side ユラナ・ウェリス
12月を過ぎ、ホグワーツ校内はクリスマス一色になっていた。私にとってはクリスマスというものにそれほど思い入れはない。適当にプレゼントを渡したり、おめでとうを言い合ったりするぐらいか。前世ではカップルというものには、縁がなかった。まあ、今生きてるハリーポッターの世界でも縁がないかもしれない。いや、なくていい。幼い可愛い三人組がクリスマスにプレゼントもらってはしゃいでる姿を見てるだけで、眼福ってやつですよ、グフフ……。
(おい、ユラナ、気持ち悪い心の声が丸聞こえだぞ)
念話呪文で叱ってきたのは私の兄のマーティン・ウェリスである。
(ええ~。お兄ちゃんだって可愛いと思うでしょ~)
(いや、お前みたいにロリコンやショタコン拗らせてないし)
呆れ顔で彼は言う。ちなみに今は呪文学の授業中である。チート能力(あくまで自力で身に付けたものだが)で余裕がなければ、こんな悠長なことはできないだろうなぁ。
(ま、それはいいや。お兄ちゃんはクリスマスホグワーツに残るの? ハリーとロンは残るみたいだけど)
(俺は一度帰るぞ。父さんがどっか行くみたいだから、それについていくつもりだ)
(父さんも忙しいんだねぇ。私は残るつもりだから、よろしく言っといてね)
お兄ちゃんが頷いたので、俺は念話呪文をオフにした。あの三人組でアブナイ妄想をしているのは聞かれないように気をつけよう。
一週間ほど経ち、クリスマスの朝を迎えた。普段は隣にいるはずのハーマイオニーはいなかったけど、その代わりに可愛らしいピンク色の髪止めが置いてあった。彼女からのクリスマスプレゼントということだろう。ちなみに私はみんなにお菓子の詰め合わせを送っておいた。
私が談話室に降りていくと、すでに興奮した様子のハリーとロンの姿があった。
「メリークリスマス、ハリー、ロン」
「「メリークリスマス、ユラナ!」」
ああ~可愛いよ~。朝から最高の癒しだわ。ごちそうさまです。
「ねぇ、ユラナ。これって……」
ハリーが掴んでいたのは透明マントだった。
「あ、透明マントじゃん。激レアだよ、これ」
「知ってるの? ユラナ」
映画や小説からの知識と言う訳にはいかないので、
「うん。父さんが前、使ってたよ」
と誤魔化した。するとロンが不思議そうに聞いてきた。
「前々から思ってたけど、ユラナたちのお父さんって何者なの……」
「いや~、ごめん。私にもいまいちあの人が何をしてるのかは分からないんだよね。多分、機密的なことをやってるんだと思う」
いや、本当にあの人のやってることは分からない。開心術使っても、表情変えずに防がれるし。真実薬も効かないんじゃなかろうか。
「良かったね。ハリー、大事に使いなよ。きっとこれがあればなかなか面白いことができると思うから」
「うん、ありがとう、ユラナ!」
本当に前世でこれがあれば、高校生男子は女子更衣室に忍び込み放題だっただろうなぁ。この子たちはそんなことを考えないぐらい純粋みたいだからよかったけど。
クリスマスパーティーが終わった後、ハリーは透明マントを着てどこかに向かったらしい。私は就寝時刻をとうに過ぎていたが、暖炉の前で座って待っていた。
ボケーっと過ごしていると、ハリーが慌てた様子で、駆け込んできた。みぞの鏡を見つけて興奮しているようだ。私も知ってなければ、一緒に興奮できたのにと思ったが、まあ仕方ない。
私は興奮するハリーとロンを諌めつつ、透明マントの中に入り、ハリーに案内された場所に向かった。
ハリーには両親の姿、ロンには自身が首席になっている姿が見えたらしい。さあ、私には何が映るのか。
まず、最初に目についたのはお兄ちゃんと三人組の姿である。お兄ちゃんとハーマイオニーはいないけど、これは普段から見てる風景だ。これが私の望みなのだろうか。
が、しばらくすると、本当に不思議なことが起きた。鏡に映っている私たちの背後に見慣れた人の姿が見えた。それを認識した瞬間、なぜだか私の頬には涙が伝っていた。
「……ユラナ、大丈夫?」
ハリーが心配そうに聞く。
