帰ってきた百獣戦隊ガオレンジャー 19YEARS AFTER 伝説を継ぎし者   作:竜の蹄

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※最後の戦いです。掲載に遅れたのは、コロナ禍による激務とストレスで寝込み執筆出来ませんでした。
最終回は次話になりますが、戦いは今回で終わりです‼︎
それでは、ガオレンジャー最後の戦いをどうぞ‼︎


quest61 百獣戦隊、吼えろ!

 地上に送り込まれた破壊鬼神オルグ達は、その名に恥じない暴れぶりだった。既に知性も自我も消え失せ、力の限り暴れ回る姿は、正に破壊神に相応しい。

 再生・テンマは両掌の眼球から光線を放ち、シン・センキは口から高密度な邪気の熱戦を放って破壊活動を続けた。

 それで無くても、先程からのオルグによる破壊活動にて、壊滅状態に陥っているのに最早、目も当てられ無い始末だ。

 

「うわァァァ‼︎」

「きゃあァァァ‼︎」

「助けてェェェッ‼︎」

 

 人々は、二体のオルグ魔人の攻撃から逃げ延びる。しかし、知性無く暴れ回る彼等には一切、慈悲は無い。

 逃げ惑う人を追い回し、非情に踏み潰す。其処へ、ガオズロックが飛来した。

 

「な、何という破壊力だ……‼︎」

 

 大神は二体の破壊神オルグの姿に、背筋が凍った。センキに至っては、二十年前に現れた者とは比べ物にならない程に力が増している。

 

「此れを、ワシ等だけで食い止めるんか……責任重大じゃ‼︎」

「二人共……気を付けて‼︎」

 

 テトムは二人の背中に語り掛けた。大神、佐熊は振り返り……

 

「ああ……行ってくる!」

 

 大神は、千年前の大切な人の面影を持つ彼女に笑い掛けた、

 

「テトム! この戦いが終わったら……卵焼きを腹がはち切れる程、食うぞ‼︎」

 

 佐熊らしい言葉に、テトムはクスリと笑う。

 

「いいわよ! 沢山、食べさせてあげる‼︎」

 

 それだけ言うと、二人はG−ブレスフォンを起動させた。

 

 

「ガオアクセス‼︎」

 

 

 ガオシルバー、ガオグレーに変身した二人は出口から下へと飛び降りた。その最中、宝珠を打ち上げる…!

 

 

 我が物顔で闊歩するオルグ魔人達の前に降り立つ二体の闘神……俊敏の精霊王ガオハンターと、剛力の精霊王ガオビルダー……それぞれ、テンマとセンキを相手に立ち塞がる。

 しかし、敵と見定めたオルグ魔人達は破壊活動を止めて、精霊王達に攻撃を仕掛けた。

 テンマの両掌から放たれる破壊光線が、ガオハンターを狙い撃つ。しかし、伊達に修羅場を乗り越えていない。すかさず躱して、テンマの背後からリゲーターブレードで斬りつけた。

 ガオビルダーも、センキの懐へと飛び込み渾身の一撃を浴びせた。だが、腐ってもオルグの王を名乗るだけあり、なまじ攻撃では、びくともしない。

 返し様にセンキは、強烈な一撃をガオビルダーに与えた。大きくグラつくガオビルダーに、センキは次々に攻撃を与えた。

 

「く……‼︎ 凄まじい猛襲じゃ……‼︎」

 

 火花が迸るコクピット内で、グレーは呻く。かつて戦った全てのオルグの中にも、此処までの力を持つ者は居なかった。

 追い詰められているのは、ガオハンターも一緒だ。最初の奇襲より後の攻撃は全て防がれている。

 

 〜グレー‼︎ 大丈夫か⁉︎〜

 

 シルバーの言葉が、ヘルメットに響く。余裕の無い彼の声から、かなり追い詰められているのは分かる。

 しかし、退く訳には行かない。ガオビルダー、ガオハンターは、それぞれの得物にガオソウルを装填した。

 

「悪鬼突貫! リボルバーファントム‼︎」

「殴打粉砕! ストロングブレイク‼︎」

 

 放たれた攻撃が、テンマとセンキを直撃した。しかし、直撃した筈なのに、二体は怯む様子を見せない。

 それどころか、傷を負った箇所が忽ち、再生し始めた。

 

「な⁉︎ 効いていない⁉︎」

「此奴等、不死身か⁉︎」

 

 その様子に、シルバーは察した。これは二十年前と同じだ。恐らく、彼等はヘル・ハイネス・デュークの持つ不死身の肉体を有するのだろう。そして、その再生能力も並ではない。つまり、幾ら攻撃しても、ほぼ無意味に等しいのだ。

 テンマ、センキは呆然する二体の精霊王に対し、それぞれの口内より高密度の邪気光線を放った。

 それを直撃したガオハンターの右腕、ガオビルダーの左腕は吹き飛ばされてしまった。

 そして、そのまま倒れ伏し大爆発を起こした。もうもうと舞い上がる爆炎を前に、破壊鬼神は勝ち誇る様に咆哮を上げる。

 だが、その間隙を縫うかの様に出現する巨体があった……。

 

 

「ガオマッスル・ストライカー‼︎」

 

 

