個性『RTA』があまりに無慈悲すぎるヒーローアカデミア   作:ばばばばば

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12話(2/3)

 

 

「良い判断だよ 死柄木弔」

 

 

 

 うらぶれたバーの一角、この狭い空間で見逃すはずもないというのに、そこに現れた何かが、一番奥のカウンターチェアに座っている。

 

 

「えっ……?」

 

 

 それが現れただけで、全ての未来は死んだ

 

 

 こんなことは今までありえない、これに介入してくるものなどサーぐらいしかいないはずだ。

 

 

 私は再度、回らぬ頭でこの場から逃亡できるだけの未来を走査する。

 

 だがそんなものは無かった。

 

 全てが行き止まり

 

 人質を取ろうが、襲い掛かろうが、逃げに徹しようが、無意味

 

 

 いつの間にか、私の視界が暗くなっていることに気づく、それが先の未来が見えないことではなく、酸欠によるものだと気づいたとき、いつの間にか私は膝をついていた。

 

 

 

「は。………は」

 

 

 呼吸を整えようとするも息がうまく出来ない

 

 見たくない、絶対に見たくない、体が全身全霊で叫んでいるというのに、その空間にいるそれは膨大な質量を持つように、その場にいるヴィランを含めて全員の目線を釘付けにした。

 

 

「弔、僕はうれしいよ、使える者はなんだって使うべきだ。そう。この僕だって君の駒の一つさ」

 

「……先生、頼みがある。多少強引な手を使ってもいい、コイツをこっちに引き込みたい」

 

「うん、この子かい? ドクターから話には聞いていたよ」

 

 

『これマジ?(絶望)

 

 ……来てしまいましたねヴィラン勧誘イベント、信楽焼と合わせて稀に個性を拒むことを知らない種ツボ野郎が現れる場合があります

 

 良いか悪いかで言えば最悪、AFO関連のイベントは唐突かつ理不尽でロクなことが無いです』

 

 

 その男には顔が無い、その全てが傷に覆われ人にあるべきパーツが見当たらない

 

 口に当たる部分はチューブでつながれた不気味な機械が覆い、低い駆動音を響かせている。

 

 

『最上位個性がリセマラで出た走りで、子供時代にこちらの個性を奪いにきてリセットしなければならなくなった恨み、もう許さねぇからなぁ~……(怨嗟)』

 

 

「弔、君の勧誘を見ていたよ、なかなかにうまいじゃないか、相手の心の隙間をついての篭絡、自分という人間に入れ込ませるのは良いね、本当の仲間を作るならその方法が一番大事だ。だが残念、今は時間が無い」

 

「あぁ、だから先生の力が借りたい、先生なら洗脳の個性だって持ってるだろ?」

 

 

AFO(オールフォーワン)今現在における敵連合の実質的な黒幕、かつて裏から日本を支配していた悪の帝王らしいです

 

 絵にかいたド腐れ外道、悪に悲しき過去などフヨウラ!を地で行く純粋悪系ボスです

 

 個性は「オール・フォー・ワン」他者の個性を奪い自身の個性にしてしまえる能力です

 

 しかも個性を同時に相乗させて扱うことも可。さらに持ってる個性を他者に付与することもできるチート個性です

 

 自分で「“魔王”に!!! 俺はなるっ!!!!(ドン!!)」とかいってた重度の中二病患者ですが、この日本で魔王を自称しても許される奴は織田っちぐらいです

 

 なのにそんな面白イタイことを言い出すなんて……、AFOくん...見損なったぞ』

 

 

「個性……、そうだねもちろん幾つかあるよ、体を奪うなり、意志を奪うなり、だけど僕としてはあまりお勧めはできない、結局そんなものは一時的なもの、使うにしても確実じゃないんだ」

 

 

 まるで授業を言い聞かせるように、つらつらと言葉を話していくその教師然とした姿は、私が受ける圧倒的恐怖の印象と齟齬を起こし、脳がうまく働かない。

 

 

「実際にやってみせよう。それを見て君なりに解釈してみなさい」

 

