個性『RTA』があまりに無慈悲すぎるヒーローアカデミア   作:ばばばばば

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12話(3/3)

 

 

 

 

 

 

 

 私は町にいた。

 

 

『戻した後も確認したし、今だって、心操の好感度あるじゃーーーん!』

 

 

 もう何も見えない

 

 

『このクソゲー! フラグまでイカレてるんじゃないだろうな! まさか……(チャート確認)ここかぁぁぁぁぁぁぁ!クラス又はヒーローの好感度なのかぁぁぁぁぁ!』

 

 

 意志が砕け、今の私の先を見ると、そこには暗黒が広がっていた。

 

 もう先は見えない

 

 だが、もう先はいらない

 

 

『心操は好感度5だけどクラスメイトにはいってねぇぇぇぇ!!!!

 

 あああああああああああああああああ!!!!!!チャートの誤読ゥゥゥゥゥゥ!!!

 

 誰だこんな分かりにくい記載をした馬鹿野郎はぁぁぁぁぁ!!!

 

 ふーーざーーけーーるーーなーーーーーーー、私だああああああああああ!

 

 詰んじゃう! 詰んじゃううううううううううううう』

 

 

〈彼女はきっと素晴らしいヒーローになる。そんな彼女を取り戻すため、私達は最善を尽くします〉

 

 ビルのモニターを砕く

 

 

『フゥ↑ー! スッキリしたぜ

 

 おれはTASやガチ勢に比べるとちと荒っぽい性格でな、激高してトチ狂いそうになると胃薬を飲んで気を静めることにしているのだ(RTAだから飲めない)

 

 たかだか悪堕ち程度! リカバリ策は既に完成したぜッ!

 

 ロスは5分以内ッ! 気にしないきにしない(心停止寸前)』

 

 

 皆が来た。

 

 

「いまの本条は見てらんねぇぜ、早く正気に戻してやるぞ!!」

 

 

『ここで助けに来てくれる雄英メンバーは固定で緑谷、轟、切島、飯田です

 

 八百万は発信機イベを発生させなければ来ません

 

 後は好感度を持ったキャラがいれば来てくれますが、参加者は誰一人来ませんでした……、 誰一人来ることなかったです。

 

 いや、別に好都合なのでいいんですけどね』

 

 

 逃げる

 

 逃げて、工場に向かう

 

 

「もうこんなことはやめてくれ!」

 

「本条さん!!」

 

 

『はい、では今後の展開ですがわざと負けます

 

 ここで雄英に捕まれればヒーローに復帰できる可能性があるのでそれにかけます

 

 ちなみに、ここで自分の攻撃で死者を出してしまった場合ヒーローに復帰できませんので気を付けてください』

 

 

「本条君……?」

 

「やっぱり洗脳でもされてるのかもしれない、どう見ても今の本条さんは異常だ」

 

「敵に操られてるってのか!? クソッ……! 許せねぇ!!」 

 

 

『そして倒される手段ですが注意が必要です

 

 こいつらはこちらの体力を削り切ってくれません、一定体力を減らすと説得モードに入り、こちらに戻る様に促してきます

 

 これには10秒程の演出が入り、その後に好感度を参照した成功率でバトルは終了します』

 

 

 廃工場に着く

 

 もう何も見えない私が最後に望んだもの

 

 私に残された最後の救い

 

 

『ちなみにその成功率の計算式は

 

 100%(攻撃力)(好感度×10%)(防御力)失敗率(ダメージ)

 

 という、伝統と信頼のアルテリオス計算式(親の愛した数式)となっております

 

 つまるところ、ぼーっと立っていれば10秒ごとに行われる成功率10%のガチャを引かないと戦闘は終了しません

 

 私達はチルドレン、どうして期待値に期待などできましょうか、固定値です、固定値以外信じてはいけません』

 

 

「絶対に連れ戻す」

 

 

  あの行き止まりに向かって進むため、みんなを倒す。

 

 

『このマップでは南にあるビル群に一定時間居れば、援軍のヒーローが来ます

 

 かなり強く、隠し要素ですが倒せばレアドロップがあります

 

 ですが今はそんなことはどうでもいいですねぇ!

