帰ってきた百獣戦隊ガオレンジャー 19YEARS AFTER 伝説を継ぎし者   作:竜の蹄

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また投稿日が遅れた事を、お詫び致します!
納得がいかない展開だったので急遽、再執筆し直しました!
本当なら今話が最終話でしたが、一話、伸ばします‼︎
では、どうぞ‼︎


quest60 破壊神、降誕!

 ガオネメシスが現実へ戻ると、ガオゴッドが倒れ伏していた。ネメシスは、勝ち誇る。

 

「無様だな、ツクヨミ……! 貴様は姉を守り切れなかった……此れは、その報いだ……‼︎」

 

 ネメシスは高笑いを上げる。その言葉に、ガオゴッドが叫ぶ。

 

 〜スサノオ……目の前にある全てを憎み、目に映る者を全て壊し……その後、どうする気だ……〜

 

「何だと?」

 

 突如、発せられた返しに対し、ネメシスは思わず仰反る。

 

 〜考え直すなら今だ、スサノオ……。お前自身、気づいている筈だ……過ちを侵している事にな……。オルグを世界に送り込み、世界を滅ぼした所、お前の渇きは満たされる事は無い……永遠に自分の罪に苛まれ、死ぬ事も成仏する事も出来ずに時の輪廻を彷徨い続けるだけだ〜

 

「フン! 仮にも神とあろう者が、命乞いとは見苦しいな‼︎ 教えてやろう、ガオゴッド! 最早、この世界に必要なのは、ガオの戦士でも、パワーアニマルでも無い‼︎

 オルグによる圧倒的な破壊、滅亡による救済……それだけだ‼︎」

 

 ネメシスは吐き捨て、ガオインフェルノに力を込めた。すると、ガオケルベロスの三つの口内が妖しく光り始める。

 

「消え去れ、ツクヨミ‼︎ この忌まわしい記憶と共に‼︎」

 

 そう叫ぶと、ガオケルベロスの口から放たれた光弾。転倒していたガオゴッドには成す術なく、全弾を命中してしまう。

 

「ハハハハハハハハ‼︎ 死ぬが良い‼︎」

 

 ネメシスの勝ち誇った笑い声が木霊した。しかし、突如にネメシスの脳裏に映像が過ぎる。

 

 

 〜スサノオ‼︎ 待てよ、スサノオ‼︎〜

 

 〜また、悪戯をしたな‼︎ 姉さんに言い付けるからな‼︎〜

 

 〜釣りに行こう、スサノオ‼︎〜

 

 〜スサノオ……スサノオ……〜 

 

 

 幼い頃に共に過ごした兄との思い出が、彼の脳裏に流れ込んで来た。ネメシスは苦しげに呻く。

 

「く……‼︎ 何故、今更……‼︎」

 

 今は幻想となった、スサノオの幼き頃……姉弟三人で幸せだった、あの時……。スサノオの時間は、あの頃のまま止まっていた。

 思い返す姉アマテラスの顔……しかし、どんなに思い出してみても、姉の顔は悲しそうにしている……。

 

「な、何故だ⁉︎ 何故、姉さんは悲しげなんだ⁉︎ お、思い出せない……‼︎ 姉さんの笑顔が思い出せない……‼︎」

 

 ネメシスは狼狽する。思い返そうとすればする程、アマテラスの笑顔は靄が掛かった様に見えなくなって行く。

 それは、スサノオの中にある良心の呵責による物だった。彼自身、理解して居なかったが、自分のやっている事が間違いである、と言う考えが、スサノオを精神的に追いやる事となった。

 しかし、ネメシスは、そんな弱々しい自分に喝を入れた。そして、トドメの一撃をガオゴッドに打つける。巨大な火柱を上げ、炎上するガオゴッド。

 その様子を見ていたネメシスは狂笑を上げていた……自身の中にある矛盾を掻き消す様に……。

 

 

 

 そして、時間は少し戻り……

 

 

 

 スサノオは、ヤマラージャの発した邪気に周りを覆い尽くされ、昆虫の繭の様な姿となる。邪気の繭に守られ、中の様子を伺う事が出来ない。

 

「クッ……ブレイジング・ファイヤー‼︎」

「炎滅弾‼︎」

 

 レッドはライオンファングに炎を纏わせ、ゴールドはソルサモナードラグーンで炎の弾丸を撃ち出し、繭を攻撃する。

 しかし攻撃は、まるで効かない。傷つけられた箇所から、たちまち再生してしまうからだ。

 

