【一話完結】メグメグとソーンの相性が良かった時の話 作:昼寝してる人
ルミナス出るとか聞いてないんですけど……エンジョイ枠でも出るんですね。賞品羨ましいなァ!!(嫉妬)
「BMが貯まりました」
「おおっ! 60連? 60連だよね、ソーン!」
「はい、60連です! 進撃コラボの兄様とお揃いのコスチュームでバトアリに行ってみせます!」
「…………? メグメグのコスは? 何でメグメグのコラボコスないの?」
毎日コツコツ貯めてきたBMを、いざ消費! 興奮気味のソーンには、メグメグの不満げな声は聞こえていなかった。
ガチャ部屋のコラボ限定ガチャを目前にして、すっかり周りが見えなくなっている。今回が初めてのコラボなので、かなり上がっているようだ。
「よ、よーし、引きます……! いや、もう少し後の方が……? でもようやく貯まったのに……」
「まだ? ねーねー、まだー?」
「やっぱり最終日あたりに……」
「――おっそーい!! もー、メグメグがやってあげるね?」
「えっ」
ソーンの5000BMを掻っ攫い、メグメグは止める間もなくコラボガチャを回した。
その姿を呆然とした様子で眺めるソーンだったが、それも数秒。慌てて止めようとするが、時既に遅し。
「えっとね、えっとねぇ。どれがいいかな?」
UR確定演出。
メグメグの暴挙を忘れ、ソーンは思わず瞳を輝かせる。ソーンはシェアハウスに来たばかりなので、まだURカードは一つも凸っていないのだ。
それに、コラボカードも優秀。特にソーンはURの【進撃の巨人】超大型巨人来襲が欲しかった。周囲サイレントは、
そして、ガチャの結果。
「…………」
「だいじょーぶ? アイス食べる?」
「大丈夫です……」
爆死。
それは期待値が上がった状態で経験すると、とてつもない絶望が押し寄せるのである。
ガチャの結果、SRはコラボカード一枚と恒常カード四枚。そしてURは【ガルガルのピカピカデコ戦車】一枚である。
「……過ぎた事は気にしても仕方ありません。次です! コラボコスチュームこそ、当ててみせます!」
「そうだね」
意気込むソーンに向かって、メグメグは適当に相槌を打つ。ガチャよりもバトル。それがメグメグなのだ。
ふんすふんすと、気合い十分にソーンがコラボヒーローガチャを回す。
ドキドキと高鳴る胸を押さえ、ソーンは聞こえるそれに集中し――!
「ワテクシは美の化身ヴィーナス!」
――崩れ落ちた。
排出されたのはソーンのコスチュームではなく、ポロロッチョのコスチュームだったのである。あまりにもな仕打ちに涙さえ零し始めたソーンに、メグメグは。
「何で泣いてるの? 出なかっただけで? え~、全然分かんないなー」
ぐすぐすと嗚咽を漏らすソーンの頬を横から突きつつ、不思議そうに呟くだけだった。
そんな、入りづらい部屋に入室を果たした猛者が一人。
「? 何でお前ら入らないんだ? 無料単発引かねーの? ……あ、メグメグにソー、ん? 何かあったのか?」
部屋の外へ向かって声をかけつつ、アタリが入ってきたのだ。彼は泣き崩れているソーンを見て、困惑しつつも近寄った。
「よしよし、どうしたんだ? ……カードが当たらなかったと。まあそれくらい日常茶飯事だ、泣くことないって。まあ、発狂して暴れ回られるよりかは遙かに良いけどな。……コスチュームが当たらなかった? アダムとお揃い? ははーん、なるほどな。よし、ちょっと待ってろ!」
慌ただしく部屋を出て行ったアタリだが、流石はスプリンターと言うべきか、ものの数十秒で帰ってきた。ポロロッチョを連れて。
「ただいま! で、ポロロッチョ。お前ソーンのコスチューム当ててたよな?」
「ええ、その通りよ。……ところで涙の跡があるわねチェリーパイ。よし、とりあえずキスをしましょう」
「こ、こら! いきなり距離を詰めるな! ソーンがビックリするだろうが!」
そっと顎を持ち上げられたソーンの目前に分厚い唇が迫ってきた事に、声のない悲鳴が上がったところで、アタリがポロロッチョをソーンから引き剥がす。ちなみにメグメグは楽しそうに傍観していた。
別の意味で涙目になったソーンがメグメグの後ろに隠れ、アタリがポロロッチョを牽制しつつ話し始めた。
「ポロロッチョはソーンのコスを当てて、ソーンはポロロッチョのコスを当てた。なら当てたコスを交換すりゃいいんじゃね? と思ってな。勿論二人次第だし、無理強いもしない」
「えっ……」
ソーンがポロロッチョとアタリを交互に見つめ、不安そうな顔になる。その顔が具体的な不安を表していた。
「大丈夫大丈夫。ポロロッチョは人を襲ったりはするけど、服をどうこうしたりはしないから」
