序盤はオリジナル展開になります。つまらないと思う方もいるかと思いますが、ぜひご覧ください
2年目の開始~まさかのタイミング~
side ユラナ・ウェリス
「お兄ちゃん、なんで私はこんなところにいるのかな?」
夏休みのある日、私とお兄ちゃんはどういうわけだか、東京都内の料亭にいた。私が進んでわざわざ日本にくる訳もない。お兄ちゃんと父さんが私が眠っている間に運んだらしい。有り体にいう拉致である。
「まあまあ落ち着けよ。今日はお前に会わせたい人がいるんだよ」
「だとしても、今である必要あった? 今ハリーがどれだけ辛い状態か分かってる? 一刻も早く助けに行くべきなんじゃないの?」
二年生の夏休み、ハリーは学校に戻らせようとしないドビーの策略により、自分の部屋に監禁され餓死寸前になっているはずだ。
「分かってる。ハリーの救出はロンと双子がしてくれるはずだ。心配するな」
だとしても納得はできない。私からしてみれば自分たちがのうのうと暮らしているのは許し難い。
「そんなに睨むなよ。この鱧、うまいぞ。お前も食えよ」
「もういい、帰らしてもらうわ」
私がそう言って立ち上がろうとしたときだった。不意にふすまが開いた。
「遅れてすみません。マーティンさん」
その人を見た瞬間、私は座らざるをえなかった。自分の内面を刺激される何かを感じてしまったからだ。確証はないが、自分の前世と関わりがあった人物ではないだろうか。
「いや、大丈夫だよ。これが妹のユラナだ」
「はじめまして、ユラナさん。鈴野舞子と申します」
やっぱり自分の勘は当たっていた。
(ねぇ、お兄ちゃん、この人って……)
(お前も気づいたか。そりゃそうだな。この人は俺たちの本当の母親、後の佐川舞子なんだからな)
(やっぱり……。でも、どうやって?)
お兄ちゃんがその質問に答えようとしたときだった。
「あの……ユラナさんも魔法使いなんですか?」
鈴野舞子が聞いてきた。
「ええ、まあ……。お兄ちゃん、もしかして話したの?」
「まあな。マグルと話す上で避けられないだろ。そうだよ。ユラナも魔法使いだ」
このマグルはどの程度知っているのか。そもそもマグルに魔法使いのことはあまり知られるべきではないのでなかろうか。
「ただ、彼女は魔法使いではない。そんな彼女と話す上で欠かせない人物も呼んできた」
その声とともにふすまが再び開いた。
「はじめまして。お呼びに預かりました秋野裕介と申します」
20代くらいの若い青年が穏やかな笑みを浮かべて入ってきた。だが、その笑みとは裏腹にどこか強そうな雰囲気があった。
「彼は?」
「日本魔法界のエースだよ。俺が舞子さんと話せるのもすべて秋野さんのおかげだ」
「褒めすぎだよ、マーティン。君は妹のユラナさんだったよね。よろしく」
私は困惑しながら差し出された手を握った。
「お兄ちゃん、この人は舞子さんとなんの関係があるの?」
「それを含めて今から説明するよ」
お兄ちゃんは何があったのかを話し始めた。
side マーティン・ウェリス
去年のクリスマス、俺が日本に行ったのは皆さんご存知のことだろう。そして、俺が泣いているときに出会った女の子が俺の本物の母親、鈴野舞子であることは気づいている人も多いと思う。
しかし、それが分かったところで魔法使いとマグルが関わるべきではない。本来ならそんなルールはもちろんないが、なんとなく彼女といたら魔法のことをいろいろ教えたくなって、いずれとんでもないことをしでかしてしまいそうな気がしたからだ。
彼女は俺に住所を書いたメモだけを渡してくれた。見知らぬ人にそんな個人情報を渡すべきではないと思ったが、俺は悪用する気もないので、ありがたくいただいておいた。
舞子と別れた後、俺は父に連れられて、日本の魔法界の本部に向かった。イギリスでいう魔法省にあたるものだ。マグルにバレる訳にはいかないらしく、こちらも地下にあるようだ。
「ブライアンさん、わざわざありがとうございます」
現れたのは秋野裕介だ。
「いつも悪いな。大臣に話があるから、案内してくれるか?」
秋野は頷き、父を奥へと通していった。俺はロビーの椅子に座ってぼんやりすることにした。
舞子と出会ったことは魔法使いである自分に影響を与えるのだろうか。マグルの彼女を危険な目には逢わせたくない。彼女もやがて、結婚して子供が生まれたりするのだろう。そのときの子供は元の自分である、佐川裕一や葵になるんだろうか。そして、万が一それに出会ってしまったら、自分に何が起きるのであろうか。
