガオゴッドも瞬間移動して、背後より神獣荒神剣で反撃する。

 

「クッ……小賢しい……‼︎」

 

 忌々しげに、毒吐くネメシス。其れに対し、マスターは叫ぶ。

 

「スサノオ‼︎ これ以上は止めるんだ‼︎ もう、お前の身体は限界の筈だ‼︎」

 

 マスターは懸念していた。スサノオの身体に起こる異変に……そして、それは確かに、ネメシスの身体を蝕みつつあった。

 

「だ…黙れ…‼︎ 俺は……成し遂げるんだ……‼︎ 人類へ……世界へ復讐を……‼︎」

 

 そう言いながら、ネメシスは苦しげに呻く。既に、ネメシスの身体は限界だった。二千年と言う悠久の時間……そして、人の身体に邪気を流し込むと言う行為は、スサノオの身体を歪な迄に変異させた。

 辛うじて、ガオスーツで見た目を維持しているが、これ以上は保たないだろう。

 しかし……もう、戻れない。一度、外れてしまった歯車は、二度と噛み合わないのだ。

 どちらにせよ、自分には滅亡しか残されていない。ならば、世界を共に滅ぼす迄だ。

 ガオインフェルノは、バイコーンホーンを突き出し、ガオゴッドの胴体に突き立てる。ガオゴッドは火花を散らし、大きく仰け反る。

 

「……姉さん……もう少しだよ……! もう少しで……世界を……滅ぼせる……! 姉さんを見捨てた世界に……復讐を……‼︎」

 

 ネメシスのマスクにある瞳が悲しく輝いた。その瞳には、かつて姉弟揃って幸せだった頃の風景が、映し出される……。

 

 

 

 遠い昔……まだ、日本という国が生まれる、ずっと以前……。小さな村落の集まりでしか無かった小国……大きな戦も無く人々は、獣や木の実、魚を捕えながら生きていた。

 だが、最近は農業の様な物を人々は覚えた。植物の種を地に撒き育てる事で、人々は「田畑」を考案したのだ。

 一心に地面を耕す人々……その様子を見ながら、一人の若い女性が共に農耕に励んでいる。

 

「アマテラス‼︎ こっちへ来てくれ‼︎」

 

 逞しい体格の青年が、女性に呼び掛ける。女性は振り返った。腰まで伸ばした艶やかな黒髪を、後ろで結っている美しい女性だ。

 彼女の名は、アマテラス。元々は、この村の住人では無く異国の地より訪れた女性だ。

 最初は異邦人を見た事が無い村民に警戒されたが、彼女が村にもたらした『叡智』は、人々の暮らしを一気に豊かにした。

 今では、アマテラスを「異人」と呼ぶ者は誰も居ない……寧ろ、村人達から頼りにされる存在となっていた……。

 

「どうしたのです?」

「スサノオだ‼︎ また、スサノオが暴れてる‼︎ アンタじゃなきゃ止められん‼︎」

 

 青年の言葉に、アマテラスは、ハァ……と溜め息を吐く。だが、その表情は何処か微笑ましげだった……。

 

 

「スサノオ、貴様‼︎ これは何の真似じゃ‼︎」

 

 年寄り達は騒ぎ立てている。目の前には巨樹が倒れ伏し、その上に胡座を描いて座る青年が居た。漆黒のザンバラ髪に、上半身を裸にした筋肉質の青年だ。手には身の丈ほどもある大剣を握りしめている。

 

「この木は、ワシ等の御先祖様の霊が宿る神木じゃぞ‼︎ 其れを全部、切り倒してしまうとは……この罰当たりが‼︎」

 

 年寄りは憎々しげに、スサノオを罵る。しかし、スサノオは悪びれる様子を見せない。

 

「何が神木だ……唯の木じゃ無いか! こんな村の外れに生え茂っていたら、村を広げる事も出来ない。それに、この木が生えている事で折角、種を蒔いた作物が一向に育たない……だったら切り捨てて、薪にしたり家を建てたりしたら余程、役に立つじゃ無いか……」

