IS〈イノウエ シンカイ〉   作:七思

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最近思ったんですが、ロケットパンチにパイルバンカー組み合わせたら最強じゃね?


第51話 前兆

「はああぁぁぁっ!!」

「おおおおぉぉっ!!」

 

 アリーナ内の広大な空間を、白と蒼が飛翔する。凄まじい速度で一直線に突き進む白を巧みにかわしつつ、蒼が反撃の光線を撃ち込んでいく。

 

「お行きなさい、ブルー・ティアーズっ!!」

「頼むぜ、雪花あああぁぁっ!!」

 

 蒼――セシリアが操るブルー・ティアーズから、機体と同名の四機の自立機動兵器が分離し、白――一夏が駆る白式・雪花を取り囲む。

 同時に放たれる、四条の光線。その全てが高速で動く白式を直撃し、追い打ちとばかりにセシリアが両手で持つ大型レーザーライフル、スターライトmkⅢから一際強烈な光線が放たれ、吸い込まれるように白式へと突き刺さった。

 

 ――だが。

 

「――ぜぇぇぇあああっ!」

「くっ!」

 

 白式を包み込む白い光――無数のナノマシン、雪花が展開する力場に阻まれ、白式にダメージを与えられない。

 

「おおおおっ!」

「このっ……!」

 

 凄まじい速度で近付いてくる一夏にミサイルビットを向け、二発のミサイルを撃ち込む。一夏は回避も防御もせず、白式の唯一の武器、雪片弐型を肩に担いだまま、真っ直ぐにセシリアへと突撃した。

 当然ミサイルは直撃、赤い爆炎に包まれるが――

 

「これも効かないだなんて……!」

 

 一夏は止まるどころか減速すらせず、さらにセシリアとの距離を詰めて来る。セシリアも正確な射撃を繰り返しながら逃げるが、白式とブルー・ティアーズの機動力には差が有りすぎる。次第に追い詰められ、そして――

 

「はあああっ!!」

 

 雪片弐型が眩い輝きを放ち、光の剣となる。白式の単一仕様能力(ワンオフ・アビリティ)、零落白夜の発動である。

 その刃が、肩に担いだ姿勢から渾身の力を込め振り下ろされ――

 

「きゃあああっ!!」

 

 ――ブルー・ティアーズを、捉えた。

 

 

 

――――――――――

 

 

 

「……はあ……」

 

 熱いシャワーを浴びながら、深い溜め息を吐きました。

 この憂いも、汗のように洗い流してくれればいいのに。

 

「……これで、ついに……負け越しですわね」

 

 夏休み明けの、最初のIS戦闘実習。わたくしは一夏さんと戦い――為す術無く、敗れました。夏休み中にも何度か試合をしましたが、全て同じように負けています。

 

「……無様ですわね……」

 

 一夏さんの白式が第二形態に成ってから、わたくしは一度も勝てていません。それどころか、最近では勝負にもならないことすらあります。

 

 なにせ、わたくしの攻撃は――一夏さんに、効かないのですから。

 

「……はあ……」

 

 白式・雪花に勝てていないのは、わたくしだけ。

 

 真改さんは、雪花の防御力を貫いて余りある攻撃力を持っています。それだけでなく、一夏さんを遮断シールドや地面に叩きつける投げ技なら、雪花も役には立ちません。

 

 箒さんは、猛烈な飽和攻撃で雪花を消耗させることが出来ます。勝敗は五分五分といったところですが、全敗のわたくしとは比べるべくもありません。

 

 鈴さんは、双天牙月と衝撃砲の同時、集中攻撃で雪花の守りに穴を空けることが出来ます。甲龍の燃費の良さも相まって、勝率は安定しています。

 

 シャルロットさんは、豊富な火力と巧みな戦術で封殺することが出来ます。それにリヴァイヴの最強の武器である〔灰色の鱗殻(グレースケール)〕は密着状態から放たれるので、雪花の守りが入る余地がありません。

 

 ラウラさんは、雪花もAICは無効化出来ないので、それにより動きを止めて一方的に攻撃出来ます。ラウラさん自身、元々戦闘力が高いので問題無く戦えています。

 

 ――わたくしだけが、一夏さんに対する有効な手段を持っていないのです。

 

「どう……すれば……」

 

 一夏さんが強くなったことは、当然喜ばしいことです。最近はさらに逞しくなり、その顔の精悍さは思わず目を引かれてしまうほど。

 