 

 パチンと指を鳴らす。

 

 

「弔と彼女を許可する」

 

 

 如何なる個性なのか、私と死柄木、椅子に座るそれだけが、距離を無視して一か所に移動し、まるで薄いヴェールのような幕につつまれた。

 

 私が首を固めていたコンプレスはまるで押し出されるようにその内側から弾かれる。

 

 コンプレスはそのまま吹き飛ばされ、その後フラフラと立ち上がり、恨みがましそうな身振り手振りをこちらに見せるが、その音はここに届かない

 

 

「これは……?」

 

「周りには申し訳ないけど、これは君と私だけの個人授業だからね、音と光を漏らさないようにした」

 

「……わかった。続けてくれ先生」

 

「よろしい、じゃあ始めようか、いいかい? 僕が思うに勧誘で大切なことは相手のことをよく知ることだよ」

 

 

 そういうとあれが顔を向けてくる。

 

 

「は……、ヒッ……」

 

 

 目などない、だが分かってしまう、いま目の前のこれは私に視線を向けている。

 

 それだけのことで私の心臓は痛いほどの拍動を繰り返す。

 

 

「でも先生……」

 

「おっと弔、自分だって相手のことは調べたといいたげな顔だね、情報は情報さ、本当に必要なことは、相手を直接見なければ……、まぁそこは数をこなすことだね、例えば僕が彼女を見て思ったことだがね……」

 

 

 観察するような視線が私に向けられている。

 

 恐怖で胃が裏返る。今すぐに目の前の床に全てをぶちまけたいというのに指先一つ動かせない。

 

 

「うーん、なんというか凡人だね、彼女はヒーローでもヴィランでもない、僕は正直仲間としてはピンとこないかな」

 

 

 それは私を見てつまらなそうに呟いた。

 

 

「……そうなのか?」

 

「そうさ、彼女は大した善にもならなければ悪にもならないね、いくら強い個性をもっても中身が伴わなければ意味がない」

 

「だとしても強個性だ、俺は二度もこいつにやり込められたんだ、先生にそう言われちゃ俺の立場が無い」

 

「そこなんだけどね、ちょっと質問いいかい?」

 

 

 顔をこちらに向けているが私は瞬きすらできずに固まったまま、だがそんなことは一切無視してこちらに問いかけてくる。

 

 

「僕が欲しかったサーチの個性……、君にはラグドールと言えば分かりやすいかな、彼女のことなんだけどさ、君、どうやって彼女を守ったんだい?」

 

「守るって、そりゃアイツが最悪のタイミングで来たんだ」

 

「それなんだよね、話がうまく行きすぎかなって、作戦の結果は聞いたけど余りに偶然が重なりすぎてる」

 

 

 今気づいてしまった。

 

 これは私を見ていると思ったがそれは間違いだ。

 

 あれが私に向ける感情は人にむけるものではない、ただの教材、食材を前にして調理の手順を説明しているような無機質な視線なのだ

 

 こちらの話を聞こうとしているようでこちらの返答を聞いていない、あれにとってそんなものは必要ないからだ

 

 分かってしまう、こいつは私の反応、その全てをつぶさに観察しているのだと、良すぎる五感が警鐘を鳴らし続けてくる。

 

 

「思えば雄英襲撃の時もそうだった。それで、あぁそういえばアイツのサイドキックに似たような感じがする奴がいたなって」

 

「ヒュ……」

 

 

 息が止まる。

 

 まともな呼吸を忘れる。

 

 言葉に対して一つ一つの反応を繕おうとすればするほど、端からボロボロと崩れてゆくのが分かった。

 

 

 

「それで君はもしかして何らかの個性で僕たちの先回りをしているんじゃないかと思ったんだ。しかし、そう考えれば一つ疑問が出てくる。だって君の個性は成長だ。面白い、いや、まるで個性が二つあるみたいだね」

 

 

 自分が自分じゃない、体が分解されて、無意識でやっていたはずの行動がてんでバラバラに動き出す。

 

