リリカルな超次元蹴球 作:平丸
まさかの、ゴッドハンド事件から半年が経った。
漸く完治と言えるぐらいに迄治ったのじゃ無いか、そう思った矢先の事だった。
『おきろ、 起きるんじゃ………… おーい、 おきろ!!』
…… 聞き覚えのある声が聞こえる。
何処だっただろうか。
薄っすらとする意識の中。
脳内でゆっくりとだが思考が始まっていく。
脳内で何かを思い出そうとしていた。
少しの間、微睡みで身体が心地よい感覚に犯されながらも、何となく思考を続けていった。
どれくらいの時間がたったのかは分からない。
ぼーっとしながらも少しずつ頭を動かしていく。
そうして、 出てきた結論は一つだった。
『……此れは、 夢か 』
『滅茶苦茶待たせて結局出た結論は、それか!! 儂じゃ儂っ!神さま(仮)じゃ!! 』
俺の言葉に続いて、神さま(仮)が叫んだ。
何故か、息を荒げている神を見て、俺は冷静に話しかけた。
『神さま(仮)? ……あぁ、アンタか、何かようですか?』
『何かようですかじゃ無いわっ!! お主、折角儂が力を与えてやったと言うのに、まだ一回しか使ってないでは無いかっ!! どう言う事だっ!!! 』
『力? …… ああ、あれね。 ってそう言えば忘れてた! アンタが無理矢理押し付けた奴、一回使っただけで右腕が複雑骨折した挙句に骨が肉を抉って外に出て酷い目にあったんだけど、どうなってるんだよっ!!』
夢の中だからか、直ぐに思い出せなかったが、この件については、いつか文句を言おうとしていたのだ。
『っ、ナンジャと!?どう言う事じゃ!?』
『うるさいっ! 取り敢えず数十発殴らせろっ!』
何故か、驚いた顔をする神さま(仮)。
その顔を見て身体に入る力が一段と強くなった。
……思ったよりも、治りが早くて良かった。
これで思いっきり殴る事が出来る。
俺は、右手で握り拳を作り神さま(仮)に飛びかかろうとしたが、
又もや身体が動かなくなった。
『少し【落ち着け】 話が出来ん。』
どうやら、また神様が力を使った様だった。
前と同じで全く身体が動かなくなったのかと、思ったが、違った様で口だけは動く。
取り敢えず俺は、殴る事を諦めて文句を言う事だけに専念するのだった。
『落ち着けって言われたって、アンタにこの恨みが分かるかっ! 折角、一人で外に出られる様になったと思った矢先に、あんな酷い目にあったからお母さんに滅茶苦茶怒られて、一人にするとする危なかっしいって精神年齢23歳の俺が言われて外に出して貰えなくなったんだぞっ!! この何とも言えない情け無い気持ちがアンタにわかるかっ!? 』
隣の家のお嬢さんの方がしっかりしてる何て言われた時の俺の悲しみが分かるだろうか。
分からないだろうな、神だからねっ!!
『おっ、おう、 なんかすまなんだ 』
俺の気迫呑まれた神さま(仮)が若干引き気味に謝罪をするが、逆に悲しくなって来た。
『謝るなよぉ…… 自分で言ってて何か悲しいじゃん…… 』
『いや本当に、すまんかった。 』
『『…………』』
変な空気が流れる。
お互いに、気まずいのか言葉が出なかった。
文句も言い終えた俺には、此処にいる意味が無い。
それならさっさと、家で眠りにつきたい。
そう思った俺は、神さまに一言かけて帰る事にした。
『じゃ、言う事は言ったんで帰りますね。サッサと術でもかけて帰らせて下さい 』
俺がそう言うと神様がなんかよく分からない術を掛ける準備を始める。
『お、おう…… なんかすまんかったな。 【帰..
