子兎の人形師は何を想う 作:夜空人
レツは再び、キキョウに連行されて、キルアの素晴らしさや、自慢話を延々と話され、理解してないと思われると、その話を繰り返すのだ。 さらに試験中のキルアの殺しを語ると、目を潤ませて、再び褒めちぎるのだ。 そんな風に改造されてしまった後、またしても翌日になって、開放された。
レツはグルグル目になっており、少しばかりゲンナリともしていた。
「キルの素晴らしさが分かりましたか!?」
「はい。 キルアは素晴らしいです。」
操作系を使われていないにも関わらず、そんな返事をしてしまうレツ。 その返事にキキョウは満足し、開放した。 そして改めて、レツは下山を開始し、ゴン達の【1】を開けたにも係らわず、まだ特訓しているのが不思議であったのだ。
~~~
レツが再び降りると、そこに居るのは、ゾルディックの使用人のゼブロと、ゴン、レオリオ、クラピカの四人である。 四人は開けたことのあるはずの門を再度、開けようとしているようだった。 近づいてくるレツに彼らも気づいたようで、作業を止めてこちらへと体ごと振り向いた。
「レツ? 戻ってきたんだね!?」
「久しぶりだな。 ここまで走ってきたのか? それと何やら武器…が、増えているようだが?」
「ホントに久しぶり。 山からここまで走るといい運動になったよ。 コレが僕の個人的な、用事の成果。」
門の前まで来たレツに、ゴンとクラピカが話しかける。 それに答えつつ、頭を下げるゼブロに、会釈を返す。 そして、身体はこちらに向けているけれど、門に背を凭れさせて俯きながら座り、息を切らせている上半身が裸のレオリオは、周囲の声でレツの登場に気づいたらしく、顔を上げた後プルプルと痙攣している手を軽く上げて、切れ切れの言葉で話しかけてきた。
「よう、案外、早かっ、たじゃねーか。 レツが来る前に、この門、同じ数だけ、開けてやろー、としたのによ。」
「用事自体は、比較的、時間が掛からずに終わちゃったよ。 っていうか別に無理して今喋らなくても、呼吸整えてからでいいのに。」
レツの返事を聞いたレオリオは、また頭をガクリと落として「ゼェハァ…」と酸素を補給しだした。
そんなレオリオを見て、レツは無言でゴンとクラピカへと視線を向けると、ゴンは苦笑いをし、クラピカは肩を竦めた。
「この門、僕と同じ数の【2】を開けようとしてたんだね。」
「うん。【1】は開けれるようになったけど、まだまだ俺たちじゃ、ビクともしなかったから、ゼブロさんに鍛えてもらってるんだよ。」
「この通り、常にこれを着てここで生活させてもらっているのだ。 徐々に重さを増やしてな。」
ゴンとクラピカの順で答える。 彼らはキルアが出てくるのを待つのではなく、門を開けて自ら中に入り、答えを聞くことを選んだようだ、とレツは理解する。
クラピカが示した通り、彼らは大量の重り入りのベストを着用しており、ゴンは緑色の上着を脱ぎ、同色の半ズボンと靴、青のシャツの上にベストを着け、クラピカは青を基調に橙で刺繍をした民族衣装っぽいのを脱いで、黒の靴に白いズボンとシャツの上からベストをつけている。
半裸のレオリオは今はベストを付けていないけれど、彼のすぐ傍に転がっているのがそれだろう。下半身は試験中も見たスーツルックだ。 その会話を聞き、回復力は高い方なのか、既に息が整いかけているレオリオがぼやいた。
「ヒデー話だよなぁ、ダチに会うのにも資格がいるときたもんだ。」
正確には、門を開けることで得られるのは敷地内に足を踏み入れる資格なのだが。
「まぁ、『友達』として会うんだったら、尚更資格が必要になるんだよ。 【2】の門が開けるまで、考えてみて。」
レツはそう言いつつ、ゴンを見る。 レツが先行する前の時と、ゴトーの言葉から、最もキルアへのゾルディックの対応について不満を漏らしていた、と理解したからだ。 それにゴンは不服である、という表情がありありとわかるが、それとは別に、ちゃんと考えることにした。
~~~
さらに十日後。
とうとうゴン達三人は、【2】の門を開いた。 それを見て、レツは問う。 余計なお世話だろうが、この絶対に覆らない、『事実』にたどり着けねば、もうビザの残り二日か三日ほど、通さず、追い返すつもりだった。
「さて、『資格』が居る理由は、何でか分かった?」
レツに問われたゴンは、悔しげな表情を見せながらも、強い意志の篭った瞳で答えを返した。
「……キルアはゾルディックで、いろんな人に狙われる立場で。 それなのに一緒にいるオレたちが弱いままじゃ、足手まといになるから…だよね。」
『友達』として試される意味。もしもの事態の時に足手まといになって、互いに心身共に傷つく事の無いように。ゾルディックとしても、大切なキルアの傷つく事のないように。
《試しの門》は単純に敷地内に足を踏み入れるものを、ふるいにかけるだけの物だろうけれど、キルアの友達として訪れた彼らにとってはその理由で十分なのだから。
「…良かった。 もう一度、僕がゴンを殴る必要はなさそうだね。」
「だがよう。 レツ、入口で、あそこまでぶっ飛ばす必要は無かったんじゃねーか?」
「キルアは高額賞金首だろうし、プロアマ問わずハンターに狙われたり、復讐目的での襲撃だってこの先あるかもしれない。 それに金持ちってだけでも、十分に狙う理由になる。 列車の時みたいにね。 そういう意味だと、レオリオもある意味、覚悟しておいた方が良いよ。」
「…………」
レツの言葉に、レオリオが苦言を呈すが、それにもキルアの例を語りつつ、実際に”ゴミ掃除”の列車の例があり、もしキルアが彼らとともに行くことになって、そんな連中に襲撃を受けた時、自分の回りにいるのが弱っちい奴らであったら大きなマイナスである。 そうなるとキルアやその周囲が肉体及び精神的に傷つく可能性が高まるし、最悪の場合は誰かが死に至る可能性もあったのだ。 まさしくお荷物にしかなれなかったので、三人は言い返すことなく、苦虫を噛み潰した顔をする。
それはどんな貧乏な患者でも救うために、医者になる決意をして、大金を求めるレオリオにも、いずれは関わる話なのだから。 このゾルディック家は、忘れがちだが、暗殺一家以前に、普通に金持ちの家なのだ。
レツの言葉に沈黙してしまうレオリオ。 それは事実であり、レオリオはハンターになるときに、心の底から気に食わないが、知識としてはあるからこそ、気づいてしまった。 合法的な殺人に含まれる、『トリアージ(-----救急現場などで、患者の治療や搬送の順番を決めるために行われる識別作業のこと)』にすら、きちんと罪の意識を持っていながらに、その上で《見殺す》。 不当な殺人が免除されるハンターライセンス持ちなら、依頼されやすいだろう。 その時に患者に、救える識別をつけ、〈黒のタグ〉という、『治療不要』…ようするに『無駄だとわかって使う薬がもったいないから見殺しにする』ということ。 これに関しては、遺族にとって、ある種、正当な復讐となるだろう。
そこまでは知らない、レツは気を取り直して、話しだす。
「ゴメン。 辛気臭くなっちゃたけど、今度こそ、揃って会いに行こう。 (もう、キルアも答え出してるといいな。)」
「うん! キルアに会いに行こう!!」
そしてゴン達、四人は、ゼブロとシークアントにお礼を言い、出発した。
~~~