 息を吸ってるのか吐いてるのか分からずに、引きつけを起こしたように肺は役に立たない、自分の心臓がドクドクと脈打つ振動が喉奥まで響いてくる。

 

 

「……面白いと言えば、君の経歴もそうだ。友の死を機にヴィランへの復讐心に目覚め、同時にそのトラウマから他者との距離を置く悲劇のヒーロー……、筋書きだけ見たらそんな感じだ」

 

 

 聞きたくないのに言葉達が無防備な私に突き刺さる。

 

 

「でも僕はここにも違和感があってね、君は凡人だろ? どちらかと言えば流されて自分の暮らしに戻るような大多数の人間じゃないかな」

 

「う……ぁ……」

 

「うん、やっぱり君は流される人間だ。なんというか芯が無い」

 

「うぅ……」

 

 

 初めて目の前のものが笑った気がした。

 

 

「あぁ、僕は君と似たような人間はごまんと見てきた。もちろんヒーローにもヴィランにも君みたいなやつはいる。でもね、そういう奴は度胸がない小悪党か大した覚悟もないヒーローだったよ、どっちにだってコロコロと転がる石コロさ」

 

 

 目の前のそれはそこで言葉を区切ってみせる。

 

 

「ひとつ、ここは君に似た雰囲気の奴の話をしよう、弔もよく聞くといい、僕が仲間にした奴の一人の話でもあるからね」

 

 

 男は椅子に座りなおし、昔を懐かしむように少し上を向いて語りだす。

 

 

「そいつはね、君みたいな凡人のくせに人を何人も殺した奴だった。驚くなよ、ムーンフィッシュなんて目じゃないくらい殺した。傍から見ればまさに大悪党さ」

 

 

 その語りは軽やかで、聞きたくないというのに耳に残るような、吐き気を催すほど心地よい声色だった。

 

 

「でもね眺めてみるとそうでもない、なんというか平凡な奴でね、普通に所帯を持って、真っ当な勤め人をしているような奴、僕はそんなチグハグなソイツにちょっと興味を持って会ってみたんだ」

 

 

 話をしながら、相手はこちらへの注目をやめてくれない、言葉の一つ一つの反応を無機質に観察してくる。

 

 

「その男の個性は蜂使い、人の体を巣として生きる寄生蜂を他者に植えつけて宿主を操ることができる面白い個性持ちだったよ」

 

「……そりゃすげぇ個性だな」

 

「いや、そうでもないんだ。そいつはね、自分の中にいる個性の女王バチが宿主である本人すら操り始めているせいで、他者を害するようになってしまっただけの操り人形だったのさ」

 

 

 操り人形という言葉を聞いて、私の体は人に分からない程の揺らぎを出してしまう。

 

 見せるべきではない、そう思っていてもすべてが無駄だった。

 

 

「そいつは僕のことを知ると懇願してきたよ、自分の個性を消してくれって、でも僕だってそんな怖ろしい個性は扱いきれない、けれどもね、かわいそうだから代わりにエサの用意を手伝ってあげたんだ」

 

 

 私の反応をみて楽しんでいる。

 

 話の口調がしだいに弾んでいくのが分かった。

 

 

「僕なりの精いっぱいの気遣いだったんだが、そいつは途中で自殺しようとしてしまってね、僕は後悔した。だから自分の危険を忘れて、個性の移動を行った。今は珍しいけど、昔の話だからね、ちょうど彼の奥さんは無個性だったんだ。おかげで拒否反応は少なかったよ」

 

 

 冒涜的な内容以上に目の前のこれが恐ろしい。

 

 

「僕の頑張りで彼は救われた。彼も感謝してくれて僕の言うことは何でも聞くようになった。いや、ホントに奥さん思いの良い奴だったね、それからはエサを用意するのも自分から積極的に手伝うようになってくれたよ」

 

 

 抵抗と言う心の機能が削がれていく。

 

 

「まぁ、不幸なことに奥さんが早逝してしまってね、彼も後を追うようにって奴さ、残ったのは忘れ形見の個性だけさ」

 

