佐天さんに能力とプラスα付けてみました


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リハビリ作

このネタが浮かんで以来執筆活動に集中出来ないので思い切って作ってみました。


表裏一体。

表があれば裏もまたある。

 

光が強く差し込めば、それに対比するように影も色濃く存在している。

 

相反する二つのものがあるからこそ、それは成り立つ不変の事実。

 

それは人間にも当てはまる事。

 

どんな悪党にも、光り輝くものがある。

 

人間という罪深い生き物には等しく闇がある。

 

優しい人間の中にこそ、人を思い尽くすからこそ本当に残酷な事とはなんなのかを知ることができる。

 

 

そんな深い闇というモノは必ず存在する。

 

優しい人間の中にこそ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私の名前は佐天涙子。

ちょっと前に中学1年になったばかりの自分で言うのもなんだが家事が得意なごく普通(・・)の中学生

そんな家事も最初から得意だったわけではない、忙しいお父さんとお母さんの手伝いをしてついでに弟の面倒を見ていたら、いつのまにか上達していた。

 

私のお父さんとお母さんが忙しかったのは私を学校に入れるためだ。

 

誤解しないように言わせてもらうと、私が夢見て目指す学校はとてもお金がかかるのである。

 

学園都市

 

あらゆる教育機関・研究機関の集合体であり、その人口は約230万人。その内の8割が学生を占めるこの都市は人間の中にある人為的な超能力を呼び覚まし、それの研究を行なっている。

 

まさに未来都市であり、私の中に眠る超能力を引き出してくれるかもしれないのだ。

 

ただ私が夢見ていたほど現実は甘くはなかった。いやこれが普通だったのかもしれない。

入学初日に必ず私達この学園都市のそとから来た人間は身体検査(システムスキャン)を受ける。どういった超能力の適性があるかを調べるものだ。

 

おそらく私の13年生きてきた中で最もワクワクした瞬間だった。

 

レベル0(無能力者)の判定が出るまでは私は夢を見ていた。そうそれは所詮、私の叶うはずのないただの夢だった

 

それからというもの私は授業、勉強にひたすら打ち込んだ。自分の夢の舞台であった学園都市のイメージは灰色の無機物な物に変わった。

ここに来てから出来た友達と遊ぶ時間は全て勉強に、体調が悪くなって風邪になっても、勉強も授業も気合いで押さえ込んで欠かさなかった。

 

私は諦めなかった。

 

私を心配して声を掛けた人達も私ほどじゃないにせよ私と同じで無能力である事を諦めていなかったのは最初は心強く感じていた。

自分だけじゃないと、私ももっと頑張ろうと。

でも、気づいたら諦めていない人間は私1人になっていた。

 

時間が経つにつれて、焦りがつのっていく。せっかく私を心配しながらもここに笑って送ってくれた両親に合わせる顔がないから、あんな誰かも分からない研究者を名乗っているだけの人間に自分の夢を壊されたくなかった。

 

直ぐに諦めた彼等とは私は違うのだ。私は必ず夢見た多くの人から選ばれし者であるレベル5(超能力者)になるのだ。

 

でも本当は自分が無能力者という現実から目を背けて、諦めなければきっと能力が発現するかもしれないという現実逃避をしていただけなのだろう。

 

暫くして、何も変わらない定期的に訪れる結果を突きつけられて私は現実逃避を辞めた。

夢を追いかけ、夢から目が覚めた私は膨らんだ風船から空気が抜けるように張り詰めていたものが無くなった。

夢を自分から捨て、得たものは自分が無能力者である烙印を押された哀れで愚かな劣等感を抱いた自分。そして残されたのはそれ相応の人生を生きる普通の佐天涙子だけであった。

 

 

 

 

 

それからの私は今までの勉強をしていた時間を全て友達と遊ぶ事に、自分の好きな事に費やした。

楽しかった。

自分の好きな事に集中出来ること、友達と遊ぶのがただ楽しかった。雁字搦めに縛られていた過去から解放されたような感じだった。

だから心のどこかで過去に夢見た記憶は無くなりその跡地のようにポッカリと空いた穴にその時は見て見ぬ振りを気づかないふりをした。

 

自分が怒りを感じていた諦めていた彼等と私は同類になり、彼等もそれを分かっていたのか優しく私を迎え入れてくれた。

 

そしてアケミ、むーちゃん、マコちゃん、初春飾利という親友も出来た。

 

