子兎の人形師は何を想う   作:夜空人

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No.18/ボクッコ✖スエッコ✖ダンギ

レツはキキョウに連行されて、女や妻としてのアダルティーな領分の話や知識を仕込まれ、耳年増に改造されてしまった後、翌日になって、イルミとカルトが居た部屋に返された。

レツは顔から湯気が出るくらいに、プシュ~~~と真っ赤にさせていた。

 

「うう……(ああ~~~、もしかしなくても僕、ゴンに口説かれていた、ってことだよね。 …今ならキルア達の反応がよく分かってしまう…。)」

 

戻りながらも、レツは気づかなくていいことに、気づけるようになってしまったのだ。

そして扉を開けると、イルミはいつもの無表情だが、カルトは、物凄く忌々しそうに鬼の形相でギリギリしていた。 そのリアクションにレツは質問する。

 

「……何があったの?」

「…ああ、つい三日前に、ゴン達が試しの門の【1】を開いたらしくてね。」

「せっかく帰って来た、キル兄様は連れていかせない……!」

「…なるほど。 本当に兄弟が好きなんだね。 …羨ましいな。」

 

そのレツの言葉に、カルトは八つ当たりに近い感情で、レツにも怒気を向けていた(ちなみに昨日、容易く攻撃を防がれたことも入っている。)のが一気に霧散した。

 

「…昨日の話を聞いてると、ボク達を羨ましいと思うのが分からないんだけど?」

「…今の僕の『家族』は、そこまで分かりやすく感情を出さないからね。 一回り歳が離れた末っ子だからなのか、たまに何考えてるのかわからない時があるんだ。 あと、とんでもないウソつかれる時もあるし。」

「ふぅん……ボクと同じか、近い関係の『家族』なんだ。」

「そっか、君も末っ子って言ってたね。」

 

カルトの疑問にレツは答え、少し考える。 そこでイルミから話がかかる。

 

「そういえば、昨日母さんに連れられたけど、まだ親父達と会ってないよね?」

「? …うん。 会ってないと思う。」

「ならレツにはそこにも行ってもらわなきゃだね。 道はオレが案内するよ。 …カルトはどうする?」

「…【絶】で、試しの門付近まで行ってみて、自分で観察してみる。」

 

その言葉にイルミは僅かに目が細まったが、カルトはそのような思考では無いと、把握しているので、「そうか」と返事をして、三人はバラけた。

 

