この呪いの装備に祝福を!   作:はじ

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冒険者始動

そこは石造りの街並み。中世ヨーロッパのような風景が目の前にはあった。

 

俺が暮らしていた日本とは違う別な世界。何か感慨深いな。さてこれがこの世界での第一歩だ。やることはたくさんあるがまずは・・・・・・

 

「ねえねえ君!もしかしてこの街初めて?」

 

数歩進んだ所で横から話かけられた。振り返ると銀髪の女の子がいた。

 

「何してるんですかエリス様?」

 

さっきまで見てた顔だ間違いない。

 

「ち、違うよ。あたしの名前はクリスだよ」

 

焦ってるな。やはり本物か。

 

「ちょっと困ってるように見えたから声をかけたんだよ。それにエリスって国教にもなって崇められてる女神だよ。そんな存在と一緒な訳ないじゃない!」

 

そんなに焦ることなのかな。

 

「分かりました。クリス様。それで何の用なんです?」

 

クリスは落ち着くように一つ咳をした。やっぱりエリス様だな。

 

「さっきも言ったけど、困ってるように見えたから声をかけたんだよ」

 

「それはありがとうございます。洋服屋さんを探そうとしてたんです」

 

「店?ギルドじゃなくて?」

 

おいおい、それは自分がエリスって言ってるようなもんだぞ。

 

「見た通りの格好では動きにくいので、動きやすい服を買おうと思ったのです」

 

そう、今の俺の格好はスーツに革靴、手に先ほどもらったお金が入った袋で背中にハイペリオン。仕事帰りだったからしょうがないとはいえよくこの格好で転生させるよな。お陰で変に目立つのか周りの人の目が痛い。

 

「あぁ、その格好じゃしょうがないよね。なら案内するよ。安い服屋さん知ってるから、さぁ行こう」

 

 

なるほどその店は安かった・・・・・・でも!

 

「ねえ、安かったでしょ」

 

「あぁ安かったな」

 

だけど言いたい。ギルドから出された亡くなった冒険者の遺品って!普通の古着屋でも良いじゃないか!なぜデカデカとそれを書いて売り文句にする!こっちは冒険者始める前にちょっと萎えたよ。それに着せ替え人形にされること数十回。結局決まったのは最初に俺が選んだ服だった。これじゃあ敬語使う気も失せるな。

 

「似合ってるよ。ベテラン冒険者みたいだ」

 

まだ冒険者じゃないんですけどね。

 

今の俺の装備は、動き安いシャツと黒いズボン、ブーツ。そして黒いロングコートとさっきまで着ていたものが入っているリュック。凄い事に全部驚きの未使用品だ。さすがに洗濯してあっても使用済みの下着なんか身に付けたいとは思わない。背中にハイペリオンとスーツと2日分の替えの服を入れたリュックを背負い冒険者ギルドをクリスの案内で目指す。ちなみにリュックはサービスだった。

 

「もうすぐ着くよ。最初は視線が煩わしいかもしれないけど、気にしないようにね」

 

視線?何で?

 

「何でって考えてるね?さっきも言ったけど、今の君はベテラン冒険者みたいに見えるし、何よりもその大剣だね」

 

ハイペリオン?

 

「あんまり感じてないみたいだけど、その剣の持つ雰囲気が周りから見ると凄く禍々しいよ」

 

天界産のくせに禍々しいのかよ。原作だとそんな描写なかったはず、人間により作られたものだけど天界で作られたことに理由があるのかな。

 

「考えこんでるところ悪いけどもうすぐ着くよ。それとアタシはもう行くね」

 

へ?いっちゃうの?忙しいのかな?

 

「何か用があっただろうにここまで付き合わせてすまない」

 

「いいの、いいの。んじゃこんど何かおごってよ」

 

「わかった。ありがとう」

 

「その建物がギルドだからね」

 

そう言うとエリス様もといクリスは手を振りながら去って行った。多分天界の仕事が忙しい中案内してくれたのだろう。確かエリス様は国教として崇められてるらしいから余裕ができたら少し寄付でもしておこう。

 

「さて、行ってみるか」

 

俺はクリスを見送る為止めていた足を動かした。

 

――――冒険者ギルド――――

 

「あ、いらっしゃいませ!お仕事案内なら奥のカウンターへ、お食事なら空いてるお席へどうぞ!」

 

