リリカルな超次元蹴球 作:平丸
5
ペンギンに気絶させられた俺は気付けば家で眠っていた。
『知っている天……そんな事よりも、 あのペンギン!この儘じゃ本当に殺人罪で酷い目にあわされてしまう!!』
ペンギンの事を思い出し部屋を出る。
急いで玄関へと行こうとした。
しかし、そんな俺を止める人がいた。
『守?こんな夜遅くに何処へ行くつもりなの?』
長い黒髪がふさぁと、揺れているお母様だった。
『……母さん? ごめん!早く捕まえないと不味いんだよ!!』
『捕まえるって何のこと?』
『ペンギンだよ!ペンギン!!』
『ペンギン?……あぁ、この子の事ね』
『この子って……え?』
母さんが、 居間から見覚えしかないペンギンを連れてきた。
『気絶して、 倒れた貴方を此処まで連れて来てくれたのよ。後で、 お礼を言っておきなさい』
『え?いや、もともと其奴が…』
『ぺ!』
ペンギンが俺の頬を叩いた。
ぺちんっと、可愛らしい音を立てる。
どうやら、可愛らしいのは音だけの様で沈む様な痛みで俺を黙らせた。
『……ありがとう、ございます』
いやいや、そう言うと母親が満足したかの様に頷いた。
『はい。それじゃあ、夕御飯を食べましょうか! 』
『は、はーい』
『ぺ』
こうして、なんか知らないうちに、ペンギンの確保は無事に成功し、 罪に問われる心配も無くなったのだった。
夕飯を食べながら隙を見る。
早くペンギンを何とかして俺の中に戻さなければなぁと考えている時だった。
『今日からこの子も家族の一員になったから仲良くね?』
『……』
とんでも無い言葉を耳にしてしまった。
飲んでいた味噌汁が全て口から垂れ流しになる。
『もうっ、いい歳なんだから綺麗に食べなさい。ほら、今日から来たこの子なんかお茶碗に付いている米粒もお箸で取って食べてるのよ?しっかりしなさい!』
母さんはそう注意すると、テーブル拭きで俺の拭き出したモノを掃除し始めた。
いやお母さん、 ペンギンは先ず俺たちと同じご飯を食べないです。
ついでに言うと何でコイツ、箸なんて使えるんだよ。
そうツッコミたくなったが俺は、考えるのをやめるのだった。
『……はい』
○・○・○・○・○・○
あれから早いもので、一ヶ月ぐらいが経った。
未だにペンギンは消える事なく、家でたむろしたり、勝手に外に出て色々していた。
とりあえず、そのうち来る災害に対抗する為に必殺技を練習していた時だった。
突然、身体に異変が起きた。
たった一回、 ゴットハンドを発動しただけで目眩が起きたのだ。
こんな事は 今までなかったが、たまにはそんな日もあるのだろう。
そう思い、日を開けて同じように超次元技を発動すると、前よりも疲労感が強くあらわれた。
今はまだ大丈夫だろう。
だけどこれが続くとそのうち倒れるのではないかと危惧した。
そんなこんなで俺は、 色々試行錯誤している時に新たな技術を習得した。
それは、超次元技を使う時に出てくる気の様なモノ目に纏わせるというものだった。
何となくやってみたら、いつもと違うモノが見えた。
此れは来た!と久々の天才的な発想をしてしまった自分に恐怖を感じながら気を纏わせた目で身体を見た。
そこで俺は、自分の胸からそこそこの太さのオレンジ色の紐のような物が伸び出ているのを見つけた。
何だ此れはと、 紐の終着点を探していると紐はペンギンと繋がっていた。
良く分からないが恐らくこのラインで奴へエネルギーを供給しているのだろうと察した。
そして何とかしないとこの儘、エネルギーを 吸われ続けて干からびて死に至る所まで察した俺は、ペンギン駆除作戦を開いた。
一人では、ラチが明かないという事で同士を集って見た結果。
二人の同士と出会う事が出来た。
二人目は、 不破 当麻 6歳
彼は、何か知らないけど関西弁の女の子が好きなそうだ。
そんな子がこの町に来る事から分からないけど、彼は来るかも分からない関西弁の少女と仲良くなりたいからという理由だけで関西弁の漫才を練習していた。
そんな時に散歩?をしていたペンギンに目をつけられてしまい、『ぺ( 何だその、 つまらない漫才だ)』
と言われて、吹っ飛ばされた悲しい過去を持つ。
三人目は、兵藤 ススム 5歳
毎日公園にいる大きく二つに分けて絞った髪をアタッチメントの如くライトサイドとレフトサイドにドッキングさせている少女を見て、はあはあと息を荒げて近づくと毎度毎度ペンギンにぶっ飛ばされている、かわいそうな被害者だ。
その為に彼は意中の少女を遠目で眺める事しか出来ず、持て余した愛情により常時暇さえあればストーキング行為を行っていた。
ペンギンが悪いとはいえ、 こんなヤバイ少年を同士にして良いのか。
一瞬そんな考えがよぎったが、その考えは投げ捨てた。
それは、彼にすごい特技があるからだ。
その特技とは、 十秒ごとに身体能力が二倍になっていくモノらしい。
得意げにそう言う彼の特技を目にした時には驚いた。
身体能力が十秒毎に二倍になると言うので、取り敢えず五十メートル走を走ってみると確かに最後の方は、飛び抜けて足が速いのだ。
何度やっても五十メートル走の最後だけべらぼうに早くなるので計測してみると
俺、9秒
ススム 、10.7秒
当麻、 7.9 秒
多少誤差はあるが、大体そんなタイムであった。
何度やっても変わらないので変わらないので俺たちが可愛そうな目で見ていると
『次は500メートル走を走ろう!!』
と言うので、いやいや走ってみると確かに早かった。
はじめの50メートルまでは俺たちの圧勝。
しかし、100メートルからは、凄かった。
ススムは、俺たちが75メートル付近を走っている時には既に100メートルを超えていた。
そして俺たちが100メートルを走っている時に更に加速された。
俺たち二人がススムの速さを実感したので走るのをやめていると更に速度が加速される。
このままいくと世界記録でも更新するんじゃねえの?