「……うん。でも、私はこれを見るべきじゃなかったかもなぁ」
小声で私は呟いた。それもそのはずだ。私の目に映っていたのは前世の友人たちの笑っている姿だったからだ。それを見た瞬間、何とも言えない感情に私の心は支配され、いつの間にか涙がこぼれていたのだ。
「後ろにいるのは分かってますよ、ダンブルドア先生」
私は鏡を眺めたまま、呼びかける。
「何でもお見通しじゃのう」
ハリーとロンが驚いて後ろを振り返ると同時にダンブルドアの声がした。
「ま、なんとなくでそれくらいは分かりますよ。メリークリスマスです」
私はダンブルドアに頭を下げる。
「今日はそなたに言いたいことがあって来たのじゃ。しかし、その様子だとミス・ウェリスはわしが何を言いたいのか分かっているようじゃのう」
確かに原作を一度読んだことのある私は分かっているが、それすらもこの人には気づかれるとは。
「自分の望みに縛られて『今』を無駄にするな、ということでしょうか」
ダンブルドアは微笑みながら言う。
「その通りじゃ。この鏡に引き込まれてしまうのはよくはないじゃろう。三人とも二度とこの鏡を見てはならん」
最後の一言だけ、明らかに重いトーンであった。そこで、本来なら、ハリーが聞くセリフであるが、私が今回は聞いてみることにした。
「ちなみに、ダンブルドア先生では何が映っているのですか?」
「わしか? 自身が靴下をもっている姿じゃのう」
笑顔で彼はそう言ったが、本当にそうだろうか。苦しい人生を過ごしてきた彼には望みですら、映されることは許されていないのではなかろうか。そう思いながら、私は透明マントは中に入り、談話室に引き返したのだった。
side マーティン・ウェリス
ユラナたちがみぞの鏡を発見しているとき、俺は日本の首都東京の渋谷にいた。なぜ俺がそんなところにいるのかというと、父が仕事の都合で向かった場所が東京だったからだ。が、依然として俺は彼が何をしているのかは分からない。息子たちですら、話してはいけない大事なことだという。
という訳で、暇になった俺は人生初(この身体では)の東京観光をすることになったのだ。
どこに行くのか考えたとき、俺には忘れてはいけない重要な場所がある。ハリーポッターの世界に行くきっかけとなった車の暴走事故が起きた、ビルのところである。それと自分が向き合ったとき、どのような感情を抱くのか気になっていた。
もちろん、今より三十年近く先のことなので事故の面影すら感じることはないだろう。しかし、なぜか俺がそのようなことを気にしているのか、それも知りたかった。
事故が起きた現場にはもちろん、何も起こっていなかった。俺たちが当時行った建物は残ってはいたが、すべてが三十年後とは違う。そんな風に思っていた。それなのに、それなのに……。
俺の目からは涙がこぼれていた。
自分に何が起こっているのか理解できない。確かに、ハリーポッターの世界に転生した直後は悲しみを抱いていた。それでも、その感情も十年経った今では落ち着いてきたはずなのに。この感情は何なのか。ありきたりの言葉を使っては説明できない気がした。
そんな感情の所以を探しているうちにどういうわけだか、俺は座り込んで泣き崩れてしまっていた。誰か教えてほしい。この感情の答えは何なのか。それを求めるかのように俺は座り込んで泣き続けた。
「……あの、大丈夫ですか?」
若い女性の声が聞こえた。俺は涙でぐちゃぐちゃになった顔を持ち上げる。初対面の人にこんな泣き顔見せるとか、恥ずかしい以外の何物でもない。
「ごめんなさい、大丈夫です。どうして……」
俺が言うと、彼女はハンカチを手渡して恥ずかしそうに言った。
「突然すみません。でも、なぜだか私の愛した人に雰囲気が似てるような気がしたので」
俺は涙を拭って、彼女の顔を見た瞬間、目を見開くことになった。その彼女は俺が前世で見た顔にそっくりであったからだ。
久しぶり過ぎて下手くそですね。ごめんなさい。今年も皆様が楽しんでいただけるような作品を作っていきたいと思います。感想や評価などの応援もどうかよろしくお願いいたします。