そしてしばらく歩き続けると、つい先日、ゴトーとレツが戦ったため、どこか焦げている木々と本数が減ったぐらいの違いがあるが、それ以外は周囲を囲む塀というにはいささか低すぎるそれは、実際に試しの門のように外敵を阻むという意味合いはない。 本来のこれはただの、境界線であり、ここまでならば穏便に済ませてやるという、ボーダーラインであった。
そこには仕立てのいい燕尾服を自然に着こなしているが、おそらくはゴンとそう歳が変わらない少女であることがあまりに意外だったのか、四人は目を丸くして固まった。
「出て行きなさい」
イルミや番犬であるミケを連想させるほど機械的な声音で彼女は、レツ以外の三人に向かって淡々と警告する。
「あなた達がいる場所は私有地よ。断りなく立ち入ることはまかり通らないの」
「ちゃんと電話したよ。試しの門から通ってきたし。」
流石に28日前と違って、カナリアの言うことが正論であることを理解しているのと、相手が女の子だからかゴンは以前と違ってケンカ腰にはならなかったが、それでもやはり不満が隠しきれない声音で抗議する。
もちろんカナリアがゴンの抗議に納得して譲歩するわけがない。
「執事室が入庭を許したわけではないでしょう?」とまたしても正論でゴンの言い分を叩き伏すが、めげずにゴンは尋ねる。
「じゃ、どうしたら許可がもらえるの? 『友達』だって言っても繋いでくれないのにさ。」
「さあ? 許可した前例がないから。」
嫌味ではなく素で疑問だったゴンの問いに、カナリアはいけしゃあしゃあと答えになっていない返答をする。 さすがにこの答えには腹が立ったのか、ゴンは少し強い口調でレツを指さして反論する。
「レツがいるじゃん!」
「レツ様はゾルディック家ご子息の婚約者候補。初めからあなた達と立場が違うのよ。」
「「婚約者候補ォ!!?」」
ゴンの反論に即答したカナリアの言葉に、レツは天を仰いだ。 それにレオリオとゴンは好奇心全開の目をレツに向けていた。 クラピカは二人に呆れながら、軌道修正を図る。
「では、結局、無断で入るしかないのでは?」
「それはそうね。」
カナリアとしても、この空気は正直、罪悪感をどこかに感じるので、それに乗っかった。
…レツは、このまま二人が、何も聞かず、なんなら忘れることを望んだ。
「とにかく、温情があるのは、ここまでです。 ここを一歩でも越えたら実力で排除します」
シンプルだが宝石のような石をグリップに埋め込んだステッキを構え、三人に向かってカナリアは宣言する。 もうそこに、一瞬だが垣間見えた12歳前後の少女らしい人間味は見当たらない。
そこにいるのは、ゾルディック家の執事だった。
冷たいロボットじみた忠誠心と、揺るぎない人間的な覚悟を矛盾なく調和させているゾルディック家の執事に、ゴンは三人に手を出さないように、合図し、向き合い、そしてそのまま歩を進めた。 勿論、カナリアは殴り飛ばす。
「手を出しちゃダメだよ。俺に任せて」
そう言って、ゴンは殴られて出た鼻血を拭ってもう一度歩いてくる。
誰も止めずにただじっと彼の行動を見守る。
その異様な光景に、理解できない行動にカナリアの背にまた悪寒が走る。心の内で泣き叫びながら、カナリアは何度でもゴンを殴り飛ばす。
そして、ゴンはもう一度起き上がって彼女に伝える。
「った~~。俺達、君と争う気は全然ないんだ。キルアに会いたいだけだから」
カナリアは執事としての、言葉を喋りつつも、困惑していた。 ……カナリアは知らなかった。
「キルアに会わせない」と宣言した時、ゴンが「キルアに会いに来た」と言った時、顔こそは人形のように無機質な無表情だったが、瞳があまりに有機的に、人間らしく揺れたことに四人は気付いた。
だからこそ、ゴンは反撃も防御もせずに無防備に歩み、そして殴られるを繰り返す。
それ以外に、出来ることなど何もなかったから。
カナリアだけが何もわからないまま、泣き出したい気持ちでただステッキで殴打し続けた。
……その姿を、カルトが見ていることに、レツは気付きながらも、その目で見て、判断して欲しかった。
~~~
起き上がる。
歩む。
近づく。
踏み入れる。
殴り飛ばす。
…もう、時は夜の帳が落ちて、どれだけこの一連の流れを繰り返しただろうか。
「もう……やめてよ……」
カナリアの「ゾルディック家執事」としての仮面がひび割れて、怯えるような懇願を唇から漏らす。
もはや、ゴンの顔面は人相が変わり果てている。
かろうじて右目が開いているという有様で、それ以外の全てが腫れ上がり、顔面を赤黒く染め上げている。
それでも、彼は決して退かないし、挫けないし、屈しないし、諦めなかった。
何度も何度も立ち上がって、歩み寄り、境界を踏み入れるくせに、それなのにゴンはそれ以外の行動は取らない。 カナリアの殴打を受け止めるそぶりもなければ、避けようともしない。むしろ、自分からその攻撃を甘んじて受けている印象すら与えていた。
「いい加減にして!! 無駄なの!! わかるでしょ!! あんた達も止めてよ!! 仲間なん……」
しかしその言葉は途中で途切れた。 3対の目が真っ直ぐにカナリアを見据えた。
その眼は、レオリオとクラピカの目は、カナリアに問う。
カナリアが被っていた、今は見る影もない人形のような無表情を彼らも被り、ただ眼だけが言葉にするよりも鮮烈に彼女に問いかけた。 「その程度か?」と、彼女の覚悟を問う。
侵入者に自分の覚悟を裁定されるような目で見られるというだけで、カナリアからしたらまったく理解できない状況だった。
「……なんでかな」
殴られ続けて、ようやくゴンが口にしたのは疑問。
「友達に会い来ただけなのに……」
理解できない不条理に対する怒りとやるせなさを込めた疑問を口にする。
「キルアに会いたいだけなのに……」
ただただ、彼の顔と同じくらい悲痛な願い。 それが叶わないことよりも、叶わない理由がわからないことの方が悔しくてたまらないと言いたげに、彼は叫ぶ。
「なんで、こんなことをしなくちゃいけないんだ!!」
互いに一番したくない方法を取らなければならない不条理が無性に悲しくて、悔しくて、やるせなくて、腹が立って、自分たちをそうさせた”線”が許せず、初めてゴンは拳を振るった。
……カナリアにではなく、彼女の傍らの石柱に。
自分達と彼女のいる場所を隔てる、境界の一部を破壊する。
ゴンの行動が唐突なのか、ようやく起こした当たり前の行動なのかも、カナリアにはもう判別がつかなかった。
もう、自分が何をすればいいのか、何がしたかったのか、自分は何を覚悟していたのかがわからない。
何もわからなくなったまま、縋るようにステッキを握りしめるカナリアにゴンは声を掛ける。
「ねぇ……もう、足……入ってるよ。……殴らないの?」
「あ……」
ゴンに指摘されてようやく、カナリアは彼が境界に踏み入れていることに気付く。……なのに、ステッキを振れない。 ゴンを先ほどまでと同じように、殴り飛ばせない。
「君はミケとは違う」
そこにゴンが答えた。
「どんなに感情を隠そうとしたって、ちゃんと心がある」
何も言えない、何もわからなくなっているカナリアの代わりに、本人だけがわからなかった、彼女以外の全員が初めからわかりきっていた答えを教えてやる。
「キルアの名前を出した時、一瞬だけど目が優しくなった」
その言葉に、あの日、叶えたかった願いを見捨てることしかできなかった自分に残された、ただ一つの贖罪を祈るように懇願する。 彼女の答えは―――いつだったかの、自分では謝る事しかできなかったソレを四人に託した。
「お願い………キルア様を、助けてあげて。」
パアァン!パシィ!