 けれどそれでも、負けたくないのです。

 

 好きな男性(ひと)だからこそ、尚更に。

 

「勝ち……たい……」

 

 勝ちたい。

 

 勝ちたい。

 

 正々堂々と、真っ向からぶつかって、勝ちたい。

 

 一夏さんとの最初の勝負、そして勝利。真改さんに教えられた、勝利を誇るという在り方。

 

 それを、失いたくない。

 

「勝ちたいです……一夏さん……」

 

 悔しい。今のわたくしは、無力です。ただ守られるだけの、無力な存在。

 

 ――そんなのは、嫌です。

 

 わたくしは、あの人の隣に、並び立ちたいのに――

 

「……あなたに、勝ちたいです……」

 

 ああ、力が。力が欲しい。

 

 守るための力ではなく。

 

 わたくしが、わたくしを誇れるような。

 

 胸を張って、在れるような。

 

 そんな、魂の輝きのような、力が――

 

 

 

――――――――――

 

 

 

「あら、真改さん。ごきげんよう」

「おお~、せっしー。ごきげんよ~」

「…………」

 

 本音と共に部屋を出たところで、スカートの端をつまみながらセシリアが優雅に挨拶して来た。本音は間延びした返事を、己はいつものように無言を返した。

 

「どちらに行かれるのですか?」

「……食事……」

「あら、奇遇ですわね。それでしたら、わたくしもご一緒させて――」

「お、シンにのほほんさん、それにセシリア。これから飯か? 丁度良いや、一緒に行こうぜ」

「あ……」

 

 するとそこに一夏がやって来た。その申し出は己としては断る理由もないし、セシリアも普段なら喜ぶのだろうが――

 

「……すいません、真改さん。わたくし、急用を思い出しましたわ。お食事はまた今度に」

「…………」

 

 そう言って、セシリアは去ってしまった。その背中には、いつも満ち溢れている自信がなかった。

 

「どうしたんだ、セシリアのやつ? なんか元気なかったな」

「いのっち~。おりむーがいつも通りです~」

「……諦めた……」

「は? どういうことだよ?」

「自分の胸に~、聞くといいよ~」

「…………」

 

 セシリアが沈んでいる理由など、一つしかあるまい。

 今日の敗北で、セシリアは一夏に負け越したのだ。誇り高いセシリアには耐え難いことだろう。

 

(……相性……)

 

 仕方のないことではある。セシリアの専用機、ブルー・ティアーズは、ビットによる攪乱と狙撃でじわじわと削る戦術を主にしている。それでは攻撃力が足りず、白式の防御力――雪花の回復に追い付かないのだ。

 元々ブルー・ティアーズはBT兵器のデータ蓄積を目的とした実験機であり、戦闘向きでないというのも大きな理由だ。武装が近接格闘用ブレード一つしかないとはいえ、白式の性能そのものは極めて優れているのだから。

 

(……だが……)

 

 そんな言い訳では、自分を納得させることなど出来まい。仮に誰かがそう言っても、セシリアは断固として否定するだろう。負けた理由を機体のせいにするなど、セシリアのプライドが許す筈がないのだから。

 

「……難儀……」

「ん? シン、何か言ったか?」

「…………」

 

 思わず漏れた呟きに一夏が反応するが、それには応えない。己は既に思考に没頭していた。

 

 ――さて、どうするか。

 

 セシリアは剣士ではない。一夏の時のように、剣で語ることは難しいだろう。

 かと言って、言葉で語り合うことはもっと難しい。こんな時、自分の口下手さ加減にうんざりしてしまう。

 

 どうすれば伝えられるのか。

 

 ――焦ることはない、と。

 

 セシリアはまだ若く、才能がある。今はまだ、しっかりとした土台を作る段階だ。ブルー・ティアーズも、実験機ということはこれからいくらでも改良される余地がある。

 

 焦る必要などないのだ。まだまだ、これからなのだから。

 

(……無茶を……しなければ良いが……)

 

 あまり根を詰め過ぎると、心も体も壊してしまう。プライドの高いセシリアは誰かを頼ることを苦手としているから、自分一人で抱え込んでしまわないかが心配だ。

 

(……さて……)

 

 どうするか。自分の無力さに苦しんだ者として、セシリアの悩みには共感出来る。

 

 何か、力になりたいが――

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 ――さて。

 

 セシリアの件で色々と考えてはみたものの妙案は浮かばず、何事もなく時は流れた。

 今日は今月の中程に行われる学園祭について、全校集会が開かれた。 

 

「それでは、学園祭について生徒会長から説明していただきます」

 

 生徒会の役員であろう人物――どことなく顔立ちが本音に似ている気がする――がそう告げると、騒がしかった集会場が瞬く間に静まる。それを見計らって、一人の女子が壇上へと上がった。

 

 ……はて。この顔にも、どことなく見覚えがあるような……?