強い酒の匂いが鼻につく。愛想の良いウエイトレスに言われた通り俺は奥のカウンターへ向かうために歩き始めた。それにしても静かだな。クリスの言った通り視線は鬱陶しいけど、よく映画である荒くれ者に絡まれる。とかはないみたいだからよしとしよう。

 

ちょうど空いているカウンターがあったのでそこの前に立つ。

 

「冒険者ギルドへようこそ。今日はどういったご用件でしょうか?」

 

おっとりとした美人さんが受付か、これは男としてラッキーなのか?断じて浮気とかではないぞ。

 

「冒険者登録をしたいんですが」

 

「登録手数料で、千エリスかかりますが・・・・・・」

 

「これで大丈夫かな?」

 

俺はポケットから財布を取り出しエリス様からもらったお金を出した。服の買い物をした時に元々持ってた財布にお金を入れ、日本円はリュックにしまった。多分使うことはないんだろうな。死ぬ前に嫁さんと食事でもと考えてたからけっこう入ってたんだよね。

 

お金を受け取った受付の美人さんは免許証位の大きさのカードと書類を俺の前に差し出した。

 

「此方のカードは冒険者の身分証明書になります。このカードには名前、レベル、職業やスキル、モンスターの種類、討伐数等自動的に更新され表示されます。人はモンスターを討伐するとその魂を吸収します。一定の量を吸収すると急激に成長することがあり、それを俗にレベルアップと呼びます。才能があればレベル1でもスキルポイントを取得していることがありますが、基本的にレベルアップすることでスキルポイントを取得して新たなスキルを獲得していく形になります。スキル獲得方法は冒険者カードを操作して『習得可能スキル一覧』から選んでください。それでは、此方の書類に記入をお願いします」

 

えーと、記入するのは名前、身長、体重、年齢、身体的特徴か。体重?確か十六歳位まで身体が戻ってるんだっけ?

身長は182センチ、体重は65キロ、年齢は・・・・・・肉体年齢が変わっただけだから36歳、黒髪、黒目っと。

 

「はい、それでは・・・・・・えぇ!」

 

ん?なんか間違ってたかな?

 

「失礼しました。その・・・・・・年齢はこれで良かったですか?」

 

やっぱり年齢で驚かれたか。まぁ、ごまかそうか。

 

「間違ってないですよ。いろいろと事情がありまして、気にしないでいただけるとありがたいです」

 

・・・・・・女神を名乗るやつに呪いの装備を付けられて身体も若返らせられたなんてさすがに言えないなぁ。

 

「わ、分かりました。それではこちらのカードに触れてください。それでステータスが分かりますのでなりたい職業を選んでください」

 

俺は少し緊張しながらカードに触れた。

 

「えーと、アイザワユイトさんですね。なぁぁぁ!」

 

受付の美人さんがなんか驚いて絶叫した。

 

「このステータス数値はなんなんですか?スキルも発現してるし、年齢の件もあるし一体アイザワさんは何者なんですか?」

 

えーと、こういう時ってなんて言うんだっけ?嫁さんが好きだったアニメで確か・・・・・・

 

「禁則事項です」

 

「え?」

 

時が一瞬止まった。やっぱりこういうのは可愛い女の子じゃないとダメだな。

 

「気にしないでください。そういうものなんです」

 

「気を取り直しまして、アイザワユイトさん。職業ですが、貴方のステータスなら上級職も含めてどんな職業にでもなれます」

 

「その前に一つ聞きたいんですが、職業についてスキルを覚えたら転職というのは可能ですか?」

 

ここでチートもといスキルポイントボーナスという特典が活きてくる。エリス様の話で理解しているが自分が必要だと思うスキルを必要なだけ持っておけば安心だ。いうなればモフモフⅤのスッピンで魔法剣二刀流乱れ打ちのようなことも可能になるはずだ。

 

「可能ですが、転職するほど早くその職業のスキルを覚える方はほとんどいませんよ」

 

大丈夫なんだよね。多分普通の人よりボーナスあるし、モフモフⅤならパーティー組んでるし装備制限があるから出来ないけど、今の俺なら出来る最初に選ぶジョブ。

 

「大丈夫です。まずは『白魔法使い(アークプリースト)』でお願いします」

 

「分かりました。ではアークプリーストに設定します」

 

さて、初回のスキルポイントボーナスはどんなもんなのかな?

