リリアとトレイズがイチャイチャするだけ(一つの大陸の物語あふたー) 作:明るいぼっち
イチャイチャさせたい。
どうぞ。
「おっと、失礼。」
「いえ、、、失礼。」
二組のカップルー少なくとも他人の目からはそう見えるーは道の真ん中でぶつかった。
片方は、青春を謳歌している子供達。そしてもう片方はどこにでもいそうな中年の夫婦。
中年夫婦の夫の方だろうか、ぶつかった反動で手に持っていた小ぶりの鞄を落とした。蓋はなく、なかに入っていたハンカチや手帳、本などを地面に落とす。
「おじさん、大丈夫?」
若いカップルはそろって地面に落ちたものを手にとり、おじいさんに渡す。
「ありがとう、助かります」
「いえ、ぶつかってしまい申し訳ないです」
「いえ、こちらこそ拾っていただき感謝しますよ」
「いえいえーー」
「ーーー」
「いえいえーーー」
「ーーー」
「いやいや、やらねーよ!」
「いえーー」
「ーーー」
「ーーー」
聞こえない部分もあるが、若い男と白髪の男はなにやら「いえいえ」を連呼していた。途中大声を出した若い男は申し訳なさそうに周りを見るが、すぐに会話に戻っていった。
「もういいでしょ、いくわよ」
「そのへんにしときなさいよ」
そんな空気を察したのか、女性陣は男を引っ張っていく。
しばらく経って、引っ張られている若い男ートレイズは声を上げた。
「すまん、遅れがでた。」
「遅れ?何のこと?時間はたっぷりあるんだから別にいいでしょ」
トレイズはほっとしたのと同時に嬉しくもなったのだった。
ーー時間はたっぷりあるんだからーー
そんな言葉に嬉しくなっている"単純な"トレイズは、先程ぶつかった『男』との会話を思い出す。
「それで何があった。接触は最小限にと伝えただろう。危険が迫っているのか?」
「いえいえ、『殿下』。それには足りませんよ。危険はありません、ただーーーーー」
「ただ、なんだ?」
「ーーーリリアーヌ嬢とはまだヤってないんですか?」
「ヤるってお前、リリアとはそんな関係じゃない」
「いえいえ、殿下もそろそろ未来を切り開いてください。もうイクストーヴァの掟に縛られない生活が終わりに近づいているんですから。もし公表しないといけなくなったらどうするんです。ヘタレは卒業しましょうよ。既成事実があれば確実にリリアーヌ嬢は王家に引き抜けます。既成事実があればほとんどの世間体も納得するでしょう!いえ、今だからできる技ですが」
「いやいや、やらねーよ!」
「宿にはダブルベッド、そして避妊具も用意させました。あとは殿下の一つ押しでリリアーヌ嬢はオトせます!」
「、、、、それは強姦だぞ」
「合意の上ならいいんです。」
「いや、っておいこらふざけんな、リリアに隠すの面倒だったんだぞ!どこのラブホだ!言っとくけどベッドはリリアが占領してます。それにリリアは一押しとかじゃ無理だしそもそもそんな気は俺にないしリリアにもない」
「いえいえ、紳士ぶるのも辞めましょう殿下。最初はリリアーヌ嬢と一緒の部屋ですら寝れませんでした。それを考えれば大したものです。ですが、これは本当に最後かも知れないんですよ。よく考えて行動なさってください。」
「、、、忠告、心に留めておく。」
「ぜひそうしてください」
紡がれた言葉はすべて本物。
20歳まで残り2年とちょっと。
ここまでに"答え"を見つけてしまわないとおしまい。
トレイズは知っている。この旅行が"本当の意味"で終わったら、王家の縛りで動けなくなることを。
学園生活を享受されていた身からすれば、楽にはなる。
が、本当の意味で自由はなくなる。
両親も束縛はしないだろうが、世間体は、それを許さない。王には王の、王子には王子のやり方がある。
それを取っ払われているこの数年がトレイズにとっての最後のチャンス。
だから答えを見つけるのに必死なのだ。
彼等、トレイズの身辺警護を行っている王室警護官たちも、応援してくれている。
はあ。
ため息を一つ。
「王子は辛いよ。」
そんな気持ちもスカイブルーの空に融けていく。
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ここは『共存の街』一番の商店街、【ハナ・アッシュ】。
眠ることを知らない街として、終戦後から今まで、観光地ランキングの五指に入るほどの人気が寄せられている。中でも近くにある標高2000メートルの山【マーウンテン】から眺める夜景は、海と山に星等々の煌めく夜空、そして明るいネオンに照らされた街並みが一望できるとして多くの人々が集まるスポットである。
