子兎の人形師は何を想う   作:夜空人

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Q.キルアはヒソカとレツの戦いを見ていて、かつ針が頭にある時なのに、レツに対して普通に接してるのは何故?

A.その戦いを見ていて、レツはヒソカに一蹴されており、かつヒソカの首ばかり狙っていたのもあって、戦闘技術では自分の方が上と思っています。また、【練】の技量もヒソカの方が上なので、プレッシャーや冷や汗の原因はヒソカだと思ってもいます。


No.8/オトウト✖ト✖イモウト 

ヌメーレ湿原に入る受験者たち。その地面はぬかるみが酷く、体力をさらに奪ってゆく。

しばらく走っていると、濃霧が立ち込めてきた。五人で集まってはいたが、やはり体力差で別れる。

レツとゴンとキルアは走っていると、レツが眉間に皺を寄せる。それをゴンは気にし、話しかける。

 

「レツ?どうしたの? …そんなに霧とかぬかるみが嫌い?」

「それもあるけど、二人共、もっと前に行こう。」

「? まぁ、試験官を見失うといけないもんね。」

 

そう話しているとキルアが正確に察知していて話に加わる。

 

「レツが本当に気にしてるのは違うだろ。__ヒソカから離れたほうがいいってことだろ?」

ハァ「…やっぱり分かっちゃうか。」

「ああ、あいつ、殺しをしたくてウズウズしてるよな。」

「しかも絶好の濃霧っていう環境だもんね。」

「ああ。殺りたい放題できる。」

 

二人がそんな会話を交わしていると、ゴンは呆気にとられた眼差しを向けていた。

 

「なんでそんなこと分かるのっていう表情してるね。なぜならオレも同類だから。臭いでわかるのさ。」

「同類……? あいつと? そんな風には見えないよ。」

「僕も分からないなー。」

 

そういう会話をしていると、レツの発言にキルアは目を軽く見開く。

 

「…いや、レツは分かるだろ。現に気づいているし。」

「僕がゴンに同意してるのは”同類”ってところ。キルアは戦闘狂ではないでしょ。」

「そういう意味か。それはそうなんだが。」

 

”同類”。この言葉にキルアは闇社会の人間として、レツは快楽を得るための戦闘狂として、の認識の齟齬があった。

 そしてその後、後方のレオリオたちに向けたゴンの暢気な対応に毒気を抜かれつつも、湿原の霧はどんどん濃くなっていく。湿原の動植物たちの餌食になってどんどん減っていく受験者たちの存在を知りながらも、サトツについてゆく。

更に数分後、後方集団が別の所へ誘導されて逸れてしまった事が判明し、ゴンが心配そうに振り返るのを、キルアが諌める。

 

「ってえ──!」

「レオリオ!!」

「「ゴン!」」

 

二人が呼び止めるが、ゴンはあっという間に霧の向こうに走って行ってしまった。

レツはゴンの方向に部分的に伸ばした【円】を張る。その方向を確認し、キルアに話しかける。

 

「……ヒソカが居るっぽい方向に行ったから、見逃されれば戻って来れると思う。」

「いや、ヒソカの方向にか!!? それって逆にヤベーだろ。」

「でも一番、というか戻ってこれる可能性ってそれぐらいだと思う。」

「なんでそんな事わかんだよ。」

「ヒソカが受験生とか動物に殺られるか、試験に脱落する可能性ってあると思うの?」

「うん、流石にそれはねェな。」

「でしょ?」

 

ゴンが戻ってこれる可能性があることに、気休め程度には安心する。

しばらく走っていて、ずっと気になってた事をトーンを下げてレツは聞く。

 

「…キルアは、さ。」

「……なんだよ?」

「”クソ兄貴”って言ってたけど、『家族』のことをどう思っているの?」

「…なんでもいいだろ。」

 

その質問に対して、キルアは目を逸らす。レツは改めて聞く。

 

「正直に答えて。僕はキルアの兄さんじゃないから本当の事はわからない。本当に嫌いで憎んでるなら仕方ないと思う。でも僕と同じ轍を踏んで欲しくないから、聞いてる。」

「……そうか。レツの兄貴はヒソカに…。」

「うん。殺されて遺品も攫ったって認めた。だからもっと話しておけば良かったって後悔している。」

「…レツは兄貴のことが本当に好きだったんだな。」

「……今でこそ、そうと言えるけど。生きてる時には分からなかったよ。分かった時にはもう遅かった。」

「……………」

 

キルアは沈黙し、『家族』の事をどう思っているかを考える。

長兄の事は家族で一番苦手だったし、次兄を刺してまで家出した。

自分を大切にしてくれていることはわかっている。確かに笑いあった思い出もあったから。

ハンターになったら『家族』を「いい金になるから」などと考えて、とっ捕まえようかなとぼんやり考えていた。

本当にあの”集合写真”を破くのは『金』などと引換になるのか? 場所次第では、数億を簡単に稼げる所を知っていて、アレと本当に等価か?