 

「あぁぁぁぁぁ!」

 

この受付の美人さん大丈夫かな?さっきから叫んでばっかりだけど!そのお陰で周りの注目を集めてるんですけど!

 

「あの!すみません。カードの確認をして欲しいのですが・・・・・・」

 

スキルポイント『くぁwせdrftgyふじこlp』。

 

なぁにこれ?

 

「こんなの初めて見たんですけど、心当たりありますか?」

 

どうしたらこの表記になるんだ?これってスキルポイントボーナスのせいでカードにおける数字がバグったのか?なら消費すれば通常表記に戻るはず。

 

・・・・・なんて思っていた時もありました。

 

アークプリーストから始まりソードマスター、ルーンナイト、クルセイダー、アークウィザード、料理人、掃除夫等々・・・・・・とりあえず職業一覧を総なめしてもスキルポイントの表記は変わりませんでした。最終的にモンスターのスキルすら教えてもらえば覚えることができる冒険者に就職した俺は叫びすぎる受付の美人さんのせいでギルド内にいた人達からも歓迎を受けスキルマスターという肩書きを頂いた。

 

とりあえず一言言いたい。

 

どうしてこうなった?

 

 

あのあと、騒ぎが大きくなったギルドでソロは無理だと言われながらも初心者向けのクエストを受け、今晩の寝床として少し割高だったが宿をとり街の外に広がる広大な平原地帯に来ていた。

 

受けたクエストは『3日以内にジャイアントトードを5匹討伐』。金属を嫌うため装備さえ整ってればなんとかなるらしい。これを受けた理由はスキルの確認や明日からの生活費稼ぎのためだ。原型をとどめていれば一匹当たり移送費を引いて五千エリス。成功報酬は十万エリス。レベルあげとスキル確認をしばらく行うと考えればしばらく常設してるらしいこのクエストはうってつけだ。と考えながら歩いていたら影がさした。

 

空を見上げると巨大なカエルが空を跳んでいた。

 

どうやら(エサ)を見つけたとばかりに向こうから来てくれたらしい。

 

最初に試すスキルは剣術だな。ハイペリオンを構えカエルの着地に合わせて切りかかる。卑怯と言ってはいけない。命のやり取りなのだから、しかも今回はレベリング及びスキル確認の調整なのだ。自分の安全を第一にドリクエ風の戦闘作戦を決めるなら『いのちをだいじに』だ。

 

魔剣補正なのかスキル補正かは分からないが、初撃で決まってしまった。これで五千エリス。周りを見ても平原が広がりカエルが見当たらない。後四匹今日中に倒してクエストクリアしておきたいんだが・・・・・・確かこういう時に使うアークプリーストで取ったスキルがあったな。

 

『フォルスファイア』

 

敵寄せのスキルである。が、調子にのって魔法威力増大やら魔法範囲拡大やらのスキルを最大値まで上げた結果なのか何もなかった平原のあちらこちらからジャイアントトードがぽこぽこと這い出て来た。

 

やっちまったなぁ!

 

この状況。『いのちをだいじに』を元に考えるならコマンドは逃げるだな。でもこの状況じゃさっき倒したカエルをギルドで回収するのもままならいだろうし、やれるだけやったほうがよさそうだ。

 

『筋力強化』

 

『速度強化』

 

『防御力強化』

 

俺は身体強化のスキルを掛けてあらためてハイペリオンを構える。

 

心がけるのはヒットアンドアウェイ。一撃入れたら次へ無駄なく行く。イメージはマンガを実写化したワイヤーアクションのやつ。

 

「いくぞ!」

 

 

・・・・・・疲れた。生き残れた事を良しと考えるなら心地良い疲れなのかもしれない。魔剣補正やソードマスターのスキル補正様々な状況だが汗だくだし足はガクガクだし肉体年齢は若返ってる訳だが、社会人になって十数年まともな運動してないから身体はついて行ってるが精神がついていかない。それに命のやり取りによるストレスがこんなにキツイとは思ってなかった。風呂に入って寝たいな。だけど・・・・・・ギルドに報告がてらとぼとぼ歩く今の俺は周りから見るとどう映るんだろうか・・・・・・

 

