個性『RTA』があまりに無慈悲すぎるヒーローアカデミア   作:ばばばばば

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11話(2/6)

 休日で人々がにぎわうショッピングモール、そこに私はいた。

 

 

『いやー、期末試験は大変でしたね、セメントスとかいう糞強塗り壁マンの繰り出す絶え間ない生コンの濁流、雄英地獄阿波おどりと化した攻勢を何とか切り抜けました』

 

 

 声は先日の期末試験、その試験官であるセメントス先生の話をしている。

 

 私のような強化系の個性の持ち主は、相性の悪いセメントス先生と戦うことになるとは分かっていたが、かなりの苦戦をした。

 

 先生の個性「セメント」は触れたコンクリートの強度を操作することで自由自在に操るという現代社会において無類の力を発揮する個性だ。

 

 そして試験会場はビル街、まさに先日のテストはセメントス先生の独り舞台

 

 まともに戦って勝てるわけがないので、全員で役割を分担し、何とか合格をもぎ取ることが出来た。

 

 

『難所さんでしたが、冴えわたる私のプレイングで切り抜けました』

 

 

 ……声の支配は、たしかにあった。

 

 だが、いつもとは違い、私が一方的に操られるばかりではない

 

 それどころか、ある1点、それを守りさえすれば、私は自分の意志で体を動かすことすら出来たのだ。

 

 

『ハヤァァァァァいッ説明不要!!

 

 区間タイムで言ったら、自己ベストを更新しています(世界レベル)

 

 これって……勲章ですよ』

 

 

 そう、速さだ。

 

 

 ある一定の時間、私を追いかけてくる『それ』が今の私にはなんとなく分かってしまう。

 

 感覚で言うなら、自分の後ろに迫ってくる影

 

 レースゲームのゴーストなんて表現が近いのかもしれない

 

 

 ……ゴースト?

 

 

 ゲームどころかロクな趣味すらない私がそんな知識を持っていただろうか?

 

 ……そんな疑問も今更かと思いなおす。

 

 私の脳が声に侵されていることなど、とうの昔に気づいている。

 

 

『記録更新の快感はたまんねぇぜ!

 

 ホラホラいつもガバガバ言ってる人たちは反省してどうぞ』

 

 

 結局声とは何なのか

 

 常闇君の黒影(ダークシャドウ)のように意志持つ、私の個性の一部なのか

 

 それとも私をゲームの一部として操る人には預かり知れない理外の存在なのか

 

 長年考えているが答えは出ない、というよりは知りようがない

 

 

 そしてそもそも、今考えるべきことは別にある。

 

 

 

 

「よぉ! 久しぶりじゃねぇか」

 

 

 

 

 私は肩にかかる握力を感じながら、ゆっくりと首を回した。

 

 

「自然に旧知の友人のようにふるまえ……、おかしな真似はするなよ、俺の五指全てが肩に触れた瞬間、お前は塵と化す……」

 

 

 平和を謳歌する人々の中に紛れた異物が2人

 

 

 この喧噪に馴染めない私の肩を掴む死柄木弔

 

 彼に引かれるまま私は空いていたベンチに座ることとなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 先日の期末試験、それが終わった時の皆のテンションは高かった

 

 その解放感から1週間後に控える林間合宿に向けて、クラスの皆で買い物に行こうという話が出る。

 

 

「あっ、よかったら本条さんもくる?」

 

 

 流石の雄英Aクラス、彼らは毎度毎度、懲りずに私を誘ってくれる。

 

 当然今までの私がその誘いにのったことはなかった。

 

 

「そうなんだ。私も買いたいものがあるから付いて行ってもいいかな?」

 

 

 だからこそそう言った時のクラスの面々の表情の変わりようはものすごかった。

 

 

「なん……、だと……?」

 

「ついにデレ期到来ですかーッ!? 」

 

「本条さんも来るの!?やったー!!」

 

 

 私の発言で一瞬の静寂が訪れ、その後すぐに歓迎ムードに切り替わる。

 

 分かっていたが良くもここまで嫌味なく笑えるものだ。

 

