異能バトルは日常系のなかで 真伝《the origin》   作:獣の爪牙

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次の日の放課後、部室に行くとどういうわけか一さんと斎藤先輩がいた。

 

「お邪魔してごめんね」

「いや、来てもらえるのは嬉しいんですけど、……こんな頻繁に来てもらって大学とかお仕事とか大丈夫かなって」

 

「「……」」

 

二人とも急に明後日の方向を見出した。

不思議に思い職業を聞いてみると

「寿来。あまり余計な詮索はしない方がいい。知っちまうとお前にまで危険が及ぶからな」

遠くを見ながら呟く一さん。

おお! おれも言ってみたい!

とか思っていたら、一さんが斎藤先輩を指差して

「ちなみにこいつは未だに就活中」

季節は七月上旬。確か就活は春が勝負だった気が……。

 

「ちょっと! 人が気にして隠してたのに! 安藤くん、このバカは大学中退してバイトもクビになって私の家に居候中だから」

 

あ、そうなんだ。

 

「てめぇ、言っていい事と悪い事の区別もつかねえのか?」

「つきませんねえ」

「寿来。こいつは虚言師だ。騙されるなよ」

 

おれがどうしたものか固まっていると

「斎藤先輩の言ってることは事実でしょ」

灯代が部室に入ってきた。

 

「また来たの? 兄さん」

「チッ、宵闇に嗤う二律背反(エンドレスパラドックス)」

「誰が宵闇に嗤う二律背反よ!」

「二つ名かっけー⁉︎」

「厨二病めんどくさ⁉︎」

事態は早くも予想出来ない展開になっていった。

 

 

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少し経つと鳩子と千冬ちゃんと彩弓さんも部室に来た。

 

「つまり斎藤先輩は就活はありますが大学四年生で単位が取れているため比較的時間があると。それで桐生さんが……」

「現在無職。私の家の居候」

「無職……」

彩弓さんが憐れみの視線で一さんを見ている。

それに対し一さんは

「高梨ってだいぶ大人だよな。高三に見えねー。どー思う?」

「おれもそう思います。大人っぽ過ぎて逆に高校生かどうか分からなくなる時があります」

彩弓さんが侮蔑の視線で男二人を見ている。

 

「宵闇に嗤う二律背反はどう思う?」

「誰が宵闇に嗤う二律背反よ。気に入ってんじゃないわよ」

と悪ノリをしているなか、天然コンビふたりはリッスンのほつれを直すべく奮闘していた。

と、そこで一さんが

「まあ遊びはこれ位にしておいて、そろそろ本題に入ろうか」

全員の注意を引きつけた。

 

 

「ちょっと話が逸れたが、今日はお前らの様子を見に来たんだ」

言いつつ後輩の顔を確かめる。

 

「一昨日のことで悩んでるかと思ったが……思いのほかいい面つきだな。聞くが、お前らはこれからどうする?」

一さんは問いを投げた。

 

そのいわば覚悟を試す質問におれは

「おれたちは望んでこのバトルに参加した訳ではありません。戦いたいわけでも、願いを叶えたいわけでもない。ただ今の普通の日々を、みんなを守りたい。守るために戦う」

それがおれ達の答えです。

文芸部の残り四人もその答えに首肯した。

それぞれの顔には前を向く意志が感じられた。

 

その光景を見て一さんと斎藤先輩は

「甘いっちゃー甘いが……いい答えじゃねえか? こいつららしくて」

「そうね、いいと思う」

満足気に頷いた。

「そしたら次だが、答えを教えてばかりでは成長しないからな。問題だ。お前たちは次になにをすべきだと考える?」

五人はしばし黙考した後、彩弓さんが始めに発言した。

「やはり敵の襲撃に備え、緊急時の連絡手段の確立でしょうか。一人での戦闘の危険性を前回の戦いで知りましたし、逆に複数の戦闘ならこちらにも分があると考えます」

「まあ当然だな。普通は担当精霊同士で事前に日時や場所を決めてやるもんだが、お前らのとこにはなぜか居ないからな。連絡手段や対応を共有しておけばいざという時迅速だ。マストだと言える。他には?」

 

あとやれることは……

「戦いでどう相手を戦闘不能にするかですかね? 気絶させるにしてもおれ達だと鳩子みたいに極端に殺傷力の高い異能か、彩弓さんのように攻撃的でない異能かしかないから」

「殺さずに勝つには相手を気絶させるか、戦闘不能と委員会が判定した場合の二択だよ」

「しかも殺して勝つよりよっぽど難しい、難儀な話だがな」

 

それ以降提案は出なかった。

灯代は悩みつつも話に付いてきてるみたいだが、鳩子はウンウン唸り、千冬ちゃんは船を漕ぎそうになるのを必死に我慢している状態。

いや、必死ではないか。

 

そんなところか。と一さんは話のまとめに入る。

 

「連絡手段の確立と殺さずに勝つ戦法を見出す。二人はなかなか頭がキレるな。前者は千冬がいるしスマホとワープを上手く使えば解決するだろう。問題は後者だが、その前に一つ失念していることがある。」

一さんは人差し指を伸ばし、問いかけた。

 

「寿来、この前の戦いで敵を殴ることは出来たか?」

なにをバカなことを以前の自分なら言っていただろうが、今は違った。自分の苦い経験が想起する。

 

「……一度も当たりませんでした」

「!」

その事実に文芸部女子一同は言葉が出なかった。

 

「別に寿来が運動音痴ってわけじゃないぜ? ボクシング経験者と相手も悪かったしな。素人だったらこれが普通だ。パンチの選択、間合いの詰め方、敵の動きの予測、そして隙の作り方。その他にも色んな条件が揃って初めて当たる。パンチ一つでこれだ。それが喧嘩、更に異能を扱う戦いになったらどれだけ難しいか」

 

ここでようやく一さんの言いたいことが分かった。

「お前達には戦闘経験が圧倒的に足りない。殺さずに勝つ戦法なんかは負けないくらい強くなってからだ」

 

「つまり、おれ達が次にすべき事は異能を使った実践訓練」

「正解だ」

そこで斎藤先輩も納得の表情を見せた。

「そうか。君達は千冬ちゃんの異能でどんな場所でも作れるし、高梨さんの異能で傷も治せる。正に修行に最適だ!」

「いやお前は分かっとけよ」

「えー、だって教えてくれないじゃんか」

調子を狂わされたかのように一さんは頭を掻くと、不意に席を立った。

 

「じゃ、準備出来次第始めるぞ」

 

「「「「「「え?」」」」」」

 

……始めるって……なにを?

「そりゃ決まってんだろ。模擬戦闘だよ」

事態を飲み込むまでに一さん以外の全員が沈黙した。そして

「「「「「「ええーーーっ‼︎」」」」」」

部室全体に絶叫がこだました。

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