「な、なんと無礼な口を……‼︎ アマテラス様の弟じゃからと大目に見ていれば、付け上がりおって‼︎」

「この悪童め‼︎ 今日と言う今日は容赦せんぞ‼︎」

 

 年寄りは、カンカンに怒り狂い、スサノオに折檻しようとする。其処へ、アマテラスが駆け寄って来た。

 

「皆さん、どうか怒りを鎮めて下さい‼︎ スサノオには、理由があっての事なのです! 木を切る様に彼に頼んだのは私です‼︎」

「な、なんと⁉︎ アマテラス様、何故に神木が切り倒す事を⁉︎」

 

 アマテラスの言葉に、年寄り達はどよめく。アマテラスは穏やかに言った。

 

「今、この村全体を水路を引こうとしているのです。この村の外れにある川より水路を開通すれば、村全体に水が潤され、田畑も良く育ちます。何より、この木々達は村の地下にある水脈を吸って成長し、本来なら育つべき田畑の成長を妨げていました……。

 村を豊かにする為には、この木々を切り倒すしか無かったのです……」

「……事情は分かりました……。しかし! このスサノオが問題を起こしたのは、今日が初めてでは無いですぞ‼︎

 村の食糧用の猪を勝手に殺したり、家を壊したり……最早、我々も我慢の限界じゃ‼︎」

「……あの猪は育ち過ぎて食えたもんじゃ無い……猪の餌だって馬鹿にならないしな……。家にしたってそうだ。あんな苔むした木で建てた家など一雨来たら、簡単に崩れ去るさ……」

 

 スサノオは、ぶっきらぼうに吐き捨てた。益々、年寄り達は激怒した。

 

「こ、この……言わせておけば……‼︎」

「もう許さん‼︎」

 

 年寄り達は口々に怒鳴り散らすが、アマテラスが宥めた。

 

「スサノオ、大人達を怒らせる様な事を言っては駄目よ…。ちゃんと謝罪なさい…」

 

 彼女は諭す様に、スサノオを嗜める。すると、さっきまで不貞腐れていた様子だった彼は、急に借りた猫の様に大人しくなり…

 

「…はい、姉さん…。ごめんなさい……皆さん…」

 

 と、シュンとしながら謝り出す。体格は、アマテラスよりずっと大柄だが、姉の前に立つ彼は小さな子供の様に身体を竦めた。

 その様子に、アマテラスは満足したのか、村人達に言った。

 

「どうか、スサノオを責めないであげて下さい。この子は、とても純粋なのです。私達の暮らす村を良くしようとしているだけなのです」

 

 彼女の穏やかな口調は、殺気だっていた村人達の落ち着かせるには充分だった。

 漸く怒りを鎮めた村人達は、渋々ながらも解散して行った。とは言え、スサノオを良く思わない彼等の内心は、穏やかでは無い。

 

「全く……アマテラス様は何故、あんな悪童を庇われるのか…」

「今に村に、厄介をもたらすぞ…」

 

 そう、ブツブツと呟きながら、村人達は仕事へと帰って行った。

 残されたアマテラスとスサノオは互いに顔を見合わせる。

 

「彼等を嫌わないであげてね、スサノオ……」

「別に、どうだって良い……。俺は姉さんが笑顔で居てくれたら……それで良い…」

 

 そう言ったスサノオは優しい顔になる。アマテラスも笑った。

 

 

 アマテラス達、三姉弟達は元々、この村の出身者では無い。ある日、突然、旅人として村へやって来たのだ。その時、村では子供ばかりが亡くなる、と言う奇病が流行っていた。

 大人達は高熱に苦しむ子供達の頭を冷やし、祈祷師の言葉に従って祈りを捧げるが、その甲斐も虚しく一日、また一日と経つ内に死んでいく。

 村人達は呪われた、と嘆き悲しんだが其処に現れたのが、アマテラスだった。

 彼女は子供達の様子を見て、二人いる弟達に命じて山から山菜を取ってこさせた。その山菜を擦り下ろし火にかけ熱した物を、子供達に飲ませて行く。そうすると、熱にうなされていた子供達は、たちまちに良くなった。