 相対するのは力溢れる『筋肉の戦士』。シルバーとグレーの思いに応え、百獣合体した精霊王一の偉丈夫。

 右腕にはガオベアー、左腕にガオポーラー、下半身はガオライノスとガオマジロを据えて、戦闘態勢へと入る。

 技では、ガオハンターやガオビルダーには劣るが、力では文句無しの大戦力である。

 テンマは光線をガオマッスルに浴びせるが両腕を目の前に構え、ボクシングの構えに似た状態にて光線を無効化した。

 

「凄い……‼︎ 防御力も上がっている‼︎」

 

 シルバーは、ガオマッスルの強さを知っているが、直接に搭乗した事はない。ガオレンジャーの中で実力者である、シルバーとグレーが搭乗している事もあってか、その戦闘力は格段に向上しているのだ。

 其処に、センキが横から襲い掛かって来た。だが、ガオマッスルは、その腕を掴んで一本背負いで投げ飛ばす。 

 その状態で眼前に迫ったテンマに四連装砲マッスルクラッカーで砲撃した。ガオマッスルは、力強くポージングを決めた……。

 

 

 

 その頃、ガオケンタウロス・ホーリーナイトは異空間を航行していた。辺りは異様な風景で、正に混沌の世界だ。

 勢いよく正面から奔流の様に走ってくる空間の渦……まるで氾濫した川の様だった。

 恐らく、これが『賽の河原』なのだろう。この外に弾き出されたら最後、自力では抜け出せないだろう。

 コクピット内にいるゴールド達でさえ、その反動に耐えるのに精一杯である。

 

「み、皆! しっかり捕まってろよ‼︎」

 

 レッドが仲間達に叫ぶ。辛うじて台座にしがみ付きながら、立っている様子だ。だが、仲間達もギリギリの状態で耐えている様子だ。

 ガオライオンも苦しげに呻いて居る。やはり、パワーアニマル達にも反動はキツいのだろう。

 それは、ガオドラゴンも同様である。レジェンド・パワーアニマルとは言え、身体が引き千切られそうになりながらも、仲間達を鬼地獄へと送り届ける、と言う使命を果たさんとしていた、

 

「お、鬼地獄は、まだか⁉︎」

 

 イエローは叫ぶ。さっきから、どのくらいの時間経ったかも分からない。此処では一分も一時間も一年も関係ない、時間の流れさえも不確かな世界だ。

 ゴールドは、ゾッとした。仮に鬼地獄へ辿り着き、イザナミを倒して祈を連れ帰ったとしても……地上に、自分達の居場所が残っている確証は無いのだ。ひょっとしたら、その時に世界はオルグに滅ぼし尽くされ、人類は滅亡して居るかもしれない……。

 猛、昇、舞花、テトム、佐熊、大神……自分達の大切な人達は誰一人、居なくなっているかもしれない……。

 竜宮城で三百年の時が止まった三日間を過ごし、帰ったら家族も故郷も風化し、自身も玉手箱に閉じ込められた三百年分の時間に当てられた末、老人と化した浦島太郎と同じ様になっているかもしれない……。

 不安気に佇むゴールドを、ホワイトは揺さぶる。

 

「大丈夫、ゴールド⁉︎ しっかりして‼︎」

 

 彼女の呼ぶ声に、ゴールドは我に返った。そうだ……考えている暇など無い……今は、目の前にある問題を解決する事が先決だった……。

 

「……大丈夫だよ、姉さん……! 行こう……‼︎」

 

 ゴールドは本当に心強かった。これ迄、戦いは大神と佐熊が美羽が居た。しかし、三人が不在の時は孤軍奮闘を強いられる事もあった。

 だが、今の自分には歴戦のガオレンジャー達が居る……そんな、彼の手をプラチナが握る。

 

「……頑張ろうね……‼︎」

 

 プラチナの言葉を受け、ゴールドは迷いを吹き飛ばした。そして、遂にガオケンタウロスは長い異次元を抜け出した……‼︎

 

 

 異次元を抜けた先にある鬼地獄……大地には草木一本、生えていない不毛の地平が広がっていた。

 その中央に瓦礫が寄せ集まった様に立つ牙城があった……。これこそ、鬼冥城……ヘル・オルグ達の総本拠にして、鬼地獄の要とされる悪の要塞である……。

 その天辺に、漆黒の巫女服に似た衣装に身を包んだイザナミが立っていた。肩から漆黒のマントを羽織り、頭部にはオルグの角と並び、悍ましい顔を模した冠を付けている。手には鎌と融合した杖を持っている。

 彼女の傍には、水晶に閉じ込められた祈が眠っている。イザナミは、北叟笑んだ。

 

「時は来た……この私の長きに渡る復讐は、これにて完遂する……そして……この世界は私と、あの人の理想郷へと生まれ変わり……オルグに埋め尽くされた世界にて未来永劫、過ごし続けるのだ……。

 待たせて済まない……でも、間も無くだ……やっと会えるのよ……イザナギ……」

 

 そう呟くイザナミの瞳から、一筋の涙が零れ落ちた……。

 

 其処へ空間を切り裂き、姿を現すガオケンタウロス。鬼地獄の禍々しい空気に意を介さず、大地へと舞い降りた。

 

「此処が……鬼地獄……! 正に地獄だな……‼︎」

 