異世界生活1日目。こんなにナーバスになってはやっていけない。魔王を倒して嫁さんにもう一度会うんだ気合いをいれよう。こういう時は楽しみを見つけるんだ。何かないか?うん、まずは食事やお酒だな。それにタバコを吸ってるやつもいたし明日はいろいろ見て回ろう。

 

「いらっしゃいませー、あっ!帰って来た!」

 

どうやら俺はいつの間にか有名になっていたらしい。

 

「どうせこの様子じゃ、ソロがキツくて帰って来たんじゃねえの?」

 

「カエル一匹倒せずにか?」

 

好き勝手言いやがって。シバいてやりたいが身体があんまり動かん。カエルに感謝しろよ。俺は馬鹿にされんのが一番ムカつくんだ。俺は善いことだろうが悪いことだろうがやられたらやり返すのが信条なんだ。

 

奥のカウンターまで足を動かすとさっきもいた絶叫する美人さんに告げた。

 

「クエストは終わらせたから報酬をください」

 

「へ?」

 

確か冒険者カードを見せるんだったな。財布からカードを取り出してカウンターに置く。

 

「は、はい。えぇぇぇ!」

 

カードを見てカウンターにある妙な箱を操作して確認してた美人さんはまた絶叫してる。

 

「この短時間で二十六匹って何やったんですか?」

 

「切った・・・・・・」

 

「「「二十六匹!」」」

 

ギルド内にも絶叫が伝染した。伝染するものなの?

 

「ほ、報酬はギルドがモンスターの回収を行ってからの支払いになりますので明日でも大丈夫でしょうか?」

 

えっ!今貰えないの?服買ったり宿取ったりしたから残金が心許ないんだけど。

 

「分かりました。それと一つ聞きたいんですが今日この街に来たばかりなので地図など有りませんか?」

 

宿に風呂はなかったし、洗濯もしたいし日用品も必要になる。

 

「それならこれをどうぞ」

 

折り畳まれたそれはショッピングモールによくあるやつに似ていた。

 

「ありがとうございます。ではまた明日」

 

貰うもの貰ったらさっさと帰ろう。此処にいると絡まれそうだ。

 

 

宿に戻って地図を開くと大衆浴場を見つけたので行って来た。洗濯もそこでやって乾燥もした。魔法スキル様々だ。夕飯はその辺の屋台の謎肉で済ませ、今は宿のベッドの上だ。

 

「ふぅ・・・・・・」

 

手で冒険者カードを操作する。これが俺の今のレベルとステータス。カードに表示されたレベルの数値は9。ステータスもギルドで見た時よりも数値が増えている。スキルポイントは文字化けしたまま。なんかゲームみたいだな。文字化けは裏技したみたいだし。ただの特典なんだけど・・・・・・駆け出しでは今日のカエルはレベルを上げやすいモンスターらしいが二十六匹も狩って9レベル。ロープレ的には上がってるほうだ。だが、狩りやすいモンスターでこのレベル。ドリクエでいうところのスライムに当たるんをだろう。今後の事を考える意味でもこの世界について学んだ方が良いみたいだ。地図を見ていて気づいたけどこの世界でも図書館があった。明日必ず行こう。

 

それに今日のクエストは通常パーティーを組んで行うものらしい。5匹討伐で10万エリス。5匹とも引き取りで2万5千エリス。五人パーティーで日給2万5千エリス。日本だと残業込みで日給換算だと1万3千円。プラス1日当たりの命の値段が1万2千エリス・・・・・・これをどうとらえるのかが冒険者としてやっていけるかどうかのラインなんだろうな。しかし俺の場合、今回はソロで二十六匹だから13万エリスとクエスト報酬10万エリス。ストレスは感じたがどうにか対応出来るだろう。明日日用品を買ったりするには十分な稼ぎのはずだ。この宿の連泊予約も明日しておこう。

 

明日の予定も決まったことだし、気になってたスキルの確認をしておこう。操作して見つけたものだけど『幸運の女神の加護』と『水の女神の呪い』、そして『魔力回復』。多分エリス様が転生直前にくれたものと、多分『アポカリプス』のせいで一度死んだからだろう。だけど『水の女神の呪い』ってウケるな。それと俺の命綱の『魔力回復』。こうして考え事をしてる間も吸われっぱなしなんだろうな。

 

アクアなら『呪いってなんなのよー』って叫ぶんだろうけど、今度会ったら絶対ぶん殴る。

 

そんな事を考えながら俺は眠りに落ちた。

 

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