子兎の人形師は何を想う 作:夜空人
二次試験”後半”、メンチの試験。
(メンチさんの試験…!! どんな内容なんだろう…!?)
レツはどこか高揚感に包まれていた。というのも、レツは綺麗な物が好きで、様々な技量や【念】の『核』の一つでもある程度には、好きなのだ。勿論それは、料理にも当てはまる。そんな中で、一流の”美食”一ツ星ハンターの試験なのだ。
メンチの事を歳や実績といった情報に、それなりに詳しかったのはそのためである。そんな彼女に料理で審査されるのは、またとない機会であろう。
メンチの試験内容が告げられる。
「アタシは、ブハラと違って、カラ党よ!! 審査もキビシクいくわよー。 二次試験”後半”、アタシのメニューは『スシ』よ!!」
(《スシ……!? スシとは……!?》)
その言葉を聞いた、他の受験生たちは、“スシ”という語感そのものが初耳であるらしく、見当もつかないというような顔をしている。はっきりいって、名称では形状も材料も調理法も想像できないものを出題されてしまっては、それを作り試験突破など、不可能に近いからだ。
メンチは、説明を続ける。
「ふふん、大分困ってるわね。ま、知らないのもムリないわ。小さな島国の民族料理だからね。 ヒントをあげるわ!! 中を見てごらんなさいーーーい!! ここで料理を作るのよ!!」
受験生は、許可されたコンテナ庫のような建物内に入る。
その建物内にあったものは、ずらりと並ぶ調理台。ただし、シンクと包丁やまな板が置かれた作業台のみで、コンロはない。
「最低限必要な道具と材料はそろえてあるし、スシに必要不可欠なゴハンは、こちらで用意してあげたわ。
そして最大のヒント!! スシはスシでもニギリズシしか認めないわよ!!」
ここまで説明したところで、「スタートよ!!」の呼び声がかかる。
+++
レツは困惑していた。というのも、
(スシ……は分かるんだけど、“ニギリ”ズシ、っていう風に種類があるのか…。)
そう、スシの中で細かく分別や区分けがあるとは知らなかったのだ。
(とりあえず、唯一知ってるものを作ってみるしかないよね…。 それはそれとして、持てる技術と知識を全て使って、メンチさんから方便じゃない本気の「美味しい」を貰いたいな。)
レツは考察に入る。
(えっと、まず魚が必要だけど、この森の中だと、間違いなく淡水魚しかいないだろうね。確か、ほとんどのスシは海水魚だったはず。 …淡水魚ってことは、味付けなしだと、繊細で淡い食材同士を組み合わせる事になる。臭み取りにも何か必要だね。う~ん、ガツンとインパクトのある品も欲しいな…。 そういえば、)
ここでレツは、少しだけゴハンを掬い、食べる。
(うん。このゴハンは酢が混ざってない。ここがダメだったら、更に難易度が上がるからね。
___なら、決まりだね。)
思考が纏まったレツは、外に駆け出した。…テンションが上がりすぎて、他の四人もろとも受験生を置き去りにしてしまったが。
+++
「うん。やっぱりヒソカは、きちんと額に一撃で仕留めてるね。これなら腐って切り捨てるのは首までで良さそう。」
レツが赴いた場所は、先ほどヒソカに嫌がらせをしたところだった。新しく獲りに行くとしても、先の試験でほとんどの生きてるグレイトスタンプは逃げており、現実的ではない。
「さて、木の実の中であると良いけど…。」
レツは木を見上げる。そこには先ほど使った果実、林檎やスダチ・カボスなどもあり、柑橘系の宝庫だった。
「あったあった。」
そしてレツはオレンジを選んで枝ごと圧し折り、豚も抱え戻ることにした。
+++
十分後。
レツは一通りの材料を抱えて戻ってきた。
そこにキルアが話しかける。
「レツ!? 何処行ってたのかと思えば、もう材料集めたのかよ、早! ……っていうか知ってんのかよ!!“スシ”!?」
「これだけじゃ、まだ足りないから、また外に集めにでるよ。」
「は? その豚もまた使うのか? それに…なんだ? その木の実?」
「いや、これは僕の個人的に欲しいもの。もっと必要なのは___」
受験生の目がレツに集まっていたが、
「魚ァ!? お前、ここは森ん中だぜ!?」
そこにレオリオの大声が響き、受験生は一斉に飛び出す。
___ってことだよ。」
レツが説明するまでも無かったようだ。
キルアが毒づくが、ゴンが続ける。
「…あの、オッサン…。」
「まぁまぁ、俺たちも行こうよ。 レツも魚をこれから獲るんでしょ?」
「そうだよ。 だから早く行こ。」
そういい、三人も魚を獲りにいった。
+++
一方、それを見ていた試験官サイド。