 

~~~

 

「さ、ここだけど、オレは次の仕事が入ってるからここまでだね。」

「そっか、イルミさんも元気でね。 …絶対にヒソカあたりに殺されないで。」

 

そのレツの言葉にイルミは僅かに目を見開きつつも、尋ねる。

 

「…それはどういう意味かな。」

「単純に死んで欲しくないし、キルア達に僕と同じ思いをさせないで、ってだけ。」

「……オレたちは殺し屋だからね。 残念だけど保証はできない。 でも、態々殺されてやりはしないよ。」

 

そんな話をして、二人は解散し、そのままレツは挨拶をして、レツはドアを開けた。

 

「フゥ~~~、お邪魔します。」

 

そこには、クッションが沢山盛られた上に堂々と座ったゆったりと寛ぐライオンのような豊かな銀髪美丈夫の人物であった。

 

「お前が、キキョウとイルミが勧める、レツか。」

「はい、そうです。」

「ほお、この娘がイルとキルが、ハンター試験で会った、知り合いの子じゃな。」

 

すると、唐突に後ろから、発された声に振り返ると、レツの斜め後ろには、両手を腰の後ろに回した老人が立っていた。鋭い眼光と顎より長く垂れ下がった口髭と『一日一殺』と書かれた服が特徴的な人物。

 

「儂は、ゼノ=ゾルディック。」

「俺は、シルバ=ゾルディックだ。」

「レツです。おじゃましてます。」

 

二人は興味深そうな顔で、レツを上から下まで全身を一瞥された後になんか納得した。レツがはてなと首を傾げる。

 

「…なるほど、確かに、キキョウが嫁候補に、どうだと言うのは、どんな娘っ子かと思うてな。」

「ああ、なかなか面白い素材だな。」

「はい?」

 

レツをそっちのけでよく似た笑いかたを披露する親子に、レツは疑問符を浮かべていると、本題を切り出した。

 

「何、キキョウから提案されての。 ちと質問に答えてくれ。」

「といっても、聞きたいことは二つだ。……今、ここを目指している『友人』に関してはどう思っているんだ?」

 

シルバはゴン達について質問してきて、レツがどのような思想を抱いているのか、今一度確認したいのだ。

 

「う~ん…僕たちを『友達』と言ってくれたのは、やっぱり嬉しかったな。 でも僕個人としては、やっぱり分からないのが、結論かな。」

「そうか…では、俺の子についてはどう思ってる?」

「うん、しばらく考えて見たんだけど、キルアとどうしても良い感情が無かったのって、兄さんが居なくなる前の僕に似てるからなんだなって。 その眼鏡を外すと、互いに距離感が分からない。」

 

そのレツの発言に、二人は眉を上げる。 そのままレツは続ける。

 

「イルミさんは、やっぱり兄さんに似てる人っていうのが大きいかな。 カルトの事はそんなに話していないから分からない。」

「ふむ……なるほどな。」

「なるほどのぉ… 儂は良いと思うがの。」

「そうだな…。」

「?」

 

レツをまたしても置き去りに、二人は頷くと相談をし始める。

しばらくすると、ゼノが喋り始める。

 

「キキョウの推薦を実際に見て、聞き、判断しようと思っていたが、まぁ嫁候補としては十分じゃろ。」

「え?」

「ああ、これは俺と親父、キキョウの3人で決めたこと。 まぁ、だからと行って強制もしないし、特に変わるわけでは無いから、安心してくれ。」

「これで、お主は大義名分を得た。 キルと、そこにいるであろう、お主の武器を監修した、もう一人の孫にも会うていくと良い。」

 

その言葉にレツはつい固い声音になってしまうが、シルバは特筆するべき心配事は無いと言い、ひとまず納得したレツは挨拶をして、その部屋を後にし、そこに居た執事に着いていった。 ちなみにしっかりと番号交換は行った。

 

 

+++

 

遡ること三日前。

 

一方、この十五日で《試しの門》の【1】をクリアした三人は、ミケに食い殺された侵入者を片付ける掃除夫が暮らす山小屋。

 

「いや~驚いた…まさか三人とも、二週間と一日で、やっちまうとは。」

「う~ん…」

「「…どうした? ゴン。」」

 

ゼブロはそんな感嘆の言葉を言い、それとは別に腕を組んで悩んでいるゴンを見かねて、二人は話しかける。

 

「…ずっと考えてたんだけど、レツが【2】まで開けたのに、【1】だけでキルアを託してもらえるのかな? って。」

「確かに、女性に力で負けているというのは、やはり辛いがな…。」

「まぁ、割と真剣に男の沽券に関わるもんな~。」

 

このような思いがあり、その分、過密にしたのだ。 結果としてかなり速いペースで開いたのだ。 その言葉に、二人は呟き、ここでクラピカは一つ推論を出す。

 

