個性『RTA』があまりに無慈悲すぎるヒーローアカデミア   作:ばばばばば

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変わらぬ善意の物語(2/3)

 

 

 

 

 

 夜の繁華街、そこを歩くのは4人の男達であった。

 

 切島と轟、そして緑谷、最後に飯田。

 

 そこは騒々しい潮騒、暗闇などないかのように眩い電飾が彼らを照らしている。

 

 

 

 

「なにか危険な行動をすれば連れ戻す。分かっているな」

 

 

 飯田の何度目かになるかも分からない言葉に、これも同じように切島は返す。

 

 

「要は隠密行動ってことだろ」

 

「少しでも戦闘を匂わせる行動をしたら俺は止めるぞ」

 

 

 

 場所も分からない人間を助け出すという手段としては矛盾する。

 

 しかし諫めた所で止まるわけがないことを知っていた飯田は、あえてそれを指摘せずに自身がストッパーとして立ち回ることを心で誓った。

 

 

「神野区……、この町のどこかに奴らが潜んでいるのか……。さァドコだ本条!」

 

「闇雲に探して見つかるわけねぇし、絞るか」

 

「……といっても2キロ圏内という広さではあるがそこに人が密集している。容易ではないぞ」

 

「俺、怪しい場所を探したけどよ、ここの港の倉庫がいっぱいあるところとかどうだ。廃倉庫とか敵がいそうじゃないか?」

 

 

 手元の端末で切島は地図アプリを起動して皆に見せる。

 

 

 港に面した北側にはブティックや観光施設が多く立ち並び、そこから距離を置くごとに中央の繁華街、そして南側の住宅街と分かれていた。

 

 

「いや、そのレンガ倉庫って場所、観光地だぞ。調べたら中に店も入ってるみてぇだ」

 

「うーん、じゃあ真ん中の繁華街……、店を拠点にしてるとか!」

 

「ありえん話ではないが、そんな目立つ所にか?」

 

「……見ず知らずの奴らが集まる人の出入りが激しい場所と考えたら、悪い線じゃないんじゃないか? ……まぁそんな店何件あるか分かんねぇが」

 

 

 神野区の中央に位置する繁華街にはコンクリートビルが乱立し、数えきれないほどの店が存在する。

 

 ここから見える位置にも路地にも面していないビルなど、何がその中に入っているか分からない。

 

 その中の全てを把握することは現実的ではなかった。

 

 

「じゃあ、港から遠い住宅街のどこかとか……?」

 

「それこそいくつあるって話だな、というより転移持ちの個性がいる時点で密室があればそこがもう拠点になっちまう」

 

「クッソ! じゃあ絞れねぇじゃねぇか」

 

「それはそうだろう。我々より優秀な人材が大人数で探しているんだ。俺達学生のままごとなど意味がない。先陣に立つプロから必要とされないのは当たり前だ」

 

「だけどよ……!」

 

 

 行き詰まり。

 

 来たはいいが自分たちに何が出来るわけではないという現状を、飯田は主張する。

 

 

「必要ない……?」

 

 

 しかし、言い合う彼らの中で会話に参加せず口元を押さえ、考え込んでいる男がいた。

 

 

「……いや、そうか、……なにも……、……だったら」

 

 

 ブツブツと自分の世界に没頭しだす緑谷を見て、飯田は訳も分からずともしまったと考え、轟が目を細めて口角をあげる。

 

 

「まだわかんねぇぞ」

 

「久々にみるな緑谷のブツブツ……! もしかしてなんか思いついたか!?」

 

「くそ、何か余計なことをいったのか?」

 

 

 途切れない緑谷の囁きは飛び飛びでありながら加速していく。そして完全に沈黙してから顔をあげた。

 

 

「思ったんだけどさ」

 

 

 そうして緑谷は組み立てたモノをゆっくりと話しだす。

 

 

「まず事実として僕たちは敵の拠点も、本条さんの位置も見つけることはできない」

 

 

 それは純然たる事実だが切島は納得しない。

 

 

「でもよぉ、そこをどうにかしないと始まんねぇだろ……?」

 

「うーん、でも飯田君が言ってた通り必要ないんじゃないのかな。そこはプロに任せよう」

 

 

 飯田は驚いた表情をしながら盛大にムセ込んだ。

 

 

「ゴホォッ! 緑谷君! 君がそれをいうのか!! だったら初めからこんな所に来るんじゃない!!」

 

「あっ、ご、ごめんね。そういうことじゃなくてさ、僕達が本条さんの居場所を見つけることはできない。なら発想を変えるんだ」

 

「……どうすんだ?」

 

