「ところで、あなたたちは?」
落ち着いたところでハーマイオニーが聞いてくる。
「私? ユラナ・ウェリスっていうの。こっちは私の馬鹿兄貴のマーティン・ウェリスよ。よろしくね」
(だから、その馬鹿兄貴というのはやめろ)
お兄ちゃんが言うが、もちろんそんなことは無視だ。
そうしていると、急にお兄ちゃんの声音が変わった。
(ユラナ、ちょっといいか?)
(何よ?)
(これから恐らくマルフォイがくる。マグル生まれのハーマイオニーとドンパチすることになったら、面倒だ。俺がどうにかするから、ハーマイオニーを連れて外に出て行ってくれないか?)
確かにそんなシーンもあったかもしれない。
(お兄ちゃん、後でなんか奢ってよ)
(分かった。だから、頼む)
私は頷いて、ハーマイオニーに言う。
「ねぇ、ハーマイオニー。そろそろホグワーツに着くと思うから空いてるコンパートメントで制服に着替えない?」
ハーマイオニーは少し戸惑ったように答えた。
「えっ、まだ時間はあると思うけど……」
「いいから、いいから」
私は笑顔でコンパートメントの外に彼女を押し出した。
(これでいいんだよね? ついでにハーマイオニーを好きにしていい?)
(おう、恩に着るよ。あと何するつもりか知らんが、ちゃんと許可は取れ)
ここで私は念話呪文をオフにする。そこまでヤバいことをするつもりはないが、一応だ。
私はハーマイオニーを空いてるコンパートメントに押し込んだ。
「ねぇ、ユラナ、どうしたのよ、急に」
私は答えずに、ハーマイオニーをじっと見つめる。こうやって見ると、本当に可愛らしい。ハリーの後の奥さんになるジニーも凄く可愛いけど、これはこれでいいわね。ボサボサだけど柔らかそうな栗毛に、スタイルもかなりいい。前歯が大きいのは、本人はコンプレックスだと言っていたけど、それすらチャームポイントに私には見える。
というか、この言葉お兄ちゃんに聞かれなくてよかった。
「ユラナ、恥ずかしいわ。そんなじっと見つめないで……」
「可愛い……」
思わず声がこぼれてしまった。
「ちょっと、ユラナ……」
やべ、このままじゃこのやり取りが無限に続きそう。私たちはとりあえず制服に着替えることにした。抱きついて軽くもみもみしたくなるのを必死にこらえていたのは内緒だ。
私は念話呪文をオンにして、お兄ちゃんの声を待つ。
(ひとまず片付いた。戻ってきていいぞ)
(分かったー)
「じゃ、私戻るね。ハーマイオニーも来る?」
彼女が頷いたので、私たちは二人でコンパートメントに戻った。その道中手を繋いでみたが、彼女は何も言わなかった。よっしゃ、これで仲が進展した?
進撃のフォイフォイの攻撃により、コンパートメントの中は微妙な空気になっていた。
(何て言ってきたの?)
(ハリーに対してだが、友達は選んだ方がいいとかだ)
(それで、お兄ちゃんは何て?)
(お前の価値観で人を語るな。こいつが誰と仲良くするかはこいつが決めることだ。そう言ってやった。そしたら、すごすごと帰って行ったよ)
お兄ちゃん、ちょっと怒っちゃったのかな。この人は温厚だけど怒ると結構怖いからなぁ。あとでマルフォイはフォローしといた方がいいかも。
「ハリー、どしたの?」
お兄ちゃんをおずおずと見つめている。
「いや、ちょっと怖かったから……」
「お兄ちゃん、怒らせると凄く怖いから、気をつけた方がいいよ、三人とも」
「待て、俺はお前が一番怒らせている思うぞ」
そう言ったと同時に列車は駅に着いた。大柄なハグリットが手を振っている。人に揉まれながら私たちは降りた。
「イッチ年生はこっち! イッチ年生はこっち!」
ハグリットは独特なかけ声とともに一年生を誘導する。
「ハグリット、久しぶりー」
私が声をかけた。
「おう、よう来たな。見ろ、ここがホグワーツだ」
美しいその城に思わず息を飲んだ。本当に映画の通りの城なんだなぁ。ここが戦地になってボロボロにならないようにしなくちゃ。私は小舟に乗りながらそんなことを考えていた。
やがて、一年生とハグリットを乗せた小舟はホグワーツ城内に着いた。そこで待っていたのは、副校長であり、同時に変身術の教授である、マクゴナガル先生だ。
組分けの説明がなされているが、私はお兄ちゃんに念話呪文で話しかけた。
(ねぇ、原作通りにいくと思う?)
