うちの指揮官には謎が多い   作:社畜のきなこ餅

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ノリと勢いで突っ走っていくノープラン物語、3話投稿です。
ハンターさんの口調と台詞に難儀したが、私は謝らない!!


艦隊指揮官アリーナ

 

 

 

 とある日の事、平和でもなんでもない日。

 様々な諸事情と事故が起きた事により。

 

 

「何度も辛酸を味わわせてくれた部隊の指揮官を捕獲できるとは、狩りの成果としては十分だな」

 

 

 現在進行形にて、ぐるぐる巻きな蓑虫状態にて指揮官は一人ハンターの目の前で宙吊りにされていた。

 縄抜けしようともがいているのか、振り子運動がごとく左右に揺れているのが微妙に哀愁を誘う有様であるも、鉄血工造のエリート人形であるハンターにとっては嗜虐心を湧き上がらせる結果に終わるのみであった。

 

 なお現在地はどこぞの放棄された廃墟の一室である。

 

 

「くくく、どうしてやろうか。このまま連れ帰って情報を吐かせるのも悪くないが……」

 

 

 舌なめずりをしながら、もがき続ける指揮官へ視線を送るハンター。

 そんな視線を向けられた指揮官は、このまま好きにさせてなるモノかと必死にもがく、が……ダメ!

 

 

「……何? ぴっちりスーツを着せた上に感度三千倍にするつもりだろ。だと? お前は何を言っているのだ」

 

 

 対魔忍みたいに、対魔忍みたいに!などと叫びながら宙づり状態で振り子運動を繰り返す指揮官。

 そんな指揮官へ、頭がおかしい何かを見るような視線をハンターは向ける……こいつここで射殺しておくべきかとまでハンターが電脳を巡らせる間にも指揮官の発言は続く。

 

 

「さらには触手を嗾けた上に、〇〇で××な……?! な、な……何を言っている?!」

 

 

 良い子どころか悪い子もドン引きな事を口走りながらもがき続ける指揮官の発言内容に、思わず後退るハンター。多分彼女は悪くない。

 

 

「やらないのかですって? やるわけがないだろうがそんなこと!!」

 

 

 白い肌を羞恥で紅潮させ、きょとんとした様子の指揮官へ向かってハンターは吼える。

 冷酷無慈悲な狩人として構築された彼女は、初心だったらしい。

 

 

「捕えた人形の電脳弄るぐらいだし、捕まえた人間にも相応に酷い事するだろう……? 否定はしないが酷い事のベクトルが違う!!」

 

 

 どうせ捕まえた人形の電脳を弄って××な事や△△な事させてんだろー、正直に言えよー。などとぬかしながら振り子運動を繰り返す指揮官にどす黒い殺意を抱くハンター。多分彼女は間違っていない。

 そもそもが女性メンタルな人形所帯である鉄血工造陣営にとって、戦闘には不要な事もあり少々デリケートな話題なのだ。

 そんなワケで、ある意味において理解不能なナマモノめいた指揮官から一瞬であろうと目を離したハンターを、誰が責められようか。

 

 

「……もうここで始末しておくか、代理人もきっと許してくれるだろう」

 

 

 据わった目を蓑虫指揮官へ向けるハンター、しかしそこに宙吊りにされている筈の指揮官は影も形も存在しておらず。

 さっきまでぶら下がっていた名残である、揺れた荒縄だけがそこに残っていた。

 

 

「……あ、あの人間めぇぇぇぇぇ!!」

 

 

 狩人たる自分をコケにし倒した末に縄抜け逃亡をやらかした指揮官への怒りがハンターの電脳を駆け巡り、冷静さを欠いたまま咆哮を上げ指揮官を捕えていた部屋をハンターは飛び出して行く。

 荒々しい足音が遠ざかっていく部屋、やがて訪れる静寂。

 そして、壁から現れる指揮官。 なんとこの指揮官、咄嗟に懐から取り出した壁面に似た色の布を取り出して壁に隠れていたのである。

 

 何とか窮地を脱したと冷や汗を拭い、さっきまで自分を縛っていたロープを回収すると部屋の窓から垂らして脱出経路の確保をし始めた。

 そしてロープを伝い下りようとしたところで、指揮官の背後から声がかけられる。

 