「敵を見つけようとしている、あるいはもう見つけているだろうヒーロー達の動きから本条さんの居所を推測する」

 

 

 その言葉に皆が呆気にとられた。

 

 

「僕、ホント自慢じゃないんだけどヒーローにはちょっと、ほんのちょっとだけ詳しくて……」

 

 

 その皆の視線をどう勘違いしたのか、一人で顔を隠しながら“ごめん! 詳しいは言い過ぎた!この地域のヒーローはほぼ専門外だけど、がんばるから!!”と自分の顔の前でパタパタと手を振る緑谷。

 

 

「そもそも僕が思うに敵の居場所はもう割れてるんじゃないかって思うんだ」

 

「……根拠は?」

 

「僕の勘……。でもね、透視、虫の知らせ、指さし、サイコメトリー、鼻、尋ね人、失せ物探し、ダウジング、二分率……、実際にそういう個性持ちのヒーローが本気で探せば彼らの捜索を振り切ることは困難だ。しかもおおよその区画まで分かっている。この条件で彼らが本条さんを見つけるのに1日かかるとは思えない」

 

 緑谷は何やら自分のスマホを片手に懸命に何かを探している。

 

 

「……あった。ほらみて」

 

 

 差し出される画面をそのままに皆がのぞき込む。

 

 促されるままに見せられたのは手足が生えた巨大なシュウマイとしか言いようがない何かが弁当を頬張る姿が映っている。

 

 

「なにこれ……?」

 

「でかいシュウマイだ」

 

 

 注意深く見ればシュウマイの皮のヒダに目と口があることに気づけるだろう。

 

 

「誰これ……?」

 

「横浜のご当地ヒーロー、横浜中華街ヒーロー シウマイマン。シウマイを売るかたわら気踊拳(きようけん)という少林寺拳法の流れを汲んだ独自の拳法で敵を倒す武闘派ヒーローだよ」

 

「そうなのか。でこれが何なんだ?」

 

「企業がバックにいるヒーローは結構SNSでこまめに発信しているんだけど、シウマイマンは硬派な人で、シウマイ弁当の出来あがりだけを必ず三回、毎日朝5時、11時、16時にあげるんだ」

 

「朝の5時にシュウマイ弁当の出来を確認する奴いるか……?」

 

 

 すかさず別の画面を映して同じように見せた。

 

 

「ここのSNSでの呟き! “今日のシュウマイもよくできた! みんな! 是非手に取ってこの出来上がりを感じてくれ!”ここ!」

 

「うん、……どこ?」

 

「シュウマイだよ!? シウマイマンがシウマイをシュウマイと書き間違えるわけがない。絶対にこの書き込みは本人じゃない!」

 

「……そこ?」

 

「そしてみてよ。シウマイマンのライバルともいえる横浜中華ヒーロー“肉マン”もおかしい。この観光客があげてる肉マンとのツーショット写真」

 

「こんな近い位置でここまでキャラ被りするヒーローいる?」

 

「予定されていたはずの繁華街中華まん売り歩きコースのルートの場所じゃない。シウマイマンと違って、今日履いた靴下までいちいち呟く肉マンが告知もせずに売り場を変える……。妙だよ……」

 

「いうほど妙か……?」

 

 

 なにがどう彼にとって引っかかるのか分からないまま、彼は端末を片手に説明を放置して思考を纏めるため自身の世界に入ってしまう。

 

 

 今度は緑谷の言葉を聞き逃さぬよう、洪水のような言葉に三人は耳をそばだてた。

 

 

「もし神野区に本条さんがいるとして、まずそこのヒーローに協力を求めるか……、むしろ秘匿するために隠しておくか。シウマイマン、肉マン、その他の地域密着ヒーローのツイートを見るに前者。皆はなにをしてる……? 捜索……違う、彼らは捜索向きの個性じゃない……。なら戦闘……は違う。どのヒーローも強いけどトップレベルではない。おそらく今回の事件はトップヒーローたちが出てくる可能性が高い。彼ら地元ヒーローに求めるのはもっと別の理由、そう補助的なもの……、例えば誘導……とか。事件解決にヒーローを集めるとして普段居ないはずの彼らがそこにいればそれだけで目立ってしまう。なら地元に根差したヒーロー達を利用する。そうだ、そういう視点で考えると横浜のヒーロー近隣の予定されていたイベントの変更や中止が目立つ。不自然だ。意図的、偏りがある……、時間で言えば20時ごろ。ここの中央から南にかけてを避けている……ここか……? いや少し範囲が広いし矛盾する。無理がある……。……うん? あぁそうか、場所が複数だからか。じゃあ繁華街のこのあたりと、それから住宅街のここかな。繁華街は店が多いし絞りにくいけど……、住宅街、こっちは廃倉庫がある……。15年前から潰れてる……? 他になにか情報は……、“昔は肝試しで来れたけど2年前管理者が変わって塀が作られてから入れない”……? 怪しい。第一候補だ」

