side ユラナ・ウェリス
私を転生させた女神クリファナと話して、彼女をリアルに脳内に押し込んだ後、私は在校生の一団に混じって組分けが行われるホールに向かった。
「ユラナ! 大丈夫なの?」
慌てた声で駆け寄ってくるのはハーマイオニーである。というか半ば抱きつくような感じになっている。うーん、こんな可愛い子とくっつけるなんて本当に役得だなぁ。
「大丈夫だって。それくらいで死ぬような私じゃないわ」
私はそう笑う。
(お前、かなり危なかったろ)
(お兄ちゃん、マジで無粋。つまらんこと言わんでもらえる?)
念話呪文で呟いたのは、お兄ちゃんである。これって、表記上クリファナとの会話と見分けがつけにくそうだなぁ。
「それでも……。ハリーたちから手紙もらったときは寿命が縮むかと思ったわ」
「……何があったのかは言えない。でも、心配かけてごめん」
ハーマイオニーは思い出したように聞く。
「ところで、ハリーとロンがどこにいるか知らない? 汽車の中でも見かけなかったんだけど」
二人は汽車に乗り遅れて空飛ぶ車でダイナミック登校を試みようとしているに違いない。後にも先にもそんなことをするのは彼らしかいないだろう。
「うーん、ごめん。分からないかな。まあ、二人なら大丈夫だと思うよ」
確かに心配するのは仕方ないが、ネタバレしてしまっては、二人のサプライズを踏みにじることになる。
私はとりあえず彼女を安心させて、組分けに向かった。といっても、これと言っておかしな事態も起こらず、原作通り(いかんせん、描写はされていなかったが)組分けは進んだ。
と、組分けが終了し、夕食にありついてるところでなぜか多くの視線を感じた。
「ねぇ、お兄ちゃん。なんかやたらと視線を感じるんだけど……」
「すまんが、分からんな。しかし、ユラナにばっかり向けられてるな」
ハーマイオニーがここで口を開く。
「あー、それはしょうがないと思うわ。去年ユラナがやったトロールバラバラ殺害事件がかなり有名になっちゃったから」
「ちょっと待って。そんなの聞いてない」
畏怖の目で見られるのは正直気持ちがいいものではない。むしろより積極的にフレンドリーに話しかけて欲しいものだ。
クリファナはどこ吹く風で笑う。
〔さすが、強い女性というのは人気があるものだ〕
〔これを人気で割り切っていいものなの?〕
私が脳内でクリファナを睨んでいると、横から声をかけられた。
「あ、あの、す、すみません!」
そこには小さな青髪の少女と朱色の髪のグリフィンドールの少女がいた。なんか小さくて可愛いなぁ。
〔君がショタコン、ロリコン拗らせてるとはね。また面白い情報が手に入ったよ〕
(相変わらずだな、お前。妹が性犯罪者になるのは、兄としてはかなり困るんだが)
クリファナとお兄ちゃんが念話呪文で言いたい放題言っている。こいつら、人の性的嗜好を馬鹿にするとか本当にいい趣味してる。
「ええと……。君たちは?」
「あ、私はエルティナ・リューウェルです。こっちが妹のレイザ・リューウェルです。こ、これからよろしくお願いします!」
めちゃくちゃ緊張してるなぁ。そんなに緊張することもないのに。
「私はユラナ・ウェリス。ユラナでいいわよ。んで、この目付きが少し悪いのがお兄ちゃんのマーティン。そして、こっちの可愛いのがハーマイオニーよ。よろしくね」
私の紹介にお兄ちゃんは腹立たしそうに睨み付け、ハーマイオニーは小さく頬を染めている。可愛いなぁ。まさにHMT (ハーマイオニー、マジ天使)だわ。ん? どこぞのリゼロのパクりだって? そんなこと気にしたら負けですわよ。
レイザがこれまた恥ずかしそうに言う。
「よろしくお願いします。ユラナ先輩……」
先輩は別につけなくてもいいのに。まあ、実年齢からすればここにいる生徒全員より年上だけどさ。
