何度も蹴られてわたしの身体はサッカーボールのように転がった。やがて白くて大きな部屋に辿りついた。独房の電球とは違い、目が痛いぐらい明るい照明だったので、わたしは数秒間瞼を開いていられなかった。太陽を一度も拝んだことが無いモグラのように生きていたのだと改めて知った。
部屋はベルトコンベアで真っ二つに分断され、向こう側に私と同い年に見える女の子がいた。金色の長い髪が力なく垂れ下がり、人形のように生気を感じさせない物静かそうな子だった。服装は私と同じで白くて薄いシャツに黒い短パンとい格好だった。が、私と同じで靴は履いていない。裸足だった。これを見るだけで彼女も私と同じグループに属する人だとわかった。それにしてもガスマスクの人は足には無頓着なのかもしれない。
彼女は眉をぴくりと動かしただけで、わたしを一瞥しようともしなかった。黙々と慣れた手つきで、ベルトコンベアから流れてくるダンボール箱に赤いリボンのシールを貼っているだけだ。そのためだけに生きているみたいだった。その間も五センチの感覚でその茶色いダンボールの箱は絶え間なく流れていた。
「お前も貼るんだ」とガスマスクの人は言った。そしてわたしの背中を靴の底で力強く押しやった。「早く! 」
私は急いで取り掛かった。プラスチック製の籠を手渡され、そこのなかにある青いリボンのシールを金髪の女の子の貼ったシールと対称になるように貼れ、と命令されたことをすぐに始めた。しかし生来から不器用なせいか、小鹿のように手が震えているせいか、どれも微妙に貼る位置がずれてしまった。その度にガスマスクの人が私の背中のあらゆる部分を靴底で容赦なく突いた。同時にこれまで誰からも言われたことも、聞いたことも無い罵声を喰らった。主にそれは三つのフレーズから成り立ち、時たまガスマスクの人の気分次第で変化した。
わたしは何をしているのだ?
不幸だった。いかなる労働もさせられないからこそ、この場所をどこよりも気に入っていたはずだったのだ。それに伴う不便も大して気にならなかったのだ。不動の奴隷でいたのだ。しかしガスマスクの人が怖いばかりに、金髪の女の子の対面に立ってシールを貼っている。
何時間も立ち続けているせいで脚が疲れてくる。座りたいが、椅子は部屋のどこにも無い。同じ作業をしているせいで気が緩んでしまうと、背後から凄まじい痛みが襲ってくる。駄目だ。眠ってはいけない。それは死だ! しかし抵抗できない。そして蹴られる。壁には時計があって、わたしは誘われるように目移りする。そして蹴られる。対面の女の子がどんな調子だろうかと気にしてしまう。そして蹴られる。それが七時間続き、一時間の休憩を挟んで、そのあと三時間働いた。わたしの中身は空っぽになってしまったみたいになっていた。