 

 

 ここまでの考察を終えて緑谷はふと我に返ると、自分が周りから見つめられていることに気づいた

 

「あっ……、ごめん、また一人の世界に入り込んじゃって……」

 

 

「……やっぱり、お前すげぇな」

 

「緑谷君、君という奴は……、褒めん、俺は誉めんぞ!」

 

「マジか?マジなのか緑谷!」

 

 

 今度は緑谷が呆気にとられる番だった。

 

 

「その……、多分ここの可能性が高いかなって場所があってさ」

 

「……聞いてた。その廃倉庫が怪しいのだろう?」

 

「今の話聞きゃ異論はねぇよ」

 

「流石ヒーロー博士! よくそんなマニアックなヒーローの情報を掴んでたな!」

 

「えっ? 博士? あぁ……、企業付きのヒーローはメディア露出が高いからこれは情報って情報じゃないよ。切島君、“この界隈そんなネットで載ってる程度の情報は情報じゃない”からね」

 

「あっ、ハイ」

 

 

 人は深淵を恐れる。

 

 切島はこれ以上踏み込めば、それは理解も共感もできないディープな世界だと本能で察知して会話を切り上げた。

 

 

 

 

「じゃあ、その廃倉庫に向かって……」

 

 

 

 切島が改めて場を仕切りなおそうとした時、

 

 

「お? 雄英じゃん」

 

 

 背後からかけられた声に一同の息が止まりかける。

 

 

「な、なんのことですか。人ちが……」

 

 

 しどろもどろになりながら緑谷が振り返ると、声を出した若者はこちらを見ていなかった。

 

 

 

〈では本日行われた、雄英高校謝罪会見の一部をご覧ください〉

 

 

 

 ビルにある巨大モニターに映された映像は、彼らにとってなじみ深い人たちが映っている。

 

 

〈この度、我々の不備から生徒達に被害が及んでしまったこと、ヒーロー育成の場でありながら敵意への防衛を怠り、社会に不安を与えたこと、謹んでお詫びを申し上げます。まことに申し訳ございませんでした〉

 

 

 メディア嫌いの担任が正装に身を包んで頭を下げている姿を見て、彼らは衝撃を受けた。

 

 

〈雄英高校では今年に入って4回、生徒が敵と接触していますが、今回生徒に被害が出る前に各御家庭にどのような説明をされていたのか、またどのような対策を行っていたのかお答えください〉

 

〈周辺地域の警備強化、校内の防犯システムの再検討、強い姿勢で生徒の安全を保証する……と説明しておりました〉

 

 

 記者達の質問は攻め立てるようなものばかりで、中には不信感を露わに質問をしてくる者達もいた。

 

 

「まるで悪者扱いだ……」

 

 

 悔しげな緑谷の呟きとは裏腹に、その場に通りがかった者達はそうは思っていない。

 

 

「は? 守れてないじゃん」

 

「何言ってんだこいつら」

 

「彼女が心配とか思わないわけ?」

 

「今度は生徒が攫われてんだぞ」

 

「無責任すぎないかしら……?」

 

 

 空気が淀んでいくのを彼らは肌で感じた。

 

 怒り、不信、嫌悪、呆れ、様々な負の感情が向けられていることに彼らは動揺する。 

 

 

 中でも極めつけは

 

 

〈彼女が悪に染まることはない、そうおっしゃられましたね〉

 

〈彼女は五年前、ある事件に巻き込まれたことについて雄英はご存じでしょうか?〉

 

〈ムーンフィッシュによる五年前の女児コマ切れ殺人事件、彼女はその被害者だそうですね〉

 

〈そんな過去を持つ人間がヒーローを目指す。その理由は明白でしょう〉

 

〈ヒーローとして既にたがが外れていると言ってもいいのでは? 〉

 

 

 ――おかしいではないか

 

 

 緑谷はそう思わずにはいられない。

 

 ここは謝罪の場で雄英には早期の解決が期待されているはずなのに、それと彼女の過去を晒すことにいったい何の関係があるというのだろうか。

 

 

 緑谷の隣から歯がきしむ音が聞こえる。

 

 

「彼女がヴィランに……? ふざけるなよ……」

 

 

 飯田が感情を押し殺しながら震えていた。 

 