 

 目の前の真なる邪悪にただ震えることしかできない。

 

 

「どうだい? 面白い話だろう」

 

「あっ……、うッ……」

 

「ところで君の個性なんだけどさ、……似てるよね?」

 

 

 言葉のみで心の余裕を全て剥ぎ取られた私は、次の言葉に対してなんの抵抗もできずに受けるしかない。

 

 

「ひょっとして、君の個性って意志に干渉するタイプじゃないのかな?」

 

「あっ……、あぁ……!」

 

 

 目の前の怪物は、あれほど誰かに気づいて欲しくて、しかし誰にも洩らせなかった秘密をいとも容易く暴き出した。

 

 

『勧誘が始まりましたがそこの心配はしていません、あとはこのAFO(アフォ)が余計なことをしないのを祈るばかりですが……』

 

 

 

「話の流れで分かってると思うけど僕の個性は個性を奪う個性でね、どうだい? 助けてあげようか?」

 

「あ? う……?」

 

 

 それがあれば、私は救われる。

 

 きっと救われる。

 

 

「わたっ、わたしっ……!」

 

 

 勝手に口が動こうとしてる。 心が既に諦めている。

 

 

「クッ、くくく」

 

 

 私が口をパクパクと開け閉めしていると、目の前のそれは突然笑い出した。

 

 

「冗談さ、仮にもヒーローだからね、まさかそんな選択を取るわけないか、なぁ君、そうだろ?」

 

「えっ、あっ、うぅぅ……?」

 

 

 そんな当たり前のことを諭され、私はただ呻くことしかできない。

 

 

『誘拐された場合AFOが出張ると個性に虐待を受ける場合があります

 

 個性を奪われるということはめったにないですがあればリセ

 

 そうでなくてもランダムで個性を付与される場合(ほぼマイナス個性)ですが、個性に相反した陰湿な個性の植え付けを行う♂場合もあるのでこれも酷ければリセ

 

 あのさぁ……、こんな糞イベ(ぶっといの)入れちゃってさ、恥ずかしくないのかよ?』

 

 

「先生、遊ばないでくれ、時間が無いって言っただろ、もう一押しすれば……」

 

「あぁ弔、勘違いしないで、僕は悪い奴だけど嘘はつかないからね、出来ない約束はしないんだ」

 

「それを言うなら俺の頼みはどうなるんだ」

 

「やっぱり危険があるからね、個性を奪うのは良く観察してから手を出すようにしているんだ。それにこの交渉方法は僕の個性あってのもの、今の弔にできない方法だ。いずれとは思うけど、それでは教えとしての意味が薄い」

 

「じゃあどうするんだよ先生」

 

「では弔、まずは手っ取り早い方を見せてやろう」

 

 

 それはとうとう椅子から立ち上がり私に近付く。

 

 

 

「君の一番大切な物はズバリ、自分の周りの親しい人間、家族だろ? あぁ、本当にありふれたものだ」

 

 

 肩をびくりと震わせる。

 

 

「君とその家族のことはドクターが熱心に語っていたよ。君の個性である“成長”は“強化”と“生育”の間に発生した突然変異だったかな」

 

 

 目の前の深淵から大事な人達について話されている。それがどのような意味を持つか、それだけで私は今までの矜持なんてものをかなぐり捨てていた。

 

 

「お父さんとお母さんだけは止めて!!!」

 

「やめる? 何をだい?」

 

「手……! 手を出すのだけは……! なんでも! なんでもします! 私はどうなってもいいです!!」

 

 

 必死に頭を地面に擦り付ける。

 

 もはやこの怪物に抵抗しようなどとは微塵も思ってなかった。

 

 

「なぁ弔、凡人はこんなもんさ、特に自分を軽く見る奴なんて一番御しやすい、大切な物を奪われる恐怖をすこしチラつかせれば簡単に支配できる」

 

「お願いです! 家族だけは手を出さないでください!」

 

「あぁ、いいよ、僕はこれから君の家族に危害を加えない」

 

