リリカルな超次元蹴球   作:平丸

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6話

『…… 忍っ、次までに覚悟をきめておけっ!!その機械どもを含め、全ての財産を俺に譲渡するのか、それとも。お前達の全てをこのワシに奪われるのか』

 

 

『……………』

ヤバそうなお話を聞いてしまった。

どういう話の流れでそうなったのかは分からない。

だけど聞いてはいけない話だという事だけは馬鹿にも分かった。

きっと大きな屋敷を持つ金持ちだから色々とやばい事に絡んでいるのだろう。

 

そんな事よりも早く逃げないと……

一瞬だけ、 背後を見る。

高そうな服を身に付けたオッさん。

そしてその背後に胸をさらけ出したファンキーな銀髪のイケメンがいる。

 

イケメンは、俺の事に気づいたみたいだけど。

おっさんの方は、 まだ家の中を向いているみたいだ。

 

これは、まだ逃げれる。

 

なんか知らない、俺の生存本能が刺激された様な気がした。

今なら、 必殺技が使えそうな気がする(確信

 

気を練り、下半身を主に纏わせる。

本当は、 もっと色々あるんだろうけど、きっと適当で大丈夫だ。

俺は、 この必殺技の名前を叫んだ。

 

『疾風ダッシュッ!!』

 

力強く、前へ足を踏み出す。

地を砕くイメージで地を踏み込んだ。

それがいけなかったのだろう。

 

地を踏み込む音とは、思えない音が鳴った様な気がした。

今までの経験則から嫌な音だと察する事ができた。

 

いや、まさかそんな筈は無いだろう。

そう思いながら、後脚を蹴り出すが前へ進む事はなかった。

視線を下ろすとすぐに分かった。

初めに出した足が地面深くに埋まっていたのだ。

 

『……』

 

またこれかよ……

 

俺は逃げる事を諦め溜息をつく。

埋まってしまった足を引っこ抜く事にした。

 

『そこのガキ、 何でここいにいるんだ!』

俺に気づいたおっさんが、背後から叫ぶ

当たり前といえば、当たり前の反応だった。

 

『あー、すいません……回覧板届けに来たんですけど、幾ら鳴らしても返答が帰って来ないんで玄関に掛けて帰ろうとしただけなんです』

『……それは、 何処にあるんだ?』

『忘れました』

『そんなのが、儂に通用すると思ったか!!』

 

…………全部、本当の事しか言っていないというのに何故か怒られた。

まぁ、流石にこの返答は信じられないかもしれないとは俺も思う。

でも、本当の事なんだししょうがないじゃないか。

そう言いたいが、 おっさんの顔を見て諦めた。

話を聞いてくれそうな、人相をしていない。

 

仕方がないので、子供らしく泣いてみる事にした。

一応、向こうは大の大人だ。

泣けば、 少しぐらいは動揺して信じてくれるかもしれない。

そう思い目元に両手を当て泣き真似をした。

『うゎあぁん、 ほんどーのごどなのにぃ……じんじでぐれな、

『うるさい餓鬼だ、黙れ!!!』

 

おっさんの鋭く尖った革靴が、俺の腹部に突き刺さる。

まさか、子供にケリを入れて来るとは思っても見なかった。

 

『っぐふ!?』

 

大人の力に勝てるわけがなく、前のめり倒れた。

というか、人よりも若干強い気がした。

今まで味わってきた経験から察するに多分

母親>ペンギン> >>おっさん>ペンギン駆除隊

こんな感じの力関係だろう。

うん、良く考えれば大した事ないな。

 

少し倒れていると、腹の痛みが弱くなる。

腹よりも埋まっている足の方が怖かった事もあり、直ぐに気にならなくなった。

 

それにしてもこれが大人のする諸行なのか。

おっさんの顔が腹立つので、やり返してやろうかと思ったが諦めた。

此処は、大人しくしていた方が良い。

本能的にそう思った俺は気絶したフリをする事にした。

 

『何してるのよ! 』

 

聞き覚えのある声が聞こえた。

誰なのかは直ぐに分かった。

何度か、あった事のあるこの家の主人だった。

 

ドタドタと足音が聞こえる。

聞こえたと思えば月村家の主人は俺の元にまで来ていた。

主人は、倒れている俺を起き上がらせようとする。

その拍子に、埋まっている足が曲がっちゃいけない方向に力が掛かった。

 

『〜〜いっ!??』

俺の漏らした声に驚いた主人。

彼女は直ぐに俺が漏らした声の理由に気がつき手を離した。

 

『守君!?大丈……ひどい足が地面に埋まってる何て……』

『すずかと同じくらいの子供じゃない。貴方には、血も涙もないの!? 』

 

 

 

……殆ど、自分でやったとは言えない雰囲気だ。

というか、月村家のお姉さんの隣にいる桃色の美人さんはどちら様?