 

「えっ! まじか!? そういやムーンフィッシュって雄英襲撃にいたんだろ。やべぇなそれ」

 

「しかも死にかけって、その子がやったの?」

 

「復讐ってドラマかよ」

 

「この本条って子さ、体育祭の時、炎上した奴じゃね?」

 

「あぁ、あの子? 酷い戦い方してた」

 

「おいおい、まじで寝返ったりしねぇよな」

 

「俺ははじめっからこいつぁヒーローじゃねぇって思ってたぜ」

 

 

 だがしかしその場は不思議なことに、甲高く騒めき、口々に彼女のことを言いあっている。

 

 彼女のことが心配だと言ったその舌の根が乾かないうちに今度は彼女のあること無いことを面白そうに話しているのだ。

 

 

 彼らは言いようもない足場のぐらつきを感じる。

 

 

 これはなんだ? 貴方たちは彼女が心配だから雄英に怒っていたのではないのか。

 

 そんな疑問と言いようのない吐き気を感じてしまう。

 

 

「おいお前ら、しっかりしろ」

 

 

 彼らに声をかけたのは轟。己の顔の火傷に触れながら、彼だけはまっすぐにスクリーンを見つめていた。

 

 

「めずらしかねぇこんなこと。自分に関係ない面白くて刺激的な情報、それぐらいの浅いことしか思ってない、そんな上っ面の感情に俺達が流される必要なんてないんだよ」

 

 

 その有無を言わさぬ一言に、皆がもう一度スクリーンを見ることが出来た。

 

 

 

〈彼女が本当に悪に染まらないと言い切れるのでしょうか?〉

 

 

〈はい、言い切れます。彼女はヒーローです〉

 

 

 

 今度は相澤先生は頭を下げず、ただ前を見てそう言い放った。

 

 

〈あの混乱した場でプロヒーローを救い出し、多くの敵を撃退し、仇を目の前にしても自制できた。情けなさを承知で言うなら彼女はあの場のプロヒーロー達の誰よりもヒーローでした〉

 

 

 先生は無表情でも、彼ら生徒にはその胸のうちの悔しさが分かった。

 

 

〈それは自分たちが学生より劣っていたと認めるようなものでは……? 自制と言いますが実際にヴィランとはいえ人が死にかけたのは事実ですよね〉

 

〈それは違います。たしかに彼女の頭に復讐という言葉がよぎったかは本人の中でしか分り得ません。百歩譲って彼女が復讐のためにヒーローを目指していたとしましょう〉

 

〈ならば……〉

 

 

 すぐに追い討ちをかけようとする記者を先生は強い目線で止めた。

 

 

〈だが彼女はそうしなかった。自分の気持ちを抑えそれを選んだ。偶然ではありません。悩み苦しみぬいた上で彼女はそれを選んだ。彼女は既に誘惑に耐える心を持っている〉

 

〈……でっ、ですが〉

 

〈彼女はきっと素晴らしいヒーローになる。そんな彼女を取り戻すため、私達は最善を尽くします〉

 

 

 質問は続く。それを見た者達が面白がって勝手な事を言い出す。

 

 

 だが彼らに、もはや動揺はない。

 

 

「いこう」

 

 

 誰が言わずとも知れず、そう口にした。

 

 自分たちがなぜここにいるのか思い出したからだ。

 

 

 彼らはスクリーンに映る相澤先生を背に足を踏み出そうとして

 

 

 

 

 瞬間、まさに先生を映した背後のモニターから轟音が響き渡る。

 

 

 

 

「アーハッハッハァ!! あほくさァッ!!」

 

 

 

 

 ビルの大型スクリーンに片手を突き刺し、高笑いをあげるその姿は彼らが捜していた彼女に似ていて

 

 

「やっちゃうよ? やっちゃうよォ!? アッハハハッ!!」

 

 

 それが意味するのは、先生の全てを踏みにじる最悪だった。

 

 

 哄笑をあげる少女は粉砕されたモニターの壁面に掴まっているかと思えば、次の瞬間には地面に破砕音を響かせて激突していた。

 

 轟音と粉塵、周りにいる民衆はいまだに固まったまま、一方でその衆目を集めている彼女は路肩に駐車された車を次々と空へ投げ飛ばす。

 

 

「ホラ ホラ! ホラァ! ホラァッ!!!!」

 

 

 呆ける市民たちは、道路のど真ん中に落ち、爆音と炎を撒き散らす残骸を見て、ようやく事態を呑み込んだ。

 

 

 

「キャーーーーー!!!!」

 

「ヴィランだ!! ヴィランだ!」

 