一瞬、何が起こったのか、目の前にいたゴンやカナリアはおろか、クラピカやレオリオも分からなかった。 勿論、カナリアをかばい、その前で、拳を握った右手を前に出したのはレツである。
「あらまぁ、流石の身のこなしですね。右手に負傷や火傷などは大丈夫ですか?」
「えっと、一応平気です。(手の方は、初速を出す為に足に少し、ついでに手で受けるつもりだったから右手だけに念を分散して込めたから、大したダメージにならなかった。 若干ピリッときたくらいかな。 実際に銃弾を止めのは、初めてやったから、不安だったけど。 避けるだけなら簡単なんだけど。 『家族』全員、普通にできるし。 ……にしたって、いきなり何の予告も無しに、銃撃するとはね。)」
その声がした瞬間、カナリアの顔から色が失せて、警戒心をあらわにゴン達三人は声がした方、山の斜面に視線を向け、そしてまた目を丸くする。
貴婦人の見本と言わんばかりに豪奢なドレスを着た女性と、女児用振袖を着こなしたおかっぱの少女にしか見えない少年。
もうこれだけで現実なのに出来の悪い合成写真じみた違和感の塊であるが、何より違和感なのはドレスの女性の包帯の上に、顔につけているバイザーの赤い瞳なのだから。
しばらくカナリアを罵った後、キキョウはキュイン! と音を立てながらモノアイの照準をゴンにあわせ、カルトの方は不愉快そうにレツ達四人を睨み付けた。
カルトは睨み付けたまま何も言わないが、キキョウの方はしばしゴンを眺めてから穏やかに、けれどイルミの母親であることを表すような無機質な声音で彼に語りかける。
「あなたがゴンね。イルミから話は聞いてます。数日前からあなた方が庭内にいる事もキルに伝えてあります。キルからの伝言をそのままお伝えしましょう。」
―――来てくれてありがとう。すげーうれしい。でも、今は会えない。ごめんな―――
「以上です」
「キルアは今、答えに悩んでいたのが、十日前だったね。 あと、キルアは自分が刺した兄さんにお叱り受けてた。 これは僕が自分で見てきたから、安心して。」
レツの言葉の後、キキョウのバイザーになんか連絡なのか監視カメラの映像でもみたのか、何やら、情報が送られたらしい後、若干発狂したような態度になり、次に平静な装いでそそくさと去っていった。 カルトは一瞬、レツを見たが、それでもスイっと無視して、キキョウについて行った。
「あの……この近くに執事室があるから、そこから屋敷直接電話してみるっていうのは………どうかな?」
カナリアの提案に乗っかり、ゴン達は歩みを進めた。 そして、レツの存在が疑問だった、カナリアは疑問を出し、ゴンが重ねて聞く。
「それにしても、ゾルディックに使えて、初めて客人とも言える人物を見たわね。」
「そういえば執事室が入庭許可した前例無いって言ってなかった?」
「そのはずだけど………」
「それは、護衛も仕事になる、執事室が勝手に許可出せるわけないじゃん。 それをしたら完全に利敵行為だよ。 危険がないと判断するのは、直接ゾルディックの人が許可した人だけだと思うよ。」
「なるほど。執事室は許可した前例は無いが、雇用主が許可した前例はあると。中々とんちが聞いているな。」
そのカナリアの言葉に、レツが、ずっとツッコミたかった事にツッコむと、クラピカが妙な所に関心しだす。 そんな一幕があると、明かりのついた執事室に着いた。
+++
どうしようもなく、寂しかった。
何故かその日、キルアは寂しくて悲しくて仕方がなかった。
今まであって当たり前だった何かが……、自分の体の一部に等しい「ナニカ」が足りないという喪失感に襲われて、孤独が自分を苛んだ。
家族も、執事も、いつもと変わらない…はず。
いつも通りのはずなのに、どうしようもなく寂しくて、悲しくて、辛くて、’悔しくて’……。
今まで感じたことなどない感情ばかりが胸の内にあって、訳がわからなくなっていた時に出会った。
自分の家では珍しい、自分と同い年くらいの少女の使用人が挨拶にやって来た。
本当にいつも通りだったのなら、キルアはその挨拶を聞き流して相手の名前などきっと覚えなかっただろう。 相手が自分と歳の近い少女だということすら、きっと気付かなかった。
けれど、その日のキルアはどうしようもなく淋しくて、胸にぽっかり空いた穴を埋めたくて仕方がなかった。 だから、言い、頼み、求め、願い、望んだ。
「俺と『友達』になってよー」
『友達』なんて単語を知っていたことに、その意味を知っていたことが今思えば意外だ。
そんなもの、この家では一番使われなくて意味もない単語だった。
そして、本当に意味などない。
「申し訳ございません、キルア様」
叶うはずなどない願いだったはず。 キルアは思い出せない。わからない。 あの日、どうして自分はあんなにも寂しかったのか。 自分が失ったものが何であるかが、わからなかった。
それでも……これだけはわかる。
キルアの世界の全てだった「ゾルディック」という箱庭に不満を覚えたのは、この日からだということだけは、覚えている。
ここにいる限りこの空白は埋められないことだけは、思い出せない「ナニカ」がくれたものが教えてくれた。
~~~
そんな夢を見た。 おそらくは、五年以上前の過去の夢だろう。
カナリアに初めて会った日。
自分は「ゾルディック」という箱庭に、閉じ込められていることに気付いた日の夢を見た。
やっと今年で12歳になるキルアからしたら、人生の半分近く前の出来事などあまりに遠い過去に感じておかしくないはずなのに、何故かつい最近のことのように感じる。 それは、この箱庭で過ごした日々があまりにも代わり映えのない毎日の繰り返しだったからかもしれない。 現にまだ一ヶ月も経っていないはずなのに、ハンター試験に関しては逆にひどく懐かしかった。
こちらの方がはるか昔の出来事のように感じるほど、記憶は鮮明なのにあまりに遠い。
どうしようもなく、遠いと思っていた。
……今まで、ロクに見向きもしなかった、カルトから、「どうか外に行かないで」と懇願されるまで。
レツから、ゴン達は自分に会うためにここまでやってきてくれたことを聞かされるまで。
今も遠いことには変わりない。
けれど、抱いていた不安は彼らがやってきてくれたという事実で雪解けのようにあたたかく消えてなくなる。
それでもキルアがゴンやレツよりも自分の命を優先したことに変わりはない。 レツは同業者だからまだしも、ゴンには軽蔑されて、失望されて、嫌われても何らおかしくなかったことだけは、心が軋むほどにわかっている。
それでもゴンが来てくれたのならば、今も本当に自分のことを『友達』だと思ってくれているのならば、もう自分も諦める訳にはいかないだろう。
母親の手前、その本音をはっきり口に出せば、他の四人が危なかったので、「今は会えない」という伝言をするしかなかったが、それでもキルアからしたらあの伝言は母親に、イルミに、そしてこのゾルディック家に対する宣戦布告同然だった。