私が諦めて捨てたものと引き換えに私は幸福になれたとそこで踏ん切りがつけたともう終わったと思っていた。

レベル5(超能力者)の御坂美琴とレベル4(大能力者)白井黒子という高位能力者の親友ができるまでは

 

 

それからだ過去に捨てた夢がポッカリと空いた心の穴が静かに、燻っていた劣等感が火を付けて燃え上がり始めた。

 

昔なら抑え込めた、知らなかったからだ。

 

御坂美琴(レベル5)白井黒子(レベル4)を知ってしまったから、強い彼女らを見てしまったから思い出してしまった。

あの能力に憧れただけの弱い自分以外を、その能力で守る強い彼女らを見てしまったから

それからゆっくりと過去の辛い日々が、昔は憧れという原動力で目指していた夢が今度は何故自分ではなくあの人がという嫉妬と切望、劣等感を糧に心の中に広がり始めた。

私の心の中に広がり、そして溜まっていくものが爆発するキッカケとなる出来事が起きた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レベルアッパー(幻想御手)

 

昔の名残で都市伝説が好きだった私は、たまたまインターネットで見つけてこれに縋った。

御坂さん達と出会う前の私なら初春との話のネタだけに終わったが、自分の意識の底にある切望していた能力を求めてしまった。

 

能力

 

それだけのために私は私の全てを大切なものを投げ捨ててでも、欲しいものだった。

失うものの大きさなんて分からなくなるほどにそんな夢のような物に魅入られた私は最低だ。

 

楽して能力を手に入れる。

欲しいオモチャを手に入れるためにお母さんに駄々をこねる子供みたいだ。

 

 

そして最低の私に罰が下った。

 

 

 

 

 

 

 

「はい佐天涙子さん、お疲れ様です。検査の結果、体の方は異常ありませんがどこか調子のおかしい所がありましたら直ぐに病院に来てくださいね。」

 

「はい、ありがとうございます。」

 

病院のベットの上で昏睡状態から目を覚ました私は、それからしばらくの間は入院をしていたが、罪悪感が未だに燻っているのを感じていた。

勿論、初春や御坂さんに白井さん達には元気な姿を見せることが1番良いから明るく自分らしく振舞ったが、包帯や絆創膏を見るたびに心が痛む。

 

そして今日、目覚めてから毎日行われていた自分のせいだとはいえ鬱陶しい検査も終わりようやく退院することができる。

 

「う〜ん、長かった。」

病院を出てすぐの道路で伸びをして、寝たきりの姿勢が続いていた固まった体をめいいっぱい伸ばす。

 

「いつも、味気ない健康第一の精進料理ばっかりだったから久し振りに甘いものいっぱい食べたいなぁ。」

その時は初春も御坂さんも白井さんもみんな呼ぼう。

みんなで一緒にまた遊びたい。

勿論初春のスカート捲りも忘れないようにしなくちゃ。久し振りに涙目で私に抗議する初々しい反応が見たいな。

家への帰り道でそんな戻りつつある当たり前の日常を考えてると自然と笑顔になれる自分がちょっぴり嬉しく感じた。

 

「お姉ちゃん、待ってぇ〜。」

 

「ほら、早く〜。」

 

交差点の向こう側で、仲の良さそうな子供が走っている。

交差点の手前で信号に気づいたお姉ちゃんが急停止して、止まろうとした弟がお姉ちゃんを巻き添えにする形で転んでしまう。

みるみるうちに泣き出しそうになる弟を痛いのを我慢しているのかお姉ちゃんは涙目であやしていた。

一瞬それが小さい頃の私と弟に重なって見えた。

遊びに出かけた弟と私は危うく車に轢かれかけた。ギリギリで車が止まって私は助かったけど怖くて泣いて、それにつられて弟も泣き出しちゃたんだっけ。

それでその後にお母さんにすっごい怒られて2人でまた泣いたんだっけ。

クスリとまた笑みがこぼれる。

 

信号が青に変わる。

向こう側の弟も涙目ではあるものの泣き出すことは無く、お姉ちゃんと一緒に信号を渡る。

 