 〜ハハハハハ‼︎ 無駄な事は止めろ、ガオレンジャー‼︎ 儂の邪気は、そんな脆弱な攻撃では破壊出来ぬ‼︎

 見ていろ……今に、スサノオは生まれ変わるのだ‼︎ 人を超え、オルグを超えた……“破壊神”としてな‼︎〜

 

「は、破壊神⁉︎」

 

 ヤマラージャの言葉に、シルバーは戦慄する。ただでさえ強敵であるスサノオが一体、どんな姿に進化するのか? 全く想像だに出来ない。

 そうしてる間に、繭が妖しく発光し始め、ドクン…ドクン…と、鼓動を上げる。

 

「み、脈打ってる……‼︎」

 

 イエローは、繭を凝視する。やがて、光が収まって行くと鼓動は、ますます大きく鳴り響き始めた。そして……

 

 バリッと、音を立てて繭を突き出して来たのは異形の腕だ。そして、その裂け目に十本の指が突き立てられ、繭を左右に裂き始めた。

 そして完全に裂開した繭を突き破りつつ、其れは立ち上がって……

 

「フウゥゥゥ………‼︎」

 

 其処に居たのは、ヘルメットやバイザーはネメシスの面影を残しながら、頭部から脚部に掛けて蛇や爬虫類を思わせる鱗が生え揃い、胸部に蛇を思わせる眼球が開いていた。

 頭頂より、オルグを思わせる長い角が形成され、蛇に似た尻尾が背部より生えていた。

 右手には、ヘルライオットと思しき銃と融合した禍々しい魔人だ。

 

「お前は……ガオネメシス……⁉︎」

 

 ゴールドは恐る恐る呼び掛けた。しかし、魔人は無表情のまま……

 

「ガオネメシスでもスサノオでも無い……‼︎ 我が名は、破壊神メツキ……。全ての生命、全ての文明を滅ぼし尽くし……全てを破壊する者なり……‼︎」

 

 その口調は、ネメシスともスサノオとも似つかない……一切の感情も無い、まるで虫と話そうと試みる様な、あらゆる感情移入を拒絶する物だった……。

 メツキは、ヘルライオットから紫色の光刃を発し、ガオレンジャー達に刃を振るった。

 突き出される剣圧が、ガオレンジャー達を吹き飛ばす。

 

「うわァァァッ!!!???」

 

 耐え切れずに、投げ出されてしまうガオレンジャー達。しかし、本当に恐ろしいのは、それだけでは無い。

 ガオスーツは綻び始め、変身が解除されつつあるのだ。

 

「な、スーツが……⁉︎」

 

 ゴールドは目を疑う。これ迄、自分達のガオスーツそのものを弱体化させる敵など居なかった。ヤマラージャは高らかに言い放った。

 

 〜鬼地獄の濃密な邪気に触れたからよ‼︎ これ迄の生半可な邪気とは訳が違うぞ‼︎〜

 

 ヤマラージャは勝ち誇る。此れでは戦う事すら、ままならない。其処へ、メツキは光刃の形状を変えて、巨大なライフルとなる。

 

「滅せよ」

 

 メツキの言葉と共に、撃ち出される複数発の邪気弾。其れ等は、満身創痍であるガオレンジャーに襲い掛かった。 

 ガオスーツの加護を無くしたガオレンジャー達は、正に格好の的だ。邪気弾により撃ち抜かれて行く。

 

「ぐあああァァァ……‼︎」

 

 邪気弾を全て喰らったガオレンジャー達は絶叫と共に崩れ落ちる。最早、スーツは殆ど消失し、生身の部分には痛々しい傷を付けられていた。

 メツキは悠々と立ちはだかる。

 

「……お前達には……礼を言う……。此れで私は……真の姿へと転生出来る……! ガオの戦士スサノオでも……叛逆の狂犬ガオネメシスでも無い……真の破壊の神へと……‼︎」

 

 そう言って、メツキは浮かび上がる。すると、其処へガオケルベロス、ガオバイコーン、ガオムンガンドと三体の、カオス・パワーアニマルが姿を見せる。

 

「さァ……三体の混沌の眷属達よ……今こそ、地球に終止符を打つ日が来た……!