「だが、力は最も分かり易いパロメーターの1つだからな。 ……もっと鍛えるか? いや力だけで全てが決まるわけではないが。 理論上は滞在できるビザの半分で開けたのだから、もう半分で【2】が開ける可能性はあるが…」

「けどよぉ、なんか得体の知れない力を、ヒソカとかが使ってたから、それなんじゃねぇーか?」

「それは考えにくいから、迷ってるんだよ。 湿原の時のヒソカとか、講習の時のレツみたいな嫌な感じはしなかったから。」

 

レオリオはその得体の知れない力について、疑問を出すが、ゴンがそれを否定する。 まさに天性のそれで【練】の有無を感じ取ったのだ。

 

「……鍛えよう。絶対に鍛えよう。」

「俺も【3】の門に挑むか…」

「うん、できたら【2】が開くまで、しばらく続けようよ。」

 

その結論を出した三人。 ゼブロそっちのけで決めてしまったが、その話にゼブロは「構いませんよ。」と答えをもらい、三人は特訓を続けることにしたのだ。

 

 

+++

 

「キルア様はこちらに居ます。」

 

 やがて1つの扉の前にたどり着くと、執事が扉の横で立ち止まってそう言った。廊下は長方形の石で上下左右が構成されている。光源としては窓と、今は点いていないけれど廊下の両側にランプがあるのみ。

 

(それにしても、ここにいるのか。中からバッシンバッシン聞こえてくるってことは、今も『お仕置き中』なのかな? …何も言わないってことは、入っていいのかな。 正直、僕の印象と勘としては、全くといっていいほどいい予感がしないのだけれど。)

 

とは言え、このまま音が止むまで扉の前で待ちぼうけ、は退屈が過ぎる。 ので、覚悟を決めて扉を開けた。

 

「失礼します…………」

「フゥーー、ブフーーー……! あ?」

「あ? ………レツ?」

 

レツが扉を開くと、鼻息あらくこちらを振り向いた男、とんでもない肥満体だが、この人がもう一人の孫なのだろう、と理解する。 その手には、鞭が握られている。 その鞭でしばかれていたのは、キルアであった。しかも半裸である。 彼はレツがここに来るとは思ってなかったようで、こちらを向いたまま目を見開いて固まっている。 キルアの身体は、手足が天井から伸びた鎖と背面の壁にある枷にそれぞれ繋がれており、さらに鞭で叩かれた跡が無数のミミズ腫れとしてあちこちにあった。 

 レツが、冷静でかつ何も変化がなければ、『お仕置き』がただの拷問だと分かっていただろう。 しかしそれとは別に、おそらく兄弟が半裸の弟を鞭で叩いてるっていう絵面が、もうなんかキツイものがあるだろう。 こんなことは旅団内では発生しない。 軽く戯れに戦うくらいでのバトル位。 男の鼻息が荒いのもプラス、キルアもそんな手枷や足枷なんて自力で壊せるだろう。 つまり自ら鞭に叩かれている、ということも理解したのである。 そしてつい数時間前にレツは耳年増になってしまっている。 この前提状況から、導かれる結論は一つ。

 キルア含め、この二人は常軌を逸した変態、にしか見えない、ということだ。 

 

「あぁいや、うん、なんか部屋間違えたのかなぁ?」

 

ドン引きしているのを隠すこともなく、なんとも言えない表情のまま、そう言ってレツは部屋から出る。 廊下で控えていた執事と顔を合わせ、無言で部屋を指さすと、彼もまた無言で首を横に振った。

 

(………キルアは、ゴンとは違うし、僕たちとも、全く考えもしない方向で、離れていたな…。)

 

キルアにとって、ある種、もっともされたくない方向で、レツに誤解をされた。 しばらく閉ざされた拷問部屋への扉の前の廊下で、佇む。 イルミやキキョウは、’キルア’をゴン達から引き離そうとしてたが、この時レツは、’ゴン達’をキルアから引き離そうと、ある種、誓った瞬間である。

 

 

+++

 

レツがさっき扉を閉めてからの、拷問室。

 キルアは拘束されてるから、ともかく、もう一人の兄弟である、ミルキも先程立っていた場所から動いていない。 未だにキルアを鞭でしばけるポジションに居るのだが、その状態からミルキは呟く。

 

「……なんだ? キルの拷問中に水指しやがって。 ……しかし、まるで人形みたいだったな…。 あんな、1/1スケールかつ自律型の人形なんか注文したか…? (念の可能性もあるが、そんなのは容易く撃退するはず。 万が一ここまで来たとしても、攻撃を加えなかったのが、意味が分からない。)」

 

ゼノ曰く、『頭がいいが、バカである』を最大限発揮した考え方をする。 そのままミルキは「…キル、お前何か知ってるか?」と聞こうと振り向くと、キルアは真っ青になって冷や汗を流し、ひどい顔色だった。

 