その時、向こうの道路から小型トラックが凄い勢いで走ってくるのが見えた。

とてもじゃないが信号で止まるようなスピードではない。

私の体は考えるよりも早く奇跡的に動いてくれた。

交差点を渡っていた2人が車のクラクションの音に驚き恐怖の様相で立ち止まってしまう。

小型トラックの運転手も目の前に見えた子供に衝突するのを回避するため、ハンドルを切るが急なハンドル操作に車は横転しながら子供達を押しつぶさんと迫っていた。

咄嗟に出来た素早いスタートダッシュが功をそうしたのか、その前に2人を抱えて車の横転してくる軌道からは逃れることが出来た。

車はそのまま反対側の交差点の街灯をへし折り、頑丈な壁を簡単に凹ませてやっと停止した。

 

危なかった。

今になって、危機的な状況が去った事にアドレナリンが身体から放出される。止まったのか足がガクガクと震えて全身から嫌な冷汗が流れ落ちる。

もしあの車に轢かれていたら、と思うと震えが止まらなかった。

 

「いてて、大丈夫2人とも?」

 

「うん、だ、だ、大丈夫。」

 

辛うじて姉が、顔を青くして震えながら答える。

弟は怖くて声が出せないようで、ずっとお姉ちゃんの手を握っていた。

 

取り敢えず大きな怪我をしていない2人を見て安堵の溜息をつく前に刺激臭が鼻を突く。

 

お願いだから助けて神様と願いながら、脇に抱えた2人を守るように再び覆いかぶさる。

 

次の瞬間、へし折れた街灯から出た火花がトラックから漏れ出したガソリンへと引火して瞬間的に爆発。

辺りへと火を噴くと火炎は直ぐに無くなった。しかしその爆発の衝撃によってトラックは原型を残さないほどに粉砕されてネジだったものや、車という一つの工芸品を歪な部品のところにまで分解して運んでいた内容物諸共辺り一面に散弾銃の如く付近にいた者に死を撒き散らす。

 

薄着とはいえ背中を直接火で炙られるような猛烈な熱さを感じた瞬間に体が吹き飛ばされた。

私の体がボールのように何回も転がった後にようやく止まることができた。

 

「うぅ、痛た。」

 

ボールのように飛ばされたせいか、涙子の眼に映るものは全てがスローモーションに見え痛みすらも鈍く感じていた。

ふと左腕が軽いことに気がつき目をやると脇に抱えた2人のうち1人がいなくなっていた。恐ろしい最悪の事態に血の気が引いていき視界がクリアになっていく。

もう1人を、この子のお姉ちゃんはどこ!?

探そうと声を出すよりも早く探し人が見つかった。

 

「お姉…ちゃん。」

そこには先程と同じく青い顔をしながらも、震えながらもこちらに指を指すお姉ちゃんが居た。

 

良かった無事だった。

安堵の溜息をつきながら緊張しっぱなしだったせいなのか、体から力が抜けていった。

 

「お姉ちゃん…。お、お腹に刺さってる。」

 

言われてお腹を見ると、確かにお腹に異物があった。

トラックの積載物だったのだろうか金属片ではなかった。途中で折れてはいるが細く丸い木が私のお腹に刺さっていた。

 

力どころか今度は意識すらも無くなってきた。そして子供の悲鳴がだんだんと聞こえなくなってきた。

みんなに会いたいよぅ、家族にも会いたいよぅ、死にたくないよぅと考えがよぎるのは一瞬で終わった。

テレビで見たような走馬灯なんて流れてこなかった。ただ純粋に死にたくないとやり残した事を思いながら、このままあっけなく死んでしまうなんて、と思った。

誰かに会いたい涙が頰を伝っていたが、彼女はそれを感じる事なく意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ざ、ざてんざーん!ぶぶ、無事でよがっだでずぅ〜。」

 

「初春!落ち着きなさい佐天さんは怪我人なのよ!抱きついて怪我が悪化したらどうしますの!!」

 

「黒子も落ち着きなさい。もうそのリンゴ皮むき終わってるわよ!」

病室で目が覚めた瞬間、私の目に飛び込んできたものはあの時、最後に望んだみんなに会いたいという願いが聞き入れられたのか掛け替えのない人達が私の前にいた。

 

「初春、それに御坂さん達も!」

 

「本当に無事で良かったわ佐天さん。」

 

「私達佐天さんが交通事故に遭ったって聞いて文字どうり飛んできたんですけれども、大丈夫そうで安心しましたわ。」

 

初春もみんな涙で顔を濡らしながら、私の事を心配してくれてレベルアッパー事件の時みたいに迷惑をかけて申し訳ない半分、不謹慎だけど事故にあって良かったと思ってしまった。

 

事故?あっ!!

