バランは黒の核晶を引きちぎろうと引っ張る。その行動にハドラーは焦る。
「バ…バラン!!何をするつもりだッ!!?」
「…バーンが次の手を打つ前に…!お前の身体から核晶をもぎ取る…!!」
バランが力を入れるとハドラーと黒の核晶をつないでいる管がブチブチと千切れる。
「ぐうあああーーーッ!!」
激痛からハドラーの叫び声が響く。その声にダイは悲しそうな顔をするが突如現れた存在に気付き警戒する。
「!!!」
バラン達も気付いたのかその存在を見れば、其処には白い衣姿のバーンの忠臣ミストバーンが空中で佇んでいた。
「ミストバーン!!」
[……]
「…我々を消しに来たようだな…!!」
「…ミ…ミストバーンよ…!!」
なんの反応も示さないミストバーンにかすれた様な声でハドラーは語りかける。
「おまえも…おまえもバーン様と同じなのか!?オレを道具として始末しに来たのか!?」
[………]
ハドラーはミストバーンを初めて見たとき気に食わない不気味な奴だと思っていた。しかし
更に超魔生物になる時に頼み込む事で人間共の足止めを受けてくれ、更には超魔生物になってからも多少融通を利かしてくれた。
その寡黙だが友好のあったミストバーンにハドラーは多少信じていた。
「…おまえにとってもオレはやはり駒にすぎなかったのかッ!!?」
「ハドラー……」
魂の叫びに心を揺らされ声に出したのがダイだ。ダイは師アバンを目の前でハドラーに殺されている。更にハドラーの所為で多くの人達が苦しんでいるのを知っている。
仲間のヒュンケルの父親もハドラーに殺されている。しかし今のハドラーを見て、ダイは酷く悲しい気持ちになった。
過去、何度もダイ達とハドラー達は戦った。卑怯な手も使われた、後一歩で全滅と言う所まで追い詰められた事もある。
しかし超魔生物になったハドラーは過去のハドラーとは違う。本当の意味での
ダイはそんな彼の姿を見ていられなかった。
[…ハドラー。その質問に対する私の答えは常にひとつだ]
[…大魔王さまのお言葉はすべてに優先する…!!]
「!!!!」
ミストバーンの言葉にハドラーは過去を思い出す。
ハドラーはまだ魔族で魔王軍の六大軍団が健在だった頃、ミストバーンは魔影参謀という肩書きだった。
そのミストバーンが口を出す時はその言葉を告げる。
「…そうか…それがおまえの答えか…」
ハドラーはショックで身体が震える。ハドラーも何度も部下を捨て駒にしてきた。それが逆に捨てられる立場になっただけだ。
しかし悲しかった。忠誠心、友好…そんな事よりもダイと決着をつけられると信じていた。その全てを無下にされ利用されたのが悔しかった。
「…いまさら何をしようとも遅いぞミストバーン!!おまえが出てきたところでこの私は倒せん!!」
圧倒的な自信を持つバランだが内心では最大源警戒していた。バランは始めて見た時からミストバーンを警戒していた。
(…変わらず得体の知れない男だ……)
バランの経験からもミストバーンの強さ、性別、正体……その全てがわからなかった。便利上男としているだけで性別があるかどうかもわからない。
[…どうかな?私は指一本ふれずにおまえ達をこの世から消すことが出来るのだぞ……!!]
白い衣に隠れ表情はわからないが瞳だけが妖しくと光る。その態度に二人は訝しげにミストバーンを警戒する。
ミストバーンは衣に手をかけ、ゆっくりと見せ付ける様に開いていく。
そこには真っ黒な空間が広がっており、二人は莫大な暗黒闘気が集合しているのがわかる。
しかし開かれるごとに強まってくる圧倒的な気配が三人震撼させる。
「なっ…なんだっ!!?このすさまじい鳴動はっ…!!」
竜魔人になったバランですらその波動の強さに思わず冷やさせが噴出す。
[…バーン様…よろしいですね!]