 ゴールドは目の前に広がる風景に戦慄する。確かに荒れ果てた大地、淀んだ空気、此れは地獄と呼ぶに打って付けである。

 

「此れが……世界の縮図だ……‼︎ オルグの侵攻を食い止めなければ、地球の大地も、海も腐ってしまう……。そうなったら、俺達の住む地上も…‼︎」

「こうなってしまうってのか⁉︎」

 

 淡々と語るイエローに、ブルーは聞いた。レッド、ブラック、ホワイトも言葉が出ない様子だ……プラチナに至っては、目を背けている……。

 

「そんな事、させて堪るか!」

 

 ゴールドが叫ぶ。自分達の暮らす世界が、こんな事にされては堪らないからだ。防ぐには、イザナミを、そしてメツキを滅ぼすしか無い……。

 等と考えているて、目の前に聳える巨大な山に気付くプラチナ。

 

「あの山は?」

「違う、山じゃ無い……あれは……樹だ…‼︎」

 

 ブラックは、巨大な影に目を凝らす。其れは天に届かんばかりに佇む巨樹だ。その樹は禍々しい雰囲気に、全身から邪気を放っている。

 

「オルグドラシルだ……‼︎」

 

 ゴールドは一度、本物を見た事がある。邪気を放ち、大地を汚し命を吸い尽くす邪霊樹オルグドラシル……それは、鬼地獄の濃密な邪気を糧に無限大に成長すると言う……。

 かつて見たものより更に巨大で、それは鬼地獄中に根を張り巡らせて、まだまだ成長する可能性を残している。

 と、その時、声が響き渡る。

 

 

 〜まんまとやって来たか、愚かな人間共め…‼︎〜

 

 

 その声は、イザナミの声だ。すると、イザナミは目の前に現れた。

 

「イザナミ‼︎」

「貴様等は自ら墓穴へと足を踏み入れたのだ‼︎ 見よ‼︎」

 

 イザナミが杖を振るう。すると、オルグドラシルが動き出した。

 

「な、あれは⁉︎」

 

 ゴールドは目を見張る。なんと、オルグドラシルの根が足の様に持ち上がり方々に伸びる枝が絡み合い腕となる。

 やがて木の表面が畝ると、メツキが浮かび上がった。

 

「これは……オルグ⁉︎」

「そうだ……破壊神となったメツキを依代に、鬼地獄の全てのオルグの魂を吸収したオルグドラシルと一体化させたのだ‼︎」

「全て……だって…⁉︎」

「ゴールド、あれを見て‼︎」

 

 プラチナは、オルグドラシルの幹を指差す。すると確かに、幹の表面には夥しい数のオルグが浮かび上がっていた。

 よく見れば、其処には見知った顔がある。

 

「あれは……ツエツエとヤバイバ⁉︎」

「あっちには……ゴーゴとヒヤータも‼︎」

「下には……ヤミヤミとメランも⁉︎」

 

 レッド、ゴールド、プラチナは、かつて激戦を繰り広げたデュークオルグ達が、オルグドラシルに取り込まれてしまっている事に気付く。

 イザナミは狂笑を上げた。

 

「敗北したオルグ達の魂は全て、この破壊神メツキの一部としたのだ‼︎ 此奴等は未来永劫、破壊神の肉体を構成する為の柱となり続けるのだよ‼︎ 本来ならば朽ちていくのみの、此奴等に破壊神の肉体と言う最も名誉な役目を与えてやったのだから、本望だろう‼︎」

「ま、まさか……四鬼士達を僕達に嗾けたのは……‼︎」

 

 ゴールドは、イザナミを睨みながら聞いた。彼女ば邪悪な笑みを浮かべる。

 

「そう、そのまさかだ‼︎ お前達に、四鬼士を倒してくれたお陰で、破壊神は最強の姿へと変じた‼︎ おまけに鬼灯隊、恐竜オルグ、ツエツエやヤバイバと言う力のあるオルグ達も利用させて貰ったよ‼︎

 ご苦労だったな、ガオゴールド‼︎ お前の行動は人類を救う為では無く、寧ろ人類を滅ぼす為の布石だったのだ‼︎」

 

 イザナミは勝ち誇りながら言い放つ。ゴールドは怒りの余り、はらわたが煮え繰り返りそうになった。

 どうして、此処まで命を無碍に出来る? どうして、心を踏み躙る事が出来る?

 

「イザナミ……何が、お前をそうさせる‼︎ お前を其処まで歪ませたのは……一体、何なんだ⁉︎」

 

 ゴールドは人間として理解できなかった……かつて、同じ人間だった彼女が、こうも容易く世界を滅ぼし、人を苦しめ……挙句には、同族のオルグさえも利用した末に、木の実を捥ぎ取る様な手軽さで潰してしまう……。だが、イザナミは顔色一つ変えずに、淡々とした様子で……

 

「ガオゴールド……お前は何故、生き物が自らの腹を満たす為に他の生き物を殺すのか、と問われて……応える事が出来るか?