 

「やあみんな。おはよう」

 

 気さくな挨拶をする生徒会長は、二年生のリボンをしている。先程の役員は三年生だったことを考えると、この生徒会長は余程優秀な人物なのだろう。

 

 ……だがそんな推測とは別に、己の本能が警告している。

 

 ――関わるな、碌でもないことになるぞ。

 

「本当は入学式で挨拶する予定だったんだけど、みんなご存知の通り、今年は色々忙しくて。けれどようやく、こうやって自己紹介が出来るわ。

 私は更識(さらしき)楯無(たてなし)。この学園の生徒会長よ。以後、よろしくね」

 

 そう言って笑顔を浮かべる楯無会長。それはとても魅力的な笑顔だったのだが、どういうわけか己の警戒心を刺激した。

 

「さてさてそんなわけで、さっそく本題に入るけれど。今月は学園の一大イベント、学園祭が開催されるわ。この学園祭、いつもは出し物ごとに来賓、生徒が投票を行い、その結果に応じてデザートのフリーパスや部費の分配にボーナスが与えられる仕組みでした。しかし今年は、今回限りの特別ルールを導入します。その内容と言うのは――」

 

 楯無会長は懐から扇子を取り出し、並んだ生徒たちをなぞるように横へと動かした。その動きに合わせ、空間投影ディスプレイが浮かび上がる。どういうわけか嫌な予感も加速していく。

 

 そして、その予感は――

 

「――名付けて、〔各部対抗織斑一夏争奪戦〕!」

 

 ――現実となった。

 

 ぱんっ! と小気味良い音を立てて扇子が開かれる。同時に空間投影ディスプレイに一夏の写真が表示される。その下には優勝賞品の文字。さらにはパンパカパーンという気の抜けるファンファーレに紙吹雪までついていた。

 

(……そういう……手合いか……)

 

 くらりと、眩暈のようなものを感じた。ああ、頭が痛い。周囲の生徒たちによる驚愕と歓喜の入り混じった地鳴りのような大歓声のせいではないだろう。

 

「学園祭。それは遊びたい盛りの若者にとって最大のお祭りであり、同時に共同作業(チームワーク)を身につけるためにとても重要な実習。これを果たして、毎年似たようなルールのもと行われる、退屈なイベントにしていいのだろうか!?

 答えは否っ!! そんな学園祭はつまらないっ!! なので、今回は――」

 

 いや、つまらなくはないだろう。各クラス・各部対抗、それだけでも相当に盛り上がると思うのだが。

 だがそんな己の考えは当然届くことなく、楯無会長は手に持つ扇子をびしりと突き出す。

 

 その先に居るのは、勿論一夏である。

 

「織斑一夏を、一位の部活に強制入部させましょうっ!」

 

 その言葉に、再び雄叫びがあがる。その音量は凄まじく、まるでこれからどこかに攻め込む軍隊のようであった。

 

「うおおおおおおおっ!!」

「素晴らしい、素晴らしいわ会長!」

「一生ついて行きますっ!」

「………………」

 

 ……なんてことをしてくれたんだ。凄いことに……いや、酷いことになるぞ、間違い無く。

 

「さ、ら、にっ! 今回の学園祭には、特別ゲストを呼んでいますっ!!」

 

 なんだ、まだ何かあるのか。

 もういい、どうにでもしてくれ。これ以上なにが来ようと構うものか。

 

 ……だが――

 

「どうも、初めまして。チェーンソー、ドリル、パイルバンカー、大艦巨砲、なんでもござれ。皆さんの暮らしに浪漫をお届け、如月重工です」

 

 ――その人だけは、やめてくれ。

 

「ご存知の方も居るとは思いますが、僕らは今年からIS学園における研究、開発に、技術面での協力をすることにしました。つきましては友好の証として、学園の一番の財産である生徒の皆様方に贈り物をしたいと思います」

 

