リリカルな超次元蹴球 作:平丸
2
目を覚ますと其処には知らない天井があった。
此れは今度こそあのテンプレ台詞を口にするしか無いと俺は目を光らせた。
『 …… ……あぅぁー 』
無理でした。
と言うか呂律が回らず言葉にすらならなかった。
どうしてですかねぇ。
うん、分からん。
考えても仕方がないので考える事を止めた俺は、取り敢えず身体を起こそうとした……
あれ?起きれないんだけど……なんで?
又もや、分からない事が起きた。
本当に今日は、よく分からない事が多発するけど何なのだろう。
どうでも言い様な理由で死に至り、訳の分からない世界に来たかと思えば、 そこから俺を殺したとか言う神が現れて此れですか(泣)
しょーじき、もうついて行けないっす……
思わず、ため息をつきたくなるが出ないので諦めるしかなかった。
あの時のカミ様(仮)の言葉から考えると、次元世界とか言う元の世界とは違う世界へ来たのかも知れない。
だけど、それが真実である証拠は何処にも無い。
そもそも神と名乗り不思議な力を使えたという事で、あの場では取り敢えずカミ様(仮)としていたが本当にアレは神なのだろうか。
神様っぽい、なんか凄そうなオーラが全く感じられなかった。
確かに、あの時カミ様(仮)は俺に対して理解出来ない様な力を使って来た。
俺の額を触れたと思えば、止まっていた俺の思考を冷静な物へと変化させたのだ。
普段の俺なら、あの状況であの様な行動を取れる訳がない。
だからこそ、違和感が凄かった。
そして、それよりも異常だと思ったのはあの時の言葉だ。
たった一言呟いただけでカミ様(仮)は、俺の自由を奪った。
此れがどれだけヤバイ事なのか。
考えなくても分かることだった。
『………』
……其れにしても身体が全く動かない状態下だと言うのに冷静でいられる自分が恐ろしい。
未だアイツが俺に施した術(という事にする)が解けてないのだろうか。
……となると、 此れよりも後にかけられたアイツの【待て】という言葉が未だに解けていない可能性が出てきた。
そんな風に今の現状を何と無く把握していると、気が抜けたのか睡魔に襲われた。
本来ならば、 全く安心出来る状態ではないので眠くなる訳がない。
もっと焦るべきだとは思ったのだが、 何故かこの時の俺は睡眠欲にかられた。
全く動けない今の俺には出来る事が無い。
そんな理由をつけて一眠り、つきたくなった。
体は、動かない。
だと言うのに、 生理的な身体の動きは例外となるのだろう。
瞼だけは自分の意思で落ちていく。
まるで、他人事の様に視界が閉ざされるのを待つ。
光を遮断する迄にかかった時間はとても短かかった。
今眠ろうとするのは間違えている。
その事は十分に理解しながら 睡魔と戦った……のだが、ほんの数秒後には眠る事になるのだった。
……………あれから、どれくらいの時間が経ったのだろうか。
時計が視界に無いので全く分からない。
ただよく寝たなぁと言う、感想を抱ける満足感だけは十分にある。
そう言う事なのだとは、理解が出来た。
『 ……其れにしても、良く寝る子ねぇ。』
………目を覚ましてから気付かないフリをしていたが、女性らしき声が真上から聞こえる。
身体が言う事を聞いてくれないので、誰が話しているのかは良く分からなかった。
今俺は、ゆらゆらと身体を揺らされている。
ふと目を覚ますと浮遊感があったのだが、どうやら俺はこの女性の手によって宙に浮いている様だった。
しかし、どうやって俺は宙に浮いているのだろうか。
身長2メートルある長身だとは口が裂けても言え無いが、それでもそこそこの身長はある。
そんな俺を女性の手で浮かばせようとするのに必要な腕力とは一体どれ程のモノなのか。
そして、そんな腕力を持つ女性が俺を抱き抱えているのかと考えると、何か俺の身が不味いような気がした。
それから数分もの間、浮遊感を楽しんでいるとようやく俺の身体が動き始めた。
瞼を上げ、瞳に光を入れる。
……焦点が合わない。
だけど、女性だと思える様な影が目前にある事だけは分かった。
良かった…どんな女子レスラーに身体を持ち上げられて空中技をかけられるのかと不安だったけど大丈夫そうだ。
あれ?
