side マーティン・ウェリス
ハリーたちが仕掛けられた罠と格闘しているとき、俺は地下のスネイプ先生の研究室にいた。原作通りにいけば、ハリーたちが殺されることはないだろうし、不確定要素があったとしても、我が妹のユラナならどうにかできるだろう。
「こんな夜遅くに何の用だ、ミスターウェリス」
彼の研究室に着いて、椅子に腰かけるとスネイプ先生は聞いてきた。
「そうですね。まずは一つお礼を言わせていただきたい。ハリーを助けて下さりありがとうございます」
俺が言うと、スネイプ先生は眉をひそめた。
「助けた、だと? 我輩はあやつを助けてなどおらんが……」
俺は彼の言葉を小さく微笑みながら遮る。
「ご冗談を。クィレルの呪文からハリーを救ったのはあなたに他ならないでしょう?
そう思っているのは、多分俺と妹だけでしょうけど」
「だとしてもそのような下らないことを言うためだけに、我輩の貴重な時間を奪おうというのなら、成績のいい貴様であっても容赦なく罰則を与えなければならんだろうな」
その声に頷いて俺は続ける。
「もちろん、そのためだけに来たのではございません。あくまでもそれは前置きというものです。今日は先生に一つ提案をしに参ったのです」
「提案?」
「はい。先生、ヴォルデモートを裏切って我々、いや我が父の陣営に来てくれませんか?」
スネイプ先生は黙って俺をしばらく見て言った。
「我輩は闇の帝王の配下ではない。そもそも闇の帝王はもういない」
「いますよ。先生なら気づいておりますでしょう? どこにいるのかを」
「だとしても、なぜブライアン・ウェリスが我輩を必要とする?」
「父は魔法戦士としての腕は優秀です。しかし、先生のように魔法薬に優れた人物も求めておられるのだと思います」
というのも、俺自身、父がなぜスネイプ先生を必要とするのかは正直分からない。だが、その狙いは今言ったこととは別にあるのだろう。
俺はスネイプ先生が反論する前に続ける。
「俺のこの提案は何の強制力ももちません。ですから、すぐに結論を出さずに、とりあえず頭の片隅にでも置いといていただければ嬉しいです。いつか先生の気持ちがはっきりした際にまた同じ質問をさせていただきます。それでは夜分遅くに失礼しました」
俺が立ち去ろうとすると、先生は声をかけてきた。
「待て、何故今そのようなことを?」
俺はドアに手をかけながら答えた。
「ブライアン・ウェリスの差し金と言えば十分でしょう?」
そう言って、彼の反論を待たずに、その場を後にした。交渉は完璧にはうまくいかなかった。それでも、悪い結果という訳でもないだろう。相手にこちらの存在に意識を向ける。それだけでもできたのだからファーストステップとしては成功だ。そんなことを考えながら、俺は静かに四階の廊下に向かった。
三頭犬と悪魔の罠を通り抜け、魔法の鍵を捕まえ、ドアを開けると、ぐったり倒れたロンがいた。ケガはしているが、脈はある。
「大丈夫か、ロン」
答えないとは思っていたが、俺は呼んでみる。
「……ううん。マーティン?」
彼はぼんやり目を開けた。
「おう。良かった。すまんが、もう少し待ってもらえるか? ハーマイオニーを呼ぶから、彼女が来てくれるまで」
ロンが頷いてくれたので、俺も答えた。
「ありがとうな。わざわざケガしてまで、みんなを先に進めてくれて」
俺は軽く頭を撫でて、その場を後にした。ドアを開ければハーマイオニーがいるはずだ。そのつもりだったが、先にあったのは恐ろしい光景だった。
トロールであろう肉片が辺りに積まれているのである。
「……なんじゃこりゃあ」
このグロテスクな光景に俺は思わず息を呑んだ。その肉片の上にいたのは、一人の少女であった。
俺の妹、ユラナ・ウェリスである。
「おい、そこの馬鹿力。さっさと降りてこい」
俺は声をかけた。俺に気づいたユラナが降りてきた。
「どしたの、お兄ちゃん」
「どしたの、じゃねぇよ。何だよ、こりゃ」
「いや、だってハリーとハーマイオニーを攻撃しようとしてきたから、完全に叩きのめさしてもらったわ」
ユラナは平然と言う。こいつのロリコン、ショタコンは本格的にヤバいな。
「だからといって、これはやり過ぎ……」
そう言ったところで、ユラナはフラフラとこちらに倒れかかってきた。
「おい、大丈夫か。しっかりしろ」
頬を軽く叩くと、
「……唐揚げ弁当……」
などとおかしなことを言ってきた。寝言がこれとか本当に変な妹だ。
とりあえず、眠ってしまったユラナを担いでドアを開けた。それと同時にハーマイオニーの声が響く。
「ユラナ、大丈夫! って、マーティン?」
「落ち着け、ハーマイオニー。ユラナは無事だ。疲れて寝ちまってるけどな。それよりか、ロンのところ行ってくれ。ケガしてるはずだから」
「でも、この先には行けないわよ」
