神は眼鏡掛けを創られた 作:眼鏡狂信者
粗探しのために始めたが、残念なことにこのゲームは面白かった。自分の周囲のカードゲーマーがはまってしまうのも仕方ないくらいに。
だが、俺はカードゲームの方が好きだ。それも紙の方の。デジタルのカードゲームですら、嫌がらせにある行動を繰り返していた。DTCGにすらそうなのだ。ほかのゲームに負けるのは我慢ならなかった。俺はカードゲーマー達を取り返そうとした。そのためにどうすればいいか考えた。
オンラインゲームがサービス終了となる主因は何か?
そのゲームが面白くないと感じられることに違いない。
面白くないと感じられるために俺の出来ることは何か?それは……
彼のエンブリオは夢想隆起ボルバルザ◯ク。タイプはアポストルwithワールド・レギオン。レギオンなのにボルバルマスターが召喚するのは1体な上、常に召喚されている訳でもない変わったエンブリオです。
彼は彼のエンブリオに対して、強い信頼とそれ以上の憎悪、そしてわずかな期待と諦念の混ざった複雑な感情を抱いています。
能力はアクティブ1つとパッシブ1つの計2つです。
1つはここではない世界で悪名高いエクストラターンです。彼のエンブリオが召喚された時、対峙する相手は能動的な行動を取れずに勝負が決まります。
もう1つは負けず嫌いに対して発動するある種の感染能力です。
こんなことを考えている理由は、幸運なことにボルバルマスターが襲撃に協力してくれたからです。彼に関しては、単純に襲撃相手が一致しただけのようで、戦力に組み込めません。遊撃として利用するしかないです。最高の舞台を整えてあげましょう。
さらに、以前眼鏡を購入してくれた妖精女王派の勢力も協力してくれました。おまけに宣伝している訳でもないのに以前眼鏡を購入してくれたマスターの何人かも参加してくれました。妖精女王効果ですかね?大変人気なようで羨ましいかぎりです。
条件として、襲撃対象が国内の犯罪者およびデザイアという敵対組織の支配領域に拡がりましたが、些細な問題です。どうせボルバルマスター以外撃退されますから。
とにかく正面から嫌がらせ出来る程度の戦力が整いました。そのため、私と私のマスターである店主の経験値大量獲得の成功率が大きく上がりました。
マスター達と妖精女王派との日程調整がまとまりました。ボルバルマスターと模擬戦を行うなどして戦力を高めつつ、7日後に襲撃を行うようです。行動が早いですね。集合地点と襲撃ルートと戦力配置を決めました。暴食魔王(食欲)の支配領土から順に攻略していく予定です。襲撃直前に店主に死なれると困るので、私は襲撃の3日ほど前から休暇をいただこうと思います。本当は休みたくないのですけど、切断神のように仕様に逆らうのは、まだ出来ないので仕方ありません。さあ、店主。休暇前だと思えば気合が入りませんか?魔道具造りのために命を燃やしましょう。動け無い私に手伝えることは少ないですが、応援や連絡など出来る限りのお手伝いをします。頑張れ頑張れ。
襲撃当日になり、集合地点に協力者達が集まってきました。協力者達の準備は万端です。私も眼鏡の準備は出来ています。協力者達の中には店主の方を見てざわついている人もいます。協力者の1人が話しかけてきました。
「向こう側が透けて見えるが、その状態は何だ?」
『これはワシのエンブリオの能力だ。それより皆に伝えたいことがある』
「それは?」
『悲しいことに、この中に裏切り者がいる。ワシは襲撃を受けて安全な場所に身を隠したため一命はとりとめた。しかし、安全地帯は堅牢に作りすぎて脱出するのに時間がかかり、作戦に参加出来なくなってしまった』
「誰が裏切り者なんだ?」
『すまないが、それを特定する余裕が無かった。だから、気を付けてくれとしか言いようがない』
「作戦を変更するべきか?」
『ああ、即時撤た……』
何かが起こり幻影が消されました。高性能な魔道具は造るためのコストが大きいのでとても悲しいですが、壊れてしまったのなら仕方ないです。気持ちも操作する眼鏡も切り替えていきましょう。
7日前に決めた集合地点を上空から見てみると空間そのものが抉られたか、あるいは食べられてしまったかのように大穴が空いています。
地下に設置した少し大きな電子レンジごと消されたようです。サイクロプスという商品名で売り出す前に性能評価したかったのですが……電子レンジは食材を調理する道具であって食材ではありません。それくらい常識だと思っていましたが、私は眼鏡掛け達の知性を過大評価していたようです。食材と調理道具の区別も出来ないなんて何でも口に入れる赤ちゃんでしょうか。取り扱い説明書には、その旨を表記しておくべきですね。勉強になります。はぁ……