 

 ニタニタと笑うこれが口約束なんて守るか分からない

 

 ただ、それに縋るしか私にはできなかった。

 

 家族からこれを遠ざけたい、その一心で今持てる自分の勇気を振り絞る。

 

 

「て、訂正、あ、あなた以外、の誰であってでも、手を出す、のは……、止めてください」

 

 

 口がカラカラに乾く、何かを要求するという行為をした瞬間、これがどのような反応をするのか、今殺されるかもしれなくても言わずにはいられなかった。

 

 

「ハハハッ! いいね、そういうのは大事だ。後で僕以外がやりましたなんて、僕ならやりそうだ。いいよ、この瞬間から、誰であろうと君の家族には決して害を与えさせない、君にだって危害は加えない、……これでいいかな」

 

 

 何が面白いのか大笑いするそれに私はただ震えながら怯えた。 

 

 

「おい、なんだいその目は、まさか僕が約束を破ると思ってるのかい? 自慢じゃないが僕は約束だけは守るよ、無法者だからこそ約束は守るものさ、もし破ったら僕だって君になんでもしてあげるよ」

 

 

 その言質を聞いて、私の体から力が抜ける。

 

 

「まぁ、こういう風に相手を支配するなら恐怖が一番手っ取り早いわけだね、でも注意しなさい弔、いまやって見せた恐怖による支配、これは二流だ」

 

 

 呆けた私を無視してそれは隣の死柄木に諭すように話す。

 

 

「つまり彼女が僕に従うのは大事なものが奪われる恐怖だけど、これは言い換えれば、その大事なもの次第では容易に崩れる」

 

 

 それはようやくこちらに顔を向け、ニタリと笑った。

 

 

「一流の支配はね、なにか、じゃなくて、僕に対して恐怖させることだよ」

 

 

 私はこの恐怖はまだ入り口にすぎないという予感を感じた。

 

 

「君は僕になんでもすると言ったよね」

 

 

 まともに相手を見られない、これは先程から約束は守ると断言していた。

 

 それはつまり“こちらがした約束”を破ることは決して許さないということだ。

 

 これから自分に下される沙汰にただ身を縮こませることしかできない。

 

 

 

「でもね、僕はそんなことしなくてもいいと思うんだ」

 

 

 

 だというのにかけられた声はあまりにも想像と反していた。

 

 

「そういうのは自分の意志が大切だからね、君がしたくないと思うなら、どんな指示だってそれはしなくていいよ」

 

「ハっ……?」

 

 

 頭が追いつかない、こちらに何の要求もしない? そんなうまい話があるのだろうか……?

 

 

「ふふ、さっきは凡人やらつまらないやら言って失礼したね、ちょっと揺さぶっただけで、僕は君の能力は評価してるんだ」

 

「はっ、……は、……、い」

 

 

 親し気に私に話しかけてくる。

 

 私はかろうじて喉に張り付いた舌を引きはがし、言葉に答えた。

 

 

「だからプレゼント代わりに君に個性をあげよう……」

 

 

『ヴォェ! これは個性を中に入れる専門家による悶絶調教パターン! おじさんやめちくり~!

 

 ロクでもねぇ個性ばっかじゃねぇかお前ん家

 

 (タイムが)痛いんだよおおおおおおおおおおおお!!!!も゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!(マジギレ)』

 

 

「おいおい、そんなに警戒しないでくれよ、君に不利益はない、聞いて驚くなよ? “超再生”……、アッパーミドルの脳無についてる。有能な個性さ」

 

 

『超回復!?

 

 ああ^~ これが、クソイベなの~? なんか犯されてるよぉ~…?