 こうして村人から絶大な信頼を得た彼女は村に居座るに至った。薬師としてだけでなく、更に彼女は並の祈祷師を上回る力を持っていた事から、次第に村長としての地位を得た。

 この村に暮らし始めてから半年となるが……今では、誰よりも村の暮らしに馴染んでいた。

 

「姉上……やはり、奴等の気配が……」

 

 村で一番、大きな屋敷の中にて、アマテラスと話す若い男……彼女の弟にしてスサノオの兄、ツクヨミだ。

 スサノオは胡座をかいて寛いでいる。

 

「そう……。やはり、この地に集中しているのね…‼︎」

「ああ……鬼共の動きが活発して来ている……。近付いているらしいな……奴が…‼︎」

「雄呂血か?」

 

 其処へ、スサノオが口を挟む。そもそも、アマテラス達が旅をしていたのは、その者を探していたからだ。

 

「間違いありません……。雄呂血こそ鬼達の親玉にして、災いの権化……奴を倒さない限り、被害は止まらない……‼︎」

「心配は要らん、姉さん‼︎」

 

 スサノオは勢いよく立ち上がる。

 

「雄呂血なぞ、この剣で血祭りにしてくれる‼︎」

「スサノオ、油断は禁物だ。奴等には人の作った剣や槍は効かぬ……対抗出来るとしたら……六聖獣の力を借りるしかあるまい……」

「そうですね……今こそ、彼等の力を……‼︎」

 

 アマテラスは振り返る。其処には祭壇が置かれて、南斗六星の形に嵌め込まれた宝珠があった。彼女は御幣を手に持ち、宝珠の前で巫女舞を始める。

 

 

 〜南の星々を司る六柱の神々よ……遂に、鬼達の魔の手が迫って参りました…

 人々の平和な日常を守り、母なる大地を守る為にも貴方様方の力が必要なのです…

 イザナミの子、アマテラス、精霊の巫女の名の下に嘆願します……神々の意思を、お伝え下さいませ……‼︎

 

 ハアァァァ……‼︎〜

 

 

 祈りの言葉と巫女舞を捧げながら、アマテラスは最後に大きく叫ぶ。すると、急に意識を失った様に倒れる。

 

「姉さん⁉︎」

「落ち着け、スサノオ‼︎ 精霊の神々が、姉上と交信しているのだ……‼︎」

 

 取り乱すスサノオを、ツクヨミは宥めた。暫しの間を置き、アマテラスは、ムクリと立ち上がる。

 

「ツクヨミ、スサノオ……精霊の神々の神託を受けました……‼︎ 彼等の協力を得られ、雄呂血を迎え撃ちます‼︎

 スサノオ……貴方に此れを……‼︎」

 

 アマテラスは台座の下に置かれていた剣を手に取り、スサノオに渡す。

 

「これは日輪の剣……精霊達の加護を受けた神剣です……。 ツクヨミ、貴方には此れを……‼︎」

 

 そう言ってアマテラスが、ツクヨミに渡したのは鏡の様に煌めく盾だった。

 

「これは破魔の盾。あらゆる攻撃による事象を防ぎ、邪気をも跳ね返す力があります……。

 この神器と宝珠……此れ等を合わせた時、精霊達は降臨し鬼達を祓う、と伝えられています……」

 

 アマテラスは台座に嵌る宝珠を指す。余談だが、珠、鏡、宝剣……この三つの物は、後世にて『三種の神器』と呼ばれ、代々に王権の象徴として受け継がれる三つの宝具の雛形となる……。

 

 スサノオ、ツクヨミは、それぞれに授かった神器を握り、覚悟を決めた……。

 

 

 

 それから数週間後……アマテラスの予言通り、鬼達の軍勢が押し寄せて来た。鬼達を率いるのは、異形な鬼達を上回る異形な姿の怪物だった。

 大柄な鬼達を見下ろす程にガッシリした巨躯、筋肉隆々な二の腕には、赤黒い鱗が生えている。頭部から天を衝く程に長いツノ、耳まで裂けた口内には、ギラギラとした牙が生え並んでいる。

 そして大きく見開かれた両眼は血の様に真っ赤に染まっていた……蛇が鬼となった様な、悍ましい外見……この者こそ、鬼達を率いる王、雄呂血だった。

 