それはすなわち『家族』と敵対する上、今までの思い出は『金』以下である、と認めうるということでもある。

そうなった時、自分は戦えるかどうかが全く分からなかった。

そこでキルアは同じ闇社会に生きていると、何となく感じ、だがほぼ確定だろうと思っているレツに聞く。

 

「……レツはさ。ハンターになって今の家族と敵対しうる未来があることについてどう思ってるんだ?」

 

あの場には居なかったレツはクイズの『半分、正解』の答えを理解する。

 

「(…そうか、あのクイズの意図は、そういう意味だったのか…)…先延ばしにするよ。……試験会場に来る前にさ。老婆が出てきて言ったんだ。『友達』と『家族』どちらをとるのかって。僕は『友達』がいなかったし、よくわからないから即答して『危険だが短い道』を通ってきた。……沈黙すると、『安全だが回り道をする』ってのもあってさ。そういう事なんだなって。」

「…何だよ? そのクイズ、とんでもなく意地悪くねェーか?」

「僕もそう思う。…でも大事なことだと思う。」

 

ちょうど話を切り上げた所で湿原を抜けることに成功する。

 

「みなさん、お疲れ様です。無事湿原を抜けました。ここビスカ森林公園が二次試験会場となります。では、私はこれで。健闘を祈ります。」

 

そういい、サトツは離れてゆく。

しばらく悩んでいたキルアはレツの答えに同調し、その答えを伝えることにした。

 

「うん…。やっぱり兄貴達の事は、嫌いとか、憎んでるとは言えない。でもレツほどはっきり好きとは言えない。正確な答えは出せない。だからオレも先延ばしにするよ。」

「それでいいと思うよ。好きや嫌いが100%に傾くのもおかしな話だからね。」

「……おう。」

 

そこまで話した所で、キルアはゴンを待つことにし、レツは気絶してるレオリオの治療に向かった。

 

 

 

「………………」

 

この一連の会話をギタラクルは耳に【凝】を行って聴いていた。一時はレツがキルアに接触するのでどう引き離すか考えていたのだが、せめて悪意の【練】をいきなりぶつけるのはやめることを心に決めた。

 

 

+++

 

ほんの少しして、ゴンとクラピカは合流した。

 

「レオリオ!!」

「うむ、腕の傷以外は無事のようだな。」

「てめ…」

 

ここまで話した所で左手にエメラルドの指輪をはめたレツがくる。

 

「レオリオ、少しだけ治療するよ。」

「レツ!」

「…顔と腕の傷だけ?骨とかは大丈夫?」

「お、おう。とりあえずは、それだけだぜ。」

「よし、始めるよ。」

 

そして【癒しの碧玉/ホーリーヒーリング】を行使して、頬と腕を治してゆく。

それを体験しているレオリオは勿論、ゴンとクラピカも驚く。

 

「ふう、一通り終わったよ。…ゴンとクラピカは? どこも怪我ない?」

「うん。俺はない。」

「私もだ。 …そうか、試験開始前にどちらも無傷だったのは、」

「うん。僕は、肋骨折られたけどそれを治した。」

 

レツの懸念にゴンは答え、クラピカは試験前に戦ったという割には不思議な結果に納得する。

実際に味わったレオリオはその場で頼み込む。

 

「頼む!! その癒しの力を俺に教えてくれ!!」

ビクッ「…いきなりどうしたの?」

 

レオリオの唐突な反応にレツは疑問を持つ。

これにレオリオの夢と願いを伝えられ、クラピカは先ほどの実例を話す。

 

「…俺の夢は、「金なんかいらねぇ」って言える医者になることでな。――今、俺に使ってくれたその力を俺が手に入れる事が出来たら、俺は多くの人を救う事が出来ると思ったんだ。外傷が原因で死ぬ人間は事欠かない。大きな怪我を負って病院に運ばれても、出血が多すぎて輸血が間に合わず傷を縫合する前に死んでしまうなんて幾らでもある事例だからな。」

