side マーティン・ウェリス
ロンとハーマイオニーの対立は悪化の一途をたどっていっていた。ハリーに聞いたところ、俺とユラナが寝ている間に彼らが三頭犬にかち合ってしまったのが、きっかけといえるらしい。
(ついていないわね。私がいれば三頭犬を失神させれたのに)
妹が念話呪文で偉そうにのたまう。
(お前のチート能力を信頼していない訳じゃないが、スネイプ先生にケガを負わせたあの猛獣と戦わせるのは、ちょっとケガしないか心配だ)
(本当にシスコンねぇ。あらぬ噂をかけられても文句言えないわよ)
(それは気をつける。だが、問題はあの二人だ)
このままだと対立しているロンとハーマイオニーに挟まれているハリーが可哀想だ。
(確かにねぇ。私はハーマイオニーにどうにかできないか聞いてみるから、ロンをお願いしていい?)
(分かってる。だか、お前がそんな気を回す必要はないんじゃないか?)
(そうだけど、私にとってはみんな大事だから。それじゃよろしくね)
そう言って彼女は念話呪文をオフにした。苛立っているロンに話しかけるのは、少し気が引けるが、ユラナに頼まれたのだから仕方ない。俺はハロウィーンの日の昼休みロンに話しかけてみた。
「なぁロン。ハーマイオニーのこと許せないか?」
俺が聞くと、ハリーは少し驚いたような顔をした。まさか、直球でいくとは思わなかったのだろう。
「僕は向こうが謝ってくるまで、謝る気はないね」
これは重症だ。かなり、面倒だな。
「そうかぁ。まあ、二人とも頑固だからな。正直言って謝るとかそういうのは期待してないよ」
ロンはギラリと俺を睨み付けた。
「何が言いたいんだ?」
「そんな目で睨むなよ。それでも俺がお前たちになんで仲直りして欲しいか分かるか?」
ロンもハリーも首を横に振った。
「俺はさ、お前たちに期待しているんだ。こうやって上から目線で言われるのは癪かもしれないが、俺はお前たちには俺にもユラナにもない力があると思うんだよ」
「買いかぶり過ぎだよ」
とハリー。
「まあ、そうかもな。でも、お前たちが俺にもないものをもっているのは事実だ」
ロンが睨みを効かせて言う。
「なんでもできて成績も良くて人気者の君たちに勝るものがある訳ないだろ。あるんだったら、何なんだよ?」
俺は微笑んで答えた。
「それは俺が決めることじゃない。自分たちで見つけるものだろ? あと俺たちはそんなにグリフィンドールで人気なのか?」
俺はハリーに聞く。そんなことは正直聞いたこともない。
「うん。優しいし、なんでもできるから、グリフィンドールのお兄ちゃんやお姉ちゃんって呼ばれてるよ。しかも、なぜか上級生にも。知らなかったの?」
「知らなかったな。ユラナはともかく俺が好きだとか、どんな物好きだよ。というか、俺たちに上級生がなんでお兄ちゃんだのお姉ちゃんだのと言うんだよ」
どうやら精神年齢は前世の十七才から変わっていないらしい。
「まあ、あれだ。早めに仲直りしとけよ」
俺はそうとだけ言って、その場を後にした。
というか、魔法界に俺のファン的なやつがあるとは。ユラナは前世でもわりかしモテていたが、俺にはそんなことはほとんどなかったというのに。まあ、俺が死んだときは魔法界では成人年齢にあたる十七才だったから、上級生がお兄ちゃんと感じるのはあながち間違ってはいないと言えるだろう。
それとユラナ。ハーマイオニーは任せた。
side ユラナ・ウェリス
その任された私はハロウィーンの夕食の時間にどういうわけだか、トイレにいた。というのも、ハーマイオニーがここに引きこもってしまっているからだ。
「ハーマイオニー?」
私は声をかける。
「……ユラナ?」
涙声とともに私の名を彼女は言った。
「ハーマイオニー、大丈夫? 夕食、行ける?」
それに対する答えはしばらく返って来なかった。
「みんな、私にムカついているでしょう。ノコノコと食事なんてできないわ」
「頭でっかちってロンに言われたの、気にしてるのね」
「……ねぇ、何か私は間違ってたかしら? 確かにロンへの言い方は少し悪かったけど……」
「間違ってはないわよ。でも、ロンも頑固なところがあるからねぇ」
そう言ってしばらく私は言葉を選ぶ。
「でもさ、私はロンが好きだよ」
「ユラナ……」
「あんな不器用なところを含めて可愛いと思っちゃう。私って甘いよねぇ。あと、ハリーも好きだよ。魔法のことあんまり知らずにおどおどしてる姿とか、めちゃくちゃ可愛い」
「……何が言いたいの?」
ハーマイオニーがか細い声で聞く。
「ハーマイオニーのことももちろん好きだよ。そんな風に頑固なところがあるのも私からすれば、チャームポイントでしかないわ。泣いている姿も可愛いけど、どうせなら私には笑顔を見せて欲しいな」
私が言って数秒後、彼女はドアを開けてようやくその涙で濡れた顔を見せてくれた。
「やっと開けてくれたわね。みんながあなたのことを嫌ってたとしても、私は絶対あなたのことを好きでいるわ。誰が何を言ってもそれは変わらない自信があるわ」
そう言った私は彼女にはどう見えただろうか、私には分からないけど、その涙でぐちゃぐちゃになった中、彼女は微笑んで、
「ありがとう。さすがグリフィンドールのお姉ちゃんね」
と言ってくれた。ちょっと待って。グリフィンドールのお姉ちゃんって誰が言ったの。そう聞こうと思ったとき、激しい音が響いた。
私とハーマイオニーが驚いて振り向く。その怪物のような叫び声とともに立っていたのは、巨大なトロールだった。
(ユラナ! トロールが学校に侵入してきた。お前なら大丈夫とは思うが、一応気をつけろ!)
