けものフレンズ 1+1(わん・ぷらす・わん) 作:CarasOhmi
「──『ジャパリパーク』?」
ぼくは、手渡されたクロワッサンを頬張りながら、二人に聞き返した。
「そう、ここはジャパリパーク、色んなフレンズが気ままに暮らしてる『どうぶつえん』!!」
黒い髪の女の子は、パリパリとポテトチップスをつまみながら、ぼくの質問に答えた。
「私たちの縄張りはずっと北、ここと似た感じの、空気がカラッとした過ごしやすい場所です。そこに『たんていじむしょ』を構えているんですよ」
ソーダを片手に話す金髪の女の子は、どこか自慢げに胸を張りながら、ギザギザした鱗の尻尾を振っている。黒髪の女の子も椅子から立ち上がり、金髪の女の子の横に立った。
「私はオオアルマジロのアルマー、そしてこっちはオオセンザンコウのセンちゃん!!」
「フレンズは、私たちのことをジャパリパークの『たんていコンビ』と呼びます!!」
暗い建物を出て、生い茂った森を抜け、小高い丘を登った先。ぼくたち三人がくつろいでいるのは、たくさんの岩場に囲まれたフレンズの憩いの場「パンのロバや」。食べ物をいっぱい積んだワゴン車の屋台を中心に、その周りには壊れかけた椅子やテーブルがいくつも並んでいた。ぼくたちは、まだ使えそうなテーブルに食べ物を乗せて、色々とつまみながら一休止していた。
「……もしかして」
屋台の主のフレンズが、ワゴンから降りてきて会話に加わった。長い髪を結わえて大きな耳を頭から生やしている。この子の名前は「ロバ」。力持ちで頑丈なウマ科のけもの。ここにある食べ物は、料理の得意な子から分けてもらって、みんなに配ってるんだって。……この車はもう動かないみたいだし、ロバさんがここまで手で運んで持ってきてるのかな?
「お二人の縄張りって『ミナミメーリカエン』ですか?」
「そうですよ。よくご存知ですね」
「前までここに住んでた子が、引越し先を探しに北の方に向かったんです。私、記憶力もいいんで」
……北にあるのに、ミナミ?ぼくは、気になってアルマーさんに問いかけた。
「元々そういう名前なんだよねー。私たちよりもっと北に住んでる子がつけた名前なんじゃない?」
そっか。たしかに、そこが一番北とは限らないもんね。ぼくは、建物を出た時に目の前に広がっていた、果てしなく続く景色を思い浮かべていた。
「最近は、この辺りも大きなセルリアンが増えてきてて……。その子、怖がりなフレンズだから、安心できる住処を探しに、引っ越すことにしたらしいんです」
「──『セルリアン』?」
聞き覚えがあるような、ないような。ただ、どこか胸のあたりがぞわぞわする響きの言葉。センちゃんはこちらを見て答えた。
「恐ろしい怪物ですよ。パークの中でも神出鬼没。様々な形で現れては、フレンズを食べて元の動物に戻してしまうんです」
おどろおどろしい口調で話すセンちゃんに、ぼくは背筋を冷やした。そんな恐ろしい怪物がここに……?もし、ぼくが食べられたらどうなっちゃうんだろう?
「大きいのから小さいのまで色々いるけど、やっつけられる大きさじゃないなら、基本は逃げたほうがいいよねー。怪我するかもしれないしさ」
アルマーさんは、ビクビクするぼくを元気づけるように、背中をポンポンと叩きながら話した。
「けど、この辺りのセルリアンは、ついさっき私のお友達が倒してくれたんで、安心して大丈夫だと思いますよー」
話によると、ロバさんが見つけた大きなセルリアンを、腕利きのフレンズ二人に頼んで退治してもらったんだって。ふと、ぼくたちがここに辿り着いた時、ワゴンに「じゅんびちゅう」って書かれた看板が下げてあったのを思い出した。それで、しばらくロバさんの帰りを待つことになったんだけど、留守にしてたのはその子たちをセルリアンの元に案内してたからみたい。
ロバさんの話を聞いて、ぼくはほっと胸をなでおろした。このまま外にいたら怪物に襲われるんじゃないかと、気が気じゃなかったもの。
「ちなみに、セルリアンがいたのはあの辺りですよ」
──ロバさんが指差したのは森の中。ぼくたちの辿ってきた道のすぐそば。思いの外、危機一髪だったことを知ったぼくたち三人は、ちょっぴり背筋を伸ばした。