「──何だ? ようやくお仕置きが効いてきたか。」

 

それを見て、ミルキはにやにやと笑ってそう言った。 勿論、どんなあらぬ誤解を受けたか、気づいたキルアは即座に言う。

 

「ちっ……げ────よバカ! 気づけバカ兄貴!」

「はァ? ……オイお前、今、俺のこと“バカ”つったろコラァ!」

「バカだからそう言ってんだろ! 今! どんな誤解されたか気づけ!」

「誤解?」

 

そうミルキが呟き、しばらく何とも言えない空気になり、ミルキは手に持ってるムチと、半裸のキルアを交互に見る。 そして、キルアやイルミと、兄弟なのだとわかる、よく似た顔で目を丸くする。

 

「………まさか。」

「そのまさかだよ、クソ兄貴ィ!」

 

ようやく気づいたミルキは、その言葉をキルアと交わすと、扉に急いで向かった。

 

 

+++

 

「ちょちょ、ちょおォっと待てええぇぇぇっ!!」

 

 レツが扉を閉めて、程なくして、室内からバタバタと慌ただしく扉へと近づいてくる足音が聞こえ、扉が破壊されたのかと思うほどの轟音と、叫び声と共に扉が勢い良く開け放たれ、中から肉塊が転がり出てきた。

 

(なんて威力のタックル。あんなの僕が食らったら、軽々と吹っ飛ばされてる。 かろうじて無事だった扉の方も凄い。 なにも【神字】とか【周】もされていないのに。)

 

どこか、ズレたところで、ゾルディックの技術に感心と関心を示すレツ。 それとは別に、鞭を手に持ったままで、明らかに焦った様子の男は、向かい側の壁に激突する前に、たたらを踏みながらも何とか止まり、両膝に手をつきながら、首を巡らせてレツを補足すると、勢い良く状態を上げつつ叫んだ。

 

「違うからなっ!? お、お前は勘違いをしている!!」

 

名前も分からないし、実際に大ダメージを受けるのはキルアだけなのだが、それとは別に自身の名誉のために、必死の弁解をする。 レツは盛大に苦虫を噛み潰した顔を、なんとか解除し、発言する。

 

「大丈夫だよ、何も勘違いはしてないから。」

「ほ、本当か? ならいいんだが……流石にあんな趣味だと思われたくないからな。」

 

 レツが微笑みながら勘違いしていない、と言うとほっと胸を撫で下ろす男。 ブラウンのズボンに白の長袖シャツに不釣り合いな真っ黒の一本鞭が非常にシュールなのだが。 レツの言葉とやわらかな笑みで安心感を与えたのも束の間。

 

「見紛う事無く、殺しとは別の方向にアウトの行為だったもんね。 あれには勘違いなんか、生じようが無いよ。」

「だァから違うッつッてんだろォ!?」

「んなわきゃねェだろーがッ!?」

 

扉の向こうから、キルアの声が聞こえてきたので、そちらに届くように声を張るレツ。

 

「いや、うん。 安心してよ。 キルア、そういう趣味の持ち主だったならしょうがない。 ゴン達も来てるけど、僕が責任をもって帰らせるよ。」

「「何も分かってねえじゃねぇかこのアマっ!」…っていうか、来てんのか!? ゴン達!!」

 

その言葉に、ようやく理解した、ミルキはふてくさりながらも、いらいらした怒鳴り声とともに、鉄扉が勢いよく開け放たれる。

 

「あ? おいキル! ヘンなガキがお前に会いに来てるぞ!」

「あと、僕の武器を監修してくれた、君にも改めてお礼いっとかなきゃね。 ありがとう。」

「あ? ……ああ、あの二週間ほど、前のアレか…。 ……キル! この女が帰ったら、またお仕置き開始だからな! …ふん、俺は部屋に戻ってるぜ。」

 

それにレツが素直にお礼を言うと、それこそ素直な’善’の感情を向けられることなど、レアだったミルキはこれまた、キルアと兄弟だとわかる、キルアのスマートな体と違い、ミルキは完全にデブであるので、全く萌えないし、意味が分からないツンデレを発揮し、全身の肉を揺らしてドスドスと足音荒く歩き、バンと鉄扉を閉めて出て行った。

 

「改めて、久しぶりだね、キルア。 二十日ぶりくらい?」

「そんなもんか。 その程度だと全然久しぶりって感じしねーけどな。」

 

 取り敢えず、一応久しぶりに会ったのだから挨拶から入る。返事をするキルアの様子から、さっきも思ったけれどあまり意気消沈しているようには見えない。

 

「で、改めてだけど。 ゴン達が、キルアの答えを聞くから待ってて、てさ。」

 

本当はゴン達の言葉を、どころかキルアと会えると思っていなかった、レツは折角会えたのだから、講習会での伝言を伝える。 それを聞いたキルアは少し俯いて目を細め、しかし嬉しそうに、滲み出そうな笑みをかみ殺しているようだった。

 