もう何を言われても、どれほど自分を縛りつけて閉じ込めても、絶対に諦めない。
必ずこの箱庭から出てゆくことを誓った言葉だった。
……しかし、意志としての夢はともかく睡眠で見る夢はあえなくミルキの声にて、強制終了させられた。
「起きろ!!」
鞭による焼けるような肉皮を裂く痛みはもはやなじんだものなので、今更この程度の苦痛でキルアの表情筋は仕事をしない。 だがさすがに睡眠は続けていられないので、キルアはヒステリックな声にうんざりしながら目を覚ます。
「ああ、兄貴おはよう。今、何時?」
キルアにとってあの程度の一撃はその程度同然であり、その耐久性はやはりゾルディック跡取りにふさわしいのだが、もちろんキルアに『お仕置き』としての拷問をしていたミルキからしたら、全てが気に入らない。
「いい気になるなよ、キル」
フーフーと実に健康に悪そうな呼吸をしながらミルキは弟の胸にタバコの火を押し付けるが、普通なら大人でも泣き叫ぶような苦痛もキルアはケロリとした顔でいけしゃあしゃあと、思ってもいないことを棒読みで言い放つ。
「あちち、そんなァ。 オレ、すげー反省してるよ。ゴメン。悪かったよ兄貴」
「うそつけ!!」
もちろんイルミ以上の棒読み発言を真に受ける訳がなく、ミルキは鞭を大きく振りかぶって今度は弟の顔を思いっきり打ちのめす。 しかし、それでもやはりキルアから余裕を取り除けない。
両手足を拘束されているにも拘らず、キルアはぶたれた拍子で口の中でも切ったのか、血を吐き出してからうっすらと笑う。
「やっぱわかる?」
弟の言葉で頭に血が昇るが、弟が浮かべる表情にミルキは不気味そうに一歩退いた。 以前から自分に対して酷く生意気だったが、殴りつけて反抗することはあってもこんな嘲弄するように笑いはしなかった。
自分を見下しているというより、そもそも眼中にないと言わんばかりの余裕が、その余裕の出どころが理解できず、「勝率が100%でないなら手を出すな」という教育は実弟にも当てはまり、ミルキはキルアに手が出せなくなった。
唐突に電話が鳴り、キルアに会いに来たとかいう侵入者とレツが、ついに執事室近くまでやってきたという連絡。
その連絡を聞き、ミルキの顔は愉悦に歪む。
『友達』なんて甘えたものを欲しがって、その挙句が現在の惨状であることを思い出させる為に、自分の立場を思い知らせる為に、何よりもキルアの謎の余裕を奪う為にミルキは口にする。
「くくく、どうするキル? 俺がママに頼んで執事に命じてもらえば、あの連中は……ひっ!?」
さしものレツでも、たった一人の念能力者では、数も質も兼ね備えた、執事たちには敵わない。 それは事実である。 だが、その言葉は弟の逆鱗に、触れた。
「ミルキ」
キルアを縛る鎖の一つが外れた。 木綿糸を千切るかのごとく、自力で鎖を引きちぎって彼は殺意を湛えた目で無機質に実兄を見据えて、宣言する。
この宣言は、全く尊敬していないし、できない『家族』の中で嫌いな部類に入る、とはいえ血の繋がった兄弟だからこそ、逆鱗に触れられても思いとどまった温情であることを伝える。
「あいつらに手を出したら、殺すぜ?」
ある意味では思惑通り余裕を奪えたが、同時にキルアから敵認定された挙句にこのような拘束はいつでも簡単に抜け出せる、キルアはミルキなど何一つとして恐れておらず自分の意思でここにいてやっているということを思い知らされて、ミルキは悔しさに呻いた。 しかもその「一応兄貴だから」という建前は、ゼノがキルアを独房から出してやったことで本人があっさりミルキに向かって暴露した。
「兄貴、オレ、反省してないけど悪いとは思ってるんだぜ。だから大人しく殴られてやったんだよ」
四肢を拘束していた鎖や枷をバキバキと壊して外しながら、キルアは言い放った。
「キル……シルバが呼んどるからな」
「親父が? ……わかった」
ゼノからの伝言を聞き、キルアが独房から出て行った途端にミルキは持っていた鞭を床に叩きつけてゼノに八つ当たり気味で抗議する。
しかしゼノは息子の嫁そっくりなヒステリーを見せる孫を冷めた目で眺めてから、静かに一言で自分のキルアへの対応の理由を言い表す。
「アイツは特別だからな」
意外にも、その一言にミルキからの反論はなかった。
「お前から見てキルアの力量はどうだ?」
「……そりゃすごいよ。」
続けて発言する、ゼノの質問に対しては、ミルキはなんとも複雑そうな表情だったがやはり素直に認めた。 『家族』であろうが、相手との力量差を正確に測れないのは暗殺者として致命的なので、そこらへんは冷静に、客観的に見て認めているらしい。
「才能だけなら長いゾルディック家の歴史でもピカイチじゃない? それはママも認めてるし、俺もそう思う。 でも暗殺者としては失格だよ。ムラッ気があってさ。 『友達』なんか作ってる奴にゾルディック家は継げないよ。要するにあいつは弱虫なんだよ、精神的にさ。 あるとしても、俺みたいに、ギブアンドテイクの契約にしておくべきだ。」
しかし、やはり気に入らない弟だから評価が厳しいのか、自分とレツのような、『取り引き』であるべき、とも付け加えた。その評価は、キルアを「暗殺者失格」とミルキは言い切った。
そんな評価を下す孫をゼノは一度頭のてっぺんからつま先まで見渡して、一言つぶやいた。
「ふむ。」
怪我をしていない、ミルキ。 自分が独房に入る直前に膨れ上がった殺気と、既に引きちぎっていた鎖。
何を言ったのかはさすがにわからないが、自分が来る前にミルキがキルアを怒らせた、それもあの殺気からして逆鱗に触れたのは見ていなくてもわかる。
だが、ゼノの知る今までのキルアならば間違いなく、ミルキは無事で済んでいないだろう。 現にミルキはキルアの家出騒動に巻き込まれて、わき腹を刺された。
ゼノの知るキルアは、殺しの才能はピカイチだが年齢の所為もあってか精神が酷く不安定で、普段はヒステリックだが仕事となれば感情の制御が完璧にできているキキョウやミルキよりもはるかに、感情に振り回されている子供であったはずだが、帰ってきてからは不安定だった情緒が落ち着いて、あんなに毛嫌いしていた兄に対して、まずは忠告をする程度に感情を制御できるようになっていた。
弟の精神面での成長に全く気付いていない孫を、一瞬憐れむように見て、しかしそのことを指摘するとまたヒステリーを起こして面倒なので、ゼノは内心でキルアの成長を喜びながらテキトー極まりない相槌を打つ。
「そういうことだな。」
「ね。その点、俺は依頼があればいつでもだれでも始末するぜ。 そうだ、今度の爆弾はすごいぜじいちゃん!! 超小型でさ、雌の蚊にとりつけてその蚊が血を吸った瞬間に爆発するんだぜ!! 火力はまだ爆竹程度で、蚊がターゲットを識別できないのが難点だけど。」
