side ユラナ・ウェリス
「……きてください。起きてください」
自分の近くでそう呼びかける声が聞こえた。それとともに私の意識は覚醒し、自分がホグワーツに戻ってきたことを思い出した。
「……おはよう」
体を起こすと、そこにいたのは昨日パーティーで私に声をかけてきた二人の美少女だった。
「ありがとうね。起こしてくれて」
そう言うと、朱色の髪の姉、エルティナが微笑んで答えた。
「構いません。その代わりと言ってはなんですが、私たちをユラナ先輩の侍従にしてもらえませんか?」
「私の侍従?」
青髪の妹、レイザが答える。
「はい。ユラナ先輩は今後の魔法界を担う大事なお方です。そんな方に雑用とかをさせる訳にはいきませんから」
そう言われると私が雑用とかを押しつけてるかのような気持ちになってしまう。
「どうしてもやりたいって言うなら構わないけど、私、自分の仕事は基本自分でやる主義だから、そんなにすることはないわよ」
「全然構いません。私たちからすればユラナ先輩の隣にいれるだけで十分なんですから」
こう笑顔で答えられると嬉しくなる。抱きしめちゃっていいかなぁ。
〔戻ってきた初日に侍従を作るロリコンユラナ先輩、マジさすがです〕
脳内に居座る女神クリファナが私をからかう。
〔昨日から思ってたけど、あなたってなかなか辛口よね〕
そう答えながら、バックに教材を詰めようと立ち上がったところで、
「あ、教科書とかですよね。準備しておきました。こちらです」
エルティナがバックを手渡してきた。
「えっ……。あ、ありがとう……」
「もちろんです。ご主人様の手を煩わせる訳にはいきませんから」
とレイザが答える。
すげぇな、この二人。二年生の時間割どこで調べてきたんだ……。
午前中最初の授業である薬草学の授業ではマンドレイクの植え替え作業を行うことになった。耳あてをつけておかないと耳がぶっ壊れるそうだ。
〔クリファナ、これって君の耳にも効果あるの?〕
〔あるかもしれないなぁ。こいつらの絶叫を消すことも不可能じゃないかもしれないけど、それを巻き込んでどれほどの範囲に被害が出るか分からないから、やめとくべきだと思うけど?〕
……その気になればホグワーツごとぶっ飛ばしそうだ。
何人かが意識を失って医務室送りになったようだが、どうにか私とお兄ちゃん、ハリーたちはそれを免れることができた。
そのあとはなんと闇の魔術に対する防衛術の授業が組まれていた。ハリポタssでネタキャラにされがちなロックハート先生の登場だ。女子生徒は大興奮の面持ちだが、ダイアゴン横丁で一悶着あったためか、ハリーのテンションはだだ下がりだ。
彼の授業の最初に行われたのは教科書の予習テストであった。私を除く女子は羽ペンをめちゃくちゃ走らせているが、私としてはこんなテスト、マジでやってられんわとしか思えなかった。秘密の部屋の一件で確かなくなるはずだが、もしこの授業の学期末試験が行われたら、こんなクソみたいなテーマの問題が大量に出題されることになるんだろうか。
適当に書きなぐっていると、クソどうでもいいテストは終わっていた。ロックハートは首位になったハーマイオニーに10点を与えた。
私を除く女子からのテストの点が高かったためか、上機嫌のロックハートは穢れた魔法生物と戦うだとかトチ狂ったことを抜かし始めた。
「さあ、どうだ! 捕らえたばかりのコーンウォール地方のピクシー」
その声とともに、どこからか取り出した巨大なカゴを包む布を剥ぎ取った。中にはキーキーうるさいピクシーがたくさんいる。
〔……この若年齢でせん妄のような症状があるのは非常に珍しいな〕
クリファナは興味深そうに呟く。生徒たちは(特に男子生徒)はロックハートの奇行に呆れ返っているようだ。
「さあ、それでは。君たちがピクシーをどう扱うか、お手並み拝見です!」
カゴを開けてピクシーが暴れ始める。インク瓶を倒したり、教科書を撒き散らしたり、ネビルをシャンデリアに引っ掛けたりと本当になんとも自由だ。
「さあ、さあ、捕まえなさい。たかだかピクシーでしょう!」
ロックハートは意気揚々と杖を取り出し、呪文を唱えた。
「ペスキピクシペステルノミ!」
原作にあるようにこの呪文はあっさり不発に終わった。それと同時に授業終了のチャイムも鳴った。
すると、ロックハートは慌てたように次の授業の準備があるからあとは任せたと言って、教室から出ていってしまった。生徒に丸投げとか教師としてそれはどうなのよ。
他の生徒もほとんど出ていってしまい、三人組と私とお兄ちゃんだけになってしまった。
「ねー、お兄ちゃん。片付けよろしく頼んでいい?」
お兄ちゃんは私を睨む。
「なんでハリーたちならともかく、お前がそれを言うんだよ」
「いやだってこれすごく面倒臭いしさー。ほら、可愛い妹の頼みでしょ?」
お兄ちゃんは呆れたように答えて、杖を取り出した。
「ったく、しゃらくせぇなぁ。サンダラバス!(雷撃!)」
お兄ちゃんは暴れ回るピクシーに対して、気を失う程度の雷撃呪文をぶつけた。ハリーたちは唖然としているようだ。
(お兄ちゃん、ナイス雷撃!)
(お前、今度はこのすばネタかよ。めぐみん推しがブチ切れるそ)
ピクシーをつまみ上げてカゴに入れていると、会話がなくて存在感が薄くなりつつある、ロンがお兄ちゃんに、
「ねぇ、マーティン。その呪文って君のお父さんに教えてもらったんたよね? 君のお父さんってどんな人なの?」
と聞いてきた。お兄ちゃんはチラリと私を見て答えた。
「父さんか……。一言で言えば彼は最強と表現するのがふさわしいかもな」
「最強?」
ハリーが言う。
「ああ。俺とユラナが何度挑んでも、杖を抜くことはなかったし、それなのに傷一つつけることすらできなかったしな」
お兄ちゃんの言うことは当たっている。ぶっちゃけ父さんを除く全部の魔法使いが徒党を組んで父さんに挑んでも勝つことはできないんではないだろうか。例えるなら、リゼロでいうラインハルトポジだ。まあ、あれとは強さのジャンルが違うから比較しにくいけど。
「そんなに強いんだ……。でも、そんなに目立ってないよね?」
「まあな。父さんはめちゃくちゃ強いけど、そんなに大きな功績があるって訳でもないから、ダンブルドアとかと比べたら、霞むかもな。もともとは戦闘嫌いだし」
そうなのだ。父さんがめちゃくちゃ強くなったのは、嫌いな殺し合いとかをさっさと終わらせるためらしい。
そんな風に話しているうちに、片付けは終わった。その後は五人で仲良く夕食の席に向かうのだった。そんな中、私には父さんのことを自慢気に話しているお兄ちゃんの顔が嬉しそうなのを見て、なんだかんだ年頃の男の子なんだと思えて、どこか可愛らしく見えた。
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