じゃあ何で普通に持ち上げられてんの………あ、もしかして。
俺は、ちょっとだけ動く様になっていた身体を動かして自身の手を見て………びびった。
俺の体が縮んでいたのだ。
・・・・・・・
はい、どうも。
あれから、早いもので三年が経ちました。
初耳かと思うんで、自己紹介でもしときましょう、松風 守です。
前世の名前とは、違うんで初めは鈍い反応ひか出来なかったんですが、ソロソロ慣れて来ました。
俺の体が縮んでいると気がついた時期は本当に、大変でした。
何せ、死ぬ前の状態で違う世界に飛んだのだと思っていたのだから、
少年期に至るまでの数年間を赤ん坊で過ごさないといけないと知った時は涙もんでした。
何がキツイかって言うともうやる事なす事ぜんふがキツかった。
トイレも自分のタイミングで行けないし。
食べ物は、母乳で全く美味しくないし。
基本的に両親に監視されてる中で、へんな行動を取れば君が悪がられるので眠る事しかやる事が無かった。
あれは、もう味わいたくない。
本当にそう思う。
だが、それも今日で終わりを迎える事となった。
何があったって?
いいだろう教えてあげようじゃないかっ!
この世界に来てから苦節3年。
遂に俺は、親の監視から外れる事に成功したのだ。
やったぜ!
3歳と言えば自我がしっかりして来る年頃なので、それっぽく演技をするのは難しかったが其れにはもう慣れた。
そりゃあ、始めは抵抗がなかったと言えば嘘になる。
だが、人間その気になれば何とかなる物だった。
今、俺は音の鳴るスニーカーでペタペタ変な音を立てながら初めて一人で外出している。
何処へ行くのかと言うと、その辺の茂みの中だった。
茂みに入る理由としては、ある事をする為に身を隠したかったのだ。
茂みの中である事をすると言うと、エロい事を考える様な奴もいるかもしれないがそんな事はなかった。
残念だったな、ショタコンども(ドヤ顔)
………え?誰がお前なんて見て、興奮するかだって?
自惚れるな?
それぐらい分かってるから、マジレスはやめて下さい。
マジレスなんてされると僕の可愛い子供心が傷ついちゃいますぅ〜
冗談っ、冗談だから!プラウザバックしようとしないでっ!!
軽いジョークだから!
話も元に戻すから、もう少し時間を下さいお願いします(土下座)。
はいっ!!そういう事で、何か色々やっていたら茂みに着きました。
茂みに入る前に俺は、念の為に周囲を確認した。
よし、誰もいない。
確認終えて一気に茂み中へ入る。
……草がこそばゆい。
けど、我慢だ。我慢。
今から俺がする事はバレたらマズイかも知れないのだ。
少しぐらいの不快感には目を閉じよう。
俺は、そう自分に言い聞かせて頭を空にした。
今からしようとしている事は、元いた世界ではありえない必殺技の試し打ちだ。
正直に言うと出来る確証は無い。
たけどもし出来たら、カッコ良い(小並感)ので打てる事を願って試してみる事にしたのだった。
この世界に来る前にカミサマ(仮)はこんな単語を口にしていた。
【超次元サッカー】
【必殺技】と。
この二つで思い浮かぶ物は、一つしかない。
そうイナズマイレブンというゲームタイトルだ。
色々と説明を省くが簡単に言うと、とんでも技を使いながらサッカーをする少年達の青春活劇を描いたゲームだ。
その中の主人公、円堂守が使っている知名度の高いつ【ゴッドハンド】と言う技がある。
俺は、今からこの技を使ってみようとしていた。
家の中で一人になる事は、何度もあったから試そうと思えば今迄でも試せた。
だけど、もし必殺技が打てたとして、そんなものを家で使って仕舞えば、家の中を破壊しかねないと思うと怖かったから試してこなかったのだ。
しかし、実際に使ってみようと思うと純粋な疑問が浮かんで来てしまう。
『………本当に、使えるのかなぁ?』
思わず呟いてしまったが当たり前の疑問だった。
カミサマ(仮)のとんでもパワーは、実際に目の当たりにしたから否定しない。
……否定しないけど、凡人の俺にそれが使えるとは、どうしても思えなかったのだ。
だけど反対に、必殺技は使えると言っているもう一人の僕もいた。
俺には、元々イナズマイレブンと言うゲームの知識は無いはずだった。
無かった筈だと言うのに今の俺の頭の中には、数々の必殺技の詳細と打ち方が繊細に浮かで来ているのだ。
恐らく、あのカミサマ(仮)が何かしたのだろう。