 

 有能個性が……、太すぎるッピ!(手の平返し)』

 

 

 そう言うが早いが、それは私の頭を優しく掴む

 

 全身の筋肉が制止する。

 

 次いで今度は逆に心臓が爆発したかのように早鐘を打ち、火に焙られた時ほどに体が熱を持ち始めた。

 

 

「おっ、やるね、やっぱり君はドクターの言う通りベースがいい、もう数個なら余裕がありそうだ」

 

 

『超回復とか今の個性と相性が良くてウァァ!!オレモイッチャウゥゥゥ!!!ウウウゥゥゥゥゥゥゥゥウウウ!イィィイィィィィイイイ!!(狂乱)』

 

 

 個性がもう一つ内にあるという強烈な異物感、しかし成長の個性は貪欲に内側にあるものを吸収しているのがわかった。

 

 

「うんうん、やはり君は優秀だ。いや雄英襲撃はすごかったよ、ドクターの作った脳無はみんな壊されたからね」

 

 

『成長と超回復のさぁ……、個性ができたらどうする? え? スーパーヒーローの誕生か?』

 

 

 そこからようやく頭から手が引きはがされる。

 

 ゆっくりと治るはずの手足の傷は巻き戻しのように体の内側へと収まっていた。

 

 

 

「あの肉団子みたいな脳無、あれはドクター的には自信があったらしいんだけど、君の手ですぐ壊されたらしいじゃないか」

 

「いっ、いえ……、はい……」

 

 

 一体何を考えているのか分からない

 

 場違いな明るさと軽さでつらつらと話される話題は頭に入ってこない

 

 

「あれね、君の個性に刺激を受けたドクターが君の個性の成長を真似ようとしてできた奴なんだけど、ふふ、まさかオリジナルの君とあたるとはね」

 

 

 関係ない話題を話し続けるそれに、私は何とか息を整えようと努める。

 

 

 

 

 

 

 

「君のお父さんとお母さんを合わせて作った疑似的な成長の個性を持つ脳無、お見事、子が親を超える。ある意味生物の本懐を成したわけだ」

 

 

『この勝負勝ったな(確信)』

 

 

 

 

 

 

 

 あぇ?

 

 

 

 

 

 

 

 

「おや、そう考えればあの“失敗作”は君と言うオリジナルのコピーでありながら君のオリジンであるわけか、フフフこれは面白い、君はどう思う?」

 

 

「うーー」

 

 

「うん? なんだい?」

 

 

「うーー、うーー、うーー、うーー、うーー、うーー、うーー、うーー、うーー、うーー、うーー、うーー、うーー、うーー、うーー、うーー、うーー、うーー、うーー、うーー、うーー、うーー、うーー、うーー、うーー、うーー、うーー、うーー、うーー、うーー、うーー」

 

 

「はぁ……、地面に丸まってなんだい、困った子だね」

 

「うーー、うーー、うーー」

 

「……先生、俺は仲間に引き込んでくれって言ったんだ。だれも壊せなんて言ってない」

 

「うーー、うーー、うーー」

 

「弔、なんどもいうが彼女は凡人なんだ。まぁ見てみなよ」

 

「うーー、うーー、うーー」

 

 

 

「そのうーうー言うのをやめなさい」

 

「うーー、うーー、うーー」

 

 

「それ、狂ったふりだろう?」

 

「うーー、うーー、うー」

 

 

「君はね、狂えるほど強くも弱くもない、だから凡人なんだよ」

 

「うーー、うー」

 

 

「言ってあげないと分からないかな?」

 

「うーー」

 

 

「君は凡人だから一生狂って死にそうと思いながら、一生苦しんで生きるよ」

 

 

 

「うー、うっ……う゛っ……、う゛あ゛あ゛あ゛あああああぁぁぁぁ゛ぁぁ゛ぁぁぁ!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『さて超回復により、おざなりにしていた耐久も問題なくなりましたのでステ振りは速さ全振りで駆け抜けましょう』

 

 

 ぱちんともういちどゆびがなる

 

 

「ようやく終わりかしらん?」

 

「まぁ、大方は終わったよ」

 

「やった~!桃子ちゃん! 仲間になってくれたんですね……、キャ!」

 

 

『フフフッ……、だからこのゲームのバトルで今後この私に精神的動揺による操作(コントロール)ミスは決してない!と思っていただこうッ!』

 

 