「ミル。お前は頭はいいが、バカなところが玉にキズだ。」
やはり家から仕事以外で一切出さず、『家族』だけと関わりを持つという超閉鎖的な環境では成長はしないということを、ミルキとキルアに、ある意味、参考になったレツを、頭の中で比べて思い知りながら、今までの教育方針をゼノは少し反省した。
+++
言いたいことがあった。
「キル、『友達』ができたって?」
「……うん」
しかし、父親を前にするとその言いたいことが言葉にならない。 思えば、キルアは父に対して親子らしい会話もやり取りもした覚えがない。 母親や祖父母相手ならば、甘えたりわがままを言ったり反抗した覚えもある。普通の兄弟なんてわからないけれど、少なくともシルバと自分の親子関係と比べたら、イルミ相手でもまだ普通の兄弟関係に近いのではないかと思っている。 父のことは決して、嫌いではない。 純粋に尊敬しているし、憧れている。 けれど、自分と父の関係は親子というより師弟か上司と部下の方が正確ではないかと、家出する前はともかく今は強くそう思う。
「どんな連中だ?」
「どんなって……いっしょにいると楽しいよ。」
会話や関わることが怖いわけではない。イルミと違って特に緊張もなく話せるし、『友達』の存在も簡単に肯定できる。
「そうか……」
しかし、会話が続かない。 何を話せばいいかがわからない。雑談など、特に意味のない話題を上げていいのかどうかすらわからない。
「試験はどうだった?」
「ん……簡単だった」
どうしても、一言二言で終わってしまう会話。 思えば、昔からそうだった。 シルバとキルアの会話は、会話とは言えない。ただの情報交換と現状確認でしかなかったのだ。 それ以外の会話など、お互いにした覚えなどなかった。
「「………」」
気まずい沈黙が数秒間続き、シルバは一度息をつく。 それは溜息なのか、溜息だとしたらどんな感情をこめた溜息なのかはわからない。
「キル……こっちに来い」
「え?」
けれど、その溜息がシルバの中に押し込めていたものを吐き出すきっかけになったのか、彼は自分に一番よく似た息子をまっすぐに見据えて言った。
「お前の話が聞きたい。」
キルアは自分の望みを全否定される覚悟でやってきたのに、シルバから掛けられた言葉は自分の想像とは真逆に近い言葉だったからだ。 困惑している息子にシルバは少しだけ苦笑し、キルアの緊張をほぐすように彼は言葉を続ける。
「試験でどんなことをして、誰と出会い何を思ったのか……。どんなことでもいい。教えてくれ」
父からの「命令」ではなく、「提案」もしくは「頼まれて」何かを話すことはもちろん、何かをすることは初めてだった。 ……初めて、キルアは目の前の人物を「父親」と認識したのかもしれない。
「うん」と答えたキルアは、戸惑いつつも嬉しげに父の隣に腰を下ろした。
~~~
何から話すかを迷ったのは、最初の内だけだった。 一回、話を始めたら、あとは湯水のごとく自然に次々と思い出が、話が湧き上がった。 試験会場についてからの、ゴン達四人との出会い、トリックタワーでの激突、ゼビル島でのハンゾーと、レツのいざこざの愚痴、そして最終試験でのゴンがやらかしたわがまま。 身振り手振りでキルアは父に話した。
「キル」
そんな息子に、年相応に無邪気にはしゃぎながら楽しかった思い出を語るキルアに、シルバは改めて尋ねた。
「『友達』に会いたいか?」
真っ直ぐに、父の傍らに寝そべるペットの犬たちよりもはるかに獰猛な獣を思わせる双眸がキルアを見据える。 その眼は、長兄とは別種だが同じくらい怖いものだった。 今でも、その認識は変わらないし、これからもそうだろう。 それでも、キルアは答えた。
「うん」
何の迷いもなく、躊躇いもなく、恐れつつもその恐れをねじ伏せて、キルアも真っ直ぐに父を見返して答えた。
「親父。 やっぱりオレ、『家族』のことは好きだよ。」
言いたかったことは、やっと言葉になった。 もうとっくの昔に見つけていたのに、どうしてもどういえばいいのかがわからなかった言葉がスルスルと口から、一番伝えたかった自然な形となって出てくる。
相手を『家族』だと思えば、あまりに自然に、何の緊張もなく言葉にすることが出来た。
「オレのことを親父たちが大事にして、期待してくれてるのは知ってる。そのことは嬉しい。 オレに跡を継いでほしい、殺し屋になって欲しいって思う気持ちもわかる。 才能があるってわかってるんなら、そりゃその才能が一番生かせる道に進んでほしいよな。 それにレツの兄貴みたいに、どっか知らないところで、『家族』が死ぬのは、嫌に決まってるよな。」
反感の種だった「跡取りとしての期待」も、「殺し屋としての才能」もゴン達と別れて、最後のレツとの賭けに負けてから、考えて考えて考え抜いて、今ではそんな風に考えて受け入れることも出来た。 もちろん今でも、「勝手に俺に期待を押し付けるな」という思いはある。
自分のしたいことを「才能がない」、したくないことに「才能がある」と言って決めつけて反対したり押し付けるのは確かに間違いだが、それがあまりにもあからさまだとわかっていたら言いたくなる気持ちくらいは想像できる余裕が生まれた。 なのでもう、ムカつく以上の感情はもう芽生えない。 だから、レツの体験を理解して、受け入れつつもキルアは否定した。
「でも、親父。オレは嫌なんだ。 オレ、ゴン達と一緒にいて楽しいって思ったんだ。 『家族』以外の誰とも関わらないで、信じないで、ただ殺して生きていくのは嫌なんだ。 オレはゴン達みたいに、たくさんの人を信じて、信じてもらって、笑って生きていたいんだ。」
自分の今までの生き方をキルアは否定して、選んだ答えを、生きていたいと望む世界はどこかを訴えかける。
「親父。 オレは、親父のことを尊敬してる。憧れてる。 けど、親父と同じ道はもう歩めない。 親父が教えてくれたことは全部感謝してるし、これを生かして生きたいとも思ってる。 でも、オレはこれを誰かを殺すことじゃなくて、誰かを守って生かす為に使っていきたいんだ。 家のことを、家の歴史や仕事を否定したい訳じゃない。 オレたちは正義なんかじゃないけど、それでも必要な仕事で存在だと思っている。 ……けど、それでも、オレは嫌なんだ。 オレのわがままだけど、それを捨てたら、それは親父たちの作った『人形』だ。 キルアっていう一人の人間として生きていたい。」
この家に守られていたこと、『家族』に愛されていたことは、ちゃんとわかった。 理解した上で、自分の言っていることがどれだけ幼いわがままなのかも知った上で、それでもせめて知って欲しくて、誤解のしようがなく正しく自分の望みを理解してほしくて、キルアは語る。