 そんな物、理由などあるか! 目の前に可能性があったから、利用した‼︎

 貴様とて、そうだろう? 鼻先に、ガオの戦士の力を突き付けられたから、その力を使った‼︎

 人間もオルグも、大差無い‼︎ 内に抱えた欲望は限りない物だ‼︎ だから、私は……その欲を叶える為に、人を捨てた‼︎」

「ふざけるな! お前と一緒にするな‼︎」

 

 ゴールドは激昂した。自分達の戦いを、ただのエゴでしか無かった、と言われたからだ。しかし、イザナミの嘲笑は止まない。

 

「しかし……知りたいなら教えてやろう‼︎ 私はな……取り戻すのだ‼︎ 私から全てを奪った神からな‼︎」

 

 そう叫んだイザナミの顔は、何処か憂いを帯びている様子だった……。

 

 

 

 その頃、ガオズロック内で、テトムは戦いを見守っていた。ガオマッスルは果敢に、二体の破壊鬼神に立ち向かっていく。

 しかし、やはり、元が強力なパワーを誇るハイネスだけあり、二体の破壊鬼神の戦闘力は桁外れだった。

 最初こそ、互角に渡り合っていたと思いきや、再び劣勢を強いられてしまっていた。

 テトムは、ただ祈る事しか出来ない。しかし、歯痒かった。目の前で仲間達が倒されそうになる仲間を見続けるのは。

 

「や、ヤベェんじゃ無いか⁉︎ やられちまうぞ‼︎」

 

 猛も横から騒ぎ出す。ガオマッスルが散々、痛めつけられる姿を見せられるのは不安でしか無いからだ。

 昇と舞花と千鶴も同様だ。

 

「何か、この乗り物には武装手段は無いのか⁉︎」

「無いわ……今、出来る事は貴方達の安全を確保する事だけ……‼︎」

 

 テトムは力無く言った。

 

「でも、みすみす目の前で……‼︎」

 

 舞花は悔しげに呻く。その際、千鶴は何か光が近づいて来るのに気付いた。

 

「あれは⁉︎」

 

 千鶴の声で全員、顔を上げた。すると目の前に光は降り立ち、その光は形を成した。

 

「あ、貴方は⁉︎」

 

 テトムは驚いた。それは、巫女の衣装を身に纏った祈そのものだったからだ。少し彼女より成長している様子だったが、容姿は祈そっくりである。

 

「祈……なの⁉︎」

 

 付き合いの長い舞花が聞いた。しかし、テトムはハッとした様子で彼女を見た。

 

「アマテラス様……ですね?」

 

 テトムは確信が行った。彼女こそ、祈の前世であり、ガオの巫女の始祖にあたる存在なのだ。

 アマテラスは頷く。

 

 〜今代の、ガオの巫女テトム……貴方には、伝えなければならない事があります。私の母イザナミについてを……〜

 

 アマテラスは語り始めた。だが、今度は猛が怒り始めた。

 

「そういやよ……スサノオやイザナミって奴は、アンタの身内なんだってな⁉︎ なんで、アイツらがこんな事をしでかす前に止めなかったんだよ⁉︎」

「止せ,猛‼︎」

 

 猛の暴言を昇が嗜めた。しかし、アマテラスは俯く。

 

 〜貴方がたの怒りは至極当然です……。そもそもの始まりは……私が母の悲しみを理解出来なかった事から始まったのですから……〜

 

「イザナミの……悲しみ?」

 

 テトムの質問に、アマテラスは悲しげに頷いた。

 

 〜母は優しい人でした……。私達が幼い頃は心から命を重んじ、私達に優しさと思いやりを注いでくれました……。

 しかし……あの時から、母は変わってしまった……。最愛の夫にして、私達の父イザナギを亡くした、あの時から……」

「イザナギ?」

 

 アマテラスは悲しげに続けた。

 

「イザナギは、母イザナミが心から愛した人でした……。あの頃は家族五人で幸せでした……。

 けれど、父は不注意で荒れ狂う川へ飲み込まれて死んでしまった……それからと言うもの、母は死を恐れる様になり……永遠の命を得る事に拘り始めたのです……」

 

 そう言いつつ、アマテラスの頬を涙が伝う。

 

「イザナミは、その過程で人の心から発せられ邪気を見つけ、其処からオルグを生み出す方法を発見しました……。

 そうしてる間に、オルグの力に魅せられた彼女は、この地上をオルグに埋め尽くそうとしたのです……。既に正気を失っていたのでしょう……」

「そんか事が……‼︎」

 

 テトムは絶句した。ガオネメシス、テンマ、鬼還りの儀……これら全ては、夫を失ったイザナミの暴走による事だったとは……。

 

 〜母は、もう人の心を無くし、誰にも救う事は出来ません……。母を救済する方法は最早一つだけ……荒れ狂う魂を鎮める事に他なりません……〜

 

「魂を……鎮める……? それは……?」

 

 〜私達、ガオの一族に代々、伝わる秘術……。私が母の為に後世へと託した……”鎮魂の聖歌”を歌うのです…!〜

 

 アマテラスの言葉に、テトムは首を傾げた。

 

「鎮魂の聖歌? 私、そんな歌、知りません…」

 

 ムラサキから、ガオの巫女としての様々な術を教わったが、その様な名前の歌は教わらなかった筈だ。

 だが、アマテラスは優しく微笑む。

 

「ありますよ……貴方は知っている筈です……。あの歌は、巫女の力を引き継ぐ者の魂に深く根付くのです……」

「! まさか……⁉︎」

 