「御頭‼︎ あれが、人間共の住む場所ですぜ‼︎」

 

 右手に立つ赤鬼が言った。雄呂血は蛇の様に、長い舌をチロチロと出して舌なめずりした。

 

「ああ……人間の匂いがプンプンする…! そして忌まわしい巫女の匂いもな……‼︎ 奴等の故郷を壊滅させた際、取り逃した時は流石に、ヒヤリとしたがな……。だが、それも今日で終わりだ‼︎」

 

 雄呂血は悪辣に北叟笑む。そして控える鬼達に指示を出した。

 

「者共‼︎ 儂等、鬼達の力を知らしめてやる時が来た‼︎ 驕り高ぶる人間共を皆殺しにしろ‼︎」

 

「オオオォォォォッ!!!!!」

 

 血に飢えた鬼達は、その邪悪な本性を隠す事なく、天に届かんばかりに咆哮を上げた。

 

 

「そうはさせません‼︎」 

 

 

 突如、威嚇する様な声が響き渡る。雄呂血は、その姿を見て、ニヤリと笑った。

 

「現れたな、巫女‼︎」

 

 鬼達の前に立ちはだかるのは、巫女装束を着たアマテラスと、彼女を守る様に左右に構えるスサノオとツクヨミ。

 

「これ以上、蛮行を重ねる事は許しません‼︎」

「フッフッフッ……これだけ潤沢とした地……低俗な人間共には勿体ないわ……‼︎ 何より……我等、鬼は殺してこそ、鬼だ‼︎」

「そんな与太話は聞き飽きたよ……‼︎」

 

 スサノオは日輪の剣を構える。雄呂血は右手を翳すと、右手が複数の蛇へと変わる。しかし、スサノオは全て斬り捨てた。

 

「……姉さんは……俺が守る‼︎」

 

 スサノオは、単身で駆け出す。ツクヨミは驚愕した。

 

「待て、スサノオ‼︎ 一人では危険だ‼︎」

 

 ツクヨミが止めるのも聞かず、アマテラスは迫り来る鬼達を斬り倒して行った。彼の様子に、雄呂血は目を見張る。

 

「……ほう……人間にも、中々の猛者が居るのだな……‼︎」

 

 彼が驚くのも無理はない。スサノオの強さは普通では無い。迫り来る鬼達を、土塊を蹴飛ばすかの様に斬り伏せて行く。

 その姿は人間では無く、寧ろ鬼のそれに近い。雄呂血は、何かを思い立った様に嗤った。

 

 

 それから戦いは三日三晩に渡って繰り広げられた。

 スサノオは活躍により、雄呂血の引き連れてきた配下の鬼達は殆ど全滅する至った。しかし、雄呂血は焦りを見せない。

 

「血に飢えているな?」

「何?」

 

 突如、彼の発した言葉に、スサノオは首を傾げた。

 

「貴様の目を見れば解る……。血に飢えて……破壊を好む目だ……貴様は、人間の命を守る事など、どうでも良いと思っているな?」

「黙れ‼︎ 鬼如きが、人間の心を語るな‼︎」

 

 スサノオの反論に対し、雄呂血は口をめくり上げ笑った、

 

「愚かな……貴様は何も分かっていない……。貴様は、何れ真実を知る日が来る……その時、自分の守っていた者が守るに値したい物だと理解するだろ……‼︎」

 

 最後まで言い切る事なく、雄呂血の首が刎ね飛ぶ。スサノオの剣が、彼の首を斬ったからだ。首はゴトリ、と地べたに転げ落ち、頭を失った胴体も倒れ伏した。

 

「戯れ言は終わりだ……続きは、黄泉で吐いているんだな……‼︎」

 

 スサノオは冷たく吐き捨てた。だが……

 

 

「ククク……鬼の首が、そう簡単に取れると思ったか……‼︎」

 

 

 急に喋り出す。雄呂血の首が、不気味に笑いながら浮かび上がる。

 

「生きている⁉︎」

 