 

容姿からみて年は恐らく月村姉の少し上ぐらい。

多分成人したかしていないかぐらいだろう。

今迄見た事のない、美人に心を揺さぶられる。

この言い方だと、あれだけど実際に俺は美人のお姉さんの言葉に動揺を隠せなかった。

 

頼むから、これ以上何があったのかをおっさんに、問わないでください。

この状況で自滅したなんて言ったら笑いもんになる。

これ以上、変な噂を持ちたくないのだ。

 

道を歩いているだけで 『あの子よあの子、疾風ダッシュ!何て叫びながら一歩目を踏み出した瞬間に出した足が地面に抉り込んだ子供は……』何て言われて可愛そうな目を向けられたくなかった。

 

母さんに、『買い物行っただけなのに、貴方の奇行の噂を聞かされて私、恥ずかしかったわ……』

何てこれ以上、言われたくないのだ(強調)

 

笑いたければ、笑えよ……

 

 

『ふんっ、知らないフリをしても無駄だ。そうか、分かったぞ! わざわざ儂を貶めるために雇った傭兵なんだろうそいつは?……運が無かったな、儂にせめてもの抵抗をしようとしていたのだろうが、コイツもお前達の運命は、同じだよ』

『この子まで巻き込むのはやめなさい! 関係無いって言ってるじゃない!! 私達の事も全く知らないただの子供よ……傭兵なんて訳ないじゃ無い!!』

『……』

 

……気付けば傭兵になっていた。

大人しく話を聞いていただけなのに、一体何故?

話の流れもよく分かんないまま、 不味そうな方向へと話が飛んでいっている。

これは、流石に否定しないと不味そうだ。

早く何とかしないと……

 

俺は、 何とかしてただの一般人だと分かって貰える方法を考えた。

 

よし、 靴でも舐めに行くか。

 

そう思い、行動に出ようとした。

埋まっている足を掘り起こし始めた。

しかし悲しい事に、俺の頑張りは無駄に終わるのだった。

 

『ふん。 ならばさっさとお前達の全てを儂らに寄越せば良いだけの事では無いか、儂は月村家の全ての遺産、そして遊には……お前の妹をな』

『貴方達に…… 渡せるわけないじゃない』

『話にならんな、忍。 もう少しだけ時間をくれてやろう、其れまでにどれを捨てるのかを決めておけ。 儂も数少ない同族を皆殺しにするのは心が痛いから、 のぅ』

『っ……』

 

お姉さんは、おっさんの言葉に対しての返答を口にはしなかった。

お姉さんは、ただおっさんを睨みつけていた。

……身体を震わせながら、 下唇を噛みながら。

 

おっさんは、お姉さんの様子を愉しそうに眺める。

眺め、満足したのか車の中へと戻って行った。

そして、後ろのイケメンも車へと戻って行くのだと思っていたが、何故か俺達に近づいてきた。

 

『なぁ、お前 一応聞いておくがすずかのボーイフレンドか何かか?』

『……?』

何を言ってるのかよく分からない。

ただ一つ分かっているのは、何故かイケメンが俺を睨んでいる事だった。

 

『……無視とは、良い根性をしてるな。まぁいい、聞く気がないのかも知れないが一つ忠告しておく。 すずかは俺の物だ、 もし俺の物に手を出そうとするのならば…… 死を持って償えよ 』

『……』

 

なぜ、俺にこんな話をするのだろうか。

 

チラリと、訳を知ってそうな美人のお姉さん達を見る。

 

『『……っ、』』

二人とも、 何も言わず睨んでいた。

聞くに聞けない殺伐とした雰囲気だ。

取り敢えず、俺も睨んで見ようかと思いイケメンを見る。

 

怒り、興奮しているのか血走ったかの様に目が赤くなっていた。

 

うん、これは睨まない方が良い。

本能で察した俺は目を向けない事にした。

 

 

しばらくするとイケメンは、俺達から離れた。

足音だけを聞いていると車の中へと入っていった様だ。

バタンッと、車のドアが閉まる音を合図に車が動く。

車が動きだし、エンジン音が聞こえなくなるまで誰も動こうとはしなかった。

 

 

 

『……ごめんね、 まもるくん。大丈夫......な訳ないよね』

月村家のお姉さんが、 口を開くまでにかけた時間は短くはなかった。

 

『まもるくん…… で、良いのよね? ごめんなさい、 私が悪いの忍を責めてあげないでちょうだい』

月村家のお姉さん……もとい、忍さんの言葉の後に、 桃色のお姉さんはそう言った。

 

 

ただ回覧板を届けに来ただけだなのに、何があったらこうなるのだろうか。

会話の流れから会話の意味まで殆ど理解が出来なかった。

 

一つずつ話を整理して行こう

そうしないと俺の頭では理解が追い付かない。

 

そうして俺は、まず初めに終わらせなければならない要件を思い出した。

その要件を解決する為に、 目の前の二人に切り出すのだった。

 

『……取り敢えず、回覧板一回帰って持ってきますね。 』




ありがとうございました

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