「…実際、ヒソカに切られた人の中には致命傷を負っても生きていた者はいたな。」

 

それにレツは【念】のことを秘密にした上で、様々な事情を答える。

 

「僕の力は病気や呪いには効果がないよ?」

「それでも良い!!」

「…確かにこれは、いざという時には止血して、命を伸ばす事も出来るけど、この力はこの指輪に備わった力でね。家族からのお守りでもあるんだ。…それにこれは10時間分しか持たない。今の残量は9時間弱しか使えないよ。」

「……そうか。使いきりのタイプか。…やっぱりそうウマい話はねェーか。」

 

暗くなった雰囲気を吹き飛ばすためにゴンが話を変えると、その質問にはキルアが答える。

 

「ところで、なんでみんな、建物の外にいるのかな。」

「中に入れないんだよ。」

「キルア!」

「よ」

 

この場に来れた事に、キルアとレツは聞く。

 

「どんなマジック使ったんだ? 絶対もう戻ってこれないと思ったぜ。」

「そういえば、ヒソカとバラバラに来たってことは、あいつに案内されたわけじゃないんだね。」

 

その疑問にゴンは『香水の匂いを辿った』ことを伝える。

それを聞いて、レツは試す。

 

(…鼻に【凝】すればいけるかな? …ぐ、ダメだ、汗臭すぎる!!! その上で香水の匂いを嗅ぎ分けるってどんな技………)

 

「_で、なんで中に入れないの?」

 

そこで扉の前の字を読むと、

 

__本日 正午 二次試験スタート__

 

と、書いてあった。

キルアは続ける。

 

「変なうなり声はするけど、全然出てくる気配はないし、まぁ待つしかないんだろうな。」

 

 

+++

 

しばらくして、11時55分になった。

 

「もうすぐだね。」

「うん。」

「そうだね。(【円】! …人が二人居るね。 大丈夫そう。)」

 

ゴンの言葉にキルアは答え、レツも返事し、しっかり【円】で危険性を調べる。

そして正午になり、門は開く。そこには椅子に座る女と、大柄な体格の男が後ろにいた。

…うなり声は男の腹から出てきた音のようだ。

 

「ようこそ。一次試験を通過した受験者の諸君。アタシが二次試験”後半”の試験官、メンチよ。」

「同じく”前半”を担当する、ブハラ。」

「どお?お腹は大分すいてきた?」

「聞いての通り もーペコペコだよ。」

「そんなわけで二次試験は『料理』よ!! 美食ハンターのあたし達、2人を満足させる食事を用意して頂戴。」

 

二人は試験概要を説明していき、その内に受験生から失笑がこぼれる。

それを横目にクラピカは一応、試験官の情報を集めるためにレツに聞く。

 

「あの、メンチとブハラという者は、どんな人物なのだ?」

「二人共、美食ハンターっていう分野だから、得意分野だね。…ただ…」

 

レツは答えるが言い淀む。それにレオリオも聞く。

 

「なんだ? なんか難しい点でもあるのか?」

「う~ん、ブハラさんの方はともかく、メンチさんの方が不安。」

「なんだよ? そんなスゲーねーちゃんなのか?」

「うん、21歳の若さにして、食文化への貢献が認められて一ツ星の称号持ち。若さも加味すると、上から数えたほうが確実に速いくらいには、優秀な人物。」

「俺と二つしか違わねーのにか…。」

「…つまり前半はともかく、後半が凄まじい難易度の可能性があるということか。」

 

レツの情報にレオリオは感嘆の言葉を吐き、クラピカも唾を飲む。レツは続ける。

 

「でも、一次試験の事を考えると、前半も決して楽ではないと思う。…50人残ればいい方かなぁ?」

「そうだな、料理なんて作った事ねぇーぜ。」

「こんな試験もあるとはな。」

 

ここまで話したところで、説明も終わり、ブハラは課題を出す。

 

「オレのメニューは、『豚の丸焼き』!! オレの大好物」

 

その発言にレツは脱力するが、気を引き締める。

 

(そんな簡単な試験でいいの? …いや、美食なんだから、適切な解体方法とか? …それは考えにくいな。 となると…『種類は自由』ってのが、難しいんだろうな。)

 

「それじゃ、二次試験・前半スタート!!」

 

 

+++

 

五人は会話をしながら豚を探す。

 

「いやーーー正直、ほっとしたぜ!! 簡単な料理でよ。」

「豚、捕まえて焼くだけだもんね。」

「しかし、早くつかまえねばな。」

「”兄貴”みたいなデブとはいえ、限界あるだろーしな。」

「…限界があるってことはさ___

 