などと話していると、マジでやばい事になった。
急にススムは、動きを止めたかと思うと倒れたのだ。
どうしたのかと思い近づくと、ススムは身体を痙攣させて目を見開き倒れているではないか。
俺たちは、慌てて救急車を叫び呼んでみるがいくら呼んでも来る事は無かった。
飛んで来るのは大人達の可哀想な視線だけだった。
そんな時だ。
頭の良さそうな金髪の美少女が近づいて来ると、持っていた携帯電話で救急車を呼んでくれたのだ。
何で、同い年くらいのこんな少女が携帯なんて大人アイテムを持ち歩いてるんだと見つめていると、
『さっきから、ジロジロ見てるけど喧嘩売ってんの?』
と拳で抵抗しないと行けなくなりそうだったから目を逸らす事で危機を回避したのだった。
救急車が来るまでの間、その少女に何があったのかと聞かれたので身体能力が八倍になったと思ったら倒れたと言うと
『そんな事有るわけないじゃない!』
と怒られたので、
『すいません』
と俺が謝るともう一人の同士が、一応此れは本当の事なんやでと言うと信じては無いだろうがと言ってくれた。
取り敢えず、 救急車が来るまで暇なのでこれをネタに少女と話していると少女は、
『多分だけど、人間は本来出せる身体能力の15 %しか出せないようになってるけど、其れが身体能力が八倍になって100%を超えた時点で、身体が悲鳴をあげたとかじゃないの?』
と言った。
俺たちは、コイツ天才だ!と脳裏に電流が走ったのを今でも忘れられない。
其れから、一ヶ月ぐらい二人でペンギンを追い出すべく色々と頑張ってみるが出来なかった。
動物なので、冷たい所に放置し続けると冬眠するんじゃね?とやって見たが鳥類は冬眠しないという事実を知ってしまった時は、絶望した。
ペンギンなので、魚を餌にして遠い海にまで放逐してやろうと思った俺達は、魚屋に魚を降ろしている漁師の船まで連れて行けば魚に目を釣られて漁師のペットになるだろうと思って見たけどダメだった。
後で考えて気づいたのだが、 うちの家では魚何て太刀魚をタバコみたいに加えるだけだった。
というか、殆ど俺と同じ料理食べていた。
そんなこんなで色々やって見たが、俺達のペンギン駆除大作戦は失敗ばかりであった。
もう、あれは無理だな。
作戦は中止だ。
いいか此れは、逃げる訳じゃないんだ。
勇気があるからこそできる断念、 なのだと言い聞かせた俺達二人は、 ペンギン駆除大作戦を終えようとしていた。
そんなある日の事、
母さんからこんな言葉をかけられた。
『守〜この回覧板をお隣の月村さんの所にまで持っていって〜〜』
『嫌です』
俺は、即答した。
母さんは、とてもいい笑顔で
『持って言って〜』
とだけ言われた。
『いや、母さん。お隣って、 言っても小さい山一つ分離れてんだけど!?あの家まで行くの子供の僕では体力的に苦しいです!』
実際には、そこまでじゃないが行きたく無かったのでそう言って見たのが失敗だったのだろう。
母さんは、笑顔を貼り付けたまま闇のような気迫を俺に飛ばして来た。
『……良いから、行け 。』
『分かりました、ランニングシューズに履き替えて山一つぐらい超えて見せますぜ!母上!』
『あっ、…… 』
何か怖く感じる母親から離れる為に、 家から飛んで逃げた。
何か母さんが言っていたが、聞こえないふりをして月村家を急いだ。
『あの子…… 回覧板、 忘れていっちゃったけど、 直ぐに気付くかなぁ』
そんな事を母親は言っていたのだが、 俺は全く気づく事なく月村家の玄関まで走るのだった。
月村家とは、お隣さんである。
と言えば否定はしないが、 月村宅まで行こうと思えば、子供の足では十五分ぐらいかかる。
これで、本当にお隣さんと言って良いのだろうか。
考えれば考える程に、行きたくなくなるので取り敢えず走った。
そして、当然疲れた。
『……』
黙って歩いていると、 デッカい黒塗りの高級車っぽい車が俺を通り越していく。
月村家までは一本道でつく。
だから、何とかして乗せて貰えれば歩かず済むのになぁと眺めていると視界から消えていった。
『車欲しいなぁ…… 』
5歳児が言う言葉じゃないそんな言葉を呟きながら俺は、黙々と目的地まで歩くのだった。
ありがどうございました