そんな街はルトニ河にも国境を超えるための大型道路にも接しており、貿易都市としても有名である。
終戦後に、両国の平和の象徴ともいえるこの街に、今日も若い男女の元気な声が響く。
「だーっ!”普通の一般市民”をやる気があるのかーっ!」
街行く人十人中十人が振り向くような大声で、栗毛色の髪を振り回す彼女は、本日悪い意味で絶好調だった。
「リリア!?声大きいから!ここはそういうところじゃない。静かにしてくれよ。」
「だったら”普通の一般市民”のようにスマートな交渉をしてよねーっ!」
「わ、悪かったよ。普通はこういうの一括で支払うものだと思ってたから。」ゴホッ
「なんで『お目当てのもの』を一括購入できる財産を持ち歩いているのよ!首都で家が買える額じゃない!」
「持っていけと母ー女王様が、ってリリアは知ってたや。母に持たされたんだよ。一括購入でよろしくって。」
その言葉を聞いて大きくため息をつくリリア。
「ひとまず宿に戻りましょ。話はそこでするわ。」
そういって彼等は元来た道を引き返していった。
だが、彼等は知らない。”お金持ってます襲ってください”アピールをしていたことを。
十人中十人が振り向くような大声で、物凄く注目を浴びていたことを。
怪しい目をした人間が少なからず存在したことを。
彼らを密かに見守っていた王室警護官のやるべきことが一つ増えたことを、彼等は知らない。
宿に戻ってきたリリアとトレイズ。
「ふう。まったく。人にはぶつかるし、道中上の空だったじゃない。今回だってお金を一括で支払うなんて、トレイズらしくない!何かあったの?」
「何でもない。大丈夫だ。」
「大丈夫じゃないからいってんの。咳もしてるし。風邪でも引いた?昨日の"アレ"のせいじゃないわよね?」
そういってリリアはトレイズの額に自分のおでこをぶつけた。
数秒。トレイズは息をすることを忘れ、彼女の挙動に惑わされていた。
一方。
リリアも戸惑っていた。
え?なんでこんなことやってるんだろう。トレイズはただの荷物持ちのはずなのに。あれ?
一国の王子さまとおてんば娘はどちらも恋を知らないのであった。
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「本当に風邪だとは」
「だから言ったじゃない。お目当てのモノは航空便で贈っといたわよ。イクストーヴァの王室でいいのよね?」
「ありがとう。イクストーヴァを代表して感謝する」ゴホッ
「ハイハイ、病人は休んでいてくださいなー」
「、、ホントごめん。」
「ハイハイ、聞き飽きたわ。もう私のことはいいからしっかり休む!はい決定っ。いいね?」
そう告げてリリアは部屋を出ていった。寝室に一人残された少年は呟く。
「イクストーヴァの皆さんごめんなさい」
彼が起きたとき、最初に目に入ったのはーー
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『イクストーヴァのトレイズ』
始めにあったときは、変なヤツ程度の認識だった。
自分の出来ることがコイツもできることによく苛立ちを覚えた。
飛行機の操縦も、ロクシュ語もベゼル語も話せて、運動もできて、勉強もできる。しかも最近知ったがこいつはイクストーヴァの王子様。
最初、こいつが嫌いになりかけていた。
学校に押し掛けてきて、『昔の話』で近くの学生に誤解をかけられたり、勝手に家にいたり、ママとも仲が良かったし。
完璧超人過ぎてうざかった。
でもーーー
水のなかでは泳げないし、緊張するときは緊張する。
王子だと知られないために相当の努力を重ね、今に至っていることも、私と一緒にいる時間を大事にしてくれていることも。
沢山の苦悩を重ねて生きてきたことを。
彼ートレイズの寝顔を見ながら思う。
私は、私がこんなところにいていいのかなって。
風邪は私が連れ回したから?
トレイズの意思はいいんだろうか。
ーーーーーーだめだ。
私らしくない。私は私。はい!
普段使わない頭を使ったからか、体が重い。
思考が遅延していく。伝達するように、意識が薄れていく。
手の力が抜けるのを感じながら、意識を失っていく。
トレイズーーのことーーどう思ってるーーんだろうーーー
そこで彼女は眠気に打ち勝ってーーー勝てずにーー
ーーーー寝た。
次回も来週?
でわ