 彼女の言葉に、テトムは何かに気付いた様子だった…。

 

 

 地上では、ガオマッスルが二体の破壊鬼神の前に膝を突いていた。健闘はしたものも、やはり強大な力を持つ破壊鬼神の前には、ガオマッスル一体では歯が立たなかった。

 コクピット内では、シルバーとグレーが疲弊し切った様子だった。

 

「……クソッ……‼︎ 最早、此処までか……‼︎」

 

 力の限り戦ったが結局、この体たらくである。シルバーは悔しげに唸った。もう、ガオマッスルにも反抗する力は残されていない。

 

「……むざむざ、やられるくらいなら……最後は戦士らしく……‼︎」

「なに、寝惚けた事を言っとるんじゃ……‼︎ しっかりせィ、シロガネ……‼︎」

 

 横にいるグレーが叱咤してきた。

 

「負ける前から死を飾り立てるくらいなら……最後まで無様に抗ってでも生き抜いてやる……‼︎ それくらいの気概を見せんか……‼︎」

 

 グレーの言葉は、弱気になり掛けていたシルバーの心を奮い立たせた。

 

「そうだな……! 此処で挫けたら……何の為に黄泉から生き返ったのか……分からなくなる……‼︎」

「そうじゃ……‼︎ 無事に生き抜いて……テトムの卵焼きを食わなくちゃのォ……‼︎」

 

 銀色の狼と灰色の熊が、戦いに向けて再び投資を燃やす。すると、目の前にセンキとテンマが迫ってきた。

 と、其処へ一筋の光がガオマッスルの身体に入り込んだ。

 

「な⁉︎ 此れは⁉︎」

 

 シルバーが急な事態に慌てふためく。其処に、別の声が響いた。

 

 

 〜私の最後の力を、君達に託す……‼︎ この力で、地球を……‼︎〜

 

 

 其れは、ガオマスターの声だった。途端に、二人のガオソウルが回復していくのが分かった。

 と、同じくして、ガオマッスルの身体にも異変が有った。

 

「見ろ‼︎ ガオマッスルが‼︎」

 

 グレーに促され、ガオマッスルを見た。メタリックグリーンのボディは炎の様なメタリックレッドへと変化、頭部に騎士の鉄仮面を思わせる兜を身に付けていた。

 右腕にはガオメガロドン、左腕にはガオスミロドンが装着して、その上からガオマンモスが分離したノウズクレイモアとタスクシールドが武装された。何れとも、ガオマスターに力を貸していたパワーアニマルだ。

 

「此れは……ガオコング⁉︎」

 

 シルバーは驚愕した。かつての戦いにて、異世界に飛ばされた際に力を貸した赤いゴリラのパワーアニマル、ガオコング。

 その彼を中心に誕生するのが『炎の精霊騎士』ガオナイトである。更にガオスミロドン、ガオメガロドン、ガオマンモスが合体し、下半身がガオトードとで構成された強化形態スーパーガオナイトとパワーアップしていた。

 

「凄い…‼︎ 力が、桁違いに跳ね上がっているぞ‼︎」

「これなら、勝てるかもしれん‼︎」

 

 シルバーとグレーは、台座に力を込める。すると、スーパーガオナイトは動き出した。

 センキ、テンマは二人同時に襲い掛かって来たが、其処へガオナイトはノウズクレイモアを伸ばして一閃した。

 返し様に、テンマは光線を放ったが、タスクシールドを展開されて、見事に弾き返されてしまった。

 先程まで、手も足も出なかった強敵に対し、ガオナイトは圧倒的な強さを誇る。

 これこそ、ツクヨミが残した最後の力…自身の魂を擦り減らして迄、後世に託した希望だった。

 ダメージを受けた二体の破壊鬼神は流石にダメージを負った。今なら、倒せる……そう確信したシルバーは…

 

「よし! 一気に落とすぞ‼︎」

「任せィ‼︎」

 

 再び、二人の戦士のガオソウルが装填されていく。ノウズクレイモアは光を帯び、天まで伸びた。

 

 

「森羅万象! ビッグバンファイナル‼︎」

 

 

 放たれるは、地球の生命を受けた大いなる斬撃……幾多に渡り、テンマとセンキを斬り結んだ。

 既にズタボロになっているが、不死身のヘル・ハイネス故に簡単には死なない。いや、死ぬ事は出来ないのだ。未だに立ち上がって来る。

 と、其処に後方から二つの攻撃が破壊鬼神を襲った。

 

「あれは……ガオハンター⁉︎」

「ガオビルダーもじゃ⁉︎」

 

 倒された筈の精霊王達が、ガオナイトの力を受けて復活したのだ。しかも、ガオハンターは右腕にガオジュラフの変化したジュラフスピアーを、ガオビルダーは左腕にガオディアスの変化下ディアスシザーズと下半身をガオライノスを百獣武装している。

 ガオハンターが、ジュラフシザーズを用いてテンマを刺し貫き、ガオビルダーがディアスシザーズでセンキを挟み拘束した。

 

 

「もう一度、行くぞ‼︎

 

 森羅万象! ビッグバンファイナル・ネクスト‼︎」

 

 

 再度に放たれた斬撃が、破壊鬼神達を今度こそ滅多斬りにした。これを受け、遂に二体の破壊鬼神は大爆発してしまった。

 