 

 

「子供は、あの2人は大丈夫だった!?」

 

「はい!2人とも軽い怪我で済んで大丈夫でしたよ。佐天さんが身を呈して守ってくれたおかげですよ。」

 

「そっか…良かった!」

2人とも無事に守れた。良かった、本当に良かった。

 

「佐天さんたら、少しは自分の心配もしてくださいな。」

 

「今回は黒子の言う通りよ、佐天さん体は大丈夫?どこか痛いところはないの?」

 

そう言われて、体のあちこちを触ってみるが何処にもこれといった異常は無かった。

 

腕や足、それに背中もお腹(・・・)にも。

 

「大丈夫みたいです。またみんなに心配かけちゃいましたね。」

私がそう言うと、初春が泣き顔からちょっと怒った顔になってグイッと顔を私に近づけてくる。

 

「もぉっ、佐天さんはまたそんな事言ってるんですか!」

 

「そうよ!友達を心配するのは当たり前よ!」

そう詰め寄る御坂さんと初春に、ごめんこめんと謝りながら心の奥底にじんわりと温かいものが広がっていく気がした。

何か忘れているような気がしたが、モヤがかかったように思い出せない。

まっ思い出せないという事は大した事では無いのだろう。

あとで思い出せるだろうと、今は御坂さんに抱きつこうとした白井さんがいつものように電撃を喰らったり、初春が私に笑顔で話しかけるのを幸せに感じている。

こっちの方が全然重要だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2度目の入院生活にはならず、事故の時の子供の母親からお礼を言われた私はその後に病院からの一応の検査をようやく終えて時刻はすっかり夕方になり私はその足で早速近場のケーキ屋さんに向かった。

 

ショートケーキに、ベリータルト、モンブラン

 

これから3日間はこのスイーツを私は堪能し尽くせる事に私は鼻歌を歌いつつ家路の帰路に着いた。

 

ふんふんふ〜ん♪

 

 

急にズキッと頭蓋骨を万力で締められているかのような痛みが走った。

そんな急な頭痛で足を止めた私に突如腕を引っ張られた何もできなかった私を誰が責められるだろうか

 

それが私を猛スピードで走ってくる車から助けてくれたのならそんな命の恩人に私はありがとうございますと感謝の言葉を言っていただろうが、実際にこの前のような事がそうそう起きるはずもない訳でただ歩道で歩いてる私を薄暗い路地に引っ張るような人は碌な人ではない。

 

「へへっ、君やっぱりかわいいね。こっちでお兄さん達と一緒に楽しいことしない?」

尋ねてきている割には私の腕を掴んでいる手は一切力を緩めることなく今も路地裏の更に奥へと引き込んでいる柄の悪い男。

しかも私の後ろにはいつのまにか似たような風体の男が2人逃がさないように立ちふさがっていた。

 

「いや、やだ手を離してください。」

怖い。私が拒んでいるにもかかわらず男は私の腕をどんどん路地裏の奥へ奥へと引っ張っていく。

奥に引っ張られて行けば行くほど、恐怖が大きくなっていった。それと同時に先程からの頭痛がどんどん強くなっていった。

痛みが強くなるにつれて、男に恐怖を抱くそれどころではなくなっていった。

 

痛い、痛いよ割れそう。

この男の目指す先が病院であれば、どれほど良かったであろうか。

 

「は、離してください。頭が痛いんです。ず、頭痛が。」

藁にもすがる思いで私は男に必死の思いで言ったが聞き入れてはくれなかった。

それどころかチッと、舌打ちした男は頭痛でどうにかなりそうな私に向かって拳を振り上げた。

 

 

 

 

 

 

 

レベルアッパーというお小遣いを集める手段がなくなり前までの豪遊が出来なくなった俺たちは鬱憤が溜まっていた。

 

そんな時に俺たちは交差点を歩いていた1人の女に目をつけた。

 

鼻歌を歌って幸せそうに歩く奴を見て、なんで俺がこんなイライラしてるのにあの女は幸せそうに歩きやがるそんな目の前の奴に鬱憤がピークに達した俺は後ろの2人に憂さ晴らしを提案しようとしてそれをすぐに辞めた。

後ろの2人も今のを見て、俺と同じ気持ちだったのかどうやらやる気は満々らしい。

 

