「ここか……」
大魔王バーンが勇者たちによって倒され地上に平和が訪れたある日、二人の男がある滅びた村に立ち寄った。銀髪の青年と金髪の魔族の青年だ。
「……」
魔族の男は思う所があり表情が硬い。父親代わりの者を殺した男の故郷にいるのだ。それが殺された方に原因があったとしても納得が出来るわけが無い。
銀髪の青年はまっすぐと村を進み、奥に綺麗な花畑を見つけそこに小さく穴を掘り、薄汚れた壊れたピアスを埋めた。旅をする前、友人に頼まれた事をやり終え青年は黙祷をする。
「………」
「……奴は……どんな男だったんだ?」
黙祷をする青年に魔族の男が問う。それに青年はゆっくりと語りだす。
「奴とは殆ど会話が無かった。復讐に囚われ、全てを捨て、それだけしか出来なかった男だ」
「かつてのお前のようにか?」
「……そう…だな。まるで自分を見ているようだった。俺には仲間がいて、あいつにはいなかった……俺とあいつの違いはそれだけだ……」
嘗て育ての親を殺され、復讐に身を落とした青年は一歩間違えれば同じ道を歩んでいただろう。仲間が彼を助け道を踏み外さなかった。死んだ彼も自分達ともっと前に出会っていれば変われたかも知れない。
黙祷を終え立ち去る青年に着いていく魔族の男。その二人を風が通り過ぎ花畑の花が小さく揺れる。
青年は重い足取りで前へ進む。そこはうっすらと透けてて変化はあるが今は無き、故郷への帰り道だ。
ズルズルと足を引き摺る様に青年は進む。両腕は無くなり、青年だとわかるのは極僅かだ。それでも歩みは止まらない。それはまるで誰かに運ばれているようだ。
(ぁ…ぁぁ…)
村の前にはみんなが青年を待っていた。狩人のロジャーさん、カリア一家、青年の家族。そして恋人も……
(ロ……ザ…リー……)
村が見えた頃には青年の身体は後僅かにまで擦り切れていた。そして村に着きみんなに再会した時は殆ど無い状態だ。青年は悲しそうなみんなの顔を見て自分は間違っていたのかと思う。しかし止まれなかった。許せなかった。どうしても……どうしても耐える事が出来なかった。
青年は恋人が悲しい涙を流すのをただ見ることしか出来ない。彼が行った事にで彼女が悲しんでいる事は明白だ。それでも青年は彼女には笑顔でいて欲しかった。
(……)
青年は彼女に近づき、自分を保っていたピアスを彼女に付ける。その行為を受け入れた彼女は青年を抱きしめ一層涙を流す。
(ロ…ザリー……ただ…いま……)
彼女は腕の中で消えていく青年をただ抱きしめる事しか出来ない。村のみんなも見ることしか出来ない。彼は全てを犠牲にして復讐を遂げた。
これにて完結です。思いつきで書き終えた作品でしたが楽しんでいただけました?
個人的にマダンテを打ちたかっただけ。黒の核晶とマダンテどっちが強いんだろう?から始まった作品で書くうちに設定が生えて結局マダンテ打てなかった作品。
後半飛ばしすぎって人もいるけど流れは変わりません。ピサロとバランで相打ち。バーンのメラ火葬で流れが戻ります。ただ大魔王がダイを説得する会話の変化だったりミストバーンの素顔をダイが見てるけど特に流れに変わりはないです。
本当に短い間ですが少しでも楽しんでもらえたらこんなに幸せな事は無いです。
次回があればまたよろしくお願いします。
またね。
完結してからもお気に入り登録ありがとうございます!
もし要望があれば番外編等のネタはありますのでよろしくお願いします。