 ないふをうばってつきとばす

 

 

「おい、勧誘できたからバリアみたいなのを解いたんじゃないのかよ!」

 

「何回同じことを繰り返すんだよ、だから殺せって……」

 

 

『ごめんなAFO、初めは君のこと「この汚らわしいアフォがァーーーッ!!」とか思ってて……

 

 お前バリええ奴やん!!』

 

 

 くるりとてをかえす

 

 てがふるえる

 

 こわい、こわいけど、もっとこわい

 

 

 ぞりぞりとくびをなぞる

 

 

「なっ、なんだコイツ!? 何してやがる」

 

 

『さて意図せぬ強化イベでしたがこれで盤石です

 

 勧誘……? 俺はヴィランなんかに興味ねーんだよ!二度と来るんじゃねぇよ!(KRT君)』

 

 

 ぞりぞりぞり

 

 なんどもなぞる

 

 でも切れない

 

 

「も、桃子ちゃん……? ハァ、ハァ、ハァ、血が、すごっ、すごい、すごいです、こんなにいっぱい……!」

 

 

『あとは勧誘を断って、プロヒーロー扮するピザーラ神野店の突撃を待ちましょう』

 

 

 

 はやくしね、しね、しね、しね

 

 

 でもだめで

 

 なんどやってもくるしいだけで

 

 むねをさしてもとまらなくて

 

 めからあたまをかいてもだんだんもとにどって

 

 

 やっぱりだめだとわかったとき

 

 

 

「気は済んだかい? 」

 

 

 びくりとふるえる

 

 

「申し訳ないが約束だからね、君の命は守らせてもらうよ、例えヒーロー共の方にいくとしても、危険が無いように言伝をしておこう、彼らがきっと君を守ってくれるだろう、世間に言わせると彼らは優しいらしいからね」

 

 

 こわい

 

 

「安心していい、君の命は絶対守るさ、……そういう約束だろ?」

 

 

 はやくここからきえたい

 

 

『えー、トラウマキャラが誘拐されてしまうと敵に寝返る場合がありますが安心してください、すでに対策はしてあります』

 

 

 

「こ、こ、こ、ここ、ころしてください……!」

 

「困った、そうなると約束をやぶってしまうんだが……」

 

「なな、なんでも……、なんでもしますから。 こ、ここ、ころしてください、おっおねっ!」

 

 

 はやくきえたい

 

 

「君からそこまで言うなら仕方がないね」

 

「あぁ……、あぁ!!」

 

 

 なみだがあふれる

 

 

「いいよ、今まで辛かったね、後はシガラキの命令通りに、やればいい、そしたら終わらせてあげよう」

 

「あり、ありとっ、ありがと、ご、ござぃます」

 

 

 

『この先の橋(展開)は、クラス内かヒーローに好感度5以上のキャラを持っていないと、堕っこちてしまいます』

 

 

 

「うれしいかい?」

 

「はい! ありっ……! とぅございっ、ます! ありっ、がっ、とうございます! 」

 

「そうかい、そんなにうれしいなら笑うといい」

 

「はっはは」

 

「うん? 声が小さいけど あまり元気がないのかな、そういえば目を覚ましたばかりだしね、黒霧、彼女に飲み物でも出してあげなさい」

 

 

「アヒッ アヒュ! アヒャハハハッハハハハハハ!!」

 

「ドクターもこれでいいかい?」

 

〈ありがとうございます。ふふふ、死柄木、自分からくるのだ文句はあるまい〉

 

「……」

 

「それなんだが、どうだい死柄木、こうなってしまったが、君が望めば適当に洗脳して渡すこともできるが」

 

「いや……」

 

「そうかい、それでは彼女にはこれから頑張ってもらおうか」

 

 

『だから、心操の好感度を上げる必要があったんですね』

 

 

 

「おめでとう、今日から君もヴィランだ」

 

 

 

『ファッ!? ンアッーーーーーーーーー!!!!』

 

 

 

 

 





メ ガ ト ン コ イ ン(悪堕ち)

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