異能バトルは日常系のなかで 真伝《the origin》   作:獣の爪牙

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案内された場所は近くにある工場の跡地だった。

よく出入りしているのか門や扉は戸締まりしておらず、すんなり入ることが出来た。

「ここはおれがたまに使ってる場所でな、何年か前に閉鎖になってから人は来ねえし通らねー。まさに絶好の場所だ」

 

人をぶっ殺すのにな、と山崎は言った。

 

確かにここは街よりも森の方が近い。更に光源は太陽が沈んで月明かりでかろうじて見える程度の明るさしか無かった。

 

「なあ、お前さっきから舐めてんのか?」

 

先に奥の部屋に入った山崎が姿が見えなくなった合間に隠れ殴りかかってきた。

拳は顔に当たり鈍い音がした。

よろけて転ぶおれに山崎は間をおかずに近づきローキックを腹に入れた。

 

「うっ! げほっ! うぉえ…」

 

正直な所今までどこかでなんとかなるという考えがあったが痛みによってそれが甘いとようやく実感した。

小学生以降ケンカをしたことが無かったおれはあまりの苦痛に呻くのさえキツかった。

 

「後ろ取ってんのにカマして来ないわ、こっちの闇討ちにも対応出来てないわ。おまけに異能も使わない。やる気あんのか?」

 

とにかく遠ざけようと苦し紛れに近くにあった鉄パイプを取って振り回した。

しかし大振りを読まれたのか躱されすぐにワンツーを顔に打ち込まれた。

 

「わるいな、おれボクシングやっててよ」

もう立っているのがやっとだった。

 

「まあキツイか。喧嘩したこともねーやつにいきなり殺しあえって言われてもな」

 

くそっ、まずは……。

 

「一つ……、はあ、はあ、聞いてもいいか……?」

「なんだ? 言ってみろ」

 

「この喧嘩は、お前を気絶させたら勝ちなのか?」

 

「は?」

 

山崎はきょとんとした表情を見せた。

 

「そりゃ、気絶させるか殺すかに決まってんだろ」

殺す? 言葉の綾じゃなく本気で?

 

「…どうやら本当に知らないらしいな。お前んとこの精霊は仕事放棄か?」

 

精霊? こいつはなにを言ってる?

 

 

「このバトルは異能を使った殺し合いさ。そして勝ち残り、最後まで残れば好きな願いが叶う」

 

 

殺し合い? 願いが叶う?

 

「精霊ってーのは参加者にルールを説明したり戦うためのサポートをしたりする、まあ運営係りだな」

 

本気で言ってるのか?

 

「ちなみに殺してもオッケーなのは精霊や運営委員会が丁寧に処理して隠蔽するからだ。そいつに関した記憶も消されるから警察に見つかったりはしねー」

 

まあ、運がよければ気絶で済むからよ。

 

山崎の言葉を理解した時、考えられる最悪の展開に身が竦んだ。

気絶で済むこともあるという言い方は悪ければ死ぬということ。

考えていなかったわけではないが、これはあまりにもむごい。

 

しかもおれじゃ勝てない可能性が高い。

 

隙を作って逃げるか? いや、難しいし相手がひとりとは限らない。

 

助けを呼ぶか? でも今から呼んでももうその頃には……。

 

そうか。おれはここでもう……。

 

それならば。

 

おれは鉄パイプを固く握りしめた。

 

「へえ。今初めて知った癖に闘おうってか。ビビって逃げるかと思ったが」

 

「なおさら、お前を行かす訳にはいかなくなったからな」

 

みんなのために。

 

「格好はいいが状況は変わらねーぞ?」

 

こいつからできる限り情報を引き出す。

 

おれは悟られないようにある人に電話を掛けた。

 

「結局、おれに出来ることはそれくらいだしな」

 

たとえここで死ぬことになっても。

 

 

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