「逃げろ! みんな逃げろ!!」

 

「誰かヒーローを呼べ!!」

 

 

 つんざく悲鳴。人があふれた繁華街は、一瞬でパニックに陥る。

 

 

「アハハハハハハハ! はい! まず上を見てくださ~い」

 

 

 中空にはまだ小さな影が3つ。だがそれは急速に拡大し、人々に襲い掛かる。

 

 

 人が乗ったままの車が1台、今まさに人を押しつぶさんとしている車が2台。

 

 

 逃げ回る彼らに降り注ぐ鉄塊。

 

 

 潰され、燃やされ、死ぬ。いかに危機感を持たない生物だろうと、そんな単純な先の絶望が容易に理解させられた。

 

 

「本条さん!!」

 

 

 だが今回に限って言えばそうはならなかった。

 

 

 脅威に対して誰よりも先んじて動く4つの姿。

 

 

 空にある車を蹴り飛ばして落下位置を変えて被害を抑える。

 

 落ちてくる車を何重にも張った薄氷で受け止め勢いを殺す。

 

 落下先にいる人達を抱えて瞬時に安全圏へと届けてみせる。

 

 砕け吹き荒ぶ鉄片を真正面で受け止めて背後の人達を守る。

 

 

 無意識に近い彼らの行動によりその全てを守り切る。

 

 

「みんな、やりますねぇ!!!」

 

 

 そんな様子をケタケタと笑いながら彼女は彼らを見る。

 

 その顔には後悔や反省と言った色は微塵も感じられない。

 

 

 

「君は……、君は本当に本条君なのか……? なにをして……」

 

「あ~~! いけないんだよ飯田くん! 夜遅くにこんな所に出歩くなんて……! 先生に連絡させてもらうね!」

 

 

 まるで場にそぐわない調子はずれの声、そして違和感のある言葉遣いを用いて、彼女は話しかけてきた。

 

 

「お、おい本条、オマエなんかおかしいぞ。早くこっちにこい!!」

 

 

 その言葉を聞いているのかそうでないのか、彼女は逃げ遅れた人に向かって道に置いてある金属製のゴミ箱を蹴り飛ばす。

 

 

「ウッ、ウワァァァァ!!」

 

「ッ!!」

 

 

 ゴミ箱と逃げ遅れた人の間に轟が作った氷の壁が立ちふさがる。

 

 高速で飛来する金属塊を氷の壁は半ばほどめり込ませながらも受け止めた。

 

 

「逃げてください! 安全な所へ早く!!」

 

「ハ! ハヒッ! うわぁぁっぁぁ!!」

 

「皆さんも! 見てないで逃げてください! 早く!!」

 

 

 腰を抜かしながらも手をばたつかせて逃げていく彼を見て、遠巻きに見ていた者達の殆ども建物へ隠れた。

 

 

「本条君、じ、自分が一体何をしているのか分かっているのか!!」

 

「クキキキキ……、さっきの私の悪口言ってた奴の悲鳴聞いた? 笑っちゃうんだよね」

 

「何言ってんだお前……」

 

「うわぁぁっぁぁ!! だってさ!! アーハッハッハ!! 私の心の傷がどんどん癒されていきますよォ~~ッ!」

 

 

 この状況で腹を抱えながら笑いだす彼女に皆が現状を呑み込めずにいた。

 

 信じられないものを見るように、皆が彼女にかける次の言葉を探そうと目を彷徨わせる中

 

 

「……どうやら正気じゃねぇみたいだ。敵に何かされたのかもしれねぇ。これ以上被害は絶対にだせない」

 

 

 轟は冷静に現状を分析して本条を睨みつける。

 

 

「俺達が今ここで倒して連れ戻す。飯田もいいな……?」

 

 

 その冷徹なまでの一言が彼らを動かした。

 

 

「クッ! 本条君、何でこんなことに……!」

 

「疑問は尽きないけど、僕たちはやらなきゃいけない。本条さんにこれ以上こんなことをさせちゃだめだ」

 

「いまの本条は見てらんねぇぜ。早く正気に戻してやるぞ!!」

 

 

 全員から睨まれた本条は、面白そうなものを見る目をしながら無警戒に手を広げた。

 

 

「そんなにこっちをチラチラみてさぁ、早くして。何突っ立てんの? いいよ 来てよ」

 

 

 

 その言葉が言い終わる前に4人は駆けだした。

 

 

 

 

 




えぇ……(困惑)


なんだこれは……、たまげたなぁ……
申し訳ないがノンケとのリアル日常会話で語録を使用しちゃうホモガキはNG

 
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