(正直、分からん。この手の転生モノにはそうじゃないやつもあるからな。あいつらを信じるしかないな)
(帽子に服従の呪文かければいけるかもよ。お兄ちゃんならできるでしょ?)
(お前は俺をアズカバン行きにしたいのかよ)
そう彼が笑ったところで、マクゴナガル先生の話が終わり、私たちは大広間に入った。天井には星空があり、とても綺麗だ。
「これは魔法よ」
ハーマイオニーが言う。夢がないなぁ。
一年生たちが歩いた先にあったのは台座に置かれた組分け帽子である。ロンはトロールと戦わずにすんだことで安心しているようだ。まあ、こんな人が大勢いるところでトロールなんか放ったら、大変なことになると思うけど。
帽子が突然、歌い始めた。新入生たちは度肝を抜かれていたが、私とお兄ちゃんは知っていたことなので、落ち着いて聞くことができた。
マクゴナガル先生が一人一人名前を指名して、生徒が椅子に座る。そして、帽子が叫び、生徒はその寮の席に座る。それを何回か繰り返した後だった。
「グレンジャー・ハーマイオニー!」
マクゴナガル先生は高らかに叫んだ。
彼女はゆっくりと椅子に座る。どの寮であっても仲良くするつもりだが、一応気になるものだ。
しばらく経った後、帽子は
「グリフィンドール!」
と叫んだ。彼女は歓迎を受けながら、グリフィンドールの席に座った。ロンはなぜか呻いていた。ちょっと、後の奥さんでしょ。
それからしばらく経ち、ハリーの名前が叫ばれた。周りは静まりかえる。そりゃそうだ。英雄がこの一年生として入学するんだから。日本で言うなら、徳川家康とかが同じクラスになるようなものだ。いや、それはちょっと違うか。
さあ、一番重要な時間だ。彼がどこになるかで今後の世界が変わってくる。
周りと違う理由で私が固唾を飲んで見守っていると、ついに帽子は叫んだ。
「グリフィンドール!」
よかった。これで原作通りにいきやすくなる。まだ、ロンが決まってないが、ここまで原作通りなら心配はいらないだろう。
そして、またしばらくして呼ばれたのは、お兄ちゃんである。お兄ちゃんが何を考えているかまでは私には分からない。開心術を使う訳にはいかないし。
それでも、彼なら大丈夫だとどこか安心していた。
「グリフィンドール!」
そう帽子は叫び、お兄ちゃんは笑顔でこっちを見て、グリフィンドールの席に座った。
私の名前が呼ばれたのはその直後である。私はゆっくり進み、椅子に腰かける。帽子が頭に乗っかる。つーか結構デカイな、これ。
「ほう、また面白いな。4つの寮の適正はすべて満たしておる」
「そうですか。私としてはお兄ちゃんと笑っていられて、みんなを愛せる寮ならどこでも構いません」
「そうか、それならば、グリフィンドール!!」
帽子が叫び、私はグリフィンドールの席に向かった。みんなが笑顔で歓迎してくれる。中でも一番喜んでいたのは、お兄ちゃんである。私もそれが堪らなく嬉しかった。
その後、ロンはグリフィンドールになり、組分けは終了した。主要メンバーがちゃんと原作通りの寮になったことに安心しつつ、そして、幸せを感じながら、私は目の前の夕食を口に詰め込んでいた。
今回はここまでです。結構進みましたね。
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