 見せてやるぞ!」

 

 メツキの言葉に合わせ、三体のカオス・パワーアニマル達は融合して行く。すると、其処に立っていたのは、精霊王とは似ても似つかない禍々しい漆黒の巨神が佇んでいた。頭部は無表情の鬼神、胸部と肩部にガオケルベロス、右腕にガオムンガンド、左腕にガオバイコーン、胴体は禿山の様にゴツゴツと節くれだった怪物だ。

 

 〜グオアアァァァァ……‼︎〜

 

 メツキは獣染みた咆哮を上げた。

 

「此れが……神……⁉︎ 何て禍々しい姿なんだ……‼︎」

 

 変身の解けた陽は、目の前に立つ巨神に凝視する。どんなに贔屓目に見ても、神とは思えない禍々しさ……触れただけで生命力を吸い尽くされてしまいそうになる凶悪はオーラ……そして、胸部のガオケルベロスの頭部には上半身のみ露出したガオネメシスの姿があった……。

 

 〜儀式は完了だ‼︎ では、此れより鬼還りの儀の締めに取り掛かる‼︎〜

 

 そう叫んだヤマラージャは、メツキの身体へと乗り移る。すると、メツキの目が紅く染まる。 

 

「フハハハ‼︎ 漸く、手に入れたぞ‼︎ 全てを破壊し尽くす力……あらゆる交わりを拒絶する器‼︎ 遂に、儂は復活を果たしたのだ‼︎」

 

 ヤマラージャは狂気に満ちた顔で吠える。その様子は、これ迄のヤマラージャの其れとは異なる様だ。

 と、その時……

 

「キャァァァ⁉︎」

 

 祈の悲鳴に、陽達は振り返る。すると、祈の首元に大鎌を突き付けたニーコが微笑んでいた。

 

「動かないで下さいねェ? 祈ちゃんの首が、チョンパッしちゃいますよォ?」

 

 ニーコはクスクスと笑う。陽達は不用意に手が出せなくなった。  

 

「ニーコ、何の真似だ‼︎」

「クスクス……此れは計画……。雄呂血の肉体を復活させて、現世へ破壊神へと降臨させる為ですわァ♡」

「雄呂血⁉︎」

 

 大神は耳を疑った。雄呂血とは最初のオルグにして、スサノオに倒されたオルグの名だ。

 目の前に居るヤマラージャが雄呂血だと言うのか?

 

「フフフ……まだ分からんか? 儂こそ、雄呂血‼︎ 全てのオルグ達の始祖なのだ‼︎ そして、ヤマラージャとは……」

 

 ヤマラージャ改め、雄呂血は自身の正体を明かした。そして、ニーコは自身の髪を時、髑髏の仮面を顔半分に付けて邪悪な笑みを浮かべた。

 

「その通り……私が本当のヤマラージャ……誠の名を鬼地獄の支配者である閻魔オルグ、イザナミだ‼︎」

 

 これ迄の甘ったるい口調を捨てて、ニーコ改めてイザナミは正体を明かした。

 まさかのどんでん返しに、誰もが絶句した。

 

「お前が……閻魔オルグ⁉︎」

「フフフ……正体を欺いたのは、計画を悟られぬ為の私の迫真の演技‼︎とは言え、苦労したぞ? テンマの様な小物や、四鬼士達を焚き付けて勢力とし、我が息子スサノオを雄呂血と融合させる為に二千年の時を待たせたのはな‼︎」

「ま、待て‼︎ 今、我が息子と……⁉︎」

 

 イザナミの発した言葉に、走は反応した。イザナミはニィィッと笑った。

 

「その通り! スサノオを始め、アマテラスとツクヨミは私の息子! しかし、小賢しいアマテラスによって、わたしは封じられてしまった……‼︎

 何を隠そう、世界にオルグの種をばら撒き……手始めに、雄呂血と言う存在を創り出したのは、この私だ‼︎

 人間共を手っ取り早く支配するには、オルグと言う存在を創り出す必要があった……だが、アマテラスは、その事に反対した‼︎

 挙句には、私を黄泉の世界に追放し、スサノオとツクヨミを連れて出て行った‼︎ 私は我が子に、裏切られたのだ‼︎」

 

 イザナミは憤怒の形相を浮かべる。

 

「……憎かったぞ……アマテラスが……。其処で、私は復讐してやる事にした‼︎ 手始めに、私は肉体を二つに分割する所から始めた‼︎

 ヤマラージャに黄泉の世界を鬼地獄へと作り替えさえ、ニーコとしての肉体を得た私は、雄呂血を嗾けた‼︎ 奴が動けば、必ずやアマテラスは動く‼︎ そう確信があったからな‼︎

 そして私の計略通り、アマテラスは動いた‼︎ 雄呂血が、スサノオに倒されるのも計算済みよ!