(素直に喜べばいいのに。 そこんとこは、フィン兄さんや、フェイ兄さんもだけど、なんで隠すのかよくわからないんだよなー。)

 

そんなことをレツが思っていると、しばし喜びを噛み締めている様子だったキルアは、俯いたままポツリと呟きをこぼした。

 

「……そっか、ゴン達が…………って、おい、ホントーに、アイツらこっちに向かってんのか!?」

 

 突如勢い良く顔を上げたキルアが大きな声で問いかけてきた。 それにレツは返事をしてゆく。

 

「迎えにってことはそういうことでしょ。 浮かれ過ぎだよキルア。」

「ばっ、浮かれてなんか……! っつーかレツも止めろよ、ウチに来たら下手したら殺されるぞ!?」

「ん。 僕としては最低限、不法侵入しようとしたゴンを、これからもう一回ぶっ飛ばすから、それはいいんだけど。 ……ただ、ホントーにキルアはそういう趣味じゃないんだよね。」

「お前、しつけーな!!? だから違うっつってんだろうが! いいからさっさと言え!」

 

レツが再び確認すると、キルアは怒鳴り返しながらも答える。 そのまま続きを促す。

 

「来てるよ。門の所で僕と別れた。」

「はああぁ!? おい、大丈夫なのかよアイツら!?」

 

 大声で反応するキルア。たしかにこの家の侵入者への対応を知っていれば、良からぬことが起きてしまうのではないかと心配するのも仕方のない事だろう。

 レツと別れる前である、その時点で命に別状はなく、少なからずレツと会話できる状態であったのは確かだが、時間の経過した今もその状態であるのかは二人には分からない。

 

「大体、二週間くらい前から居たし、僕が一回ぶっ飛ばして、その上でもう一回不法侵入を試みたみたいだからぶっ飛ばしに行くんだけど。 伝言を頼んだゼブロさんも付いてるから大丈夫だと思う。」

「あぁ、何だ……。 二週間も前から何やってんだ?」

「試しの門を開けて、最低限の資格を手に入れようと、頑張ってるんじゃないかな?」

 

 ゴン達の現状について推測すると、キルアは安心したように息を吐いた。二週間見逃されているならば多分下手なことはされないだろうし、ゼブロがついていれば、やはり安心を補強するだろう。

 ちなみにレツは《試しの門》をゴン達が開けてるのは知ってるが、それでも二日も来ないのはオカシイので、こう推測し、実際に合っているわけだが。

 その推測にキルアは納得したように頷いた。 出られるにしても、流石にあの門を開けられない者達との同行が許可されるわけがないと理解しているし、これはキルアにとってもクリアーして欲しい。

 

「ゴン達については以上だね。で、今度は僕自身の用事済ませたいんだけど、いいかな?」

「ん、いいぜ。俺もレツが何で来られたのか聞きたいし。」

 

紆余曲折のドタバタがあったが、今度こそレツは聞く。

 

「試験の時イルミさんにさ、人殺しはもううんざりだ、普通にゴンと友達になって普通に遊びたいって言ったじゃん? あれ、どういう意味だったのさ?」

「……どういう意味ってのは?」

「僕はさ、ここに来るまでも、わかってると思うけど、人殺ししてきてるんだ。 そしてその技術をゴンたちの前で、僕たちがどういう人種か、わかってもらうためにも、見せてきたんだ。 それでもゴンは会いにいくってさ。」

「………豪胆なのか、呑気なのか、わかんねェー奴。」

「アハハ。 それで続きだけれど。 人殺しというよりは、仕事ってそこまで嫌がるものなのかなって。 まぁ、辞めるかどうかは別にいいんだけど。 この家から出て、キルアがその先に何を求めるているのか、どう生きようと思ってるのかが知りたい。」

 

 レツが知りたかったのは、キルアの答え。 此処を出てゴンと一緒に過ごす中で、彼が何を求めているのか。 普通に友だちになって、遊ぶ。 今のような生活ではなく、大多数の誰もが過ごしているような日常を欲しているということなのか。 それとも、ただゴンという存在が欲しいだけなのか。

 

「それは……、……」

 

呟いたキルアは下を向き、俯いてしまった。 沈黙。 つまりキルアは答えを探しているようだ。

 

(キルア自身の言葉なのに。 イルミさんに反抗してまで言ったくらいだし、確かに僕達と言葉の通りの関係になることを望んでいるんだろうけど。)

「……お前は、なんでそんなことを聞く?」

 

レツの言葉や思いとは別に、目線だけをこちらに向けて、キルアはそうレツに問いかけた。

その質問に、レツは目を閉じ、一つ息をつく。

 