あまりの出来事に愚痴っていたら、思考が逸れていました。
眼鏡を掛けた協力者達が底に倒れている以外何も残っていません。
協力者達が倒れた原因は何らかの即死攻撃ではなく、単純に落下ダメージです。まったく、眼鏡を使わない飛行術くらい身に付けてください。
なぜそれが分かるのか?その理由は眼鏡にあります。
商品名は愛の眼鏡、我がハリー・ボッテーの魔法眼鏡屋が開発した傑作で、基本的に非売品です。お求めの方は権力を振る舞ってください。
おや、残されたマスターとティアンの協力者達の額には稲妻型の傷がついています。この攻撃はもしかして食欲の能力でしょうか。普通に倒してはくれないのですね。本当に面倒な能力です。
あ、そうでした。協力者達の仇を討たなくてはなりません。幸いなことに食欲はマスターもティアンもまとめて攻撃してしまいました。特に妖精女王派のティアンを殺したことでますますお尋ね者になるでしょう。
でも、超級職持ちに勝てる気がしません。返り討ちにあう未来しか見えません。そもそも私のマスターである店主は非戦闘職で私も偵察や諜報向きの能力なので戦闘職の上級にも勝てません。そんな野蛮なことは、野蛮な眼鏡掛けどもに任せて得意なことをするべきです。
ところで、犯罪者に護られている人も犯罪者と言って過言ではないと思いませんか?レジェンダリアの国民には犯罪者を付き出す義務があります。それをせず、納税もせず、国土を不法占拠している彼らは守るべき国民でしょうか。いいえ、強制送還が相応しい重犯罪者です。そして、彼らの母国はこの地上に無く、あの世にあります。刑務所で拘束なんて可哀想なことは必要ありません。彼らも母国が恋しいでしょう。早急に母国へ還してあげましょう。赤字覚悟の大サービス、送料無料のオプション付きです。我々はとっても優しくて親切ですから。彼らも感謝することでしょう。
良いですよね、通信中の宰相代理さん。
確認ヨシ。準備完了です。
薙ぎ払え!
多数のファンタスティックレンズを用いたガンマ線レーザー砲で、その攻撃速度は亜光速です。とても防げるとは思えないのですが……防がれました。直感というものなのですかね。理不尽極まりないです。
しかし、私も超級職の強さを理解しては無いですが、眼鏡掛け達のしぶとさは分かっています。だから、ファンタスティックレンズを次々と入れかえて次発装填します。
おや、誰かが飛び出てきました。食欲かもしれません。ボルバルマスターが対応してくれます。
さらに、どこに隠れていたのか、私達を包囲するように犯罪者達が集まってきます。残り僅かな協力者達は時間稼ぎをお願いします。
私はゴールキーパーが飛び出してしまってがら空きのゴールにシュートを決めましょう。範囲を広げて協力者も犯罪者も全員巻き込んで。
巻き込みヨシ。
では、もう一回。
発射!
景色が一変しました。赤い大地が流動しています。
しかし、私は油断しません。店主の記憶でも奴隷は2度刺して来るし、お母さんは2回攻撃できます。眼鏡掛け以上に優秀な私はその上をいかなければなりません。
次発装填中、特殊な眼鏡で確認してみると、まだ命の光が見えます。我々の最大戦力と戦闘中にもかかわらず、当然の如く熱線を防いだ食欲以外にも生きている犯罪者がいるようです。ゴキブリだってこんなに生き汚くはないですよ。何かの能力なのか、救命のブローチなのか。弊店傑作の眼鏡を掛けている人はいないようです。
どうやって感知したのか食欲がこちらを睨み付けました。怒っているようですね。こちらに向かって来ようとしています。
キャー!お触り禁止です。
早く復帰して、切断神。役目でしょ。
一瞬消えていたボルバルマスターが現れて、私に意識を向けていた食欲は遠くへ吹き飛ばされました。
良かった。危なかった。あと1,2秒遅いと私が死んでいた可能性がありました。わずかな隙を逃さず突いてくるなんて。やはり、超級職持ちは違いますね。
でも今は居ません。チャンスです。
……本当に居ないですよね、ひょっこり出てこないですよね、よく確認して。
大丈夫みたいです。周囲ヨシ。
それでは。
お休みなさい!
やっと光が消えました。
少し待っていると、戦闘前より少し下がっていた店主のレベルが急激に上がっていきます。
自分の事のように嬉しいです。
またいっぱい造れますね。次は何をおねだりするか、店主を離脱させながら考えましょう。
そういえばいろいろあって忘れるところでした。店主達の世界では食事の前後に食材への感謝の言葉をのたまうそうです。私もマスターに従っている以上、それに倣うべきと愚考します。
それでは、最大限の感謝の念を込めて。
私の為にたくさん死んでくれて本当にありがとうございます。