(馬鹿兄貴! もうかち合っているわよ!)
(何だと。ハーマイオニーは?)
(私と一緒。ハリーとロンを連れて急いで来て。戦闘に集中するから、落とすわよ!)
私は念話呪文をオフにして、目の前の怪物と向き合う。一対一なら負けない自信があるけど、怯えてるハーマイオニーを庇わなきゃいけない。正直、それはかなり難しい。
「フルプレント!(分身せよ!)」
私はトロールの棍棒の攻撃を避けながら叫ぶ。これは私自身を三つに分身させる呪文だ。しかも、呪いの効果は三倍になるので、非常に便利だ。
私はうち二体の自分でハーマイオニーを庇う。そして、私は、
「ステューピファイ!(麻痺せよ!)」
と叫ぶ。赤い閃光がトロールに飛ぶが、効果は今一つだ。しかも、トロールは単体の私ではなく、ハーマイオニーを守っている私を攻撃することにしたらしい。
「プロテゴ!(守れ!)」
私は棍棒による攻撃をギリギリで防ぐ。ハーマイオニーの悲鳴がトイレに響き渡る。そのときだった。
「ハーマイオニー!」
ロンとハリー、そしてお兄ちゃんの声がした。
トロールは二人に気を取られ、ハリーに掴みかかっていく。私も失神術を打ちまくるが、今一つ効き目はない。
「ロン! 何か魔法を叫べ!」
ロンはハリーの声に動揺しながらも、
「ウィンガーディアム・レヴィオーサー!(浮遊せよ!)」
と叫んだ。原作と同様にトロールが手を離していた棍棒が頭の上に落ちた。私の失神術のダメージとも合わさってトロールはノックアウトした。
ロンがハリーを助け出した後に、ノックアウトしたトロールの前に立っていたのは、お兄ちゃんである。
「ユラナ、よくやった。悪いが、美味しいところ、もらうぞ」
私は呆れて答える。
「ホント。もうちょっと早く来てよ」
「それは悪かった。だが、このトロールは俺の妹に手を出した。死んでもらうぞ」
そう言って杖を取り出し、
「サンダラバス!(雷撃!)」
と唱えた。金色の光がトロールに走る。こうなったお兄ちゃんはトロールぐらい簡単に殺してしまう。御愁傷様、トロール。
トロールがあの世へ旅立ったとき、ようやく先生方が来てくれた。ていうか、遅すぎ。
「何ですか!? これは!」
この状況を見たマクゴナガル先生が叫んだ。クィレル先生は腰を抜かしてしまっている。
「あーすんません。これ、俺がやりました」
「どういうことですか。ミスター・ウェリス」
お兄ちゃんが説明しようとするとハーマイオニーが叫んだ。
「私のせいです。私がトロールを倒せると思ったので……」
マクゴナガル先生は呆れて答えた。
「まったく。あなたには失望しました。グリフィンドール、五点減点」
ハーマイオニーが項垂れる。
「しかし、無傷なのは、五人とも運が良かった。その幸運に一人五点ずつあげましょう。さぁ、寮でパーティーの続きをやってます。早く戻りなさい」
私たちはそうしてトイレを後にした。その前に私は分身して、少し離れたところで彼ら先生方がどうするのか、見守ることにした。
「これは、いったいどういうことなんでしょうか?」
マクゴナガル先生がスネイプ先生に尋ねる。
「我輩も見たことがありませんな、こんな魔法は。しかし、どんな魔法にしろ、一年生でトロールを殺せるとは、到底思えない」
マクゴナガル先生はしばらく考えて答えた。
「……ウェリス兄妹でしょうか」
「でしょうな。ブライアン・ウェリスが鍛えた魔法使いだとすれば、万が一があってもおかしくはない」
「三つ子の魂、百までということでしょうか。このことは一応、校長にお話ししておきます」
そう言って、二人はトイレを後にした。そして、私も分身を消して元の姿に戻る。
(お兄ちゃんさぁ、もしかして、こうなること分かってて二人の喧嘩止めなかったの?)
(んな訳ねぇだろ。ただ、遅かれ早かれこういう経験は必要になるとは思っていたけどな)
(ホント、喰えない人だね、お兄ちゃん)
(ま、グリフィンドールのお兄ちゃんだからな)
彼はそう言って笑った。
ちょっと長くなりましたね。またしてもチート能力が発揮されましたが、楽しんでいただけば、何よりです。
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