 

「なるほど、私の冷静さを奪ったうえで偽装していたのだな」

 

 

 背後からの声に、そっと背後を振り返る指揮官。

 そこにいたのは、透明な笑顔を浮かべたハンター。

 わっはっはっは、と互いに呑気かつ朗らかに笑った後。高速で指揮官へ銃口を向けハンターが発砲、指揮官は紙一重で窓の外へ脱出成功。

 

 その後、指揮官がハンターから逃げおおせるのに半日ほどの時間を必要としたらしい。

 

 

 

 

 

 指揮官がハンターからの逃避行を繰り広げてからの後日。

 捕獲された切っ掛けが呑気に前線へホイホイ出歩いていた事が原因でもあった事により、基地にて謹慎処分じみた扱いを受けていた日の事である。

 

 多種多様な人形が配備されている基地であるが、戦術補佐用途としての妖精……ドローンもまた複数配備されていたりする。

 妖精格納庫は勿論のこと、人形達の宿舎にてふよふよと浮かんでたり妖精と己を信じているAI同士がおしゃべりに興じているのだが……。

 

 

「もっきゅもっきゅ……あれー? あんな妖精配備されてたかなぁ?」

 

 

 お気に入りのチョコバーを頬張るFNCが、見慣れない妖精が宿舎をウロチョロしていた事に気付く。

 その妖精は、旧時代に運転免許証を手に入れたばかりの運転手が車輛へ張り付けるマーク、かつて若葉マークと呼ばれたソレが張り付けられた帽子を被っており。

 何故かはわからないが、その小さな手で猫と思しきナマモノの前脚を掴みだらーんとぶら下げていた。

 

 

「変わった妖精だなー、どんな支援してくれるんだろ?」

 

 

 チョコバーを食べ終わりハンカチで口の周りを拭いつつ、変わり者の妖精からFNCは視線を外す。

 そしてふと気付く、あの人形ドローンが近くにないどころか両足で歩いていなかった? と。

 

 まさかそんななどと考えながら先ほどの妖精を見直すFNC、しかし既にそこにさっきまでいた筈の変わり者の妖精らしき存在は影も形も見当たらなかった。

 

 

「…………うん、見間違いだよね。この前指揮官が行方不明になった時忙しくてごはん食べれなかったから、疲れてるのかなー」

 

 

 誰に言うでもなく、自分以外誰も居ない宿舎の部屋で薄ら寒い何かを押し隠そうと一際明るくFNCは言い放つ。

 そうだ見間違いだそうに違いない、そう己の電脳に言い聞かせてチョコバーの包装を屑籠へ捨てようと立ち上がり、テーブルの上に座ってラーメンを美味しそうに啜ってる妖精を見て今日のご飯はラーメンもいいなー。なんて考えて。

 

 

「……えぇ?!」

 

 

 捨てようとしていた包装紙を握り潰しながら、ドローンも確かにそこに居たラーメンをすする妖精を二度見するFNC。

 しかし、やはりと言うかさっき見かけた変わり者の帽子をかぶった妖精と同様に、そこには影も形も居なかった。

 

 目を見開き、冷や汗を流しながら足音を殺してゆっくりと宿舎の扉へとFNCは歩を進め。

 扉へ到達した瞬間蹴破る勢いで扉を開け放つと、半泣きで指揮官を呼びながらFNCは走り去っていくのであった。

 

 

 

 その後FNCはひょっこりと曲がり角の向こうから現れた指揮官を発見、目に涙を浮かべながら抱き着いて己が感じた恐怖を必死に訴える。

 訴えられたG&Kの正式採用制服とは違う白い軍服を身に纏った指揮官は、困ったように笑いながらあやすようにFNCを撫で続けるのであった。

 




今回の元ネタ:対魔忍アサギ 決戦アリーナ、艦隊これくしょん

『TIPS.指揮官マル秘情報3』
指揮官は懐から割といろんなものを取り出したり取り出さなかったりする。
たまに変なものを出す、変じゃないものも出す。

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