 言うまでもないが、壇上に現れなにやら話し始めたのは如月社長である。

 

 ……大人しく会社で仕事していてくれないか。

 

「学園祭で、僕たちは抽選会を開催します。参加費は無料ですが、クジを引けるのは一人につき一回まで。そして当選するのは一人だけ。見事当選した方には、優先的な協力を約束するとともに、豪華賞品を提供します」

 

 社長の言葉に、生徒たちがざわめく。

 如月重工は特別な後ろ盾もなしに、その技術力だけで一代でのし上がって来た企業だ。ここで開発される物は常に他の企業の数歩先を行く。その如月重工の協力を得られるとなれば、それは極めて大きなアドバンテージだ。

 だがそれ以上に気になるのは、豪華賞品とやらである。如月重工は優れた技術力を持つということ以上に、独特かつ理解し難い思想を持つ変態企業として有名なのだから。

 

「その豪華賞品とは――こちらですっ!!」

 ババーンッ!!

 派手な効果音と共に、空間投影ディスプレイの写真が切り替わる。

 一夏の写真に代わり、そこに写し出されたのは――

 

 

 

「……勘弁……」

 

 デフォルメされた、三頭身くらいの。

 

 ――己の、人形だった。

 

「この1/6井上君人形を差し上げますっ!!」

「「「「「「う……うおおおおおおおぉぉぉぉっ!!!」」」」」」

 

 もう表現するのが不可能なくらいに盛り上がる生徒たち。その人数は先程の一夏の時よりも少ないようなのに、勢いでは比べ物にならない。どういうことだ。

 

「これはただの人形ではありません! 我が社の技術力を結集して作り上げた、自ら思考、稼働する特別製なのです! 登録された人物を主人として認識し、ISに使われているPICを応用した技術で浮遊して追従する! モチロン、井上君本人から採取した声紋も完全再現していますっ!」

「な、なんてこと……!」

「如月重工、やってくれるわねっ!!」

「ほ、欲しい……! これはなんとしても欲しいっ!!」

「……………………」

 

 社長が説明するたび、生徒たちは一層の盛り上がりを見せる。なんなんだ。一体何が起きているんだ。

 

「これをっ! 抽選で一名様にプレゼントっ!! 先述の通り我が社の技術サポート付きです! ご希望の方は奮ってご参加下さいっ!!」

「いよっ! 社長っ!!」

「日本一っ!!」

「私、今まで如月重工のこと誤解してました……!」

「………………………………」

 

 悪夢だ。悪夢過ぎる。いや、悪夢であったならどれほど良いか。

 む、少し待て。これっていいのか? 法律的に。肖像権とか侵害してるんじゃないのか? 少なくとも己は許可していないぞ。そんなことを言っても如月社長には意味がない気がするが。

 

「それでは皆さん、今日のところはこれで失礼します! 次は学園祭で会いましょうっ!!」

 パチパチパチパチ!!

 

 盛大な拍手で見送られる如月社長。……やはり学園祭にも来るつもりか。

 

 ……悪夢だ……。

 

 

 

――――――――――

 

 

 

「学園祭か……」

 

 全校集会が終わり、一息ついて。

 ラウラ・ボーデヴィッヒは今回の学園祭について、考えを巡らせていた。

 

「ふむ……いい機会かもしれんな」

 

 最近ようやく、クラスの一員として受け入れられて来たと思う。ラウラ自身もクラスメイトたちを大切な仲間と思うようになっていた。ここいらでもう一つクラスのために何かアクションを起こせば、完全に溶け込めるかもしれない。それには学園祭は絶好のシチュエーションだ。

 

「うむ、それが良い。となれば、ここは……」

 

 そこでラウラは、こんな時に頼れる人物にアドバイスを貰うことにした。その人物とは勿論、ラウラが率いる特殊部隊、〔シュヴァルツェ・ハーゼ〕の副隊長、クラリッサ・ハルフォーフ大尉である。

 

『――受諾。クラリッサ・ハルフォーフ大尉です』

「ラウラ・ボーデヴィッヒ少佐だ」

『おお、隊長。今日はどうしました?』

「うむ、毎度のことで済まないのだが、またお前の助言が必要になってな」

『なるほど、つまり私はまた隊長のお役に立つことが出来るのですね』

「そう言って貰えて嬉しい、クラリッサ」

 