 

 必要なものがあるのは本当だ。

 

 もっとも、今回の目的は別にある。

 

 

 そうして買い物の当日、私は大して数もレパートリーもない服を着こんで向かった。

 

 

「俺アウトドア系の靴とかねぇから買いてぇんだけど」

 

「小型カメラとピンバイスドリルってどこ売ってんだ?」

 

「とりあえず私は大きめのキャリーバック買わなきゃ」

 

「どう本条さんも一緒にいかない?」

 

「うん、私も見たいから付いてくよ」

 

「……!! じゃあみんなで行こうか!」

 

 

 私は途中までは彼らの買い物に付き合った。

 

 

「アウトドア用品の靴を見に来ただけだけど、他のキャンプ用品も見てるだけでも案外楽しいもんだな」

 

「みろよコレ! このテントでけぇ!」

 

「あら本条さん、何を見てるのですか」

 

「ちょっとこれ、かわいいなって……」

 

「ランプ? オイルを入れるやつ、へぇ確かに夜の中で付けたら絶対雰囲気出るよ!」

 

 

 皆についていく振りをして時間を潰しながら、隙をついて集団から離れる。

 

 

 その後は自分の買い物を済ませ、荷物をコインロッカーに預けると、目的地に向かった。

 

 

 そうして私が広場の所を歩いていると奴が来た。

 

 

 店を見るでも、どこに向かうでもない、イラついた様子で乱暴な足音を私の後方で捕捉

 

 私は歩幅を緩めて前を歩く

 

 私に気づいたようで、その足が止まり、しばらくしてゆっくりとこちらに向かってくる。

 

 それを確認してから歩くペースを早めると向こうも足早となった。

 

 ここでは少し位置が悪い、彼に気づいてもらえない可能性があるので私は広場のところまで追いつかれないように歩く速度を調整しながら進んだ。

 

 

 広場で一度、店を見るためを装って足を止めてみせる。

 

 

 すると案の定

 

 

「よぉ! 久しぶりじゃねぇか」

 

 

 後ろから目的の男が現れる。

 

 肩を組むように乱暴に引き寄せると顔をこちらに寄せてきた。

 

 

 

「自然に旧知の友人のようにふるまえ……、おかしな真似はするなよ、俺の五指全てがお前の肩に触れた瞬間、お前は塵と化す……、なに、ちょっと話が聞きたいだけさ」

 

「それ、私が応じると思ってる?」

 

「じゃあ死ぬか?」

 

 肩に手を置いたまま、死柄木はぐるんと私の顔を覗き込んでくる。

 

「……一応のアドバイスをしておくと男女の友人同士でその距離感はアウトだから」

 

「やっぱお前、生意気だなぁ……、殺らないと思ってるのか? なんだろうな、そのお前らの思い込みって奴は」

 

 死柄木は不機嫌そうに群衆に目を向ける。

 

「だれが個性を振りかざしたっておかしくないのにどいつもこいつも群れて笑ってやがる。“するわけねぇ”そんな勝手なモラルを思い込んでるのさ、……なぁ、お前もあいつらと同類か?」

 

 死柄木のいくつかの指がギリギリと私の肩に食い込んだ。

 

「……話って何?」

 

「はは、いいねぇ」

 

 

『じゃあ、まず年齢を教えてくれるかな?

 

 本編では緑谷がインタビューシリーズされますが、死柄木からの関心が高いとこっちにもきます

 

 敵からの関心の度合いは好感度のように確認できないので、このイベントの発言で、後々必要になるフラグの達成条件が成立するかを確認しています

 

 なぜ死柄木からの興味が必要になるかは後で説明しましょう』

 

 

「最近さ、嫌な事ばっかりでマジに気に入らねぇ、お前もそうだが特に今一番気にいらねぇのはヒーロー殺しの件さ」

 

「何でそんなこと私に聞くかわからないよ」

 

「まぁ、そこにいたからだよ、あとはなんつーかオマエ、匂うんだよなぁ」

 

「女の子になんてこと言ってるの」

 

「誤魔化すなよ」

 