「うん! よろしく」
そう言って頭を撫でようとしたら、二人は顔を真っ赤に染めて、私から離れてしまった。あーあ、小動物みたいで可愛いけど。
「恥ずかしがり屋さんなのね」
ハーマイオニーが呟く。
「残念だなぁ。せっかく可愛い後輩をナデナデしようと思ったのに……」
「なんか、ユラナって距離の詰め方が独特よね……」
「可愛い子を愛でたくなるのは当然じゃない。そうよね、ジニー!」
私は偶然、目の前に座っていた赤毛のロンの妹に声をかけた。
「ひゃうん!」
彼女は小さく飛び上がったようだ。急に話しかけられてビックリしちゃったのかな? ちなみにジニーと私はまだ顔を合わせたことはなく、これが初対面である。それでも、彼女は何回か目を覚まさない私の見舞いに来ていたようだ。
「やめてよ、ユラナ。ビックリしちゃったじゃない」
恥ずかしそうに彼女は言う。
「それでどうなの? 私が可愛い子をナデナデするのは普通のことでしょ?」
ジニーは呆れてため息をつく。
「そりゃ、ユラナにとっては普通かもしれないけど、普通の人ならそんなことしないわ」
(遠回しに私が普通じゃないって言われてるみたい……)
私は念話呪文で呟くと、お兄ちゃんとクリファナの声が同時に響いた。
〔(いや、転生者の時点で普通じゃないだろ)〕
この二人本当に息ピッタリだよね。もはやわざとタイミング合わせてるとしか思えなくなってくるわ。
「うーん、まだあなたたちには分からないかぁ。でも、いつかはその魅力に気づくかと思うわ」
そう呟いたところで、ダンブルドアのかけ声とともに食事が終わってしまった。そのあとは普通にダンブルドアのご忠告タイムだ。知ってる人も多いと思うから、ここはスルーしましょう。手抜きとは思わないでね。気になる方は原作をどうぞ。
眠たい目を擦りながら、寮に向かうためゆっくり歩いていると、ハリーとロンが近づいてきた。
「ユラナ! 大丈夫!?」
私に気づいたハリーとロンは急いで駆け寄ってくる。
「大丈夫よ。ていうか、大丈夫じゃなかったら、今ここにはいれないよ」
私は軽く笑う。
「いや、あんなに大怪我して大丈夫ってのもすごいけど……」
確かにそうかも。にしても、可愛い二人に私の腸覗かせたことは結構なトラウマとかにならないかな。
「二人こそ、大丈夫だった?」
私が聞くと、ハリーたちはどのように学校に来たのかを思い出したように話し始めた。
それにしても、よく車で突撃するなんて考えるよねぇ。私だったら、無理矢理クリファナに世界を変えてもらってたかもしれない。
〔そんなことに私の力を使うのかい?〕
〔あのーすみません。ナチュラルに思考を読まないでください。文字数が増えるので〕
〔メタい、メタいなぁ〕
ハリーとロンが話していると、いつの間にかたくさんの人が集まっていて、なぜか拍手みたいなことも起きていた。もっともハーマイオニーは心配顔だったが。
夜が更けて寝床に向かう中、私は再び念話呪文をオンにした。
(お兄ちゃん、今年もよろしくね)
(おう。面倒事をあんま起こすなよ)
(いつの間にか面倒事に巻き込まれてるんだけどなぁ。それにハリーたちもいるから仕方ないでしょ)
(それもそうか……)
そう言ってお兄ちゃんは黙り込んだ。しかし、念話呪文を切った様子はないようだ。
(お兄ちゃん? どしたの?)
私が聞くと、彼は重々しく答えた。
(けど……。本当に気をつけろよ。もしかしたら俺たちにはどうにもできないこともあるかもしれん)
そう言ってお兄ちゃんは念話呪文を切った。どうにもできないこと。それが何かは今は分からない。しかし、その危険に私はすでに片足を突っ込んでいたのだ。
いかがだったでしょうか。久々のコメディ展開が見られたかと思います。お気に入り登録、コメント、評価などをいただければ嬉しいです。よろしくお願いします。