私とロン、そしてハーマイオニーはクィディッチの試合によって負傷したハリーの見舞いに来ていた。狂ったブラッジャーとの激戦に終止符を打ち、スニッチを掴んで試合には勝利したものの、その代償は大きかった。頭のネジが抜け落ちてそうなポンコツ(ロックハート)によりハリーの腕の骨がなくなってしまったためだ。
ハーマイオニーとロンはハリーを励ましているが、私は黙ってその様子を眺めていることしかできなかった。
「ねぇ、ユラナ。今日、君、本当に様子が変だよ。疲れてるんじゃないの?」
ロンのその声に私は苦笑いして首を横に振る。
「大丈夫。そのついでなんだけど、後でハリーと二人きりにしてもらえない?」
二人は頷き、しばらくハリーと話してから医務室から出ていった。
「ユラナ、どうしたんだい?」
私は小さく頷いて答える。
「ハリー、私は君に謝らなきゃいけないわ」
「何を?」
「あのとき私は自分がやるべきことを怠った。そのせいで君はこんな大怪我をしてしまったの。つまり、責められるべきは私よ」
ハリーは首を横に振る。
「違うよ、ユラナ。それは君のせいじゃない。だって、もし君が僕を助けられなかったんなら、それは何か理由があって躊躇ったということだと僕は思うよ。それがなければ、迷わず動く。そういう人だと思ってるから」
彼は真っ直ぐな瞳で私に告げた。彼は、ハリーは私をここまで信じてくれているのか……。
「でも、私はそれに応えられるか……」
「別に無理に応えようとしなくてもいいよ。僕たちが勝手に思ってることだからさ。だから、ユラナ、君は今の君のままでいて」
その一言に私は再び黙る。何を言うべきか考えていたそのとき、夕食を告げる鐘が鳴り響いた。
「ごめん、ハリー。そろそろ戻るね。お大事に」
「うん、ありがとう」
そう言って私は医務室を後にした。
〔覚悟は決まったみたいだね〕
脳内に居座る女神クリファナが囁く。
〔ええ。秘密の部屋の一件に関しては私からヒントなどは一切与えないことにするわ。その代わり、私は私のやり方で邪魔を排除する〕
〔というと?〕
〔最終目標はあの男、死神の牙の撃破よ。でも、とりあえずはそいつの攻撃からハリーたちを守ることに専念しつつ、ハリーの指示に従って、ストーリーのサポートを行うことにさせてもらうわ〕
〔なるほど。実に君らしい結論だね。それでこのあとはどうする?〕
〔とりあえずは、スネイプ先生がいる地下に向かいましょうか。お兄ちゃんの企みが気になるわ〕
私は地下へと足を向かわせるのだった。
「お久しぶりと言った方がいいでしょうか。授業では毎回顔を合わせてますが」
地下の研究室の椅子に座り、スネイプ先生に話しかける。
「こんな夜に何の用があって来たのかね、ミス・ウェリス」
「そんなに睨まないでくださいよ。一つ質問したいことがあって来ただけです。用が済めばすぐに帰ります」
「それで、何を聞きたい?」
「去年の夏、兄と二人で話してらっしゃいましたよね? あのとき何を話していたのですか?」
スネイプ先生は目を逸らした。
「そのようなこと、何故、貴様に言わねばならぬ」
「なら、はいかいいえでお答えください。あなたはあのとき、兄から父の陣営に着くよう言われましたか?」
スネイプ先生は何も言わない。
「沈黙は肯定と捉えさせていただきます。それに、結論は出ましたか?」
先生は首を横に振った。
「分かりました。ありがとうございました。これにて失礼させていただきます」
外に出ようとすると先生が呼びかけてきた。
「……どうして急にそのようなことを?」
「誰かの差し金という訳ではありません。純粋に私が気になったというだけです。失礼しました」
そうして私は研究室を後にした。
〔さて、これはどんな収穫があったのかな?〕
クリファナが言う。
〔収穫が多いという訳ではなかったけど、お兄ちゃんが何かを企んでいるという確信が掴めたわ。次は直接彼に聞く必要がありそうね〕
〔というと?〕
〔決闘クラブよ。彼はそこに現れる。そのときに何としてでも……〕
〔企みを阻止するという訳か〕
それに対しては首を横に振る。
〔残念ね、クリファナ。あなたも私をかなり知った気でいるみたいだけど、まだまだね。私は信じてるわ、お兄ちゃんが意味もなく悪行に近しい行為は行わないと〕
クリファナは小さく笑った。
〔なるほど。これは驚いた。企みを聞いた上で、秘密裏に彼と協力するという訳か〕
〔そこまでするかは彼の考えによるかな。それでもだいたいは合ってるわ。見てなさいよ、こっから面白くなるわよ〕
私にとっての激戦が再び幕を開けた。
今回は以上です。次がいつになるか分かりませんが、評価やお気に入り登録、感想など、よろしくお願いします。