作戦はシンプルで俺が裏路地のショートカットを使い先回りをして、2人はもしも女が逃げた時に逃げられないように出口を塞ぐ。

 

作戦をシンプルにしたのも、あんな女如きに失敗することはまずない。そんな当然の事に時間をかけたくなかったからだ。

時間が掛かったのは誰が1番最初にヤルかという事だったが、あまり時間もかけられなかったので、ジャンケンをして決めた結果。俺がいただく事になった。

 

そして作戦は無事に成功して、あとはお楽しみ会場まで連れて行くだけだった。

女に異変が起こったのはその会場まで直前のところであった。

頭が痛いとのたまう女がやかましく気に障った俺は少し黙らせてやろうと思い殴ろうとした時だった。

 

さっきまで怯えていた女の目とは思えないほどの目で、男は背筋に氷を入れられたかのようなゾッとするような思わず漏らしてしまいそうになるほどだった。

その白く細い華奢な腕で、男を片腕一本で軽々と持ち上げ壁に押し付けた。

 

触るなってさっきから言ってんでしょうがー!無視してんじゃねぇーよ!!私の涙子に触るんじゃねぇー、これからおっ死ぬテメェがよぉ!!

 

ぐぇぇっ!?

というカエルが潰れるような声とともに身動き一つ取れない男は、アイコンタクトで必死に仲間に助けを求めるもそれは無駄に終わった。

 

突然の事に驚いているのか、突っ立ったままでいる2人に声が出ないので何やってんだ早く俺を助けろと恨み節を言うがすぐにそれは無駄だと理解した。

ゴボッと口から赤黒い血を大量に吐き出しながら、倒れた2人の腹は穴を開けられ臓物をゴミが捨てられ薄黒く染まっていた地面にぶちまけていた。そして辺りに漂う濃厚な血の匂い。

いきなり仲間のスプラッターな死体を見てしまった男は胃の内容物が逆流するような嘔吐感に吐き出しそうになるも、首を締めている女はそれを許さないとばかりに首を絞める力を強める。変わりに今度こそ下の方は漏らしてしまい股間のあたりが生暖かくなる感覚に気にも止めず命乞いどころか短い悲鳴しかあげられなかった。

 

一体いつの間に仲間を殺したのか、訳が分からない事態に混乱しつつも自身の命の危機的状況に怯えていた。

 

「あなた、涙子にそのションベンよりも汚い手で触れただけじゃなくその心に消すことのできない深い傷をつけようとしていたことは許されない行為よ。」

 

怯える男が首を絞める少女を改めて見てみると、既にそれは少女ではなく仲間と舌舐めずりしていたスレンダーなその体型は出るとこは出て締まるところは締まる魅力的な女性へと変貌していた。幼さが残る中学生の可愛らしい顔はそれを残しつつも美しく仕上げられた二十代中盤の大人の女性となっていた。

 

「な、なんだ顔が、年齢が!?」

 

「私の正体を見た時点で、あなた達クズどもの生死は決まったようなものだけど、それだと私の気が治らない。お前は特に惨たらしい死を」

 

バンッ!!!

 

乾いた炸裂音が響いた後に先程まで男の首を締めていた女が腹を抑えながら後ずさりする様子を見て、男は荒い息を立てながら仲間の流した血の上に落ちて、隠し持っていた拳銃を女に向けながら

「はぁはぁ、ざ、ザマァ見やがれこの、ば、バケモノが!」

と罵っていたが、油断せずにとどめを刺すべく女の頭に拳銃の照準を合わせるがまるで蜃気楼のように消えて無くなるのを見て驚いた。

 

「な、なんだこれは一体何が!?」

 

「キングクリムゾン」

 

あの恐ろしい女の声が聞こえた瞬間に強制的に意識をなくした。

 

 

 

 

 

その翌日、付近を巡回していたジャッジメントに死体が落ちていると慌ててやってきたチンピラの通報に非番の人達も総動員して調査が行われるも、手掛かりといったものがほとんどなく捜査に関してはお手上げの状態が続いていたが、あまりの死体の状態と殺人犯が逃亡している状況にこの日からしばらくの間動ける者特に戦闘力に自信のある者以外の巡回は三人一組という異例の通達がなされ、単独行動は厳禁とされ事が事だけにアンチスキルとの協力体制が敷かれた。

 

 

 




続く?

能力にこれはおかしいと思っても、目をつむって下さい

あと、憑依してるのは女性です


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