 私は、雄呂血が倒されると共に人間共に疑念を焚き付けてやった!

 

『雄呂血を倒した人間、即ち鬼をも凌ぐ人間では無いか?』

 

 とな……。

 

 そして、私の睨んだ通りに事は進んだ。アマテラスは、スサノオを追放して、後は残された人間共の欲を刺激してやった……。

 そうして、アマテラスは建設した邪馬台国は滅び去り、国へ帰郷したスサノオは帰る場所、最愛の姉を喪う悲劇に見舞われた!

 そして、絶望したスサノオは自害し……人間共への深い憎しみから、叛逆の狂犬ガオネメシスへと堕ちて行ったのだ‼︎」

「こ、この……外道め‼︎」

 

 あまりの暴虐無人ぶりに、陽は嫌悪感を露わにした。彼女の弁を辿るなら、これ迄のオルグの侵攻も地球への被害も、全てイザナミの個人的な復讐、更に悪く言えば八つ当たりによる延長でしか無かった事になるからだ。オルグの支配者となるべく暗躍したテンマ、その計画に賛同した四鬼士、挙句には我が子であるスサノオや雄呂血さえも彼女の身勝手極まりない復讐に、利用されただけだった。

 

「ホホホ‼︎ 私を外道だと⁉︎ それは、オルグにとっては最高の褒め言葉だ‼︎ そもそも、私がオルグ達に存在意義を与えてやったのだ‼︎」

 四鬼士も然り、テンマもまた然り‼︎ 本来なら朽ち果てるのみの奴等に、人を殺すと言う快楽を与えてやったのは私の裁量‼︎

 スサノオだって、そうだ! 人間に憎しみを抱き、全てを絶望した奴に人類を滅ぼすと言う明確な道を示してやった‼︎ 」

 

 

「本来なら私を計略は千年前に成されていた‼︎ 愚かな百鬼丸を焚き付け、地球を侵攻させ、その後に妾が地球全てを掌握する手筈だった‼︎

 しかし、千年前のガオの巫女ムラサキが要らぬ事をしてくれたお陰で、妾の計画は大きく変えなくてはならなくなった‼︎

 我が子スサノオを利用する計画だ‼︎ スサノオは死後、鬼地獄にて肉体を再構築する為に少なくとも、二千年以上は眠りに就く必要があった!

 その繋ぎとして、シュテン、ウラ、ラセツと言った当代のハイネス達を焚き付け、ツエツエにガオの巫女としての力を与えてやった‼︎

 その計画も失敗した。センキとして復活したのも束の間、パワーアニマル共の反撃を受けたからな‼︎

 だが、私には大した問題にはならなかった……一度、倒したセンキの邪悪な魂を鬼地獄に受け入れ、私の力は大きく増した‼︎

 そして……私は、ムラサキの封印を強引にこじ開け、現世にテンマとスサノオを送り込んだ! 私自身、ニーコとして、オルグ陣営に忍び込んで、裏で工作をした‼︎」

 

 意気揚々と話すイザナミに対し、陽は怒りの余り、拳を握り締めた。

 

「お前は……自分の子供を何だと思ってる⁉︎ 自分にとって都合の良い駒だと⁉︎」

 

 人間なら至極当然な台詞だ。人間だけでは無く、犬や猫、馬や牛等の動物でさえ、血を分けた子供は命懸けで守ろうとする。

 しかし、このイザナミは……スサノオを利用するだけ利用して、其処に一片の愛情も無い。

 だが、イザナミは悪びれる事なく、ニヤリと笑う。

 

「駒? 違うな……強いて言うなら……私の欲を満たす為の……

 

 “餌”だな」

 

「ふざけるなァァァァァァ!!!!!!!!!!」

 

 イザナミの言葉に陽は激励した。言うに事欠いて『餌』だなんて……そんな事、例え冗談でも許されない。陽の父も母も、祈の母も子供達を心から愛してくれた。親は子を慈しみ、子は親に焦がれる。それが普通であり、そうに違いないと陽は信じて来た。

 だが、悲しいかな……実子を躊躇いなく殺す親も居るのは事実……だが、それは本意からでは無い……どうしようもない苦悩と断腸の思いがあったからだ。しかし、この、イザナミは……。

 

「何を怒る? 例えば、人間だって、生まれてきた子を望まぬ命と見捨てて死なせたり、虐待の果てに殺したりするでは無いか?