「あのコ、グレイトスタンプを獲って来て、何するつもりなんだろ?」
「魚も獲りに行ってるわね。…アタシの事を情熱が宿る目で見てきたわ。」
「うん?それって、オレ達”美食”ハンター志望ってこと?」
「おそらくね。302番。相当、期待できるわね♪」
メンチはペロリと唇を舐めるのを見ながら、ブハラは思う。
(……大丈夫かなぁ? いくら美食ハンター志望でも、メンチを本当に満足させられる料理人なんて、世界中に数える程度しかいないのに。メンチは妥協しないことが多いからな~)
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体力と釣竿の有無で、いち早く戻ってきた三人。
「さっそく作ろっか。君たちは料理、どれくらいなら出来る?」
「まずは自力でやってみるよ。ダメって言われたら、どこが悪かったか教えて。」
「ふーん…。 じゃあオレも頑張ろっと。」
そのレツの発言にゴンは、笑って断る。キルアも変に対抗心を出し、それに同意する。
「あはは、それじゃ最低限、使うものは渡すよ。」
そう言い、レツはグレイトスタンプに向かう。
包丁を持ち、腹を捌いていく。そして包丁に【周】をして、肋骨を切断し水に晒す。
レツは魚をまな板の上に置き、肋骨を取り出し頭に突き刺す。
「フゥーーー ___!」プツッ ジワァ
レツは息を吐くと、居合の要領で、魚を素早く三枚に下す。
その魚の切り身を渡す。
「ほら、これを使うんだよ。」
「うわーーすごいね!!」
「そんな技術もあんのかよ。…聞きたいんだけどさ、何でそんなに手間暇かけるつもりなんだ?」
「僕はメンチさんのファンでもあるからだね。」
その言葉に納得した二人は渡された切り身を睨みながら、“スシ”についての考察を再開した。
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それをしっかり聞いてる試験官。
「へぇーーー、アタシのファンって言えるだけの実力はあるようね。…でもまだまだ甘いわー。
(捌くスピードならアタシの方が迅いわ。血が滲むのは、捌いてから同時ではなく、後からじゃないとね。)」
「いや、何、受験生と張り合ってるの?(あーあ、これじゃもう、あのコ位しか合格できないだろうし、肝心なあのコも今のメンチから合格をもぎ取るのは至難を極めるだろうねー。)…ちょっと、雉撃ちにいってくるよ。」
そんなメンチの発言にブハラはツッコミを入れる。
…ブハラは席を立つが、すっかり注目してるメンチはもう気づかない。
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レツは豚を見ながら考え、ルビーの指輪を左手にはめる。
「さて、どこの部位を使うかな?(ヒソカの攻撃上、《ネック》までが使えない。それ以前に、豚肉だから炙る必要があるね。インパクトが欲しいとなると、《肩ロース》・《バラ》・《トンソク》…ぐらいかな? まず、《トンソク》は煮込みの工程が主な用途だから、今回は除外。《肩ロース》は、焼く・煮る・揚げる・炒めることも出来るから、万能と言えるんだけど、《バラ》のほうが、ボリューム感とか脂の量では上だから…) …よし、決まり。」
そしてレツは先ほど捌いたので、汚れてるであろう腹より上の皮が付いてる部位を切り取る。
そして豚バラ肉をスライスしていき、同じ要領で、魚も再び捌く。
先ほど、圧し折った枝からオレンジを取り、残った枝に【紅くなる灼熱/フレイムバースト】を左手の指先で着火する。使わないであろうと判断した長包丁を四点の地面に突き刺し、その上に水で満たしたボウルを置く。これで即席だが火で湯通しすることが可能になり、毒抜きと臭み取りの為に湯に浸す。
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(…包丁をあんな使い方されるのは業腹だけど、コンロを置いたら調理の幅が広がりすぎて、受験生が迷走すると思って置かなかったからね。 一応、丸焼き用のソレはあるけど、デカすぎるものね。)
レツの行動を見ながら、そんなことをメンチが思ってるとレオリオが来る。
「出来たぜーー!! オレが完成第一号だ!! 名付けてレオリオスペシャル!! さぁ食ってくれ!!」
そこにはゴハンの塊に、まだ生きている魚を何匹も突っ込んだおぞましき物体Xがあった。
「食えるかぁっ! もう! あんな料理ともいえない物体を持ってきて邪魔しないで!! 今、アタシはあの子を見てるの!!」