って 待て、ワシの用事が終わってない! 』
何かを思い出した神様。
術を中断して近づいた。
神さまの用事って言うのが、嫌な予感しかし無かった。
『……用事ってなんですか。俺には、無いんですが?』
『まあ、そうかもしれないがのう…… 一応、聞かせてくれ、 お主 一度使っただけで骨が折れたと言っていたが其れは本当か? 』
『……嘘だったら、こんなに怒んないですよ 』
『ふむぅ…… おかしな話だのう 』
『おかしな話って、あんたが無理矢理渡したものじゃないですか…… 』
『いや、まぁそうなんじゃがのう…… そんな力はまだ出ない筈なんじゃけど…… まぁ良い、少しだけ出力を下げておく 』
神はそう言うと、 掌を俺に向けると神の手が青白く光り輝き始めた。
これぞ、本当のゴッドハンドやぁ〜と馬鹿な事を考えた瞬間だった。
何て表現すれば良いのか分からない、嫌な感覚が胸に冷たく走った。
『っ…… 何を』
一瞬で身体中の汗腺から冷汗が噴き出した。
まるで、心臓の中側に氷水をぶち込まれた様な感覚だった。
力が入らない。
立つ事が難しく地面に座り込み、 睨む事しか出来なかった。
神が俺の上に立ち、俺が神の下に座り込む。
自然と神が、 俺を見下す様な形となっていた。
『…… 』
神が、ただ俺を見ているだけだと言うのに、手に入る力が強くなっていた。
『っ …… 』
『そう、 睨むな。 お前に渡した力と魂が癒着し過ぎている所為で、 出力を下げた時にお前の魂に影響が出ただけじゃ。』
『魂に影響って…… 』
言葉の響きだけで、悪い物にしか感じられない。
『何、一過性性のもんじゃ…… 出力も下げたしこれで思う存分使う事が出来るぞ 』
『いや…… もう使わない、って決め..
『使え、 使いこなせ、 さまなくば死ぬぞ 』
言葉を遮って、 神がそう言った。
仮にも神からの宣告だ。
思わず、同じ言葉を呟いていた。
『…… 死、 ぬ? 』
『ああそうじゃ、使わぬと死ぬ …… っと言っても、 可能性が高いって話だがな 』
『高いって…… 大災害かなんかでも起こるって事です?』
『まあ、間違いじゃないのぅ』
『えっ? 』
間違いじゃないのかよ。
何それ、怖い。
早くあの町から逃げないと。
一瞬でそう判断した俺は、神様にその情報について伺おう事にした。
何時、何処で災害が起こるのかを知らないと逃げる事も難しい。
此処は、もう神様の皺げた足裏だって舐めて聞くしかない。
俺は、神様の足元に近づきながら訪ねた。
『あの、何時頃、 どの辺りで起きるのでしょうかぁ…… 』
今の俺は一応、 可愛い子供の形をしている。
涙目で頼んだら、ワンチャンあるんちゃうのかと思いながら、目に涙を潤ませる努力だけは頑張った。
『気持ち悪っ! 』
帰って来た言葉とは、神のモノとは、思えない言葉だった。
『おい、そこまで言う事無いでしょう 一応、可愛い子供だぞ今の俺は 』
思わず、そう言ってしまった俺は悪く無い筈だ。
『前のお主を知っている者からすれば、気持ち悪いわ。 何じゃその儂に媚び諂っているかの様な態度は』
『災害で死ぬかもしれない未来が待ってるって、言われたら誰だってプライド売ってでもその情報を聞こうとするでしょ! 普通!! 何だよその反応、アンタの汚い足を舐めてでも情報を得てやろうと思った気も失せたよ…… 』
『お主、 そこまでしようとしてたのか……』
真上で俺を見下ろしていた、神が数歩後ろへ下がった。
神の足の裏は、意外にも綺麗だった。
『最近死んだばっかなんですよ?流石にもうちょっと生きたいですよ』
『まぁ……そりゃそうじゃろうなぁ』
思う所があるのか、神さま(仮)はさっと目線をそらした。
『で、何時頃、何処で其れは、起きるんですか? もっと言えば、何処に逃げたら助かるんです?』
『逃げ場など無いぞ』
『………… は? 』
『訳が分からないだろうが言っておこう。 そいつは、放置しておくと世界中をも滅ぼす。 常人や、お主の世界の科学力では話にならん程の化け物が6年後に現れるんじゃよ』
『化け物?…… 大災害なんじゃ』
『似た様な物じゃよ 。見た目は普通なんじゃが地を割き、空を破り、亜空間を生み多くの人間を闇へと吸い込む……そんなモノ、災害と言わずしてなんて言う 』
神の言葉に息を呑むしかなかった。