 あの混血鬼の娘もそうだ……無理矢理、オルグの子を孕まされ、生みたくも無い子を産む羽目になった……そうして、望まぬ生を受けた…。

 それと同じだ!」

「馬鹿言え! それとこれとは話が別だ‼︎」

 

 飽くまで子供に対し冷酷に振る舞うイザナミと、その持論に対し真っ向から批判する陽。

 しかし、陽の言うそれは人間だからこそ通用する持論だ。既に、オルグのそれに身を堕としたイザナミには、人間らしい感情など皆無に等しいのだ。

 激昂する陽を走は肩に手をやり宥める。

 

「……もう良い、陽……アイツには何を言っても無駄だ……‼︎」

 

 諦めた様に走は呟く。娘の裏切りから狂ってしまったのか元から壊れていたのか……最早、それは、イザナミにさえ分からない。

 彼女は、スサノオをも利用し、人間世界を破滅し尽くさんとする災厄そのものと成り果てていたからだ。

 

「……さて……貴様達に、もう用は無い! 我が破壊の眷属達よ‼︎ 姿を現せ‼︎」

 

 イザナミは鎌を持たない左手を翳す。すると、スサノオの両サイドに巨大な鬼門が現れる。

 すると、中から二体の巨大オルグ魔人が現れた。

 

「グオアアァァァァ!!!!」

 

 右手のオルグ魔人は、テンマだった。しかし、先程の其れとは異なり、知性が感じられない。大きく見開かれた両目は紅く染まり、口からは涎がダラダラと流れ落ちていた。

 左手のオルグ魔人を見た走達は絶句した。

 

「せ、センキ‼︎」

「嘘だろ⁉︎」

 

 それは、かつて、ガオレンジャー達が苦闘の末に撃退したオルグの王、センキに酷似していた。だが、身体の色は以前とは違い腐食した様に、ドス黒く染まり、かつて見せた冷静な面持ちでは無く、荒々しい野性染みた様子だった。

 

「グガアァァァァァァ!!!!」

 

 テンマに続き、センキは高々に吠える。その様子は冷酷ながら、オルグの王に相応しかった二十年前とは異なり、理性の切れたケダモノのそれだった。

 

「フフフ! 私が、鬼地獄より蘇らせた破壊の鬼神達だ! さァ、|再生・テンマ! シン・センキよ‼︎ 地上へと赴き、人間社会を完膚なきまで破壊し尽くせ‼︎」

 

 イザナミの命令を受けた二体の鬼神達は再び鬼門へと消えて行った。それを見届けたイザナミは、祈を捕らえたまま浮かび上がる。

 

「兄さん‼︎」

「祈‼︎」

 

 陽は祈に手を伸ばすが、メツキの放った攻撃に阻まれる。その反動に陽は吹き飛ばされてしまう。

 

「陽君、大丈夫⁉︎」

 

 冴は転倒した陽に気遣う。イザナミ、メツキは鬼門へと入って行った。

 

「この娘の骸は、鬼地獄の底で未来永劫、横たわり続けるのだ‼︎ 助けたければ、鬼冥城へ来るが良い‼︎

 

 ハーッハハハハハハハハ………‼︎」

 

 イザナミの高笑いが響き渡り、そして姿を消した。事態は最悪……単純だが、敵の方が上手だった。

 陽は膝を突いて、絶望感に苛まれた。

 

「陽……悔しいが、嘆いていても仕方が無い……。こうなれば、俺達に出来る事をするしか無い……!」

 

 大神は陽を慰める。しかし、彼の言う通りだ。イザナミの言葉が真実なら、地上は今、テンマとセンキにより大変な事となっている筈だ。

 

「行こう! 先ずは、テンマ達を……‼︎」

「……ああ……行かなきゃ……! 鬼地獄へ‼︎」

 

 陽は我に帰り、立ち上がる。そして呟いた言葉に、全員が耳を疑った。

 

「陽……今なんて言った?」

「鬼地獄へ行くんだ! 祈を助ける為‼︎」

 

 とんでもない事を言い出した彼に、走は驚愕する。

 