炎の壁を指差して言う。
「大丈夫だ。恐らく右端のビンの中にこれをくぐれる薬があるだろう?」
「どうして分かるの?」
内容を覚えてると言う訳にはいかないので、とりあえず、
「俺の野生の勘はけっこう当たるんだよ。妹を任せていいか?」
腹の中が少し冷え冷えとするような薬を飲み、俺は聞いた。
「それはいいけど……。気をつけてね」
俺はハーマイオニーに軽く手を振って炎の中に向かった。ユラナとしては愛しのハーマイオニーに抱かれて眠っているのだから天国に違いない。
さて、俺は先を突き進み、みぞの鏡のある部屋へとたどり着いた。が、すでにクィレル(ヴォルデモート)の姿はなく、気を失ったハリーが倒れていた。
「……もう終わってたか」
俺はハリーの横に座り込んで呟いた。まあ、今晩ヴォルデモートと一戦交える気はなかったが。そう思ったところで後ろから気配がした。
「……校長先生。見廻りお疲れさまです」
「妹も気づいておったが、そなたもか。ウェリス兄妹は勘がよいのう」
何か楽しむかのように現れたのはダンブルドアである。
「……お褒めに預かり恐縮ですよ。ハリーを連れて帰ってもらえますか?」
「もちろんじゃ。そのつもりできたからのう。そなたはどうするのじゃ?」
「俺はしばらくここで物思いに耽っていようと思います。それではおやすみなさい」
「気をつけて帰るのじゃぞ。それではおやすみ」
そうしてダンブルドアが去ったあと、俺はその場を動かず、揺らめく炎を眺め続けた。
side ユラナ・ウェリス
私が目を覚ましたのは医務室で、すでにすべてが終わったあとだった。傷だらけとなったハリーとともにベッドに寝かされていた。
「ようやく起きたか、寝坊助姫め」
「おはよう、ユラナ!」
お兄ちゃんが呆れた声でハリーが嬉しそうに言う。
「おはよう、二人とも。ごめんね、心配かけて」
「本当に無鉄砲なことはするなよ。それより、凄い量だな。お前、慕われてるなぁ」
私の足元には大量の見舞いの品が置いてあった。生き残った男の子として有名なハリーへの献上品よりも多いほどである。全校生徒が私の見舞いに来てくれたのではないだろうか。これじゃおちおちケガもできないなぁ。
「で、私は何をしたの?」
「覚えてないのか?」
「うん。トロールの部屋に入ったあと、その次の部屋にハリーとハーマイオニーを押し込んだところまでしか覚えてない。もしかして、私やられちゃった?」
私が言うとお兄ちゃんはため息をついて答えた。
「逆だよ。お前がトロールをバラバラにしたんだ」
「バラバラ? ボコボコではなくてバラバラ?」
「ああ。校内では伏せられてるが、お前はどうやったのか分からんが、トロールを文字通り肉片にしてたぞ。めちゃくちゃグロかった」
あのお兄ちゃんがビビるとか相当ヤバかったんだろうなぁ。私は少しやり過ぎたことに反省しつつ学期末のパーティーに向かった。
その後はハリー、ハーマイオニー、ロン、ネビル、そして私がグリフィンドールに大きな加点をしたことにより寮杯を獲得することに成功した。この辺りは原作通りなので言うまでもないだろう。大歓声の中の三人組の笑顔は一際輝いて見えた。
家への帰り支度を行っていると、お兄ちゃんが聞いてきた。
(一年間お疲れさま。よく頑張ったな、ユラナ)
(あら、珍しく素直に褒めてくれるのね)
(まあな。けど、お前、他所のネタ使いすぎだ。著作権的に何か言われても文句いえないぜ)
(誰が言うのよ、そんなん。で、今後はどうするの?)
(今後?)
(次は秘密の部屋よ。私たちもするべきことが山積みでしょ?)
(そうだなぁ。でも、俺たちが下手に手を出しても拗れるだけだからな。万が一のときだけ手を貸すということでどうだ?)
(オーケー。お兄ちゃんも頑張り過ぎないようにね)
(おう。ぶっちゃけ俺は自分にとって面倒臭いことはなるべくやらんようにしてるから大丈夫だと思うけどな)
お兄ちゃんはこう言ってるみたいだけど、なんだかんだ私たちは三人組に巻き込まれることになると思う。あの子たちめちゃくちゃ可愛いし、危なっかしいところ見てると、守ってあげたくなってしまう。にしてもホグワーツってロリコンとショタコン拗らせてる私にとっては天国だわ。食べちゃいたいくらい可愛いってまさにこのことを言うんだろうなぁ。あぁ、一日中ナデナデしてあげたい。
そんなことを考えていると、お兄ちゃんは気持ち悪いモノを見るような目で私を見てきた。失礼な。可愛いものを可愛いと言って何が悪い。あと、私は前世ネタはやめる気はまったくない。
そうしているうちに私たちは汽車に乗り込んで、マグルの世界へと戻っていくのだった。
読んでくださりありがとうございました。秘密の部屋編も随時投稿していきたいと思います。コメント、評価、お気に入り登録よろしくお願いします。