けものフレンズ 1+1(わん・ぷらす・わん)   作:CarasOhmi

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わん・あわー・れいたー④☆

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「……キュルルちゃん!!」

 

 バスの座席から身を乗り出したアルマーさんが、僕を指差して言った。キュルルチャン?……って、なに?一体何の話をしてるんだろう?

「君の名前だよ!!『ヒトちゃん』じゃ、かばんさんと区別つかないし、ずっと名無しのままじゃ不便でしょ?」

「それにしたってアルマーさん……、どうしてそんな珍妙な名前に?」

 センちゃんは怪訝な顔でぼくの方を見た。……ぼくだって、そんな名前で呼ばれた記憶はないよ。戸惑っているぼくたちのことはどこ吹く風で、アルマーさんは自慢げに続けた。

「あの建物で初めて会った時にさ、お腹鳴らしたでしょ。あの音がやけに耳に残ってさー。『キュルル〜』って」

「あ……アルマーさん……」

 センちゃんは、アルマーさんのマイペースさにあんぐりとしていた。ふふんと胸を張っているアルマーさん。別に、ぼくのことをからかおうって気はないんだろうけど、それにしたってちょっと、その名前はひどいと思うよ。まるで、いつもお腹をすかせてるみたいじゃないか。

 

「あはは、フレンズってみんな、面白い名前をつけるよね」

 運転席でかばんさんが笑いながら話した。ぼくはちょっとムッとした。「かばん」さんの名前も十分変わってると思うけど。

「わたしの呼び名もね、ずっと昔、仲良しだった友達につけてもらったんだ。生まれた時からかばんを背負ってたから『かばん』。わかりやすいでしょ?」

 ミラーに映るかばんさんはニコニコと笑顔を浮かべていた。……結構、気に入ってるのかな?

「今では『ヒト』って名前で呼ばれるよりも、『かばん』の方がしっくりくるね。名前って、案外そんなものだと思うよ」

 ぼくは、座席に置かれた白いかばんを見た。蓋の隙間からは詰め込まれた木の実が顔を出していた。ぼくは、改めて自分の背負ってるかばんを膝の上に乗せてじっと眺めた。ぼくのかばん……。

「『かばんちゃん』じゃ被っちゃいますよ」

「えーっ?『キュルルちゃん』にしようよー……」

 肩掛けの青いメッセンジャーバッグのファスナーを開けると、中には筒入りの色鉛筆、ハサミ、セロハンテープ、虫眼鏡などの文房具が入っていた。あの建物を出るときに、殻の中にあったものを詰め込んだ、ぼくの持ち物。

「よくわからない物が、いっぱいですね」

 ……けど、何かが足りない気がするんだ。あの時は、頭の中もぐちゃぐちゃだったけど、今になってみると何かを置いて来ちゃったような、そんな気がする。おうちに帰った後、落ちついて時間ができたら、忘れ物が無いかもう一度調べに行こうかな。

「あっ、これ!!振るとジャラジャラ鳴って面白いよー!!」

 アルマーさんが色鉛筆の入ってる筒を、勢いよく振って遊んでいた。……そんなことしたら、色鉛筆が折れちゃうよ。ぼくは筒を振るアルマーさんに手を伸ばした。

 

 

「──注意!!注意!!」

 運転席から、聞きなれない声が飛び込んできたのは、ぼくが筒に手を触れたのとほぼ同じタイミングだった。

 

 

 ──次の瞬間、ぼくたちの体は、車の後方にがくんと引っ張られた。危うく転びそうになったぼくは、二人に支えられる形でなんとか持ちこたえた。

 窓の外の景色は、これまでよりも早く流れていた。どうやら、バスが急に加速してバランスを崩したみたい。

「……三人とも、手すりにしっかり掴まってて」

 かばんさんは、ミラー越しにぼくたちを見た。さっきまでとは打って変わって険しい表情。ふと、センちゃんとアルマーさんの耳がピクリと動いたかと思うと、二人は勢いよくバスの最後部に張り付いた。

 

 突如、バスの外が大きな日陰に入ったかのように、すっと暗くなった。……さっきまで流れていた景色は、広い草原、真っ青な空。陽の光を遮るような、森や岩肌、大きな雲だって浮かんでなかったはずのに。

 ずんっ、ずんっ、と、立て続けに大きな揺れが起こる。何度も、何度も、地響きを立てながら。

 ぼくは、恐る恐るセンちゃんとアルマーさんの間にしゃがみ、顔の上半分を出すように窓の外を見た。そこに広がっていたのは、これまで見たこともないような恐ろしい光景。

 

「なに……あれ……?」

 ぼくの見上げるその先。山のように大きな、青紫の怪物。てっぺんからはまっすぐ前にせり出した棒のようなツノ、体の側面には左右四つの眼が並び、ドリルのような形の三本脚を地面に突き立て、よろり、よろりと立ち上がった。

「……キュルルさん、あれがセルリアンです」

「それも、とっておき大きいやつ……!!」

 怪物の左側面に並んだ二つの瞳と目が合った。輝きの感じられない、吸い込まれるように真っ暗で深い瞳。

 ──見つかった。ぼくたち三人は息を飲み込んだ。怪物は脚を交差させ、ドリルを何度も地面に突き刺して、体をこちらに向ける。中心の筒にはめ込まれたような巨大な瞳が、瞳孔を絞りながら、ギョロリとこちらを向いた。

 

【挿絵表示】

 

 セルリアンは、三本の脚をせわしなく地面に突き刺しながらバスに迫る。かばんさんは、ミラーごしにセルリアンを睨むと、目一杯にアクセルを踏み込んだ。

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