レツが話してる最中に五人は、『グレイトスタンプ』を見つけた。

 

___その限界まで豚を始末できないってことだよね。」

「おい……骨、食ってんぞ?」

「まさか…肉食!?」

 

五人はグレイトスタンプに見つかり、鼻息をブオォォォォ!!と荒らしながら突撃してくる。

 

ドドドドド「うわぁーーーー!!!」

 

その突撃の轟音に気づいた他の受験生も集まる。

だが逃げ遅れたものは弾き飛ばされてゆく。

戦える受験生は、大岩をぶつけたり得物をぶつけるが、硬く頑丈な鼻にぶつかり意味を成さない。

レツは木の実をもぎ取り、【周】してぶつけるが、それでも数秒止まるくらいにしかならない。

 

(豚なのに!!【周】しても耐えて、再び突撃するなんて!)

 

レツは内心、愚痴りながら足に【凝】してジャンプする。

その高度からあたりを見回すと、ゴンのところに向かった豚が木に衝突し、木の実が額にあたり弱ってるようだった。

そこに向かうと、ちょうどゴンが釣り竿で額を強打して豚を仕留めた。

 

「なるほど!」

「こいつら、どうやら額が弱点のようだぜ。」

「巨大で硬い鼻は、脆い額をガードするための進化という訳だ。」

「そういうことだね。」

 

そして各々、得意な方法で額を強打し、仕留めてゆく。

 

(ついさっき、ジャンプした時、向こうにも大量の豚がいたな…【周】が効かなかったからもしかしたら程度にはヒソカに効くかな? 系統の強化率の違いなんだろうけど。…足に【流】をしてっと。)

 

~~~

 

(おや? まだ向かってくるのかい♣ まだまだ実力の差を___…通り過ぎていったな♠ …この音は……?)

 

レツが再び自分に向かってきたかと思えば、何事もなく、通り過ぎていったので、訝しげな表情をするヒソカ。その後に大量のグレイトスタンプが向かってきていた。

 

(あの程度の豚から逃げて居たのかい? だとすれば期待違い__

 

自分の点数査定よりもレツの実力が下か、と思い失望し、トランプに【周】をして投擲する。流石に練度と変化系の分の強化率の違いで、十数秒止める事に成功する。

一匹ならそれでいいが、レツが連れてきたのは群れを成して突撃する。

 

(なるほど♠ 一匹自体はそんな強くないけど、数が厄介だな♦ …地道に一匹ずつ始末していくしかないな…♠ …あのコは、ボクの周りを距離をとりながら伺ってる♦ なるほど♥ この数をぶつけて、あわよくばボクが倒される事に期待しつつ、ダメでも更にボクの能力の情報を得ようって考えだね♥ …【周】を弾くから確かに部分的には厄介かな♣)

 

勿論、豚ごときにヒソカが殺られるはずもなく、始末してゆき、最後の一匹を倒す頃には、

 

(♣ もうこの場からは居ないね♦)

 

レツは居なかった。

 

 

+++

 

ドドドドドドド「!?」

 

その大量な人と豚の数にブハラは驚く。

 

「うひゃぁ~~~」

「あらま、大量だこと。受験生舐めてたわ」

 

そしてブハラは物凄いペースで豚を消化してゆく。

そして全く勢い劣ることなく食べ続け、なんと用意された豚の丸焼き70頭を全て食べ切った。

 

「あ~、食った食った。もうお腹いっぱい」

 

 メンチがいつの間にか横に置いていた銅鑼をおもいっきり叩く。

 

「しゅ~りょ~!」

 

ここでメンチはブハラに少し試験にならないことを怒る。

その摩訶不思議な現象を三人は話す。

 

「やっぱりハンターってすごい人達ばかりなんだね。」

「ああはなりたくないけどな。」

「本当に美食ハンターなのかな?(胃袋の体積を比較すると、絶対に入らないよね?…操作系か放出系の【発】かな?)」

 

クラピカはその現象に真剣に悩み、レオリオは突っ込む。

 

「二次試験前半、”豚の丸焼き料理”審査! 70名が通過!!」

 

 

 

そして凄まじい難易度であることを予測した二次試験後半に挑む__

 

 




原作ではついぞ無かったクイズの質問をキルアと共有させました。これがあったら、もしかしたら家族と腹を割ることができたのではないでしょうか。
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