「いろいろとお考えのようですね」
後ろから声をかけられた。
「秋野さん?」
「はい。秋野裕介と申します。何か迷っていることがあるのなら私が相談に乗りますよ、マーティンさん」
穏やかな笑みを浮かべて彼は言う。
「マグルと魔法使いが人と関わりをもつべきではないのでしょうか」
「人によりますね。しかし、それが鈴野舞子なら関係はもってもらいたいものです」
俺は驚かざるを得なかった。
「……どうして、あなたがその名前をっ」
「鈴野舞子は我々にとってある意味キーマンなんですよ」
「キーマン?」
「ええ。日本の魔法界は今、私たちのように西洋の魔法を主体とする流派と日本古来の神道を主体とする流派に分かれています。神道というのは古くから神社や寺で式神等を用いて祈祷を行うものです。しかし、古くからあるものは新しいものを憎らしく思うのでしょう。我々は普段から目の敵にされているのです」
「それと舞子のなんの関係が?」
「鈴野舞子はその総本家の神社の娘なんですよ。要するに、神道における姫みたいなものです。本人には自覚はありませんが。我々は彼女を中心に神道と手を組みたいんです。今、世界ではイギリスのヴォルデモートが復活するとされています。それに呼応するものも多くいることでしょう。そんな状況で国内でいがみ合いしている暇はない。という訳で、どうにか鈴野舞子を取り込みたいのです」
「……分かりました。彼女の住所です。その代わり一つ頼みがあります」
俺はメモを渡して言う。
「何なりと」
「俺と彼女のやり取りの仲立ちをしていただきたいのです。俺がマグルに魔法界の情報を横流ししているなら、こちらの魔法省に咎められるかもしれません。しかし、あなたと文通しているという体なら問題ないでしょう」
「分かりました。もちろんしましょう。しかし、なぜあなたは彼女と連絡をとりたいのですか? それだけ教えてもらえますか?」
それを言うことは俺の正体がバレることに近い。さすがに教えるべきではないだろう。
「まあ、今は言えないこともあるでしょうね。手紙の件は承りました。お任せください」
そう言って彼は去っていった。どうにか俺は本物の母親と繋がりをもつことに成功した。
side ユラナ・ウェリス
「という訳だよ。納得してくれたかい?」
お兄ちゃんはそう締めくくった。
「とりあえずはね。お兄ちゃんは舞子さんに何を話したの?」
「俺も魔法のことを完璧に知っているわけではないし、ホグワーツがどんなところか、俺と仲のいいやつらはどんな感じかっていうところだな」
舞子さんは嬉しそうに頷いた。
「マーティンさんのお話はいつもとても面白いです。私も彼らに会いたいものです」
「そう。舞子さんには申し訳ないけど、私はそろそろ帰るわ。今がどういう状況か分かっているでしょう?」
私は立ち上がる。
「落ち着けよ。ハリーは大丈夫さ」
「別に止めてもいいわよ。勝手に行くから」
「いや、しかしな……」
何かを言おうとするお兄ちゃんを押し退けて、私はふすまを開ける。舞子さんは困惑した表情、秋野裕介はなぜかニヤニヤ笑っていた。
私は料亭のトイレに入り、姿眩ましした。行き先はウィーズリー家、つまり隠れ穴である。
長距離の姿眩ましでかなりの魔力を使いながらもどうにか家の前にたどり着いた。
そして家のベルを押そうとした。しかし、押す前にドアが開いた。
現れたのは、ウィーズリーおばさんかと思いきや違った。なんとウィーズリー兄弟の三人、ロン、フレッド、ジョージだった。三人とも驚きの表情を浮かべている。
「ど、どうして、ユラナがここに……」
それを抑えたのは、フレッドである。いや、ジョージか? 分からないから、どっちでもいいや。
「おっと、その話はまた後でだ。まずはハリーを迎えにいくんだろ? なあユラナ、お前もどうだ?」
磯野ー、野球しようぜー的な感覚で誘ってくるもんだから、思わず吹いてしまった。そんな軽く誘ってるけど、一応犯罪なんだけどなぁ……。
「いいよ、君たちだけだと心配だし。いや一番ハリーが心配なんだけどね」
なるほど、そうきたか。このタイミングで移動してしまったかぁ。そう思い、苦笑いしながら、改造された空飛ぶ車に私はウィーズリー兄弟とともに乗り込むことになった。
今回はここまでです。読んでいただきありがとうございました。評価やコメント、よろしくお願いします