 スサノオは流石に驚愕した。すると、斬り倒された胴体も立ち上がり断面から、邪気が溢れ出した。

 邪気は形を成して、八つの頭を持つ巨大な蛇の様な化け物として暴れ始めた。

 

「鬼は不滅なり‼︎ 儂は未来永劫、人間共を苦しめる厄災となるのだ‼︎」

 

 雄呂血の首は狂笑しながら、八つの頭で四方を襲い始める。蛇の口から垂れ流された邪気は大地を腐食させ、植物を枯らして行く。

 

「な、何という事を……‼︎」

 

 アマテラスは、その非道な行いに絶句する。このままでは、辺り一面が枯れ果ててしまう。

 アマテラスは祈りを始めた。

 

「ツクヨミ! スサノオの援護を‼︎」

「分かった‼︎」

 

 ツクヨミは破魔の盾を構えて、雄呂血へと向かって行く。邪気の蛇は大口を開けて、ツクヨミに襲いかかって来た。

 しかし、ツクヨミが盾を翳すと、精霊の力を得た盾は結界を出現させて、蛇の頭を防いだ。

 邪気の蛇は、ジュウッ…と焼け爛れた様な音を上げながら消滅する。だが、直ぐに頭は再生した。

 

「諦めろ、人間共よ‼︎ 我が力の前に、貴様等などの力は及ばんわ‼︎」

 

 雄呂血は蔑みに満ちた様に言い放つ。しかし、スサノオは諦めずに、日輪の剣を振りかぶり、雄呂血へと向かって行こうとした。

 それを、ツクヨミが止めた。

 

「無茶はよせ、スサノオ‼︎ 下手に攻撃すれば、我々が不利だ‼︎」

「なら、どうしろと言うのだ‼︎」

「あれを見ろ‼︎」

 

 ツクヨミが指を差すと、アマテラスが光り輝いた状態で宙に浮遊していた。その周りには六つの宝珠が浮かび上がり、其れに惹かれる様に巨大な六体の獣達が出現した。

 竜、馬、鷲、狐、飛龍、そして鳳凰……舞い降りた六体の精霊の化身たる獣達は、アマテラスの祈りに応え、姿を現したのだ。

 

 

 〜地上を汚す害悪共よ‼︎ 貴様等の暴挙も、此処までだ‼︎〜

 

 

 竜は高々に吠えた。それに対して、雄呂血は忌々しげに睨む。

 

「地上の生み出した獣もどきが、何を偉そうに‼︎ 我が邪気の前には貴様等の力なぞ、蠅に等しいわ‼︎」

 

 そう叫んで、雄呂血は蛇の頭を精霊達に迫らせた。しかし、鳳凰が翼を羽撃かせると、金色に煌めく炎の壁が現れた。

 邪気の蛇は苦しげに呻きながら、次々に消滅して行った……。

 

「鬼の王よ、彼等の力は大地の命そのもの……大地を汚す存在である貴方達には毒となるのです……」

 

 アマテラスの言葉を聴いた雄呂血は、ニタァッと笑う。

 

「……戯け共めが……。我々を生み出す秘密を知れば、貴様等は間違いなく自分に絶望するわ……‼︎」

「負け惜しみなど、見苦しい奴め‼︎」

 

 スサノオは日輪の剣を構える。すると剣は形を変え、光り輝く光剣となった。そして、嘲り笑う雄呂血の額に突き刺した。

 

「……スサノオ……予言してやる……‼︎ 貴様には……未来永劫に続く呪いを掛けた……‼︎ 貴様は、やがて……全人類に絶望し……憎悪し……永久に満たされぬ飢渇に苛まれ、生き続けるだろう……‼︎

 精々、苦しみ足掻くが良い……ハッハッハッ……‼︎」

「黙れ‼︎」

 

 スサノオは雄呂血の首を真っ二つに両断した。尚も笑いながら、雄呂血は塵となって消えていき、その身体や邪気の蛇も消滅した。

 

「お、御頭が⁉︎」

「う、嘘だろ⁉︎」

 

 鬼達は雄呂血の敗北に狼狽した。スサノオの凄まじい怒気を受けて、鬼達は散り散りになって逃げて行った。

 スサノオは振り返ると、アマテラスとツクヨミが笑っていた。

 