「僕も、キルアが望んでいるのと同じ。 外の世界を見てみたかったんだ。」

 

 レツがかつて持っていた望みだ。 新たな『家族』と話して、しばらくはヒソカを殺すことに執心していたが、’点’と’舌’を繰り返して気づく。 あの普通の暮らしが、何よりだったと。

もう、二度と手に入らない、想い出。

 

「兄さんが家から出してくれなかった時は、手が届かないと思っていたそれが、気づいたら近くにあってさ。 …今は、また『家族』がいるから良かったけどさ。 気づいた時には遅かったけど、無意識にそれは手に入るところにあったってこと。 …でも、それは外を知らなかったから、分からなかった。 だから後悔は……してないって言ったら嘘になるけどね。」

「………そんなものかよ?」

 

しかしキルアは続けて、言った。

 

「なあ、レツ。」

「なに?」

「……オレ、オレは、それでも……ここから、出たいんだ。」

 

 それは本当に絞り出すような声で、レツは首を傾げたまま、黙って聞いていた。

 

「レツは……オレの気持ちもわかるけど、兄貴の気持ちも分かる……って事だろ?」

「うん。 …兄さんが死んでから、初めて気付いたけどね。」

 

 キルアが複雑極まる顔をしていたが、レツは確信を持っていた。イルミ達は間違いなく重度の家族愛があると。

 

「イルミさんほどヘビーじゃなくて、最低限、人形店を営むくらいには、外の人と交流があったけど、僕も死んだ兄さんが好きだったし、今の『家族』が好きだよ。 だから家出しようとは思わないし、『家族』に出て行って欲しくない、っていうイルミさん達の気持ちはわからなくもない。 でもキルアは、かつての僕みたいに、『家族』よりかは、外の世界の方が勝る程度に、『家族』のこと好きじゃない、ってことだよね。」

「あー……まあ、そうだな。」

 

 こうもまっすぐ簡単な言葉で答えを導かれると、何だかとてもあっけない。キルアはそう思いつつも、しかし心のどこかがポンと軽くなった爽快感も覚える。

 

「ならさ、出たかったら出られるように頑張れば良いよ。 少なくとも、兄さんが行方不明になって、最後のメモを手がかりに、なし崩し的に、家を出ることになった僕と違って。」

 

それはとてもあっけなく、簡単な答えだった。 それにキルアは思う。

 

(………『普通に』なりたいような、外の世界を知りたいような、とにかく何か、と思ってきたけど、こう言ってみると、オレのやったことは、普通の家でもやるようなことと、さほど変わりないんじゃねェーか? …ただ、オレの家が暗殺一家という、極めて特殊だった、ってだけで。)

 

それとは別にレツはといえば、「暗殺者ほど殺しに理性を使う職業もないだろう。」と思っている。 ヒソカは特に、またウボォーギンにフェイタンも顕著であるが、盗賊であるクロロ達もまた、感情によって、衝動によって人を殺す。欲しいもののために殺す。

 しかし、仕事で人を殺す暗殺者はそうではない。 それは戦いの前に暗殺をするという、作業という言葉がしっくり来るようなものだろう。 実際に素早く、時間にして、十秒もないであろう、ジョネスやボドロの殺害は、いかに手際よく終わらせるか、それのみを狙った手腕はプロフェッショナルという言葉が何よりも似合っていて、『家族』の行なう殺ししか知らないレツには、酷くショッキングで、その姿を新鮮に、どこか「格好良い」とも間違いなく感じていた。

 

「だからさ……。 ごめん、僕も上手く説明できなかったね。」

「……なんだよ……結局、混乱しただけじゃねーか。」

「ゴメンゴメン。 でも、こうして自分から壊せるのに、枷に繋がれてるって事は、今も考えてるんでしょ?」

「………ああ。」

「なら良いよ。 …じゃあね、キルア」

「ん? ……てゆーか、何でレツはここまで来れてるんだ?」

「あーーー、それはね、なんかキキョウさんとゼノさんとシルバさんに嫁候補に認めるから会いに行けって 大義名分を付けられたし。」

「ブッ! ゲホッ、ゲホッ!」

 

そこで初めて知った、キルアが吹き出した。 レツもなんとか意識しないように頑張っているが、二人の顔は、気のせいかやや赤い。 と言っても、互いに文句を言われても困るし、そのような対象になるかは全く別の話である。

 キルアは微妙な顔で相槌を打った。 おまけにそれが親や祖父のご推薦であるならば、レツはこれから先も、比較的容易に来れるようになるだろう。

 

「……行くのか?」

「うん。 今度は、ゴン達と一緒に行くよ。」

「そっか…。」

 

そして、二人は別れた。

 

 