「お前さん、正気か⁉︎ 鬼地獄に行く、なんて……彼処は人間が、望んで行く様な場所じゃ無いぞ! 死にに行く様なもんじゃ‼︎」

 

 かつて、ヤマラージャを封印する為、鬼地獄に堕ちた佐熊は叱責する。現に彼は、其処に千年以上も封じ込められていたのだから……。

 

「危険な事は承知してる‼︎ でも、イザナミを倒さなくちゃ、また何度も攻め込んで来る‼︎ どちらにせよ、決着を付ける為には行かなくちゃ‼︎」

「いい加減にしろ‼︎ 仮に鬼地獄に行って、イザナミを倒したとしても、その後、どうする気だ⁉︎ 一体全体、どうやって、鬼地獄から脱出する⁉︎」

「……覚悟は出来てる……‼︎」

 

 佐熊の言葉を聞き入れない陽に、走は無言のまま、陽の胸ぐらを掴む。

 

「覚悟は出来てる? 何を分かった風な口を……死ぬと分かってて行くなんて……そう言うのを勇敢とは言わないぞ! お前が死んで悲しむ人間だって居る事が分からないのか⁉︎」

「死ぬ覚悟が無いなら……僕は、ガオレンジャーにはならなかった‼︎ 貴方達だって、覚悟を決めたから、戦い抜いたんでしょう⁉︎」

 

 走に対して、凄まじい怒号で返す陽。流石の走も、それには返す言葉が出ない。

 

「祈を助けられ無いまま生き続けるなら……僕は、そんな人生は生きたくない‼︎

 例え百人救う為に、一人を犠牲にする事が必要なら……僕は一人を救って百人を救う方を取る!」

「あのなァ……!」

 

 陽の言葉に、岳は呆れる。

 

「妹を助けたい、けど地球も救いたい、そしてオルグも倒したいって⁉︎ そりゃ全部を叶えれたら、一番良いに決まってるけどな‼︎」

「二兎追う者は一兎も得ず……欲張ったら、全部を駄目にしちゃうわ……‼︎」

 

 岳に続いて、冴も苦言しながら諭す。しかし、陽は譲らない。

 

「欲張ったら悪い⁉︎ 一人でも多く助けたい、と考える事が、そんなに悪い事⁉︎

 一人を見捨てて、それで手に入れた平和なんか、本当の平和じゃ無いし、きっと長く続かない‼︎ だったら僕は……皆全員を助ける‼︎」

 

 其れが陽の信念だった。かつて、スサノオは自分を犠牲にして、全てを失った。だから、陽は誰も失いたく無かった。

 そんな彼の意志の強さに、とうとう他のガオレンジャー達も根負けした。

 

「……負けたよ……其処まで言うなら、行けよ……」

「走⁉︎」

「ただし‼︎」

 

 ポツリと呟いた走に、海は仰天しながら叫ぶ。だが、走の言葉は続いた。

 

「俺も一緒に行くぜ‼︎ 其れが条件だ‼︎」

「…どう言う事ですか?」

「一人で行かせる訳無いだろう? それに、ガオレンジャーのリーダーは俺だぜ?」

 

 走はニカっと笑う。彼は動物を愛して命を尊ぶ獣医だ。だからこそ、仲間である陽を見殺しにはしない。

 

「だったら、俺も行くぞ。お前等だけじゃ、不安だ」

 

 岳も、ぶっきらぼうながらも言った。

 

「俺を置いていく、なんて言うなよ? 俺だって、まだまだ暴れ足りないんだ!」

 

 海も続いた。

 

「俺も共に行くぞ! 最後まで戦い抜くつもりだ!」

 

 草太郎も力強く応えた。

 

「祈ちゃんを助けたいのは、私だって同じ……私も行くわ!」

 

 冴も、仲間達と共に行く旨を述べた。

 

「だったら、地上に行ったテンマ達は……‼︎」

「其れは、俺達に任せてくれ! 皆が帰還する迄、必ず食い止める!」

 

 大神と佐熊が、テンマとセンキの足止めを引き受けてくれた。

 

「美羽、お前は大神達と行動しろ」

 

 岳は美羽に告げた。叔父としては、姪である彼女に危険な目に遭わせたくは無いからだ。しかし、美羽は首を振る。

 

「おじさん、私も行くよ! 陽や皆と最後まで戦い抜きたい‼︎」

 

 自分の意思を告げる美羽。既に彼女も、一人の戦士だった。此処まで来たからには、最後まで頑張りたい……そう言う意思があった。

 岳も彼女の意志の固さに根負けし、溜め息を吐きながら……

 

「分かった……その代わり、足手纏いにはなるなよ?」

 

 叔父の発した言葉に、美羽はコクンと頷く。だが、此処へ来て新しい問題がある。どうやって鬼地獄へ行けば良いのか?

