胸糞だけしか残らない為回覧注意。
ふと、思ったことが気になる人なので今回のターゲットはヒュンケルです。
「は?」
俺の一言で場が白ける。隣にいた隊長が青い顔をしているがそんな事はどうだっていい。
「姫様……もう一度お願いします」
場の中心。俺の祖国【パプニカ】王家の唯一の生き残りであるレオナ姫にゆっくりと近づく。姫は俺の顔を見て申し訳なさそうに言う。
「……もう一度言います。ヒュンケルには残された人生のすべてをアバンの使途として生きることを命じます」
姫様は幼いながら王家の気品を感じるほど堂々と言う。
「姫様冗談はよしてくれ」
周囲には気の毒そうに俺を見る同僚、唖然とする勇者様達。そして苦しそうな顔をするクソ野郎がいる。
「ウォン……申し訳ないけど」
「なぁ姫様。そいつは俺の家族の敵なんだよ」
魔王軍が急に攻めてきて俺の家族は全員殺された。ここにいる奴らも家族は殆ど殺されてる。特に姫様も家族を殺されたのに。
「それを……」
「許すわ」
何を言ってるんだ?許す?何故?
「……ウォン。魔王軍は世界中を攻撃してます。彼らはこれからも人々を襲い、命を奪います。私達は戦わなければなりません。その為には一人でも多くの正義の力が必要なのです」
何を言ってるんだ?正義?
「姫様はこいつが正義だと?」
「ええ」
「……………」
周りを見渡せば俺を気の毒そうに見る奴、呆れ顔の変なジジイ、困惑の勇者様達がいる。
「みんな本気か?」
俺の目を見るのはレオナだけだ。それ以外の奴は下を見るか困惑してるだけ。
「本気でこいつを許すのか?」
息苦しい。まるで水中にいるようだ。冷や汗も止まらない。
「……ウォンわかって欲しいの」
「わかれ?家族が無残に殺されてわかれと?」
すまなさそうに言うレオナに殺意が沸く。
「……」
「「ヒュンケル!?」」
クソ野郎が俺に近づく。こいつが存在してるだけで頭がおかしくなりそうだ。
「ウォン…すまない」
「……………?」
「俺は許されない事をした。それはレオナ姫が許しても消える事は無い。だからこそ俺は少しでも償いをしたい。どうか魔王軍を倒すまで俺が戦う事を許して欲しい……もし魔王軍を倒し平和になった時には貴方に裁かれよう」
「ヒュンケル!?」
理解できない。
「待ってくれよ!ヒュンケルは確かに悪者だった!でも、今は違う!俺達を助けてくれたし、ヒュンケルが居なければレオナも助けられなかったんだ!だから許して上げてくれよ!」
「アバンの使途に目覚めたヒュンケルを許してあげて!」
頭を下げてるクソ野郎にもクソ野郎を庇おうと近づく奴らも。
胸が締め付けられるほど痛い。酸欠で視界がぼやける。
「……ふざけるな」
なんなんだこいつら。どうして庇う?
「ふざけるなよクソガキ共」
何故みんな驚く。
「正義に目覚めたから許せ?」
家族を殺され。
「アバンの使途だから?」
友人を殺され。
「魔王軍を倒したら裁かれる?」
故郷を滅ぼされ。
「ふざけるなよ」
すべてを奪われたのに?
「なんで」
俺にはもう何も残ってないのに?
「なんでそいつが守られるんだ?」
「おい!いくらなんでも勇者様に失礼だぞッ!?」
「そうだ!」
は?
「黙ってろ。おいクソガキ。俺の家族はそいつの所為で死んだ。そいつが従えたがいこつ剣士に剣で刺し殺された。それでも許せと?」
「ッ!…………」
だんまりか?おいおい早く答えろよ。
「ヒュンケルは悪人だった。そ、それでも!!今は!今は!仲間なんだっ!!だから許して上げてッ!?ッグッ!」
「ダイッ!?」
「ぶざっけんな!!仲間だぁッ!?そのクソ野郎がかッ!?」
クソガキの顔面を殴りつけるが俺の怒りは収まらない。勇者の仲間だから、アバンの使途だから許してだと?