~~~

 

拷問室を出たレツは、取り敢えず、ここでの用は済んだのだが、

 

(そういえば、試験の時に、僕とは違う人形を扱う、兄さんが居るって言ってたな…。)

 

こんな予測をして、次はミルキの部屋に案内して貰い、向かうことにした。

そしてその部屋に着く。

 

「ミルキ様。 客人が改めて、お礼にと。」

「なんだよ? …ああ、ここに来たって事は、キルのお仕置きも再開だな。」

「その前に、キルアが言っていた、人形を集めてるっていう兄貴って君のことでいい?」

「あ? んなもんこの部屋を見れば分かるだろ?」

 

執事の声と共に扉を開けると、こちらを振り向きながらそういうミルキ。 続けて発したレツの言葉に首肯し、続きを毒づきながら話すミルキ。 後方で扉が閉まる音がしたのに気付きながらも、レツが言われた通り、見渡すと。

 その部屋の内部は、大きな棚に並べられた美少女やヒーロー、怪獣などのフィギュアが今では30畳ほどの部屋の2分の1程を占めている。 人間大の物も複数あり、それが余計に場所を取っている。来るたびに物が増えて段々部屋の奥への道が狭くなってきている。 いくつかはショーケースにも格納されていた。

 奥にあるパソコン等が、その半分程度の割合を占めており、いくつかのハードに大量のモニターが設置されている。 壁や天井には棚に並べてあるようなもののポスターが貼られているが、石造りのそれが露出している部分は少ない。更に他の部屋に続く扉にもびっしりと。

 

「………」

「あ? んだよ? 急に涙流して、気持ちワリーな。」

 

レツは無言であたりを見て、その光景にレツは右目から涙を流す。 それにミルキはやはりぶっきらぼうに言う。 その涙を流した理由をレツは答える。

 

「ごめん、この涙は、部屋構成が死んだ兄さんと暮らしていた家に似ていたから……」

 

その意見にミルキは片眉をあげつつも、少々予想外の言葉だった。 が、同じく人形を集めるというのも思い出し、ミルキは態度を軟化させ、自己紹介をする。

 

「そうか。オレはミルキ。 キルアの兄貴だ。 …キルと付き合うのは大変だったろう?」

「なんだ。 キルアの兄貴なのに、イルミさんと違って、話せるんだ。 ホントにキルアは変に対抗心だしたりするから、ちょっと大変なんだけど。 人をすぐにおちょくってたし。」

「ああ分かる分かる。 すぐに人を小馬鹿にするんだよ。 昔はまだ可愛げがあったんだけどな。」

「うん、気が合うね。」

「そうだな。 基本的には仲良くやれそうだな。 で? ___えーっと…。」

「あ、ゴメン。 僕の名前はレツ。」

「そうか、で、レツの扱う人形ってなんだ?」

 

そこからレツは、人形師であったこと等を説明し、異なるが人形を扱う点について、話した。 

……二人は一通りの雑談が終わった後、人形の情報交換や、持ち込みの契約を持ちかけた。 今のレツの短剣は、ミルキ監修であり、その紛失補填などを条件に、レア人形の持ち込み等を依頼した。 勿論、手に入ったらでいいし、せっつかせる事も無いという。 こんなギブアンドテイクの取引をして、別れた。

……なお、この時の瞬間から、ミルキの趣味に、フルオート1/1の人形制作や改造という趣味が追加された。

関節の動きに、命令理解のプログラム等、様々なハードルがあるのだが。

 

 

~~~

 

その後、レツは修行も終わったと言えるので、ククルーマウンテンから降りて、ゴンたちとの合流を目指していた。 その過程でカルトと遭遇した。 そしてカルトは、次第に訝しげな目で眉を寄せて、話し出す。

 

「……お前も、キル兄さんを連れ出そうとしてるんだよね?」

「ん? 僕は積極的に、キルアを連れ出そうとは思わないよ?」

「………そうなの?」

「だって、それはキルアが決めることだし。」

 

返ってきた答えに、カルトは黒曜石のような瞳をきょとんと丸くさせた。

 

「でも、キルアが外に出たいっていうなら、なるべくその助けもしたいけど。」

「………」

 

続けて放たれたレツの言葉に、ムッとカルトは唇を尖らせる。 

 

「まぁ、それとは別に、君の目線の『家族』を聞かせてよ。 同じ末っ子同士としてさ。 まずは僕の話でも聞いてよ。 」

 

そう言い、レツは話し出す。 レツは目を閉じて、懐かしむように、だが眉を寄せて語った。

 

「それに、せっかくだから教訓として聞いとくと良いよ。 ずっと、館に閉じ込められて、好きか嫌いかも分からないのに、ただただ外の世界を見ようと、実際に見れた時は、もう手遅れだった、僕の話をさ。」

 

それにカルトは訝しげな表情を浮かべつつも、その言葉はキルアと近いので、聞いてみることにした。 当の本人である、キルアはお仕置き中であるし、また母親と一緒に、拷問室でキルアと会ってはいても、ろくに話をしていないから。

 

 

~~~

 

「僕、ものごころ着いた時には、『家族』は兄さんしか居なかったんだよね。 そこから、好きになった人形店を営んでいたけど、ある時、帰ってこなくて、不思議に思っていたんだ。 渡されていたメモはあったから、その通りにそこに行ったら、今の『家族』と出会って、その後、兄さんが死んだって聞かされてさ。 その時に理解したんだ。 僕は兄さんのことが好きだったんだって。 もう、そこには僕以外の誰もいなくなったけど。」

「……………なら、なんでキル兄さんが、外に出るのを手助けするって結論になるんだよ?」

 

それとは別に、カルトは黙って聞いていた。 だが、カルトの望みを叶えないのは既に聞いており、改めて質問をする。

 

「それは僕が嫌っていた、束縛に近いからね。 それにそれは、結局の所、赤の他人の僕がすることじゃない。 それは、『家族』である人達が自分の言葉で、会話することだから。」

「………」

 

