自分ではただこのシーンをやりたかっただけです。
「は、早く逃げないか……」
「そんな!出来るわけないよ!!」
ダイを声を上げる。バランと因縁があっても、ここで見捨てて逃げるという選択は無い。
「い、いいか…聞け……今の奴には勝てない……だが奴はもう長くない……」
「ッ!?」
見ればピサロの足元が歪んで来ている。あそこまで無茶な進化をした結果、崩壊が近い。
「そ、それじゃあ二人で逃げ切れば……」
「無理だ……アレを見ろ……」
ピサロは魔力を内部に溜め混んでいる。【マダンテ】黒の核晶の魔力を全て開放するし全てを吹き飛ばすつもりのようだ。
多少再生して動けるようになったバランはゆっくりと
「…このままではアレを開放するだろう。そうなれば黒の核晶が爆発したより酷いことになるやもしれん……」
「えッ!?」
マダンテは言わば【メガンテ】の魔力版だ。全生命力を破壊力に変化させるメガンテの対になるマダンテ。
破壊に特化したマダンテは黒の核晶を威力だけなら上回る。
バランは竜魔人化を解き、元の人間に戻る。
「…ディーノ……」
「ッッ!?」
バランはダイを抱き寄せ抱擁する。ダイにとって意外で酷く驚いた。
ダイにとって一度親友を殺し、復活させた男。最強の敵だった男。そして自分の父親。
そんな複雑な関係のバランに抱擁され完全に慌てふためいた。
(ディーノ……)
「ッ!?」
ダイの身体が光り輝く。ダイの胸にバランの想いが流れ込んでいく。
「ディーノというのはどうだろうか?」
「ディーノ…アルキード王国の言葉で【強き竜】……うん。凄くいいと思うわ」
小さな赤子を抱く優しそうな女性と若いバランが幸せそうに暮らしていた。
「よし!お前の名前はディーノだ!」
「おぎゃおぎゃっ!!」
「あらあら…そんなにお父さんが怖かったのかしら。よしよし」
ソアラは微笑む。すこしバツの悪そうな顔をするバランを見て
唯一愛した女性ソアラ。その二人の愛の結晶であるディーノが生まれた瞬間の戸惑い。そして少しずつ大きくなる息子への愛情。
愛する者を貶され、全てを失った悲しみ。その全てをダイは感じ、涙を流した。
(私の様になってはならない……正しい心を持つお前なら……我が息子なら新の竜の騎士になれるだろう……)
バランはゆっくりと辛そうに立ち上がる。それを見たダイは駆け寄ろうとするが何故か力が入らない。
「待ってッ!!お、俺も……」
「……」
バランは悲しそうに……躊躇しつつダイの頭を優しく撫でる。
「あっ…ぁ……」
ダイは赤子の頃デルムリン島に流れ着き、モンスターである鬼面道士のブラス育てられた。
ブラスは愛情を持ってダイを育て立派な少年に育て上げた。
バランは生き別れた息子を想う。何故生き別れてしまったのだろうか?ソアラが生きていれば……
愛情を知っていても
「……ディ……ダイ……強く……生きるんだ…」
「ぁ…そ、そんな…どうして!どうしてみんな!!」
ダイは立ち上がれない。過去、師であるアバンが【メガンテ】によってハドラーと相打ちになった時。自分はどうして大切な人を守れないのだろう、そう思わずにいられない。
バランが歩き出すのを必死で止めようとズボンのを握る。
その手を
(………)
バーンパレスが揺れ動く。ピサロの力の波動ではなくバーンの魔力が浸透し、ジゴスパークにより外壁が壊れた事により空中を翔る準備が整ったのだ。
「ダーイッ!!」
先ほどの爆発を耐え抜いた
(仲間が来るか……ダイは一人ではない……もう…大丈夫だ……)
バランは胸を張ってピサロに近づく。その事に気がついたピサロは両方の口からありったけの
《死ねバランッ!!私達アルキードの…ロザリーヒルのみんな……家族の…ロザリーのッ!!その全ての仇…許さん…絶対に許さんッ!!》
ゆっくりと近づいてくるピサロに恐れること無く進む。バランは今、過去を清算する。
数千では聞かない民を皆殺しにしたツケを払う。死者だけならば嘗て魔王だったハドラーを超える。
全てのモノは行動に責任を負う。バランほどの男が力を振るえば何が起きるかわかっていただろう。
「………」
後悔はある。
息子は
いや、
ピサロが無抵抗に近づくバランを両腕で掴み爪を食い込ませ肩を粉砕する。
「グッ!!ッッッ!?」
ダイを心配させまいとバランは歯を食いしばり耐える。ピサロはバランを食いちぎろうと大きな口を開く。
「あ……ぁ…や、やめて……やめてくれーッ!!」
ダイが大きな声で悲願する。しかしピサロは止める事は決して無い。
(…泣くな……ダイ……強く……)
「強く生きるのだ……ダイッ!!」
グシャリと嫌な音を立てバランの身体はピサロの口に消える。
「父さああああんっ!!」
次でラストです。短い間でしたがお付き合い本当にありがとうございます。