 ニタリと死柄木は視線を外そうとしたこちらの顔を覗き込む

 

「ゴミの匂いだ。隅っこで腐れてる生ごみの悪臭だぜ」

 

「私は女の子だって言ってるでしょ? 殴るよ?」

 

 

『ここで、死柄木の発言を確認

 

 ……はい、いいですね。目標は達成してます』

 

 

 その後の死柄木は自身の行った犯罪がヒーロー殺しの話題に覆い隠されているのが気に食わないようで、その憂さ晴らしに私は付き合わされることとなる。

 

 

「テレビじゃヒーロー殺しとヴィラン連合は組んでるって話じゃないの?」

 

「はっ! まさか! 俺は認めちゃいねぇよ! たかだかヒーローを殺し損ねて捕まったザコ、たまたま縄張りが重なっただけさ」

 

 

 死柄木は自分がおこした事件について、身勝手な理論を振りかざして、勝手に機嫌を悪くしている。

 

 いますぐ話を打ち切りたい衝動に耐えながら、私は適当な相づちを打ち続けて時間を潰した。

 

 

『原作イベならいるはずの緑谷が入ってないやん! と思われた方もいるかとも思いますが安心してください

 

 何気にここの話は死柄木が己の信念を自覚する大事な場面ですので、当然主人公の緑谷が合流してきます』

 

 

 声は勝手な事を言っているが、この広いショッピングモールで、何もしないで緑谷君がこちらに気づく訳がない、先ほどからコイツに声をかけられる場所とタイミングを計っていたのはそのためだ。

 

 

「俺とヒーロー殺し、何が違う……! どっちも好きに壊しただけだ。なぜこうも違うんだ」

 

「さぁ、一緒でしょ、あえて言うなら演出じゃない?」

 

「ハッ……、時間の無駄だったか」

 

 

 私の返答に死柄木は苛立っている様子だ。

 

 不快感を隠さないまま睨んでいる。

 

 この男の機嫌を損ねればこいつは躊躇なく個性を使い、直ちに私をバラバラに崩壊させるであろう。

 

 

「でもその答え、彼なら多分知ってるかもね、……見える?」

 

 

 こんな所で死ぬわけにはいかない私は、向こうでヒーローとタイアップした商品を手に取って悩んでいる少年を指さした。

 

「アイツは……」

 

「彼、オールマイトのお気に入りだよ」

 

「オールマイト……!」

 

 オールマイトの名を呼ぶその一言にネバつくような殺気を感じるが、私はあえて空気を読まずに薄く笑った。

 

 

「雄英の時もオールマイト、オールマイトうるさかったけど、なに? あなたオールマイトのファンなの?」

 

「……殺されたいのか?」

 

 

 私のその一言にニタついていた彼の目から余裕が抜け落ち、無感情に呟いた。

 

 いまこいつは本気で怒っている。

 

 

「次に口を開いたら殺す。あいつをここに呼べ」

 

「私を殺したら彼と話せないでしょオールマイトオタクさん? あなたならきっと彼と話が合うと思うよ」

 

「そうか……」

 

 

 そう言い切った瞬間に私は手を軽く上げる。

 

 突然私の体が動いたせいで死柄木の指が触れるが、別の指が離れる。

 

 今私は死ぬところだった。

 

 もたもたすればこいつはこの場所で本当に私を殺す気だ。

 

 ギリギリのやり取りに私は人知れずに冷や汗をかく

 

 

「……本当にムカつく奴だ。お前殺すよ、周りがどう言おうが俺は決めたぞ」

 

 挑発を続けた結果、目の敵にされたが問題はない

 

 私は気にせずに緑谷君の方に顔を向ける

 

 ほかの店に行こうとタイミングよく振り返った緑谷君は私に気づくのでそのまま手招きをしてみせた。

 

 

 

 緑谷君は不思議そうにこちらに駆け寄ってくるが、私の隣にいる人物に気づくと次第に表情を強張らせていく。

 

 

「お……、お前は……!」

 

「お茶でもしようや緑谷出久……、この女を壊されたくなけりゃな」

 

 私を人質に死柄木は口の端を歪めていた。

 

 

『おまたせ、アイスティーしかなかったけどいいかな?