それを聞いたカルトは、何処か不安げに目が揺れている。 その感情にも理解があるので、レツは話す。

 

「………ふぅ。 その不安になる感情もわかるけどねー……。 言えばいいじゃないか。 自分の希望を相手に強制するのはダメだけど、自分の希望を伝えることくらい、責められるいわれはないんだから。 もちろん、それがきっかけで喧嘩になるかもしれない。 でも、僕の今の『家族』みたいに喧嘩すらすることなく、二度と会えなくなるよりはマシだよ。  ……もしも、どうしても互いに譲れない部分が許容できなかったのなら、それは仕方がないと思う。 そこまで深くわかり合いたい人がいた、それほどその人が好きだったということなんだから。 いつかは十分に綺麗な思い出、という宝物になるよ。」

 

 穏やかにレツは、カルトの不安を取り除こうとする。 

 

「……それとも、カルトは己を殺していないと、自分が愛されないとでも、思っているの?」

 

 そしてレツは、同じ失敗をして欲しくないし、もう自分が手に入いらないモノを、全て揃っているからこそ。

 

「なら、それは勘違いだよ。 僕は、キルアや、イルミさんじゃないけど、それでもカルトは十分、特別でなくとも、カルト自身で愛されているよ。 それは話していて確信したから。」

 

その言葉に、カルトのどこか迷いがあって、揺れていた目に、どこか怯えて蒼白だった顔に赤みが差し、頬を紅潮させ、トリップ状態になった。 それをどうにか呼び戻そうと、レツは「カルト?」と呼びかけた。

 

「……なに?」

「そんなすれ違ってる誤解をして、だから、自分の希望やわがままが言えないという変な遠慮をして、すれ違っているのなら、そんな悲しいことはないよ。 だから、君たちはどちらも遠慮なく話して距離を縮める。」

 

 そのレツの言葉に、カルトは目を見開く。

生きる世界が違っても、見ている先が真逆でも、求めていて、満たされない欲望を満たすためにも。

 ………関わって、繋がって、話すことはできる、ということを。

 

 それは何の打算も裏もない、幼くて真っ直ぐな望みだからこそたどり着けた真理だった。

 

そして、末っ子同士として、レツが純粋な興味本位で、聞きたかった事に移る。

 

「だから、君の話も聞いてみたい。」

「………それはできない。 だって、不必要に『家族』を他人に話すなんてのは、できないよ。」

「……あーーー、 僕の過去の話ならともかく、今の『家族』の話はそう簡単にできないよね。 僕らの常識を忘れていた、僕が悪い。ゴメン。」

 

その言葉に、二人は何も語れないが、同じ社会に生きるものとしての常識があった。 それを互いに理解していた。

 そこにカルトを探して、合流したキキョウが、操作系のマイペースらしく、割り込み話し出す。

 

「カルト! 見つけましたよ! あんな外の人間を見に行ったと聞いて!」

「ごめんなさい、母様。 でも、今は同じ末っ子として話していただけだから。」

「あら? そうですの? そういえば、レツさんは私の自慢の息子たちに面会したようですわね。 誰と結婚しますか?」

「………正直、そもそもここの人と結婚するかどうかわかんないよ。」

「……そうなの?」

「うん。だってまだ十一歳だし、結婚とか言われてもわかんないんだよ。 ……好感度順なら、イルミさんと君かなぁ? ミルキさんは、痩せればまだ。 キルアだけは有り得ないというか、どうも想像つかない。」

 

改造されたとはいえ、性根が変わったわけではないので、キキョウとカルトの順の質問に、レツは答えてゆく。 その答えに少しキョトンとした表情を返したカルトは、少し拍子抜けしたように「ふうん」と言って目を逸らした。 だがこの答えが気に入らないのが一人。

 言わずもがな、キキョウであり、ヒステリックに喚き出し、再び結論を出した。

 

「なんですって!!? キルの素晴らしさが分からないとは…。 勿論、どの子達も自慢ですが、それでも最も才能がある、キルが有り得ないだなんて!? ならば私が、今までのキルの素晴らしさを、特と教え込みますわ!」

「あれー?」ズルズル

 

レツはキキョウに首根っこを掴まれて、再び、どこぞに連行された。

やはりカルトも同じ場所にいて、レツの目配せにも気付くが、どうにもできないことを知ってるので、何もしなかった。




定番の誰かの嫁候補の流れですが、
ここにはもう、ゴンと波長が会った、無自覚レツは居ない……ッ!
ここから先には、耳年増なレツになってしまった……ッ!
 恐るべし、ゾルディック家……ッ! まさに悪魔的所業……ッ!
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