「やったな……‼︎」

「ああ……‼︎」

 

 ツクヨミの言葉を受け、スサノオも笑う。アマテラスは、六聖獣達を見ながら

 

「皆さん、ありがとうございます……‼︎」

 

 アマテラスは力を貸し与えてくれた六聖獣に、感謝を捧げる。竜は吠えた。

 

 〜これで地上の平和は守られた……‼︎〜

 

 

 

 雄呂血を倒した事により、鬼達の計略は一旦は食い止められた。こうして、アマテラスは人々の信頼を勝ち取り、平和を齎した彼女を讃え始めた。いつしか、小さな集落の集まりでしか無かった村は更なる発展を遂げ、国と呼ばれるに遜色ない規模となった。

 こうして、アマテラスを国の指導者、女王に据え、スサノオとツクヨミは、その側近を務めた。

 やがて、アマテラスを中心とした政権を持つ国を『邪馬台国』と呼ばれ、いつしか巨大な国として君臨する事となった。

 しかし……雄呂血を討伐し、邪馬台国の建国から数年が立った年……国内に不穏な影が現れ始めた……。

 

「スサノオを追放するべきだ‼︎」

 

 側近達を含めた会議にて、一人が意見をした。 

 

「スサノオは強過ぎる! 余りに、強過ぎるのだ‼︎ 雄呂血の亡き後、邪馬台国も国として形を持ち、平和となり始めた今、あの様な荒々しい男を国に置いていては危険だ‼︎」

「聞けば奴は、雄呂血を始めとした数多の鬼達を一人で滅ぼしたそうではないか‼︎ それは、雄呂血を上回る鬼の様な人間と言う事になる‼︎」

「そうだ! 奴は人の姿を被った鬼だ‼︎ 鬼人に相違ない‼︎ 奴を、邪馬台国に置き続ければ、間違いなく災いをもたらす‼︎」

「スサノオを国外に追放、でなければ死刑とすべきだ‼︎」

「賛成‼︎」「異議無し‼︎」

 

 次々と、スサノオの追放に同調し始める者が後を絶たなかった。元々、彼に対し不満を抱いていた邪馬台国の上層部の者達は、スサノオが女王の側近中の側近を務める事自体が気に入らなかった。だからこそ、彼に不名誉な汚名が付き纏い始めた事を口実に、スサノオを蜥蜴の尻尾切りにしようとしたのだ。

 これに対し、ツクヨミは反対する。

 

「待て‼︎ スサノオが居たからこそ、今日まで平和を保って来れたんじゃないか‼︎」

 

 ツクヨミは、スサノオを嫌っている者達が、ここぞとばかりに彼を除外せんとしている事に気付いた。

 雄呂血と言う人知を超えた災厄、其れを滅ぼしたスサノオ……精霊達の助力があったとは言え鬼達を、ほぼ一人で倒した事は、人間達からすれば脅威以外、何物でも無い。

 無言を貫いていたアマテラスだが、静かに語り出す。

 

「……皆さんの言葉は分かりました……。世は平和となり、時代も変わりつつあります……。

 宜しい、スサノオは邪馬台国より国外追放とします‼︎」

「あ、姉上⁉︎」

 

 毅然とした彼女の発言に、ツクヨミも困惑した。これまで、スサノオは明瞭な理由があれど、国の人を怒らせ、不満を煽って来た。

 しかし、それでも彼女は、その都度に人々を取り成し、弟を庇い続けて来たのだ。だが……スサノオの今後にて、こうも不和となっては、邪馬台国は二分に割れて、崩壊してしまうかも知れない。

 国を預かる者として、アマテラスは苦渋の末に、スサノオを追放する事を決意した。だが、死刑にしなかったのは、姉としての弟にしてやれる唯一の情けだ。

 アマテラスは凛とした表情に、憂いを帯びているのを、ツクヨミは見逃さなかった……。

 

 