 

 プロヒーローの場合はこちらを説得せずに殴ってきますので即戦闘を終わらせることが出来るのでそれを狙います

 

 追いかけてきた4バカは足止めをしてきますので適当に街を攻撃して撒きましょう、ここで人に当てないように気を付けてください

 

 目的地についたら適当に殴り殴られながらHPをあらかじめ減らし、敵を……、じゃなかったヒーロー達を殺さない程度にいたぶりましょう』

 

 

 プロヒーローが来る。

 

 

「よくやった……、とは言い難いが、全てはプロヒーローの不徳……、よく耐え抜いたな」

 

「あ、あなたは!!」

 

 

 はやく、はやく

 

 

『おっと、ようやく来ましたね、ベストジーニスト、はい、先制一撃で倒されました

 

 個性「ファイバーマスター」は繊維を自由自在に操る個性

 

 この個性に対して、じゃあ全裸で戦えば勝てるのでは? そう考えるプレイヤーは多いと思います

 

 ですが装備を全部外してもこのゲームに全裸表現はないので、無課金ユーザーみたいなパンイチの姿で攻撃を受けます

 

 攻略には異形系で通常防具不可の代わりに高い防御力を持つ「外皮」をスキルで獲得してるか、そうでなければ夏の期間で海に行くと確率で拾える「ワカメと貝の水着」がメタアイテムなのでヴィランプレイ時には拾っておくといいですね』

 

 

「君はきっと正気ではなかった。しでかしたことの罪悪感はあるだろうが、それでも君がヒーローとしての自分を見失わないことを願ってる」

 

「己の意志に関係なく非道をさせられるなんて、こんなことがあるのね……、この子の心の傷にならなきゃいいけど」

 

 

『さすがプロヒーロー! 学生共より、ずっとはやい!!

 

 このまま雄英に復帰できた場合一応のペナルティとして今後、一部のヒーロー達の好感度が上げづらくなり、何個かの試験やイベントでバトルの難易度が上昇します

 

 前者はともかく後者は不安要素となりますが、AFOからもらった個性のおかげで、バトルは安定マシマシなので行けると思います

 

 いやーこれで牢屋にぶち込まれれば戦闘は終了です

 

 サンキューな! 顔面シワシワ玉袋おじさん!』

 

 

「いや、そんなのは今更の話さ、それに彼女は正気だよ、自分の意志でやってくれたんだ」

 

 

 もう、疲れた。

 

 

『何だこのオッサン!?(驚愕)』

 

 

「止まれ!」

 

「動くな!!」

 

 

 大きい音

 

 周りのビルが消し飛んだ。

 

 耳が痛い

 

 

『この汚らわしいアフォがァーーーッ!! なに戦闘に乱入してきてやがる!! 』

 

 

「また失敗したね弔、でも決してめげてはいけないよ、またやり直せばいい、こうして仲間も取り返した」

 

 

 ほかの人もきて

 

 

『ハン!? 悪堕ちの時にAFOの好感度が2になってるぅぅぅぅぅ!!!!

 

 ショタを養子にして先生とか呼ばせてる癖にAFOお前ノンケかよぉぉぉぉ!!!!!!(失望)』

 

 

「この子もね、面白そうだし、今でも君が大切なコマだと考え判断したから取っておいた。必要なら弔に渡すよ」

 

「いや……、もういらない、先生にまかせるよ」

 

「そうかい、君がそう思うならそうすればいい、……と流石にゆっくりしすぎたか、奴が来たようだ。離れていなさい弔」

 

 

『……先ほど少し説明しましたが好感度を持つキャラが同一ステージにいる場合バトルに参加してくる時があります

 

 今は敵サイドなので敵側の好感度が参照されます、本来なら入り立てでそんなものは考慮に値しないのですが、今回はたった一人だけ敵に寝返った後に好感度が上がってしまった奴がいます

 

 そうAFOです』

 

 

 もう疲れた。

 

 

『(悪に)溺れる! 溺れる!

 

 勝ってくれヒーロー!! 頼むから、もうリセマラは嫌なんだ!』

 

 

「全てを返してもらうぞオールフォーワン」

 

「ふふ、全てか、僕だって君に多くのものを奪われた」

 

 

『オファ!?

 

 としのり! 間に合ったのか としのり!』

 

 

「抜かせ! 彼女はこちらに返してもらう!」

 

「返せ? おいおい、勘違いするなよヒーロー」

 

 

『AFOが来ればOFAも来てくれると思ってましたよ としのり!