「やったぞ‼︎」

「よっしゃァァ‼︎」

 

 シルバーとグレーは勝利の勝鬨を上げる。其れに合わせ、三体の精霊王は咆哮を上げた……。

 

 

 

 鬼地獄では、テンマとセンキの敗北を知ったイザナミが驚愕していた。彼等の敗北は計算外だったからだ。

 しかし彼女は特に、それ以上は気にしなかった。死んだなら、また蘇らせるのみだからだ。其れより、今は目の前に居るガオレンジャー達を倒す方が先決である。

 

「どうやら、彼奴等は負けたか……死して尚、役に立たぬとはな……」

 

 半ば呆れた様に吐き棄てるイザナミ。彼女からすれば、テンマにもセンキにも、さして期待はしていなかった。自身が完全に力をつける迄の時間稼ぎとなれば、しめたものだと思う程度である。

 イザナミは動き出さずに居るメツキを見上げ、ニヤリと笑う。

 

「私には、此奴が居れば良い……さァ! 目を覚ませ、メツキよ‼︎」

 

 そう叫んで、イザナミはメツキの頭部へと降り立つ。すると先程まで、微動だにしなかったメツキは動き出した。

 

「動き出すぞ‼︎」

 

 レッドが叫ぶ。そうしている間に、メツキは悠然と立ち上がった。その巨躯はガオケンタウロスを遥かに上回る。

 ゴールドは意を決し、皆に叫ぶ。

 

「行こう、皆‼︎ 例え、何千何万のオルグが攻めて来たって、僕達なら負ける気がしない‼︎ 何故なら、僕達は信じ会う絆がある‼︎」

「ああ、そうだな‼︎ 信じ合う絆が……俺達の力になる‼︎」

 

 ゴールド、レッドは互いに叫ぶ。其れに呼応し、ガオケンタウロスは飛び上がった。メツキは木の根を操って、ガオケンタウロスに攻撃を仕掛ける。其れを、エレファントソードで斬り捨てながら、メツキに近づいて行く。本体を操るイザナミを倒せば、メツキも倒れる筈だった。

 しかし、イザナミはニヤリと笑う。

 

「甘いわ‼︎ メツキ、穿て‼︎」

 

 イザナミが命令した。すると、メツキの口内光り次の瞬間、ドス黒い光線が発射された。

 

「防いで、ガオケンタウロス‼︎ エレファントシールド‼︎」

 

 ホワイトが叫び、エレファントシールドを展開させた。しかし、その光線はシールドを持ってしても、完全には防ぎ切れなかった。

 余波ダメージが、コクピット内にまで及ぶ。

 

「ぐあァァ⁉︎ 凄い攻撃だ‼︎」

 

 イエローが絶叫した。メツキは、その巨躯であるが故にスピードは完全に殺されているが、その攻撃力と耐久力は桁外れである。ましてや、鬼地獄に存在した、よろずオルグ全てを吸収しているのだから、今のメツキと戦う事は、オルグの大軍に挑む事に等しい。

 思わず体制を崩したガオケンタウロスに、木の根が集結して鞭の様にしなりながら襲い掛かって来た。

 

「グゥゥッ!⁉︎」

 

 ガオケンタウロスは、そのまま地べたに叩き付けられた。衝撃から飛び立つ事も出来ずに居ると、メツキの木の根が一斉にガオケンタウロスを殴打し始める。

 

「ホホホホホホホホッ‼︎ 私に逆らう者は皆、こうなるのだ‼︎ 死ねェ‼︎」

 

 イザナミは高笑いを上げる。木の根の攻撃は熾烈を極めた。

 

「くッ‼︎ このままじゃ、やられてしまう‼︎」

 

 ブルーは猛襲に晒され、唸る。しかし、ゴールドは亀裂の入ったヘルメットから目を覗かせ、メツキを見上げた。

 

「スサノオ……‼︎ 此れが貴方の望んだ事か⁉︎」

 

 絞り出す様な声は、強い希望を求めている様だった。メツキの中にある、イザナミに抑え込まれた彼の心に語り掛けた。

 

「全てを滅ぼすだけの……それだけの存在に成り下がって……其れで満足なのか⁉︎ 違うだろ⁉︎」

 

 ゴールドは、スサノオの中にある最後の良心に問いかけた。まだ残されている筈だ。

 だが、その思いを嘲笑うかの様に、イザナミの甲高い声が響き渡る。

 

「無駄だ! 貴様等の脆弱な声など、届きはせぬ! スサノオは生きとし生きる者、全てに絶望したのだ‼︎

 最早、一欠片の希望も無い‼︎ 世界を滅ぼし……生命を滅ぼし……私の築き上げる鬼の理想郷の中にて、絶望に囚われたまま生き続けるのだ‼︎」

 

 イザナミは、メツキに問い掛けた。

 

「さァ、メツキ‼︎ ガオケンタウロスを塵に帰してしまえ‼︎」

 

 メツキの胸部が輝いたと思えば、禍々しい輝きを持つ光線が放たれようとしていた。

 だが、それを遮る光が現れ、メツキは大きく仰反る。

 

「な、何だ⁉︎ この忌々しい光は⁉︎」

 

 イザナミは喚く。すると、鬼地獄一帯に歌が響き渡る。それは間違いなく、響の調べだった。

 