 なにやらとても仲むつまじい二人。ラウラは純粋に、頼りになる副官としてクラリッサを信頼しているのだが、クラリッサの想いには色々な不純物が混じっていた。

 

『ところで隊長、私に訊きたいこととは?』

「うむ。今月学園祭があるのだが、その出し物は何がいいかと思ってな」

『メイド喫茶です』

 

 即答だった。脊髄すら介していなかった。

 

「メイド喫茶……だと……!?」

『ええ、メイド喫茶です。それ以外あり得ません』

「な、何故だ? 何故メイド喫茶なのだ……?」

『IS学園の学園祭には、限られてはいますが外部の人間が訪れます。休憩所として喫茶店の需要はあるでしょう。そして隊長のクラスには、隊長を始めとして容姿に優れた者が多くいます。それを最大限活かすことが出来るのは、メイド喫茶です』

「ふむ……メイドとはそんなに優れたものなのか?」

『はい。スクール水着、ブルマ、そしてメイド服。これらは三種の神器と呼ばれており、男性に対して絶大な視覚効果を誇っています。またこれらに次いで強力な武装として、巫女服や裸ワイシャツ、裸エプロンなどが挙げられます。是非とも覚えておいて下さい』

「な、なるほど……」

 

 クラリッサは着々とラウラの洗脳を進め、自分好みの少女へと変えていく。

 

『そして隊長は、メイド服により織斑一夏に隊長の魅力をアピールすることが出来るのです』

「! ……いや待て、メイド喫茶ということは、私以外もメイド服を着るのだろう? 私だけがアピールするということにはならないのではないか?」

『確かにその通りです。ですがメイド服には、一つの特徴があります』

「む? 特徴……?」

『はい。メイド服は、銀髪と相性が良いのです。そしてデザインをゴシックロリータ調のものにすれば、隊長のような小柄な体形には一段と似合います』

「むう……クラリッサ、やはりお前は頼りになるな。その深い知識は私にとってこの上ない武器だ」

『恐悦至極』

「では、今回はこれで通信を終わる。また何か訊きたいことがあれば連絡する」

『分かりました。いつでもどうぞ、何時であろうと即応します』

「ありがとう、クラリッサ」

 

 こうして通信を終えたラウラは、クラリッサへの信頼をさらに深めた。

 

 彼女が師事する相手を間違えていることに気付くのは、遥か先のことになるだろう。

 

 ……あるいは、永遠にその時は来ないかもしれない。

 

 

 

――――――――――

 

 

 

『では、今回はこれで通信を終わる。また何か訊きたいことがあれば連絡する』

「分かりました。いつでもどうぞ、何時であろうと即応します」

『ありがとう、クラリッサ』

 

 通信を終えたクラリッサは、表情を引き締めて居住まいを正し、覇気に満ちた声を発した。

 

「全隊員、集合っ!」

「「「はっ!」」」

 

 その声に従い、訓練中だった〔シュヴァルツェ・ハーゼ〕の隊員である少女たちが素早く集合する。

 

「諸君! 先程隊長から通信があった」

「え、隊長から?」

「どんな内容なのですか、お姉様?」

 

 ちなみにクラリッサは隊員たちから慕われるあまり「お姉様」と呼ばれている。クラリッサ本人もその呼び方をとても気に入っていた。

 

「IS学園の学園祭で、隊長のクラスはどんな出し物にすればいいか、とな」

「学園祭!? 一大イベントですね!」

「ああ、これは隊長の可愛らしさを世に示すまたとない好機だ。そこで私は隊長にお教えした。

 ――出し物は、メイド喫茶にすべきだ、と」

 

 一瞬の沈黙。

 

 そして爆発。

 

「きゃああああっ!!」

「メ、メイド喫茶!? それって、つまり……!」

「隊長がメイド服を着るってことですね!?」

「ああそうだ、隊長が、あの隊長が、メイド服を着るのだっ!!」

「「「きゃあああああああっ!!」」」

 

 そしてシュヴァルツェ・ハーゼの隊員たちは、すでに全員がクラリッサにより教育済みであった。

 