「……許す…!ミストバーン…!」
衣にかけてあるシンプルな数珠がゆっくりとひび割れていく。
ピキッ…ピキッ……ペキィィン!!
割れると同時に先ほどとは比べ物にならない気配が現れる。
「…おおっ!!」
そこには目を閉じた上品な優男が衣を羽織佇んでいた。男の額にはバーンの印の様な物が張り付いる。
「あっ…あれがっ…!!?」
「ミストバーンの……正体…!?」
ハドラーのはその素顔を見て驚いた。男だと思っていたが想像より若い。魔族であろうその男にはなんとも不思議な魅力が出ていた。
[……消えよ…!!黒の核晶の閃光とともにっ…!!はあああッ!!]
警戒していたバランを出し抜きミストバーンの魔力が黒の核晶に注がれる。
グオォォォンォォォ……
魔力が注がれた黒の核晶が低い低い唸り声の様な稼動音を響かせ稼動する。
「な、なにッ!!?核晶が作動し始めた!!?」
(バッ…バカなッ!!竜魔人の
「まっ…まさかっ…!!!?」
[……はじけろ……ッ!!?]
ミストバーンがダメ押しに魔力を注ごうとした瞬間に割り込む存在があった。
血管の様な黒い触手が黒の核晶に複数張り付きハドラー体内管を切って取り付いていく。
「ガフッッ…ッ!」
ハドラーが吐血し重力に従い地面に落ちていく。
「な、なんだッ!?」
黒の核晶から噴出す魔法力でバランが弾かれ、引き合うように触手が集まっていく。
ドロドロに溶けた黒いモノはゆっくりとオレンジ色へ変貌していく。
[バッ…バカなッ!?何が起きているんだッ!?]
ミストバーンはバーンの代わりにここに来ている。その為ミストバーンの中では自分のミスはバーンのミス。
その失態に慌てふためいた。
(どうして……どうして勝てないッ!!?)
勝つ為に全てを捧げてきた。魂、肉体は既に人間では無い。しかし心……復讐だけは忘れない。変わらない。変えることは出来ない。
死んでしまった者。ピサロ。その全てがバランを殺すまで納得しない。
(殺せッ!!血を寄越せ!!)
融合したネクロスは
(うるさいッ!!お前ではあの
彼の中では自分を変化させていった。バーンに与えられたネクロスはバーンの魔力……鬼眼の力で魔剣から進化した物だ。
その鬼眼の力でピサロが進化していのだ。そしてその力を使い更に変貌していく。
「くっ…黒の核晶ッ!?そ…そんなっ…そんなバカなっ!!あの…忌わしい伝説の超爆弾がっ…オ…オレの中にっ…」
(超……爆弾?)
凄まじい力を感じ目を再構成して覗けば
更にバランがそれを膨大なオーラで抑え付けていた。
(アレだッ!!アレがあれば!!)
「あ、あれは……まさか……」
バーンパレスではバーンが身を乗り出し映像を見ていた。
大魔王であり魔界の神と呼ばれるバーンにとって玩具であった男の姿に聞き覚えがあった。
「…バーン様あれは……」
キルバーンの一言にバーンは真剣な表情になる。
映像では膨大な力を使い身体が膨れ、既に男だった姿は無い。
オレンジの巨体。角が生え二本の剣を持つ
「……過去、魔界を旅をしていた頃、手に入れた魔剣があの【ネクロス】だ。そしてそれは古代遺跡にあり、その遺跡に似たような魔物の王の姿が壁画として描かれていた……太古に存在した魔族の王【エスターク】」
「まさかッ!?」
「…もしや余の魔法力とネクロスが融合し、それが膨大な魔法力を得て進化したのだろう……」
バーンは面白そうに映像を見る。その顔には余裕があり、太古の魔族の王ですら勝てる自信が満ち溢れていた。
「……怖い怖い……太古の魔王でもバーン様には勝てないか……」
キルバーンは冷汗を流す。彼の本来の目的を考えるなら
後数話で終わる予定。それまでよろしくお願いします。