 

耳を澄ませば 聴こえるだろう

風が運んだ いつかの呼び声

行きなさい

そこに在るのは まことのやすらかさ

時を渡る 祈りのなかで 約束は果たされる

深く息を吸い込み 遥かなる魂を

響かせて、響かせて

 

 

「うう……‼︎ 何だ⁉︎ 止めろ、この歌を止めろォォ‼︎」

 

 イザナミは頭を抑えて苦しみ始めた。メツキも同様に、身体を苦しげに震わせた。

 尚も歌は続く。ふと、聞き覚えのある声に、ゴールドは顔を上げた。

 

「て、テトム?」

 

 ゴールドは歌の主が分かった。間違い無く、テトムが歌っているのだろう。ガオネメシスに変身していたスサノオも、響の調べを聴く度に苦しんでいたが……?

 

「な、何故だァァァ!!? 何故、私が、こんな歌如きに……!!!」

 

 悶え苦しむイザナミだが、そんな時に鬼冥城に安置されていた祈の閉じ込められていた水晶が、ガオケンタウロスの前へと現れ、その中に吸収されて行く。

 ゴールドの隣へ、水晶から解放された祈が降り立った。

 

「祈‼︎」

「兄さん……来てくれたんだね……!」

 

 ゴールドと祈は互いに再会を喜び合う。だが、その様子を見たイザナミは激しく激昂する。

 

「お、おのれ……小娘がァァァ……‼︎ アマテラスの差し金かァァァ……!!?」

「静まりなさい、イザナミ! 原初の巫女アマテラスの魂を引き継ぐ巫女……龍崎祈! 巫女の名の下に、これ以上の狼藉は許しません‼︎」

 

 気高く応える祈の姿は、正にガオの巫女そのものだった。すると、祈は口を開き……響の調べの続きを歌った。その歌い方は、テトムの歌い方と寸分に違わなかった。

 

「や、止めろォォォォ!!! その耳障りな歌をォォォォ!!!」

 

 歌を歌い続ける祈を罵倒しながら、イザナミは叫び続けた。先程までの余裕綽々な態度とは打って変わり、確実にイザナミは弱体化しつつあった。  

 そして、祈とテトムの歌声が二重唱になった。

 

胸をめぐるは 遠い日の唄

谷間に渡る 彼方の笛の音

生きなさい

そこに在るのは 生命のうつくしさ

時を超えて 刹那のなかで 約束を果たすまで

かなしみは残る やさしさに変わるため

響かせて、響かせて

 

 

土に癒され 大地に抱かれ

なおも震える 心をひらいて

行きなさい

そこに居るのは おまえの同志たち

時を渡る 祈りのなかで 約束は果たされる

かなしみはいつか 優しさに変わるから

響かせて、響かせて

 

 

 二人の巫女による美しい旋律は、渇いた鬼地獄を満たしていく。しかし、イザナミとメツキは、その歌を聴けば聴く程、弱り切って行った。

 

 すると、ガオケンタウロスの真上に一人の女性が舞い降りた。

 

「アマテラス…?」

 

 ゴールドが呟く。彼女の姿を見たイザナミは忌々しげに睨んだ。

 

「アマテラス…だとォォ……!‼︎?」

 

 母は憎しみに満ちた目で、娘を見た。しかし、アマテラスは気にせずに右手を掲げる。

 すると、ガオフェニックスの翼が虹色に輝き始めた。やがて、ガオケンタウロスの傷付いた身体は癒されていき……

 

「見ろよ、ガオスーツが⁉︎」

 

 イエローが叫んだ。最早、ぼろぼろだったガオスーツは元の姿へと戻った。更に奇跡は続く。アマテラスのかざした手から開かれた時空の裂け目から、数多のパワーアニマル達が出現した。

 その数は正しく百獣……その中には、ガオユニコーン、ガオグリフィン、ガオワイバーン、ガオナインテールも居た。

 アマテラスの呼び声に応じ、全てのパワーアニマル達が招集したのだ。

 

 〜さァ、行くのです! 若き戦士達よ‼︎ 強大な邪気をも打ち破る“信じ合う絆”を持って……怨念に取り憑かれた者を退散させなさい‼︎〜

 

 アマテラスは号令を掛けた。それに呼応し、ガオケンタウロスは再び舞い上がった。

 右手のエレファントソードに光を纏わせ、メツキの身体に振り下ろす。

 

「グガァァァッ!!!!」

 

 強靭とされたメツキの身体は斬り裂かれた。更に間を置かず、エレファントソードの幾多にも渡る斬撃が叩き込まれる。

 

「なァァ……‼︎ こんな馬鹿なァァ……‼︎ 身体が……崩れて行く……‼︎」

 

 イザナミも、ガオの戦士達の思わぬ反撃に抵抗する事も出来ないで居た。一人の力には無敵を誇るオルグも、結束した絆の前には勝てなかったのか……。

 尚も、祈とテトムの響きの調べが、メツキとイザナミの力を削り取っていく。其処へ、ゴールドはソルサモナードラグーンを台座に置き、ガオソウルを込めた。  

 

「ガオドラゴン、ガオフェニックス‼︎ 頼む‼︎」

 

 〜ああ、任せろ‼︎〜

 