「ほ、本当ですか? それなら……えっと、交換を
して頂きたいのですが……構いませんか? ポロロッチョさん」
「勿論構わないわ! 代わりと言っては何だけど、お兄さんの事をお話してくれないかしら?」
「兄様ですか? それは構いませんが」
コスチュームのために、アダムが犠牲になった瞬間である。まあ、彼も弟のためなら苦虫を噛み潰した顔で我慢するだろう。
「感謝するわチェリーパイ! お礼に抱き締めてあげる!」
「ハイそこまで!」
かばりと両腕を広げたポロロッチョからソーンを庇い、アタリがコスチュームを素早く交換してポロロッチョを追い出した。
「じゃ、これで問題は無くなったな。ソーンも泣く時は場所とか選べよ? 気になる女の子の前で泣くのは後々恥ずかしいからな。じゃ、俺はこれで」
「へっ!? は、はい……!」
にっと笑って颯爽と立ち去るアタリを、恥ずかしさで頬を染めながらソーンは見送る。状況を思い出して、メグメグの顔が見れないソーンに、メグメグは特に何も思うことなく言った。
「それじゃ、ダムダム誘ってバトアリ行こ!」
東西たかさん広場。
段差のない平面であり、ポータルが密着したステージである。
そこには、既に六人が待機していた。
カラバリの黄メグ。進撃コラボコスのソーン。同じくコラボコスのアダムの三人。
十文字アタリ。ボイドール。深川まといの三人。
「うぇ……嫌なのに合っちゃった」
「? 嫌なの、ですか?」
「ソーン……あの三人の固定はな、シェアハウスでひっそりと囁かれているんだ。最強初期固定組、と」
「さ、最強……?」
待機中にそんな事を言われ、ソーンが思わず敵チームへと視線を向ける。和やかに会話している彼等に、最強の二文字は似合わないように見えた。
「アタリんほんっと強いんだよねー。HS溜めさせないようにしなきゃ」
バトルジャンキーのメクメグが、珍しくそんな戦術的な事を言い始める。いつものメクメグを見ているソーンが目を丸くするが、メクメグの意見にアダムも同意したため、認識を変える。
アタリは要注意と、頭のメモに書いておく。
そうして、バトルは始まった。
「気付けに何匹か潰そうっと」
「タイムリミットギリギリまで遊ぼうぜ」
《
まず一番目の自陣ポータルキーであるAに向かってソーンが駆け出し、メクメグとアダムがBポータルへ。
スプリンターであるアタリとボイドールが裏取りに来た際に対処するため、アタッカーであるアダムが付いてきているのだ。
「俺の物にする!」
《キーを奪われました》
「少し冷えるのでご注意を!」
《キーを獲得しました》
ソーンがAポータルを取るよりも先に、アタリがEポータルを獲得する。どうやらHSを溜めようとしているようだ。
メクメグとアダムは瞬時にアイコンタクトを交わし、メクメグはEポータルへ行き先を変更。アダムはBポータルへと走り続けた。
「制圧など造作も無い」
《キーを獲得しました》
Bポータルを獲得したアダムは、拡張をソーンに任せてメクメグに加勢するべく走り出す。遮蔽物を抜けた先では、メクメグがボイドールに攻撃を食らっている所だった。
「発射」
「あれー、体が動かないよ?」
ボイドールによって放たれたのは【雷霊の加護 ワキンヤン】で、ダメカ無しガンナーであるメグメグには直撃だった。
慌ててメグメグとボイドールの間に割って入る。アダムは【全天首都防壁 Hum-Sphere LLIK】を張った。
「守護障壁を展開。カラドボルグ!」
「カピッ……これは耐えられます?」
アダムの【楽団員 サンバール】を、ボイドールは予知していたかのように【反導砲 カノーネ・ファイエル】を発動させる事で打ち上げを防ぎ、ガードブレイクを行った。
無駄のない動きは経験に裏打ちされた計算である。初期最強と呼ばれる所以を垣間見て、アダムは闘争心を燃やし始める、が。
「どけどけー!」
「のー!」
アダムという肉壁を失ったメグメグは格好の獲物。ダッシュ攻撃――DAを当てられ、体力が削られる。そこへ聞こえるシステムボイス。
《味方が倒されてしまいました》
は? 唖然とするアダムの視界に、悠々とBポータルを奪おうとしているまといの姿。それを視界に入れた一瞬後、地面に着地。
リス地を見れば、ソーンが復活してきていた。ガンナー対決はまといに軍配が上がったようだ。いつの間に行われていたのか……。
しかし、流石に自陣ポータルを取られる訳には行かない。メグメグには申し訳ないが、踵を返してBポータルへ向かう。ポータルを踏めば、まといはニヤリと笑ってアダムを振り返った。
(何だ……?)