だからこそ、打てる可能性も高いと感じていた。
『……よし、 打ってみるか 』
色々と悩んだ結果。
俺は頭に浮かんだゴッドハンドの使い方を取り敢えず試してみる事にした。
もし出なかったら出なかったで、必殺技が本当に打てるのだと信じている可愛そうな子供になるだけだ。
そう結論づけたのだった。
……確か、心臓に溜めた気を右手に込めて前に突き出すんだよな。
俺は、胸に手を当て、心臓で気を作ろうとして諦めた。
『気ってなんだよ…… 』
当たり前の疑問だった。
気なんていう、非科学だと言われている様な謎エネルギーの精製の仕方なんて、凡人の俺が知っている訳がなかった。
冷静になると馬鹿らしく感じる。
胸に当てていた手も離す事にした。
『あほらし。ゴッドハンド何てどうやって使うんだよ 』
わざわざ、母親にオネダリして一人になってした事が打てもしない必殺技の練習とか痛すぎる。
我ながら悲しくなってくる。
時間も無駄だし茂みから出て、その辺をプラプラしよう。
暗くなる前には帰ると言う約束をしているからあまり時間もない。
俺は、サッサと茂みから出る為に身長よりも若干高い雑草を掻き分けて進もうと両手を前に突き出した。
その時だ、
右手に淡い青色のオーラの様な物が纏わり付いたかと思うと一瞬で俺の手の十倍位大きな手に変化した。
『ふぁ!? 』
何が起きたのか、理解できなかった。
ただ頭にある【ゴッドハンド】がそっくりそのままの形で目の前に存在している事だけは、分かった。
『マジで、出たし…… 気ってこんな簡単に出るもんなのね 』
勉強になります、本当にありがとございました。
あまり、必殺技が打てて嬉しいとは思わなかったのでそんな適当な感想を抱くことしかなかった。
ただ打てる事は確認出来たのでサッサと茂みから出ていこうと思っていたのだが、問題が発生した。
『此れ、 どうやったら消えるのですかねぇ…… 』
全くゴッドハンドが全然消えないのだ(泣)
何なの此れ、いつになったらら消えんのよ!?
もうかれこれ1分ぐらい維持され続けてるんですが、サッカーボールでも止めないと消えないの?
サッカーで使用する必殺技なので用法容量を守って使わないと行けないのかと思い周囲を見周しサッカーボールを探すが見つかるわけがなかった。
このまま行くと門限に間に合わない可能性がありえてきた。
コレは、まずい。
今まで、手の掛かる少し可哀想な子供で通っているのに更にやらかしてしまうのか!
俺は、必死に右手を振るった。
まるで近くに飛ぶ虫を払うかの様に古い続けた。
そんな時だ、ゴッドハンドが少しだけ小さくなっている事に気がついた。
『ゴッドハンドェェ……』
まさか草と当たるだけで消耗するとは……
一体何処が神の手なのか。
紙の手って言った方がまだ納得してしまいそうだった。
だけど、今の俺には好都合だった。
ようは、草にゴッドハンドを接触させ続けていれば何れ消え去るのだ。
此処まで分かれば、暗くなる前迄に家へ帰る事が可能になる。
俺は、必死に気を纏い肥大した右手を振り続けるのだった。
3分後、俺は肩で息をしながら右手を見ながら呟いた。
『はぁ、はぁっ………全然消えないんだけど、何でぇ? 』
視界には、初めと比べると多少は小さくなった右手がある。
しかし、小さくなったと言っても10倍の大きさだった右手が9倍くらいになった変化しか見られなかった。
単純計算で後27分あれば消す事はできる。
だけどそれは、体力的にも時間的(此れから遊びに行く事が前提)にも効率が悪かった。
『はぁ、はぁ……何がダメなんだろう?』
俺は、息を整えながら頭の中にあるイナズマイレブン の知識を思い出そうとする。
……うん、ダメだ。
さっぱり分からん。
だってあの世界、適当と言って良いのか異次元的と言うべきなのか分からない不思議理論で必殺技を編み出したりするから、まず何を基準にすれば良いのかさえも検討がつかなかった。
『……そう言えば、必殺技が消える時っていつのタイミングだったかなぁ。アレ?大体任意のタイミングで消せてる様な気がするんだけど…………』
脳内の知識を思い出す度にドツボにはまっている様な気がして来た。
……まず、このゴッドハンドって成功したのかって事を考えよう。
大分、適当にやったら出来ちゃったけど、其れがいけなかったのかもしれない。
……いや、まぁ分かんないけど。
一応ね?