 〜何時でも行けますよ‼︎ー

 

 ゴールドの言葉に、竜と鳳凰は応える。すると、エレファントソードに虹色の輝きが宿り、鬼地獄の曇天まで伸びた。

 

「最終神技! ビースト・ラグナロク‼︎」

 

 放たれるは大いなる斬撃……地球に住まうパワーアニマル達、地球生命、全ての力を足した至高の技、神々の黄昏を意味をする正に、最後にして最強の一閃だった。

 その光剣はメツキの肉体を頭から両断にし、イザナミもまた真っ二つへと斬り裂かれた。

 

「わ……私が……こんな所で……‼︎ イ……ザナ……ギ……‼︎」

 

 再生する力を封じられも尚、自身の敗北を受け入れられないまま、今は亡き夫の名を呼ぶイザナミ。

 しかし、彼女は意識の途切れる最後の刹那、天にて微笑む男性の姿を見る。それは、彼女が長らく見る事が叶わなかった愛する人の顔……。

 

「……おお……イザナ……ギ……あなた……! やっと……やっと……会えた……もう……離れない……で……‼︎」

 

 イザナミは涙を流しながら手を伸ばす。しかし、その表情はとても穏やかだった。光に飲まれ、イザナミとメツキの身体は砕けていき……やがて、其処には瓦礫の山しか残っていなかった……。

 

「か、勝った……?」

 

 変身の解けた陽は呟く。目の前には、メツキの残骸だけがあった。振り返れば、走が微笑む。

 

「ああ……終わったんだ……‼︎ 君が終わらせたんだ、陽‼︎」

 

 走の労りに満ち溢れた言葉に陽は胸が暖かくなった。他の戦士達も称賛してくる。

 

「ありがとう、陽‼︎ お前のお陰だ‼︎」

 

 岳が肩を叩きながら讃えてくれた。

 

「最後まで、ネバギバだったぜ‼︎」

 

 海は陽気に励ましてくる。

 

「見事な戦いぶりだった、感動した‼︎」

 

 草太郎も力強く褒めてくれている。

 

「みんな、貴方のお陰よ、陽くん‼︎」

 

 冴が抱き寄せながら、陽を優しく労る。

 その後、振り返った先には、祈と美羽が居た。

 

「やっと……終わったね……」

 

 美羽は笑い掛ける。長かった戦いは、やっと終わったのだ。その言葉に全てが込められていた。陽は祈に駆け寄り強く抱き締める。

 

「ゴメンな、祈……‼︎ 待たせちゃって……‼︎」

「大丈夫だよ、兄さん……! 信じてたから! 兄さん、きっと来てくれるって……‼︎」

 

 そう言って、祈は泣きながら陽に顔を埋めた。その様子を美羽は、やるせ無い様子で見ていた。

 片想いでしか無い事は分かっていた……所謂、自分は負けヒロインである事も……。だけど……戦いが全て終わって、陽の心に変化があったのなら……自分の長年の想いを告白しようと思った……。

 しかし、その夢は淡くも儚く弾け飛んでしまった……浮かび上がったシャボン玉が、風に吹かれて消えた様に……。

 と、その際、鬼地獄の天から光り輝く粒子が降り注ぐ。

 

「これは……雪?」

「まさか……此処は鬼地獄だぞ?」

 

 冴の言葉に、走は返した。鬼地獄に雪が降るなんて……。その降り注いで行く粒子は、バラバラに崩壊したメツキの残骸へと積もって行き……

 

「あれを見ろ‼︎」

 

 岳が指を差す。なんとメツキの残骸は粒子に触れると同時に浄化され、やがて光と共に昇天して行った。最後の光の中に,陽の良く見知った顔が居た……。

 

「摩魅?」

 

 人とオルグの中間に生まれ、その身に余る迫害に晒されて来た少女、摩魅……その顔は、とても穏やかに笑っている……。

 

「解放されたんだ……イザナミの怨念から……」

 

 陽は理解した。イザナミは、その怒りによってオルグ達を支配して来た。そして今、やっと解放されていくのだ……。

 すると最後に小さな光で珠が、ガオケンタウロスは中へと飛び込んでくる。其れは祈の腕の中に収まると……。

 

「赤……ちゃん?」

 

 彼女の腕には布に包まれた赤ん坊が眠っていた。困惑する祈だが、陽は確信した。もしかして、この赤ん坊は……

 

「スサノオ……じゃ無いか?」

 

 陽の言葉に、一同は首を傾げながらも、赤ん坊を覗き見た。

 

「……生まれ変わり……みたいなものか……?」

 

 ポツリと言った走の言葉に、陽は見上げる。確かに、スサノオもまた被害者の一人だった……彼も漸く救済されたのだろう……と、思えて来てしまう。

 すると、ガオドラゴンが高らかに吠えた。

 

 〜さァ、帰るぞ‼︎ 地上へ‼︎〜

 

 ガオケンタウロスの翼は展開し、空へと舞い上がる。陽は、他のパワーアニマル達を見て、涙を溢しながら笑う。

 

「……アマテラス……パワーアニマルの皆……ツクヨミ……ありがとう……‼︎」

 

 陽達は戻っていく……掛け替えの無い日常へと……‼︎




091-3857-9

※響の調べの歌詞の部分、足しておきました。
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