凄まじく嫌な予感を覚えたアダムは、咄嗟に背後を振り返る。そこには、珍しく戦術的撤退によって逃げてきたメグメグが。
そして、その背後には。
「3Dには負けねぇ!」
「HSが溜まって……!? く、クソがッ」
「8bitの底力ー! 見せてやる! ドットモンスター軍団、参上!」
まといの誘導にまんまと引っかかり、うっかり自陣へ引き返してしまったのが運の尽きと言ったところか。無論、引き返さなくてもBポータルを取られてしまえば勝率はかなり下がるのだが……。
やはり年季が違う。
初手をほんの少し違えただけで、ここまで追い詰められるとは!
「だが、こちらにはガンナーが二人! 遠距離から攻撃すれば良いだけの事だ!」
「威勢が良いねぇ。やれるもんならやってみな!」
まといの挑発に、復活してきたソーンと、体力半分のメグメグが応戦するべく武器を構える。
「ダメカ張ったって、貫通には効かないもんね! 覚悟してよね、アタリん!」
「さぁて、どうかな? ――ボイドール!」
「分カッテイマス」
メグメグとソーンの背後から聞こえる声に、慌ててメグメグが振り返る。
ソーンは反射的に【全天首都防壁 Hum-Sphere LLIK】を張る。それがソーンの命を救った。
「接触禁止」
「あれー、体が動かないよ?」
「メクメグさ……っ! ヴェテロク・ツァーリ!」
ボイドールの【*絢爛ノ美* ボラ&アルヒコ&アペイロン】によってスタンにかかったメグメグ。そしてダメカでスタンを回避し、慌てて【祭り開始! どでかい和太鼓】を発動させる。
サイレントにかかったボイドールには、ガードブレイクも出来ない。しばらくはボイドールの時間は稼げるが、アタリは……。
「お助けキャラだぜ。どけどけー!」
「ぐっ……騎士の守護術を見せてやる」
アタリはボイドールにスタンさせて、キルを取ろうとしていたのではなかったのか。
何故、兄様と戦って……そこまでソーンが思考したところで、はたと気付く。
まといは、何処に居る?