拗ねて膨れて一人勝手に思いつめて、眼を閉ざして耳を塞いで逃げ出した先で、向き合わされた、『失敗』を教えてくれたライバルのおかげで、ようやく見つけた答えをキルアは伝える。
その答えをシルバは黙って最後まで聞いてから、一度目を伏せて眉間を揉むように手で押さえてから深く息を吐く。 キルアが父の反応に戸惑って、「親父?」と声を掛けてやっとシルバは絞り出すように呟いた。
「……まいったな。子の成長は親が思うよりよほど早いとは聞くが、これほどか」
感心したように、何かを惜しむような、今まで聞いたことがないほど人間らしい父の言葉にキルアは呆ける。 顔から手を離し、少し項垂れていた頭を上げてシルバは現状を理解できていないキルアに……まだまだ面差しはあまりに幼い息子に少し苦笑する。
「思えば……お前とは親子として話をしたことなどなかったな。」
キルア自身が感じ、思ったことと同じことを呟きながらシルバの大きな巌のような手がキルアの頭に伸びる。
「俺が親に暗殺者として育てられたように、お前にもそれを強要してしまった。 俺とお前は違う……。お前が出て行くまで、そんな簡単なことに気付かなかったが……。そうか……。そんな俺でも、お前は俺を尊敬して、憧れていてくれているのか……」
シルバの手がキルアの頭を、息子の中で唯一自分の銀髪を受け継いだその髪をわしわしとかき混ぜるように撫でる。
心地よさを感じた、その手。 シルバは息子の頭に手を置いて、改めて伝える。
「お前は俺の子だ。だが、お前はお前だ。」
今まで血の繋がりのみに甘えて、考えたこともなかった己とキルアの関係を改めて伝え、そして同時にキルアの出した答えを肯定し、背を押してくれた。
「好きに生きろ。 疲れたらいつでも戻ってくればいい。な……?」
この箱庭から飛び立つことを決めた息子に伝える。疲れたのならば、いつだって羽を休めたらいい。 そんな場所としてここを定めてくれてさえいればそれでいいと、親が出来る最後にして唯一、そして最大の愛情を伝えた。
「もう一度訊く。仲間に会いたいか?」
「うん!!」
その答えは、決まりきっていた。 最初の問いよりもさらに力強く頷いたキルアに、シルバも頷いてその答えを受け取った。
「わかった。お前はもう自由だ。……だが、一つだけ誓え」
しかし、最後に一つだけキルアに誓わせる。 自分の親指の先をかみ切って血を滲ませて、その指を突き付けてもう一度真っ直ぐに獣のような目でキルアを見据えて尋ねる。
「絶対に『友達』を裏切るな。いいな」
その誓いにもキルアは即答だった。 同じように親指を噛み、血を滲ませてその親指を互いに押し当てて強く誓った。
「誓うよ。裏切らない。絶対に!」
+++
「一体何を考えてるの!? お義父様もあなたも!! せっかくイルミのおかげでキルが戻ってきたのに!!」
予想はしていたが、相変わらずヒステリックな妻の言葉にうんざりしながらシルバは面倒くさそうに言い返す。
「しばらく好きにさせとけよ」
「だめよ、何言ってるの!? キルが立派な後継者になれるかどうか、今が一番大事な時期なのよ!!」
シルバの言葉はキーキーと耳が痛くなる金切り声で反論されるが、その程度のヒステリーで折れるようではゾルディック当主が務まるわけがない。 彼は不敵に笑って、命じる。
「わかってるじゃねーか。じゃあ、つべこべ言わず黙ってろ。」
夫を尻に敷いている恐妻のように見えて、シルバにベタ惚れだからこそゾルディックという家の栄華と繁栄に執着するキキョウは、夫に強く言われたら何も言えなくなって素直に黙り込んだ。
シルバは低く笑いながら独り言を呟いた。
「いつか必ず、戻って来る。」
シルバがキルアに伝えた言葉は、全て本音だ。 息子の成長は喜ばしいが、少し淋しくも思う。
暗殺者としての道を否定しつつも、自分を尊敬して憧れていると言われたのは、素直に嬉しい。
やはり自分と息子は全くの別人。同じ教育を施しても同じように育ちはしないという事だ。
諦めてなどいなかった。
そう簡単に諦められる程度の才能ならば、家出した時点で跡取りを、長男のイルミに戻して、流石に不必要に情報を漏らすなら、死人に口なし、というのもありえたのだ。
才能はもちろん、キルアはあの「何か」の……、ゾルディック家の地下深くに封じた「アルカ」の内に潜む得体のしれない怪物の手綱になり得る。 それだけでも手放せるわけがない存在なのだから。
父親として「好きに生きろ」と背を押してやった言葉や思いに嘘はない。
しかしシルバは『キルアの父』でもあり、『ゾルディック家当主』でもあると、何の疑いも不満もなく思っている人間であった。
彼の「好きに生きろ」という言葉は、〈ゾルディック家の迷惑にならない範囲で、ゾルディック家に利益をもたらす形で〉という前提が自然についているのだ。
嘘はないが、初めからキルアとの認識とは酷いズレがあったのだ。 勿論、シルバは気付いていたが、あえて無視した。 不必要に、何が崩れるとも知れぬ、膿を出す必要などないのだから。
家から出てしばらく好きにさせる許可を出したのは、明らかにキルアが良い方向に成長していたから。
殺しを嫌がるようになってしまったのは残念だが、元々その傾向はあったので仕方がない。
イルミによって埋められた極小の針によって、キルアは『友達』よりも何よりも自分の命を優先してしまう。
キルアに無自覚で、キルアの自意識を奪わない程度の洗脳なのでその効果は酷く微弱な、下手したら念能力者でなくても頭の中に響く命令をキャンセルすることが可能なはずの針だが、イルミがその針に込めた命令は生存本能に訴えかけるもの。
必ずキルアは、最終試験のように仲間を裏切って自分の命を優先してしまう。
そしてキルアは父親であるシルバを尊敬して憧れているからこそ、そんなシルバが送り出してくれたのに、信じてくれたのに、だからこそ誓った誓約を守れなかった罪悪感で勝手に自分で自分を縛り、失意にまみれて戻ってくることが簡単に想像がつく。
方向性は『家族』の誰とも違うが、プライドが高いからこそ責任感がある所は一番、自分とキルアが似ているとシルバは感じていた。
実際に、元々キルアが生まれるまで、当主候補だった、イルミという成功例があるのだ。 ゆえに、他の兄弟と違い、当主たる自分や、さらに父親のゼノの枷など無くとも、ゾルディック家にメリットになることを半ば自動的に行ってくれる。
本来、弟の分になるはずの、仕事をほとんど請け負う、そのワーカーホリックぶりは少々予想外だったが、どこまでいっても、今のイルミは、キルア、もしくは順当に成長し、鍛えれば、カルトのスペアでしかないので、問題は無かった。
そこまで考えて、何もかも上手くいっていることにシルバは笑う。
キルアが家出した時は頭がひたすら痛かったが、あまりにシルバに都合がいい方向に物事が進んでいる事実に彼は機嫌よく笑い、だからこそシルバは自信を持って、断言する、ように呟いた。