 

 個性で手に入れた偽りの肉体を持つオールマイトはホモの鑑にしてヒーローの鑑』

 

 

「洗脳をしておいて何をいまさらッ!」

 

「洗脳はしてないよ、彼女の意志でコチラにいるのさ」

 

「なに……?」

 

 

「面白い話を聞かせてあげよう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……どうだいオールマイト?」

 

 

 

 顔は無くても破顔したAFOは喜悦一色の声色で語った。

 

 一区切り語り終わりAFO、今度はオールマイトに話しかける。

 

 

「どうした? なんとか言ってみたらどうだ。助けてみろよヒーロー、それがお前らの仕事だろ?」

 

 

 オールマイトはその表情も影を落としよく見えない、ただしばらく身を震わせた後、低く声を響かせる。

 

 

「貴様は……、許さん……!」

 

 

 肉体から軋みが聞こえるほどの怒り、それを見てAFOは鼻を鳴らした。

 

 

「君だって奪った。僕だって許さないさ」

 

 

 AFOが話し終わる前にオールマイトのいた場所は爆発し、次の瞬間、AFOに殴りかかっていた。

 

 

「どうしてそうやって意味もなく人を弄ぶ! なぜだ!」

 

「目的があるからさ! 意味もなく守る君とは違ってね」

 

 

 空が歪むほどの拳をAFOは受け流し殴り返す。

 

 

「壊し! 奪い! 心につけ入って支配する!」

 

「自分もそうではないと言うのは止めてくれ」

 

 

 小爆発の連続、殴り返すAFOの乱打をオールマイトも同じく乱打で返す。

 

 

「なぜ無辜の人々を理不尽に嘲り嗤う!」

 

「ハハッ君が笑うのと根っこは一緒さ!」

 

 

 弾かれた両者は距離をあけ、互いに地面を踏み込んだ。

 

 

「私はそれが!許せない!!」

 

「そこだけは気が合うな!!」

 

 

 二つの影は周りを寄せ付けぬ暴風となって駆け抜けた。

 

 

 誰もが立ち入ることすらできぬ暴威に釘付けとなる中

 

 

 それに目もくれずに歩く姿がある。

 

 

「ゴール……? ゴールなの?」

 

 

 一部のヴィラン達が放り込まれた亀裂とは別のものに向かって歩く少女

 

 

「やっと終われるの……? この先は……? あぁ……、もう考えなくていいんだ……」

 

 

 その暗い穴に何を見たのかは分からない、ただそれを見る少女の目には、まるでそれが救いの光かのように見えているのか

 

 とめどなく流れでる涙をそのまま、火に向かう蛾のように近づいていく

 

 

「そっちに行っちゃダメだ!」

 

 

 彼女に向かって叫ぶ者がいた。

 

 全てを巻き込み直進する緑谷は、彼女を攫うように直撃しようとしていた。

 

 

「……させねぇよ、 マグネ!!」

 

 

 その奇襲に気づいた死柄木

 

 そして名前を呼ばれるよりも先に個性磁力を両脇のスピナーと死柄木に付与したマグネは、その磁力による斥力で死柄木を射出していた。

 

 

「邪魔を……、するな!」

 

「さぁ、それはどっちだか」

 

 

 崩壊の個性を宿す片腕を振るわれるが、緑谷は体を捻り、彼女のもとにたどり着く直前に地面を転げる。

 

 

「彼女をどこにやるつもりだ!」

 

「……しらねぇよ、気に食わねぇが病院にでも送るのかもな」

 

「緑谷! 今だ!」

 

 

 その時、その場の空気の温度が一瞬にして下がる。

 

 

「まだ居やがったか……!」

 

 

 地面を一直線に進む氷、それは残ったヴィラン達と緑谷を両断した。

 

 

「ッ!!」

 

 

 緑谷は彼女に向かって全速力で駆け寄る。

 

 

 あれだけ早かったはずの彼女はよたよたと歩いており、歩は遅い

 

 

「本条さん!」

 

 

 瞬時に追いつき、その体を力強く掴む、彼女は驚いたようでロクな抵抗もできずになすがままに立ち止まった。

 

 

「クソッ! 奴を止めろ!」

 

 

 敵は氷壁に阻まれ、緑谷の所にまで、まだたどり着けていない

 

 