 

 はい、ここからは謎ムービーでMDRYとSGRKの会話でこちらは空気と化します

 

 1周目は意地でもムービーを見せてくれる開発陣の粋な計らいを感じます

 

 何で見る必要があるんですか?(正論)

 

 ……そっちのけで展開される原作会話に飽きるとおもいます

 

 

 そんな、みなさまのためにぃ……(約束された本編☆)

 

 

 

 

 

 

 

 

 死柄木弔について紹介させていただこうと思います』

 

 

 

『本名は、志村転弧(しむら てんこ)オールマイトの師匠にして7代目OFA継承者である志村菜奈の孫

 

ヒーロー社会というものを憎んでおり、今ある個性社会、ヒーロー社会の転覆をたくらむヴィラン連合のリーダーですね

 

 もちろんこのような人物像に至ったのには理由があり、過去の死柄木は、父と母、母方の祖父母、姉、ペットの(TDN)と共に暮らす、ヒーローに憧れるごく普通の少年でした

 

 しかし彼の父はヒーローである自身の母親の存在を隠し、ヒーローの話をすることは許さない程のヒーロー嫌い、ヒーローに憧れる少年は抑圧を受け、ストレスを溜めこみます

 

父と祖母はほぼ絶縁状態、彼の祖母がヒーローとして活動していく上で、家族を危険に晒さないための決断でしたが彼の父はその事にたいしてわだかまりがあったのです

 

まぁ! ヒーローなんてヤクザ商売するなら家族なんて作るもんじゃないですね!

 

 愛と勇気だけが友達な大正義アンパンマン先輩をみならって?

 

 そしてアンパンマンを知らない彼らに悲劇がおきました

 

 姉と自分、そして父、些細なすれ違いにより精神的に追い詰められ、崩壊の個性を暴走、家族全員を自らの手で殺めてしまうのです

 

 事件後に当てなく歩き、彷徨う彼に周りは誰一人として手を差し伸べてくれませんでした

 

 彼を助けたものは皮肉なことに悪の親玉AFO

 

 ショックで記憶をなくした彼はAFOに育てられ、御覧のとおりの人間になったわけです

 

 えっ? “この手マン、死柄木弔には悲しい過去が……”あたりから聞いていない?

 

 はい、ではいつものように三行で説明しましょう。

 

 

 俺は悪くねえぞ、だって華ちゃんが言ったんだ……そうだ、華ちゃんが見ろって!

 

 こんなことになるなんて知らなかった! 誰も教えてくんなかっただろっ!

 

 俺は悪くねぇっ! 俺は悪くねぇっ!! (RK)

 

 

 まじでこんな感じです。

 

 多少歪んでいるとはいえ所詮奴は一歩間違えれば平和な人生を謳歌していただろう只人(後方黒幕面)

 

 生まれながらの悪であり、正義(アンパンマン)を倒すことが生きがいとかいう、悪の鑑で大先輩であらせられるバイキンマンさんを見習って?』

 

 

 ……私が未来を見ることによる情報収集は、不完全だ。

 

 近い未来や限定的状況なら他の五感で見ることが出来るが、これが先の不確定な未来となると十分とは言えない。

 

 林間合宿程先で複雑なものとなれば、サーのように視覚だけ、それも当初は断片的な映像だけしか知ることが出来なかった。

 

 少なくとも会話については何を話しているかは読唇で何とか分かるがそれでも情報の精度が低い。

 

 相手のこれからの行動から情報を集めることはできても、隠された過去や遠い未来であったり、私のあずかり知らない場所での出来事は綿密に調べることができない。

 

 未来予知で声に操られた私を見ることはできても、この舐め腐った声を聞くことはできないということだ。

 

 

 つまり私はこの男の過去を今、初めて知ってしまったということである。

 

 

「さっきもこいつに聞いたんだが聞かせてくれ、世間の目はなぜヒーロー殺しにだけ集中してる。なぜ誰も俺を見ない? 同じ悪だろ? 奴と俺で何が違う」

 