「あいつは、俺の子だからな。」
その笑みと、立場の使い分けは、どこぞに居る、当初は『流星街の幼馴染』で結成された、『幻影旅団団長』のクロロ=ルシルフルの美しき闇の魔王の様な男と称される、仕事モードの顔に似ていた。
……もっとも、クロロの笑顔は企みを隠すための笑顔であり、シルバは裏があることを前提に、それがばれても痛くもかゆくもないという余裕の笑顔という違いがあるが。
+++
ゴン達は、道をカナリアの案内で進んでいくと、その前に綺麗に並び立つ五人の執事達。 実際に歓迎されている囲気だった。
執事の人たちに執事室の中に案内されて、客間みたいなところでソファーにかけた四人。 そこから、電話でもしたいところなのだが、ゴトーが言うには、「今、キルアがこっちに向かっている」と。
「ふふ………さて、ただ待つのも退屈で長く感じる物。ゲームでもして時間を潰しませんか?」
「ゲーム」
執事長である、ゴトーが、懐から取り出したのは、一枚の金色に輝くコイン。 親指の上に乗せたコインをピンと弾き、落ちてくると同時に、両手を動かし、コインを掴み取った。
「コインはどちらの手に?」
今の速度だったら、だいたいの人でもわかるレベルであり、いわゆる、ゲーム説明も兼ねてのデモンストレーションなのだろう。 そして四人は即答した。
「「「「左手」」」」
「ご名答。では、次はもっと早くいきますよ?」
ゴトーの実力的には、全然本気を出していないと、実際に戦ったレツには分かる。だが、二回目はさっきよりも、少し早くなっていた。 これに対してもゴンは即答した。
「また左手。」
その言葉に、ゴトーは左手を開くと、金色に輝くコインが現れ、ゴトーさんはにっこりと笑った。 そしてふと思い出したかのように、レツの方を向く。
「ああ、そうだ、レツ様には、奥様から伝言を預かっております。 少々お一人で別室によろしいでしょうか?」
「あ、大丈夫だよ。 ちょっと行ってくるね。」
「おう」
ゴトーが合図すると、後ろに控えていた別の執事の人が先導して、ゴン達の方は、次のゲームが始まった。
~~~
レツが執事に連れられてきた場所は電話だった。
「おや、レツ様、髪を結われているそのリボン、少しほつれてますね?」
「え? あー、自分で直せるからこそ、億劫になっちゃってたかな?」
レツの言葉に執事は次の提案をする。
「良ければこちらで直しましょう。時間はあまり取らせませんので。」
「あ、じゃあお願いします。」
「かしこまりました。そちら今、通話となっておりますので、どうぞ受話器を取ってお話ください。」
そう言って恭しく、レツのリボンを受け取って執事の一人は別室に行ってしまった。
流石執事というべきなのか、裁縫スキルも完備であった。
一応ゾルディックなのだが、戦闘能力だけで人を決めてるわけではなかったようだ。
とりあえず電話を取り、レツはそのまま耳に当ててみた。
「もしもし? レツですけど………」
『もしもし? すみませんねぇ、時間を取らせてしまいまして』
「それは良いんですけど、キキョウさん、どうしたんですか?」
『いえね、少しレツさんに、お願いがありまして』
「お願い?」
キキョウがわざわざレツにお願いというのも不思議である。
だが、とりあえずは、聞いてみることにした。
『たまにでいいんです。キルアの様子を教えてもらえたらと』
「………やっぱ、キルアの事、心配ですよね。」
『そりゃもう!心配ですとも!今が大事な時期ですからね!できる事なら家にいて欲しいです! でも、パパもキルも決めた事。なら、ここは見送ってあげるのも一つの手だと思いまして。』
(……母親ってこんな感じなのかな? 姉さん達とさほど変わらないような気もするけど。)
そんな風に、二つの『家族』を頭の中で比べてしまう。
「分かりました。 できる限り、キルアの事を送りますよ。知ってるゾルディックの人に送ればいいんですよね?」
『やりやすいようにしてもらえれば構いませんわ。 後はキルに危険が無いように、くれぐれも注意してくださいね! 後はお菓子の食べ過ぎに注意するように!それからあまり夜更かしはしないように! 後は………』
「…そこまでキルアが信用できませんか?」
『そんな事はありませんわ!! でも、そうでしたね。 そのように取られても仕方ありませんでした。 あそこまで冷たい目ができるなんて、将来が楽しみですわ! それではレツさん、ごきげんよう。』
その電話が終わると、傍にいる、執事に「どこか着替えるための部屋に案内して欲しい」という。
そしてそこに移動し、男装モードに、着替えていた。
+++
一方、レツが離れてからの応接室。
「じゃ、次は少し本気を出します。」
ゴトーは和やかに穏やかに笑いながら宣言し、そして実行した。
コインを指で弾いて落とすまでは一緒だが、今度は腕を交差させるだけはなく彼の腕が届く範囲にまでコインが落ちてきた瞬間、上下左右に両手を動かしていくつものフェイント、いったん掴んで離して逆の手でキャッチをしたかと思えば、また指で上空に弾き上げるを繰り返し、そしてまた先ほどまでと同じように両手の拳を三人に見せて尋ねる。
「さあ、どっち?」
ゴトーの問いにレオリオが、「ん~、自信薄だが……多分、右……」と答えるがゴトーは他の二人の答えを促すこともなければ、正解か間違いかも答えず唐突に話を変えた。
「私は……キルア様が生まれた時から知っている。僭越ながら、親にも似た感情を抱いている」
緩やかに、けれどはっきりと場の空気が変わってゆく。 この屋敷に招き入れられた当初の半端に重々しい空気など可愛らしく感じるほど、彼らがカナリアに案内されていた時に覚悟していた「敵意」がその場に満ちた時、ゴトーが表情を一変させて三人に告げる。
「正直なところ…………キルア様を奪おうとしている、お前らが憎い」
「「「…………」」」
やはり歓迎されていなかったことを思い知らされて、三人は沈黙する。 何と答えるべきか迷う三人に、ゴトーは彼らの主張に興味はないと言わんばかりに今更、ゲームの答えを求めて促す。
「さぁ……どっちだ? 答えろ」
「左手だ」
クラピカが答えると、ゴトーは無言で左手を開く。 その掌には、紙を握りつぶしたかのように変形した金貨が1枚。それを見せつけてもう一度ゴトーは俯き、酷く何かを悔やむような声音で言った。
「奥様は……消え入りそうな声だった。断腸の思いで送り出すのだろう」
その言葉は、ゴン達に向かって言ったのか、それとも独り言だったのかはわからない。
ただ、伏せていた顔を上げて次に発した言葉は確実に、ゴン達に向けられていた。
「許せねェ」
こめかみに極太の青筋を浮かばせて、ゴトーは一方的に宣言する。
「キルア様が来るまでに結論を出す。 俺が俺のやり方でお前らを判断する。文句は言わせねェ。 ……レツ様にもだ。」