 其処へ、テトムの声がG -フォンから聞こえてくる。

 

 〜皆、話は聞いてるわ‼︎ 貴方達を鬼地獄へ送る方法を、荒神様が教えてくれたの‼︎〜

 

「テトム! ガオゴッドが教えたって⁉︎」

 

 走は、懐かしい彼女の声に喜びながら尋ねた。

 

 〜ツクヨミ様が、最後の力で鬼地獄と現世を続く通路を開いてくれたの! 其処を使えば、鬼地獄に行けるわ‼︎〜

 

「ガオマスターが……」

 

 陽は胸が熱くなる。命を投げ打った彼の行動が、最後まで力となってくれるなんて……。

 

 〜でも……一度、通路が閉じてしまうと、貴方達は二度と帰って来れなくなるわよ……其れに鬼地獄に行ったら、私も力を貸せなくなっちゃう……〜

 

「大丈夫‼︎ 必ず帰るよ、祈を連れて‼︎」

 

 陽は強く断言した。必ず、生きて帰る……そう決めた。そんな彼の意思を汲んだ様に、ガオパラディンとガオライオンが姿を現した。

 

 〜行くぞ、陽‼︎ 全てに決着を付けに行くぞ‼︎〜

 

 苦楽を共にした相棒の言葉に、陽は頷く。その時、ガオライオンが大きく吠えた。

 

「そうか……分かった、ガオライオン‼︎」

 

 走とガオライオンは何かを通じ合った様だ。その瞬間、ガオライオンの身体にガオソウルが迸り始める。

 すると、見る見る間にガオライオンの身体は巨大化し始めた。

 

「な⁉︎ これは…‼︎」

「ガオライオンが、ツクヨミの力を吸収しているんだ‼︎」

 

 走が説明した。すると、ガオパラディンと同格の体躯と化したガオライオン。其処へ、下半身が背面へと迫り上がったガオパラディンが、ガオライオンの背中と合体する。

 更に分解したガオユニコーン、ガオグリフィンに代わり、右腕にガオシャーク、左腕にガオタイガーが百獣武装した。

 其処へ、象のパワーアニマル、ガオエレファントが分解、両腕に武装されると……。

 最強にして究極の精霊王、聖なる獣騎士ガオケンタウロス・ホーリーナイトが誕生した。

 

「す、凄い…‼︎」

 

 陽は凄まじい姿となったガオケンタウロスに感嘆する。その姿は神々しい、その一言に尽きる。

 

 〜さァ、乗るが良い! 鬼地獄へと乗り込むぞ〜

 

「ああ、分かった‼︎ 皆、行こう‼︎」

 

「ああ‼︎」

 

 陽達は、飛来したソウルバードに搭乗して、ガオケンタウロスへと吸収された。すると、下半身のガオライオンが吠える。

 そうして、背面のガオフェニックスの翼が羽ばたいて、天へと舞い上がる。すると頭上へて現れた時空の歪みへと飛び込み、消えて行った……。

 

「よし‼︎ 俺達も行くか‼︎」

「うむ‼︎ おや?」

 

 佐熊は天を見た。幾つかの宝珠が、自分達の前に落ちてきたのだ。大神は宝珠を拾い上げると、中にはガオゴリラ、ガオジュラフ、ガオディアス、ガオライノス、ガオベアー、ガオポーラーと行ったパワーアニマル達の力が込められていた。

 

「パワーアニマル達が……俺達に力を貸してくれているんだ…‼︎」

「どうやら、ワシ等も全力で戦わなければならない様じゃのォ‼︎」

 

 大神、佐熊は互いに宝珠を握り締めて強く頷く。そうして、近づいてきたガオズロックの存在に気付き、走って行った……。

 

 

 〜鬼地獄へ最後の戦いに挑む為、地上へ放たれた破壊鬼神達を食い止める為に二手に分かれたガオレンジャー達‼︎

 次回にて、遂に本当の最終決戦が幕を開けるのです‼︎〜

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