そして同時に何故、俺をこんな世界に送り込んだのかと言う疑問を感じていた。
そもそもだ、何故そんな化け物がはびこる様な世界に俺を送ったのかと言う話だ。
超次元サッカーを流行らせたいって言うだけならば、前にいた俺の世界に俺を生き返らせれば早かったはずなのだ。
それなのに、神様は俺をわざわざこの様な世界に送り込んだのだ。
意味が無いとは思えなかった。
『何で、そんな世界に俺を…… 』
『いやぁ……すまん。 超次元サッカーが出来そうな世界へ適当に送ったら凄まじい世界じゃったんじゃよーー許せ』
何か凄い適当だった。
もっと俺に不思議な力があって、俺じゃ無いと倒さない敵を倒して貰おうとしてあの世界に送った説が良かったが、そんなモノは全く無い様だった。
『許せるかっ! 何で仮にも神様のアンタの不手際で二度も殺されないといけないんだよっ!! くそ、やっぱり一度殴らせろっ!!!』
実はなんか俺、 凄かった説が否定され又もやコイツのミスかと思うと、怒りで力がみなぎって来た。
俺は、勢いよく立ち上がり【熱血パンチ】を打ち込もうとした瞬間だった。
何度目か分からない硬直状態にされていた。
うん、そろそろ学ぼう。
毎度毎度このパターンだわ。
少し反省をしている俺の前に神がやって来る。
憎めない笑みを浮かべて神は、口を開いた。
『まぁ、そう言う事じゃから、技を磨け。 大体5年後にそいつはやって来る。 覚悟だけはしておけ 』
『10の子供に何言ってるの!? 一人でそんな奴を倒せって? アンタ、世界観間違えるって!!無理無理、大体イナズマイレブン そんな話じゃないよ!??』
『そこは、安心せい。神様パワーで出力を上げて超次元技を本物の超次元技にしてやる』
『それ、やったらまた骨折れるわっ!!』
『まぁ、お主に似た様な奴らが何人かおるそうだから、一緒にやってれば何とかなるさ☆ ガンバ!!』
其れが、神の最後の言葉だった。
目を覚ますと背中がとても冷たかった。
身体中汗塗れで気持ち悪い。
時計を見ると、まだ日も登らない様な時間帯だった。
こんな時間に起きてもする事がない。
何時もならば二度寝をするのだが、今日はその気にならなかった。
布団から、上半身だけを起こして治った腕をみる。
神様(仮)は、技を磨けと言っていた。
磨かなければ、きっと死ぬのだろう。
思わずため息が溢れてしまう。
『はぁ……やるしかないのかなぁ?』
このままでは死ぬと聞かされた。
だが、逆に技を磨けば死なない可能性もあるのだろう。
そう思うと、やるしか無かった。
少しだけ嫌な予感がしてしまうが、 神様(仮)は出力を抑えたと言っていた。
布団から立ち上がり、部屋を去り階段を降りる。
物音を出さない様に一階へと降り、 庭へと繋がるリビングの窓を開けて外へ出た。
『…… もうちょっと、離れるか』
あの神の言葉を鵜呑みにしていたら、酷い目に合う様な感じがした俺は、家を離れ隣の山へと入り込んだ。
一応、人の土地である。
だけど山の持ち主と面識がない事は無いので、きっとバレても不法侵入には、ならない筈だ。
そう思いながら、山奥へと侵入し、視線が無い事を確認して半年ぶりに必殺技を発動した。
『【爆裂パンチ】っ!!』
何と無く、拳に炎が纏うようなイメージをし、気だと思う力のうねりを両手の拳に送り込んだ。
拳が熱い。
まるで拳の中の血が沸騰しているかの様な感覚があった。
俺は、一本の木の前に立ち力強く踏み込んだ。
『……』
多分これで何発も殴れば爆裂パンチになるんだろうけど、また骨が折れそうで怖かった。
優しく木に拳を当てれば良いのだろうが、それでは本当に出力が下がったのかが分からない。
しっかりと、殴ったとしても身体に負担が無い事を確認しなければ前に進まない。
進まないと言うよりは、進みたくなかった。
拳を開いたり閉じたりしながら、悩んだ。
あの神、 全く信用ならないからなぁ。
出力を下げたとか言ってたけど、蓋開けて見たら変わらずポックリ逝ってしまう未来が見えるんだけど。
でも、 さっさと使い方を学ばないと、 何かしらないけど災害に殺されるって脅されちゃったし……
使わないと死ぬのか。
使わなくても骨がまた死ぬのか……
『……やめようかな』
気付けば、こんな独り言が出ていた。
俺は、この言葉をかき消す様に頭を振るいポジティブに考えて自身に言い聞かせてみる事にした。