「おい!いい加減にしろッ!!」
「離せッ!!クソがッ!?ふざけんなッ!?そのクソガキを助けたから許す!?アバンの使途だから!?馬鹿にするのもいい加減にしろッ!?」
男達に羽交い絞めにされ地面に叩きつけられる。
「返せっ!家族を!故郷を!全部返せぇっ!」
男達に担がれて俺は連れて行かれる。
「殺させろっ!俺にそのクソ野郎を殺させろッ!!」
クソ女や兵士の謝る目、クソガキの怯える目、呆れるジジイの目。
「ぶっ殺してやる!!てぇめぇら全員ぶっ殺してやるッ!!」
どうして許せる?大切な人達で代わりの居ない人達だった。俺達は幸せを奪われたのに…
あれから俺は独房に入れられ、始めの数日は何人かは面会に来た。
「…………」
その全員を殺そうとして俺は今、鎖に繋がれてた。
『お前の気持ちもわかる』
気持ちがわかる?ならアイツがこの世に存在してるだけで気が狂いそうだろ?
『相手は勇者様だぞ』
相手が勇者だから?なんでも許されるのか?
『ガキじゃないんだ』
大人だったらなんだ?大切な人が殺されても許せるのか?
『諦めろよ』
何を諦めるんだ?復讐をか?俺はただアイツが生きてる事が許せないだけだ。
そんな事を言うクソ共を殺そうとした。意味がわからん。何故、大切な人が殺されたのに許さなければならない。なぜ殺したアイツが許されたんだ?
「おい。聞いたか?」
「何をだ?」
今日は看守の奴らが騒がしい。鎖に繋がれてどれくらい経っただろうか?暴れすぎて傷付いた腕や足はもう使い物にならない。痛覚も無いので多分腐っている。前に手当てをしにきた奴に噛み付いてから放置されている。
昨日から食事も無い。今では水をかけられるだけ。
「勇者様達が超竜軍団を倒したそうだ」
「本当か!超竜軍団と言えば【リンガイア】と【カール】を滅ぼした軍団なのに!」
「すごいよな~」
「そういえば勇者様達と言えばエイミ様はどうなるんだろうな…」
「え?」
「え?」
「お前もしかしてお前エイミ様がヒュンケル殿に惚れてるの知らなかったの?」
ヒュンケルだと?
「マジかよ…ショックだ」
「ああ。許されたとはいえパプニカを一度滅ぼした男なんだがな…」
どういう事だ?こいつらは何を言ってるんだ?あのクソ野郎がのうのうと生きてるだけで許せんのに?
「~~~~~~~ッッ!!!」
「ッ!?うっせぇぞッ!!」
俺が騒ぐと看守は黙らせようとこんぼうで殴りつける。痛みで死にそうだが叫ぶことを我慢出来ない。
(ふざけるなッ!!どうして!どうしてッ!?)
勇者の仲間だから、アバンの使途だから。俺の大切な人は食事も、寝ることも、会話すら出来ないのに……
(どうしてッ!?どうしてあのクソ野郎がッ!?)
なぜ我慢出来る!魔王の軍勢が強いのはわかる。戦力が足りないのもわかる。だが…だが…
(何で許されるんだッ!?)
どうして生きてる事を許されるんだッ!?俺の気持ちは…大切な者を殺された俺達の気持ちはどうなるッ!?
(なぁ!?何でお前らは許せるんだ?)
俺は薄れ行く意識の中そう叫ぶ。最後に俺に残ったのは理不尽な事だけだ。
原作を読んで思いましたがヒュンケル、バランは好きですが『?』と思う事が多いですね。
あのヒュンケルが許されるシーンでのパプニカ兵の仕方ないって表情が印象強いです。
子供ながらに『え?許しちゃうの?』と思いました。
勇者達よりバーン様の方が理解出来るし共感出来ましたね。