 その夜……スサノオは、誰も寝静まった時計の街を歩いていた。右手には日輪の剣を持って肩に乗せ、左手には粗末なズタ袋を下げている。

 結局、スサノオは、これまでの功績を上げられ非常に寛大な措置として、国外追放となったのだ。

 誰一人と、彼を見送ろうとする者はいない。国を命懸けで救った英雄に対し、あまりに無情な仕打ちだ。

 無表情のスサノオは唇を強く噛み締めた。これで良い……自分が人々から疎まれているのは理解していた……自分が居なくなれば、全ては丸く収まる……そう頭で理解していても、心は割り切れない……。

 

 

「スサノオ‼︎」

 

 

 自分を呼ぶ声に振り返ると、アマテラスが松明を片手に立っていた。目の下には涙の跡が残っている。

 

「姉さん……」

「許して、スサノオ……。この様な仕打ちを課してしまう私を……」

 

 アマテラスは泣き崩れた。自分を守る為に我が身を犠牲にし続けて来た弟を追い出す様な真似をしてしまう……。

 しかし、振り返ったスサノオの顔には姉に気を遣わせまい、と笑顔を浮かべていた。だが、それは切なく……とても悲しい笑顔だった。

 

「俺は良い……。姉さんが笑っていてくれるなら……貴方が幸せならば……俺は、それで良いんだ……」

「スサノオ……‼︎」

 

 涙でグシャグシャになった顔をアマテラスは上げる。スサノオは彼女を強く抱きしめた。

 

「歌ってよ、姉さん……。あの歌を……」

 

 スサノオはねだる。まだ自分達が幼い頃、アマテラスが子守唄として歌ってくれた歌……その歌は、スサノオは好きだった。

 アマテラスは、弟の要望に応えて……歌い出す。

 

 

 ♪〜耳を澄ませば 聴こえるだろう

 風が運んだ いつかの呼び声

 行きなさい

 

 そこに在るのは まことのやすらかさ

 時は渡る 祈りのなかで

 約束は果たされる

 深く息を 吸い込み 遥かなる魂を

 

 響かせて 響かせて〜♪

 

 

 アマテラスの優しい声に乗った歌は、スサノオのささくれ立った心を優しく包み込む。

 かつて、小さい頃に泣かされて帰って来た自分を膝に乗せて、聴かせてくれた歌である。この歌は、スサノオを何度も彼女にせがんでいたのを覚えている。

 やがて歌い終わると、アマテラスは涙を浮かべながら、優しく微笑む。

 

「……スサノオ……忘れないで……。貴方が例え、何処に居ようとも私は貴方を考えています……。

 人々の疑惑が晴れた時、必ず貴方を呼び戻しますから……」

「……ああ、俺も姉さんを考えている……ツクヨミに宜しくな……」

 

 最後にそう言い残し、スサノオは踵を返した。このままでは決心が鈍ってしまいそうだったからだ。

 夜闇に消えて行く彼の後ろ姿を、アマテラスは見守り続けていた。其処へ、ツクヨミが現れる。

 

「姉上……身体に障ります……どうぞ中へ……」

「……ええ……」

 

 そうして、アマテラスは弟の姿を目で追いながら、ツクヨミと共に屋敷へと入って行った……。

 

 しかし……スサノオは知らなかった……。この会話が姉との最後の会話であった事を……。そして、雄呂血の予言は最悪の形で成就してしまう事を……。

 

 

 

 スサノオが国を追われてから数十年経った……当てもなく方々を旅していたスサノオだったが、その旅先にて鬼が現れては其れを下し、人々を救う毎日を送っていた。

 所が……ある村にて、休息していた彼に不吉な噂が届いた。邪馬台国にて大規模な戦が生じ、女王が行方不明になったと言う。

 居ても立っても居られなくなった彼は、すぐさまに故郷へと向かった。

 大人の脚で走っても一週間掛かるが、彼は倍以上の速さで走り、懐かしく故郷に三日で辿り着いた……。

 

 邪馬台国へと足を踏み入れた彼を待っていたのは、目を疑う光景だった。何と、其処は更地と化していたからだ。

 建築物も……水路も……姉と共に暮らした屋敷も無い……此れは一体、どう言う狂いなんだ? スサノオは目を疑う。

 

 その時……スサノオの後ろから声がした。

 