ら
俺は、拳に蠢く熱く轟く衝動を全て木にぶつけた。
一発目の拳で木の芯を打ち抜き、間を空けず二発目の拳で芯を中心として穴を広げる。
右拳を前に出し、0コンマ何秒の世界で左拳を遅れて前に突き出す。
後に突き出した拳が目標の障害物と接触させる前には、先に突き出した拳を抜き再び突き出した。
三発四発……十発と衝動に任せて殴り続け、最後には木を真っ二つにした。
『おぉ…… すげぇ(小並感)』
小学生以下の僕では、これ以上の感想は出てこなかった。
当たり前の話だけど、とてもじゃないが5歳児が繰り出した拳とは思えない破壊力。
まさか俺が、 伝説の5歳児だったのか……
などと馬鹿な事を考えながら両拳をふと視界に入れると血に塗れていた。
両の手は木屑と言って良いのかは分からない様な木片が突き刺さっていた。
大半の木片は、数ミリ程度の木片が食い込んでいる程度だが、何個かの木片は拳を貫通していた。
『 』
痛みなんかを感じる前に、目の前の光景が衝撃的過ぎて一瞬思考が止まった。
冷静さを取り戻した後、 取り敢えず一本貫通している木片を口で抜いて見た。
思っていたよりも、大量の血が吹き出る。
血を止めるために慌てて、無事(?)な方の手で止血しようとするけど無事(?)な方の血と危険な方の血が滲み合う。
元から出ていた血が凄過ぎて止血できているのか出血しているのかが最早分からなかった。
取り敢えず分かった事は俺一人じゃこれはもうどうする事もできないという事だった。
だから俺は、取り敢えずこう叫びながら帰路を辿るのだった。
『タスケテェェ、ママァ〜〜!!』
敷地中に、仕掛けている防犯カメラから侵入が現れたと分かり、侵入者の動きを監視していた者がいた。
その者は土地の当主であり、少女か大人の其れへと変貌したばかりだの瑞々しく麗しい女性であった。
彼女は、 即座に侵入者を排除するべく用意していた対抗策を投じようとした所で危険視していた手の者では無い事に気が付いた。
侵入の存在は、一応の面識のある人間だった。
彼女の妹と同い年の少年で、 偶に良く分からない奇行に走る5歳児と言う様な印象があった少年だ。
大人しい性格の妹と奇行な少年の仲は良くも悪くもなかった。
しかし、思っていたよりも少年の精神年齢は5歳児の中では高い為、 彼女から見ると妹と仲良く内気な妹とも仲良くしてくれそうな人間だと思い好感度は比較的に高かった。
こんな夜中に出歩いて今度は一体何をしでかすのだろうか。
気付けば張り詰めた空気感は何処かへと消え去り、彼女は楽しげに少年を観察しようとしていた。
少年が爆裂パンチ!っと叫んでいるのを聞き、
戦隊モノか何かのワザなのかな?と可愛い者を見る目で眺めていた。
少年は、技名を挙げた踏み込み動きを止めたのを見て彼女は、どうしたのかと思っていると、可笑しな事を言い始めた。
『シュレディンガーの猫があるだろう?
あれは、箱の中に死んだ猫か生きている猫かという半分の確率が箱の蓋をあけるまでこの世の中に存在するという事だ(多分)
つまりだ! 俺が今から目の前の木に爆裂パンチを仕掛けた時に、 俺の骨が折れる可能性はちょうど半分!
そう50%!!
大体の確率で折れない!!
つまり、俺の骨が折れる可能性はゼロだ!!(洗脳)
行けっ!【爆裂パンチ】っ!!』
何かに焦りながら、早口で独り言を呟く少年を見て、あの子は何を言っているのだろうと思いながら頭の片隅で、それっぽいけどシュレディンガーの猫はそんなのでは無いよとツッコミを入れた。
5歳児がそんな言葉を知ってい事に対して、また少しだけ少年の奇行的評価が斜め上に上がっていた時だった。
ズンっ!!と、拳が木の芯を打ち抜いた音がした。
まさかと思いながらも少年を見ると、彼女の目で薄っすらと映る速度で拳を突き出し続けていた。
その光景に驚きながら、少年が拳を突き出していた目標物を目に入れた彼女は、更に驚愕する事になるのだった。
『タスケテェェ、ママァ〜〜!!』
……棒読みで叫ぶ少年の声は、ネタにしか感じられない。
結構な……いや、重症にしか見えない傷を負っていると言うのに、それでも何処か余裕の見える彼の行動が奇行に見えるのだろうなぁ、と彼女は結論づけながらも、折られた木からは視線を外す事は無かった。
あざした