必殺技が失敗したと仮定しよう。
もし必殺技を失敗していたらどうなるのかを思い出してみよう。
……大体皆、吹っ飛んだり倒れたりしてたよなぁ。
うん、無いな。
試したく無いし、次だ次っ!!
俺は、この案は無かった事にして他の案を考える事にした。
……そう言えば、上手く必殺技が出たとしても任意で必殺技を終わらせる以外に消える場面はとても良くあった。
そう、必殺技の打ち合い時だ。
必殺技を打ち合うとどちらか片方の必殺技は消える光景が俺の知識の中にも多々あった。
二つの必殺技の打ち合いがあった時に消えるのは、威力の弱い必殺だった筈だ。
何故威力の弱い必殺技が消えてしまうのか。
恐らくだが、必殺技にも熱量(エネルギー)の様な物を保持しているのだと思う。
それぞれの必殺技には、大小様々なエネルギーが内包している。
それらが衝突などしてエネルギーが消耗する事で先に形を維持するのが不可能になった必殺技が消えるのだろう。
この推測に至った俺の行動は早かった。
要は、ゴッドハンドが持っている熱量を消耗させれば良いのだ。
やる事は、さっきと一緒で他の物質などに接触させるだけだ。
だけど、其れをやっていては時間がかかるので効率が悪い。
此れらの事を頭に入れた上で俺は、ゴッドハンドが付与された右手を全力で地面に叩きつけた。
『【ゴッドハンド】!! 』
叫んだのには、特に理由は無い。
ただ、せっかく必殺技が出たのに何もせず終わるのは悲しかったから叫んだだけだった。
ドンっ!!
必殺技の口上が終わると同時に地面と接触した土煙が上がった。
視界が冴えぎられる中で、勢いが止まらないゴッドハンド辺りからズズズズッ!メギッ!!ポキッ、と心地よい感覚が帰って来る。
時間にすると大体2秒くらい味わっているとプツリと無くなったのが分かった。
土煙をあげるエネルギーが消え去り、宙に舞っていた砂や埃が再度地に伏せて行く。
視界がクリアになり、目の前にあったのは大きな手の形をしたクレーターだった。
流石必殺技と言うべきなのかは、分からないがかなりの熱量を持っていたのだろう。
感覚では、少し硬い粘土を潰しているぐらいだったのに、此処までの威力とは……
流石カミサマ(仮)が押し付けてくれた能力だと、他人事の様に思いながら俺は、茂みから這い出ようとした。
何も考えず、草を掻き分ける為に両手を前に出すと、何か違和感を感じた。
その違和感に嫌な予感を感じ始め、何故か泣きベソをかきながら必死にその理由を模索していると気が付いてしまった事があった。
………右手が曲がってはいけない方向に曲がり骨が肘から突き出ているのだ。
人間不思議な物で、ケガを認識している時していない時では痛みの感じ方が違ってくる。
この不思議現象が徐々に起き始め、ジワジワと痛みが込み上げて来るのが分かった。
このまま行くとトンデモナイ痛みが襲って来る事を本能的に理解した俺にできる事は、二つしかなかった。
『マッ、ママァァァァアアアッ!!!』
激痛になって襲って来る痛みに俺は、泣叫びながら必死に帰路を辿るのだった。
其れからの事を簡単に言うと『経った30分外に出ただけで何があったのよ!!』と怒られ、全治半年の大怪我が治った後も数年間は一人で遊びに出る事を禁止されるのだった。
そして、必殺技の事は全て忘れて普通に生きる事を決心したのだった。
あざした!