「飯田君! 今だ!」

 

 

 緑谷が本条の手を掴んだその時、礫の山から吠えるようなエンジンの音が鳴り響く。

 

 

「今行くぞ! 緑谷君!」

 

 

 そのつんざく駆動音は氷床を滑るように加速していく

 

 その経路の先には先ほどの氷撃による壁が、反り立つ坂のように作られていた。

 

 

 彼らの目的はこの戦場からの離脱

 

 

 轟が敵を分断する壁でありながら逃げるための氷の道を作る。

 

 切島が硬化して瓦礫を突き破り、飯田のエンジンで駆け抜け、本条を確保した緑谷を回収

 

 そしてそのままこの戦場を離脱するという奇策は完全にハマった。

 

 

「本条を抑えてろ! 俺がそのまま引っ張り上げる!!」

 

 

 後は緑谷が彼女を抱えた込んだまま、何がおきようと離さぬようにと全身に力を込めた。

 

 パワーだけが自分が彼女を上回ることが出来る点だと分かっていたからだ。

 

 例え目玉を突かれても、緑谷はこの手を緩めまいと覚悟を決める。

 

 

「……ねぇ、緑谷君、何しに来たの?」

 

「君を絶対に助ける!! そう約束した!!」

 

「本当? 緑谷君はかっこいいなぁ……」

 

 

 身を固めた緑谷に彼女はほんの少しの抵抗も見せない。

 

 

「離してくれる?」

 

「ッ!! 絶対に助ける!!」

 

 

 その言葉を緑谷は決して認めない

 

 

「どうやって……?」

 

「助ける!!」

 

 

 だが、思わずにはいられない

 

 

「ねぇ、緑谷君……?」

 

 

 彼女にとって何が一番の救いかと考えた時、それがあまりにも自然過ぎて

 

 

 

「お願いだから私を死なせて」

 

 

 緑谷の体が固まる。

 

 今度は助けるなんて言葉が、どうしても彼の口から出せなかった。

 

 

「やっぱり、緑谷君はヒーローだね」

 

 

 緑谷はその表情を見てしまった。

 

 その直後、緑谷の胸が軽く押されるのと、力強く背中を掴まれるのは全く同時

 

 いつの間にか自分の腕の力が抜けていたことに気づいた彼は顔の全てを歪め、絶望の表情を浮かべる。

 

 

 衣服が触れ合うほどの近さで、彼女は紙一重でくるりと体を逸らす。

 

 

 緑谷も他の皆も確かに目が合った。

 

 

 絶望の表情を浮かべる緑谷達、だが、あまりにも悲しかったのが

 

 

「ありがとう」

 

 

 己の浮かべた絶望の表情でさえ、目の前で浮かべる彼女の微笑には及ばないという事実に、緑谷はさらに顔を歪めた。

 

 

 

 

 彼らはそのまま過ぎ去った。

 

 

 

 彼女はそれを見届けてから歩みを再開しようとするが、何かが崩れる音がする。

 

 

「……ちっ」

 

 

 氷の壁を崩壊させた死柄木は彼女を一瞬だけ見ると、すぐにオールマイトとAFOの戦いに目を向けた。

 

 

 ただ一言

 

 

「……俺はお前を殺せる。だが殺さない、そっちの方が俺の目的に都合がいいからだ」

 

「……そう」

 

 

 それで会話は終わった。

 

 

 もはやまともに未来を見据える意思など彼女には残っていない

 

 砕けた彼女に残った最後の一欠けら

 

 

「本当は、もっと早く……、こうすればよかったのに」

 

 

 

 最後の望みが見せた道は暗い穴に繋がっていた。

 

 

 この先をくぐれば確実な終着がある。

 

 

 

 

 彼女は再び歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それからどうなったか

 

 これから先いくつかの語るべきことはあるだろう。

 

 だが、これから先は全てが遅かった行き止まりの話である。

 

 

 

 彼女からみて、この世界の先にどんな出来事が起こったか、結末だけをかくならば……

 

 

『この先の物語に救いはなかった』

 

 

 彼女からすれば、それだけは確実に言えるだろう。

 

 

 

 





元読者の俺の経験からみて、今のお前らに足りないものがある

危機感だ。

お前、もしかしてまだ、この話がハッピーエンドで終わるとでも思ってるんじゃないかね?

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