「想像してみろ。あの隊長がゴスロリメイド服に身を包み、冷たい眼でご奉仕する姿を。

 ……光が逆流して来ないか?」

「しますっ! 超しますっ!!」

「わ、私は鼻血が……!」

「そうだろうそうだろうっ!! だがその姿、妄想だけで満足出来るかっ!?」

「「「否っ! 否っ! 否っ!」」」

「そうだ、出来るわけがない! ならばどうするっ!? 我々はどうするべきだ!?」

「……見たいです」

「見たいです、お姉様っ」

「メイド服を着てる隊長が見たいですっ!」

「ならば見に行こう、隊長の晴れ姿をっ! IS学園に乗り込み、この目にしかと焼き付けようっ!!」

「「「うおおおおおおおっ!!」」」

「だがいくら学園祭と言えど、IS学園の警備は厳重だ。大勢で乗り込むことは出来ん。……そこで私が一人で行き、隊長の姿を写真に収めてくる」

「なっ、一人でですか!?」

「そんな、いくらお姉様でも危険ですっ!」

「危険は承知の上だ。だが誰かがやらねばならん。そして失敗が許されない以上、最も成功率の高い人員を選出するべきだ」

「しかし……!」

「それに。今回の潜入では隊長の写真を入手するだけでなく、嫁である織斑一夏、相棒である井上真改の情報を集めて来る。それには隊長から直接話を聞いている私が適任だ。

 ……私が行かねばならんのだ。たとえ、どれほどの危険が待ち受けていようと」

「「「お姉様……」」」

「だが約束する。私は必ず、お前たちの元に帰って来る。勝利と共に。そして皆で、隊長のゴスロリメイド服姿を愛でようっ!!」

「お、お姉様ぁ……!」

「私、待ってます……! お姉様を信じて、待ってますからっ!」

 

 

 

 ――こうして。

 

 国際問題に発展しかねない作戦が、個人の歪んだ欲望により開始されることになった。

 

 

 

 




魔法少女スマイリーメイARETHA

 いわゆる二期。メイ・グリンフィールド、一期でメイと仲良くなったエイ=プール、新たな魔法少女リリウム・ウォルコットたちの活躍を描く。



メイ・グリンフィールド

 主人公。アーマメンツ○学校に通う○年生の女の子。まだ幼いのに将来有望(主に胸が)。
 一期で仲間になった人々と共に、世界を滅ぼすほどの力を持つという魔道具、「アルテリア」を巡る事件の解決に乗り出す。

「友達になるのなんて、簡単だよ。……私を、上手く盾にしてね」


エイ=プール

 メイの友達。金がないのでメイの家に居候している。
 メイが事件に首を突っ込みだしたので、メイと一緒に戦いに身を投じる。けどあくまでボランティアなので、給料出ない。

「仲間ではありません――僚機です」


リリウム・ウォルコット

 アルテリアの主に選ばれ、悲劇的な運命に巻き込まれた少女。
 物語終盤に魔法少女としての資質に目覚める。唯一の身内であるお爺ちゃんがボケて介護施設に入ってしまったため、一人暮らしで寂しい想いをしている。

「リリウムが新しい名前をあげます。汝、緑の輝きを放つ者――アクアビットマン」


守護紳士

 アルテリアから生み出された、主であるリリウムを守る存在。全員が一撃必殺の攻撃力を持っており、どれほど追い詰めても油断出来ない。


ネオニダス

 守護紳士のリーダー。超火力の攻撃を目眩ましにして貫通力の高い攻撃を紛れ込ませ、確実にダメージを与えるという巧妙な戦術を極めている。
 その高い戦闘力でメイたちを圧倒する。

「私のPAを貫くとはな……良い師を持っているようだ」


トーティエント

 守護紳士のアタッカー。近距離から放たれる猛ラッシュはあらゆる相手を瞬殺するほど強力。
 ストイックな考え方をしているが、人情にはそれなりに厚い。

「アサルトォォォォ、アーマーァァァァァッ!!」


PQ

 守護紳士のバックアップ。絶え間ない連続攻撃の中にさり気なく致命の一撃を混ぜ、相手を倒す。
 召還魔法を得意としており、その威力は絶大。主に精神的な意味で。

「私はこの子を、黒い悪魔とは呼びません。優れた生命力、そして愛らしさ――鎧土竜ですっ!」


ブッパ・ズ・ガン

 守護紳士のスナイパー。一瞬のチャンスを虎視眈々と狙い続け、一撃で勝負を決する。
 攻撃力は守護紳士随一で、全てを灰燼に帰すほど。特に仲間と組んでの戦闘で力を発揮する。

 セリフ無し。


メノ

 メイのお母さん。きょぬー。


ローディー

 メイのお父さん。渋い。
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