「ようやく気付いたかい? ――ぶっ飛べー!」
「うぁぁ!」
まといに【【爆裂アークウィザード】めぐみん】でガードブレイクさせられる。ソーンはギリギリ生き残ったが、この体力ではすぐに……。
慌てて立ち上がるも、既に遅い。
「まとめてふっ飛びな!」
「カミサマなんていないよ?」
「お稽古とは、違いますね……」
《味方が倒されてしまいました》
味方を連続キルされた事に顔を引き攣らせるアダム。そんな彼に追い打ちをかけるように、
「余所見してていいのか?」
「ここを制圧するのが、勝利への近道です」
《キーを奪われました》
「あたいが貰った!」
《キーを奪われました》
敵陣Dポータル、そしてCポータルが奪われる。
実際これで2-3なのだが……、有利なのは言うまでも無くアタリ率いるチームである。
そしてアダムの守りも永遠ではなく、ダメカは切れる。そこへアタリは一気に突っ込む。
「俺のほうが強いっ!」
「屑どもがぁああ!!」
《味方が倒されてしまいました》
大音量の罵声を不意打ちで食らったアタリが肩を跳ねさせる。そして慣れたようにさっとBポータルに触れた。
「ここも2Dにしてやろうぜ」
「ここは譲れないよ!」
《キーを奪われました》
一人で取っていたら復活したメグメグとソーンに阻止されると踏んだまといも合わせて二人でポータルを奪う。
それでも間に合わない可能性を徹底的に潰すため、ボイドールがAポータル付近で敵を牽制する。自陣二番目を取られて悔しそうなユーリエフ兄弟。
「9秒で決着つけてあげるね? メクメグはラブリーでしょでしょ?」
しかしその悔しさを意に介さないバトルジャンキーが一人。
最近リリカにゴリラだのと言っていた癖に、戸惑いもなく自分で【創霊の加護 タイオワ】を使用する奴がいた。メグメグである。
「きったねぇ顔で近付くな!」
「カピッ!?」
「はらわたをブチまけろ!」
「あ…、アウローラ! 氷よ!」
「失せろ。砕けろ」
「ていっ」
メグメグが【紅薔薇の暗殺術 クルエルダー】で引き寄せたものの、あと一歩というところで逃がしてしまう。
ボイドールのアビリティが発動し、あっという間に逃げ切られてしまったのである。しかし深追いは必要ない。今重要なのは、アタリのHSを消す事だ。
「レトロゲーに感謝しろよ。準備万端でいくぜ!」
その目的を悟ったのか、アタリは【秘めたる力の覚醒】と【究極系ノーガード戦法】を発動させ、三人に向かってきた。
アダムはそれを良いことに【反導砲カノーネ・ファイエル】で迎え撃つが、効果範囲直前でアタリがピタリとその場で止まる。
そしてしてやったりと笑うと、今度は本当に突っ込んできた。その流れのまま【機航師弾 フルーツ・ツォイク】をソーンに放つ。
ダメカを張る間もなかったそれで、アタリのHSで削れていた体力が更に削れ、空へ打ち上げられる。そこへまといの大砲が直撃し、
「これで静かになるだろ」
「兄様……ダメ、でした……」
《味方が倒されてしまいました》
「ソーンッ……」
「抉っちゃうぞー!」
「ってぇ……あ、」
メグメグの【荒れ狂う天空王 ぷれいずどらごん】によって、アタリの体力の半分以上が削れた。
「あっは、HS切れたねアタリん!」
「んー。じゃ、貰うな? 100ギガショーック!」
「えっ」
「3Dには負けねぇ!」
アタリが【革命の旗】でメグメグのHSを吸い取った。アタリが周囲カード、しかもHS吸収をデッキに入れているとは思わなかったメグメグがぽかんとする。
しかし、先程アタリにキルされてデッキを見ていたアダムは避けていた。
「…………。………ダムダム?」
「す、すみませんメグメグ殿。言う時間がなく……」
「8bitの底力ー! 見せてやる! ドットモンスター軍団、参上!」
「…………」
「…………」
「全てを吹き飛ばします」
「勝利をクリエイトするぜ!」
《味方が倒されてしまいました》
回復を終えたボイドールのスタンを食らい、アタリによって呆気なくナタデココと化した二人。リス地で立ち尽くすソーンを復活直後に目にし、嫌な予感のまま見下ろしてみる。
HSを溜めつつアタリに必要なだけの加勢をしていたまといが、目の前で陣取っていた。
「あたい意外と器用なんだよ。――ワッショイ! 御代は見てのお帰りだよ!」
まといの後ろでは、アタリとボイドールがAポータルを奪取するべく踏ん張っている。
「これが、最強初期固定組……か」
諦めたようにアダムが呟いたと同時、試合終了のシステムボイス。
《バトルが終わりました》
《負けちゃいましたね》
「レトロゲームも良いもんだろ」
「アタリん下方まだー?」
「アリマセン」
「ボイボイ下方まだー?」
「アリマセンヨ」
「……まといさんの下方はないのでしょうか」
「アリマセン」
「もー!! 初期ヒーローだけ強いんだけど! メグメグももっと上方してよ!! ボイボイ、メグメグがラブリーだからってステ低くしてるんだー!」
「シテマセンヨ。八ツ当タリハ止メテ下サイ」
「初期ヒーローだけ、ズールーイー!」