「…………僕はお前のことはなにも理解も納得もできない、けど……、ヒーロー殺しは納得はしないけど理解はできたよ……僕も始まりはオールマイトだったから……」

 

 

『すいませ〜ん、RTAですけど、ま〜だ時間かかりそうですかね〜

 

 何やってんだあいつら……

 

 速さに関係なければヒーローもヴィランも関係ねぇんだよ!』

 

 

「……そうか、全部オールマイトだ。ハッ……、そうだよな! 結局そこだ! あぁ、俺は一体何を悶々と考えてたんだ? こいつらがヘラヘラ笑って過ごしているのもオールマイトがヘラヘラ笑ってるからだよなぁ……」

 

「なにを……」

 

 

 

 私の肩に更に力がこもる。

 

 

 私は隣にいる死柄木の身の上話を知り、素直に悲しいと思った。

 

 

 だがそれだけだ。

 

 

 すぐ隣にいる男は、本当に、本当に小さな、些細な何かが一つでも違えばこんな風にはならなかったのだろう。

 

 勘違いしないように言うと、私は多少の同情をしたが許したわけではない、どう取り繕おうがこの男は裁かれるべき悪人である。

 

 今から隣の人間の背骨をへし折って半身不随にしろと言われても迷わない

 

 

 ただ、ふと思ったのだ。

 

 

『(タイムが)痛い! 痛い! 痛い! や゛だ あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!(大迫真)

 

 あったまきた……(冷静)

 

 決めました。私がコイツを倒した暁には尋問と称してクッキー☆を24時間視聴してもらった後、13巻だけがないベルセルクを読んでもらいましょう』

 

 

 

「救えなかった人間などいなかったかのように! ヘラヘラと笑ってるからだよなぁ!!」

 

 

 手は強く握られ、もう少しで五指が触れる。

 

 

 例えばどんなに救いようのない悪人でも、そこに堕ちる前に、一度、そう、たった一度でも口にしたことがあるのではないだろうか?

 

 

 “助けて”と

 

 

 誰にも聞こえない、聞いてくれない中、どんな救えない人間でも、そう心で呟いたことぐらいあるのではないかと

 

 誰かがその一言を聞くことが出来ていたのなら……、ふとそのように私は考えてしまう。

 

 

「……おい、おまえ、何見てやがる」

 

「ハハハ、ま、そんなの無理だよね」

 

「は? 何勝手にしゃべってんだ? ころ……」

 

 

「デク君? 本条さん? その人誰」

 

 

 だがそうはならないだろう。

 

 なぜならこれはありふれた話だからだ

 

 こんなにも簡単に転がっているもの全てを拾い切ることなどできっこない、それが薄暗い隅っこならなおさら

 

 助けを得るためには幸運が、それがダメなら行動で補わなければいけない。

 

 

「友達……、じゃないよね?」

 

 

 ちょうど緑谷君と合流するために戻ってくるであろう麗日さんは、私の誘導通り、正しいタイミングでこちらに近付いてきた。

 

 意識の外側から来た麗日さんに、会話に集中していた二人の意識に隙が生まれた。

 

 その瞬間、私は勢いよく立ち上がると、死柄木の手を置き去りに数歩離れる。 

 

 あっさりと逃げられたことに気づいた死柄木は一瞬顔を憎らしそうに歪めるも、次の行動は早く、身をひるがえし、群衆に溶け込むように歩き出していた。

 

 

「死柄木! オールフォーワンは何をたくらんでいる!」

 

「さぁな、それより気を付けろよ、次会う時はお前達を殺す時だろうからな」

 

 

 追いかけようにも人と人との肩が触れ合うほどの状況だ。

 

 

 周りの被害を考えて動けない緑谷君と麗日さん、元々動く気もなかった私は死柄木を見送った。

 

 

 

 




どいつもこいつも悲しい過去

理由がある悪の方がかっこよく見えるからね、しょうがないね

でもまったく理由もない純粋悪も好きなの♡(手の平返し)



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