ゴン達に対する敬語はとっくの昔に捨て去ったが、直接、実力を確かめた、レツに対しての敬称は抜けない。
それでも、彼女すら敵に回すことも構わないと彼は宣言し、他の執事達もゴトーの言葉に同意するように隠し持っていたのか大振りの刃物を一斉に取り出し、ゴン達を取り囲むだけではなく、彼らを招き入れたことで裏切り者と認定されたのか、カナリアの首にその刃物を突きつけた。
「いいか、一度間違えばそいつはアウトだ。
キルア様がくるまでに三人ともアウトになったら……この程度の実力しか持たない奴らを招き入れたレツ様も同罪だ。 キルア様には“四人は先に行った”と伝える。ニ度と会えないところにな……」
ゴンは、「キルアは…」と何か発言しようとするが、それをゴトーは遮り、次のゲームに移行する。
そしてしばらく三人は答えないので、ゴトーは発言する。
「おい、人質に取った、レツを殺してこい。」
「OK!」
「え!?」
「ああ、このリボンに見覚えがあるだろう?」
そのリボンは確かにレツのものであり、三人は唾を飲み、レオリオが「待て!!」というのを皮切りに、ゲームに答えていった。 絶対に生き残って見せると決心して。
+++
レツが着替えて、待機していた部屋に、最後の可能性を追い求めた、カルトがやってきたのだ。
カルトは未だ、《試しの門》を【1】までしか開けられず、殺し合い、ないしは純粋な戦闘では、まだゴン達三人と比べて、念の有無は大きく、負けるという事はないが、それでも一部は劣ってしまったのだ。
ちゃんと話し合って、キルアと自分は、別人であったことを、理解しているが、カルトの胸の内で湧き上がる願望は、独りよがりであまりに幼くて身勝手なわがままであることでも、望む。
「レツ、どうか、キル兄さんがもう出て行かないように説得してほしい。 あんな弱い奴なんか大切にしないで欲しいんだ…」
「___カルト、ごめんね。 君が話し合って説得できなかったなら、僕が言っても無理なんだ。」
レツの答えに、カルトは最後の望みが絶たれた事に、酷くショックを受けるが、それも納得しないが、理解はできるので、同時にまた機嫌が悪くなってカルトは黙り込んだ。
そしてカルトは感じていた。
(あぁ、そうか……。 やっぱりレツは、どこかキル兄さんに似てるんだ。)
自分と2歳しか変わらないのに、何もかもが自分より優れている、なのにイルミとは違って親しみやすくて優しい兄は、いつもどこか家族とは違うものを見ていた。
血だまりの闇ではなく、どこまでも暖かな日だまりにいつも焦がれていたことを、
カナリアが屋敷に来た頃、自分と歳の近い子が来たことに喜んでいたのを、カルトは知っている。
きっとカルト以上の血にまみれていながらも、キルアは光〈を〉、レツは光〈も〉求めて歩いていく人なのだと、闇の中でしか生きられない、闇こそが心地よいと思うカルトとも、一人として例え、双子であったとしても、やはり別人であるのだ。
「――やっぱり、お前達なんか、大っ嫌いだ。」
唇を噛みしめて、涙を瞳に浮かべてカルトはレツにそれだけを言い捨てて、また勢いよく扉を開けて、そのまま帰って行った。
(嫌いだ嫌いだ! 大っ嫌いだ!!)
光になど焦がれたことはないけど、兄の闇にはそぐわない優しさは確かに、どうしようもなく好きだった。
自分の体験をもって、大事な意見をくれ、感謝はしてたのに、兄を引き止めもしないレツに、カルトはただひたすらに、罵った。
そんな兄と同じように、近いのに、同類なのに、同じ罪を負っているのに、同じ闇の中で生きる者のはずなのに、自分には手が届かない光の下に、兄を連れ去ろうとどうちょうするレツも、嫌いだと心の中で罵り続けた。
繋がることや一緒にいることは出来ても、キルア達と自分が住み、暮らし、望みを持って、生きていく場所が違うことは、泣きたくなるくらいに理解してしまったけれど、それでもやはり、幼いわがままが胸の中で声高に叫んだ。
+++
そしてカルトが扉から出ていき、レツはなんとなく理解したので、苦笑していた。
しばらくしたタイミングで、先ほどの執事の人がリボンを持ってきてくれた。
「お待たせしました。どうぞ、確かめてください」
そう言って見てみると完璧な仕上がりであり、まるでクリーニングにだしたかのようで、まるで新品みたいな仕上がりであった。 これをこの短時間に行ったのだ。 ゾルディックの執事の優秀さが示された瞬間である。 お礼を言って部屋に戻るよう案内されると、なんだか拍手喝さいの場所だった。
「あ、レツ!? 無事だったんだね?」
「どうしたの?」
「いやさ、ゴトーさんがお前を人質にしたって言うからさ。お前のリボン見た時はそらびっくりしたもんだ。」
「あー、そういうリボンの使い方してたんだ。 でも大丈夫だよ。」
「………お前は能天気だな。」
そこにゴンとレオリオ、クラピカの順で、発言し、合間にレツは答える。
「というか、あの服、可愛かったのに! 勿体無い!」
「………あ~~~、うん、ありがと……///」
「?」
そして服装が変わっていることに、ゴンの殺し文句が発動する。 それに気づけるようになった、レツは、顔を仄かに赤らめながら返事をし、その態度にゴンは分からないが、クラピカとレオリオは分かるので、注意をする。 そんな一幕の後、キルアが来た。
「おい、ゴトー! ゴンはまだか!?」
「キルア!」
「ゴン! レツ! それにクラピカと………リオレオ!」
「レーオーリーオー!」
お互いのヒドい顔に笑い合いながらも、しばらくしてレツから発言する。
「それじゃどうする? もう出かけるの?」
「ああ、ここじゃお袋がうるせーからな。ゴトー、お袋が何か言ってもぜってーついてくるなよ!」
「承知しました、いってらっしゃいませ。」
(恭しく、主に下げる頭はなんか少し違うって感じけどね。 まァ、僕たちの仕事モードみたいなものなんだろうけど。)
そんなことをレツは思い、ゴンは、ゴトーに「キルアがいなくなると、寂しくなる」と話し、ゴトーはそれを否定する。 今度こそ執事室を出ようとしたとき、ゴトーはゴンに声をかけた。そして、コインを弾いて両手で掴んだ。
「さぁ、どっちでしょう。」
「? 左手でしょ。」
ゴンの動体視力は野生動物も真っ青な精度を誇る。 ゴンのその言葉にすっと開くと、そこには何もなく、右手にコインが握られていた。ゴンは「うそ…」と、驚き、ゴトーは忠告する。
「そう、トリックです。世の中正しい事ばかりではありません。 お気をつけて。 キルア様を、どうかよろしくお願い致します。」
そう言って頭を下げるゴトーに、最後にゴンに挨拶されたカナリアは、キルアの事が大切だと分かる、暖かい感情に包まれていた。
シルバさんが、シリアスな闇を、
キキョウさんが、ギャグな闇という謎。
…どうしてこうなった…?
あと、シレっと男装モードに戻ってます。