 〜久しぶりだな……スサノオ……〜

 

「お、お前は雄呂血⁉︎」

 

 其処には、かつて倒した筈の雄呂血の首が浮かんでいた。さも愉快そうに嗤っている。

 

 〜故郷は滅びたのだ……貴様が追放され、方々を転々している間にな…〜

 

「な、何だと⁉︎ 貴様達、鬼が⁉︎」

 

 スサノオは剣に手を掛ける。雄呂血は高笑いを上げた。

 

 〜貴様はうつけか⁉︎ 人間共は自分で自分の国を滅ぼしたのよ‼︎ アマテラスの王位を狙ってな‼︎

 更には、彼奴等の放つ邪気が垂れ流された事で、儂の残した呪いと合わさり、鬼達は世界中へと散っていたわ‼︎〜

 

「な、何だと……⁉︎」

 

 〜貴様に一つ良い事を教えてやろう‼︎ 我々、鬼はな……欲に塗れた人間の邪気から生まれてくるのだ‼︎ 

 要するに、貴様等が人数を守る事に何一つ意味は無かった、と言う事だ‼︎〜

 

 その言葉に、スサノオは剣を落として膝をついた。

 

「ね、姉さんは……⁉︎」

 

 〜貴様の姉か? ほれ、其処だ‼︎〜

 

 スサノオは、ゆっくりと振り返る。其処には硬く閉ざされた岩が残されていた。

 

 〜アマテラスは荒れる人間や鬼達から、精霊の力……ひいては自身の巫女の力を悪用させぬ様に、自身の力を封じたのだ‼︎ その岩戸に閉じ籠り、果てる事でな‼︎〜

 

「……姉さんが……死んだ……⁉︎」

 

 突き付けられた無情な現実……自分が居なくなった間に姉さんは死んでしまった……受け入れ難い残酷な運命に、スサノオは目が真っ暗になった。

 

「……姉さんが人間共を守る意味など無かった、と言うのか? ならば……姉さんは何の為に……?」

「お前の姉は……人間の欲と狂気の犠牲となった……お前が滅ぼすべきだったのは、人間だったな?」

「……う…ああ……あああああァァァァァァァッ!!!!

 

 スサノオの精神は遂に限界を迎え、発狂してしまう。そして、彼は足下に転がる自身の剣を手に取る。

 

「姉……さん……」

 

 血涙を流しながら、スサノオは剣を逆手に持ち、自身の腹へと向けた。

 

「姉さんの居ない、この世界に……何の意味も無い‼︎」

 

 全てに絶望したスサノオは剣を腹へと突き付け、大量の血潮を噴き出しながら血の海の中に沈んでいった。その様子を、雄呂血は悪辣に笑いながら見ていた……。

 

 

 次に目を覚ましたスサノオは暗闇に中にいた。右も左も分からない……自分は死んだのか……そう考えていると、彼の前に一人の少女が現れた。

 

「チャオ‼︎ お迎えに上がりましたよォ、スサノオ様」

「何だ、お前は……」

 

 スサノオは彼女を見た。大鎌を持った奇怪な服装の娘だ。

 

「私は、ニーコ。閻魔オルグ様の御使いですわァ。スサノオ様……このまま、終わるのは勿体ないですよォ?」

「何?」

 

 ニーコは小さく微笑み、スサノオを見る。

 

「貴方は人間を守る為に尽くしてきたのに、掌を返される様に人間に裏切られた……人間に復讐したくないですか? 世界に反逆したく無いですかァ?」

 

 ニーコの甘言は、スサノオの心を揺さぶる。

 

「俺に……鬼になれ、とでも言うのか?」

「クスクス……どうしますゥ?」

 

 最早、スサノオの心に迷いは無い。それ所か、人間に対する明確な殺意しか湧いて来ない。

 

「……良いだろう……どの道、堕ち果てた身だ……。ならば、堕ちる所まで堕ちてやる‼︎

 

 俺は復讐する‼︎ 愚かな人類に……くだらない世界に‼︎」

 

 スサノオは高々に宣言した。その様子に、ニーコはニィィッと笑った……。




次回の投稿は、2月14日になります。
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