そうメンチが言うことによって、レオリオはそちらの方向を見る。そこにはレツが大量のオレンジをいくつもの容器に分けて絞っていた。レオリオと同じく方向を見たクラピカの二人は向かうことにした。
次にゴンが来る。
「よーし、次は俺だ!!」
ゴンが差し出した物は、ゴハンに先ほどレツに渡された切り身を使って巻いた、ケーキ寿司と呼ばれる薄く切った野菜で包む部分が異なっている、手鞠寿司モドキだった。
「近いけど、違うわ!!」
そういい、メンチはゴンも追い返す。
メンチは続けて話す。
「いーい!? カタチは大事よ!! ニギリズシのカタチを成していないものは味見の対象にもならないわ!!」
その大声をちょうど戻ってきた、ブハラは聞き思う。
(あーあ、あのコの合格する可能性がまた下がっちゃったよ。…やっぱり、正解だったかも。)
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まだまだ大量になる作業を行いながら、レオリオとクラピカに彼らが持って来た魚を捌いた切り身を渡す。
その頃には、キルアもレツからもらった切り身に様々な調味料をかけて、普通に美味そうなカルパッチョ風に仕上げた独自の皿を出したが、勿論カタチが違うので追い返される。
流石にこのまま合格できないのは話にならないので、アドバイスを求める。
「レツ、何かヒントない?」
「ん。僕も次の工程に移るつもりだったから、いいよ。」
そして二つに分けたゴハンに、絞ったオレンジジュースを混ぜる。
「ハァ!? …もとからゴハンに混ぜるのかよ…それは気付けても試せねェーな。」
「ホントは、酢とか酸味のある液体ならなんでもいいから、この場で事足りるよ。さて、僕はまた燃やせる物を採ってくるよ。」
そういい、レツはこの場から離れる。
…そのすれ違いが致命傷になった。
レツは枝を折り集めながら、さらに考えていた。
(う~~~ん……意味ないかもしれないけど、リンゴも持っていくかな。魚の味と時間しだいでは、もう少し試せるかもだし。)
+++
一方、試験会場。
様々な形をした料理を出すが、ことごとく断られる。クラピカは先ほどのゴンが提出し、メンチの『近いけど、違うわ!!』という言葉にどんな物を出したか聞き出し、またレツから渡されていた切り身も見ていた。
そして様々な情報を整理した結果、できたものを持っていく。
メンチはそれを見て初の実食に入る。
「…へぇーぇ。魚の切り身がちょっとでかいけど、一応”ニギリズシ”のカタチにはなってるわね…。」
(よし! 一応カタチは正解したぞ!)
「…ダメね!! 一定の美味しさに届いてない!」
「ぐっ…!(だが、一応は通ったぞ!)」
クラピカはそうして離れていく。真打ち登場とばかりに次に出したのは、ハンゾーだった。
「そろそろオレの出番だな。どうだ!! これがスシだろ!!」
「さっきの404番よりさらに近い物が出てきたじゃない。……ダメね! おいしくないわ!」
そういい、メンチは再び実食する。しかし、却下する。
…この試験の本題は、ヒントを見逃さない注意力と、観察力をみるものであり、そういう意味では、レツの助けがあったとはいえ、クラピカは合格のはずである。ハンゾーの方は、スシをゼロから考察した者と知っている者とでは、遥かに完成度が違うため、味による判定不可でも良いといえるが。先にズルを行ったのはどちらか、いわゆる〈卵が先か、鶏が先か〉というレベルの話である。
「な、なんだとーー!? メシを一口サイズの長方形に握って、その上にワサビと魚の切り身をのせるだけのお手軽料理だろーが!! こんなもん、誰が作ったって味に大差ねーーべ!?
はっ、しまったー!!」
そして不合格判定をもらい、納得しなかったハンゾーは大声かつ盛大に、スシの作り方と形状を暴露した。
その暴露を聞いた瞬間、メンチの顔は般若になりハンゾーの胸倉を掴んで怒鳴る。
説教はが終わった後のハンゾーの顔にはでかでかと「敗北」の文字が浮かび上がっていた。
メンチは続きを言いながら祈る。
「あ~~~もォ、怒鳴ったらますますハラ減ったわ。さぁ次の挑戦者いらっしゃい!! (…あのコ、ついさっき出ていったけど、試験官の面目もあるからこの出来損ないも食べなきゃダメなのよ。…早く戻ってこないと、手遅れになるわよ……!!)」
その後、本格的にメンチは味のみの審査を行い続けた。
+++
レツは一通り枝を折り、戻る。
そこで見たのは、受験生が行列を作っていた。しかし片っ端から追い返されている。
それを不思議に思いながら、手を再び洗い、ボウルに醤油・酒・みりん・砂糖を混ぜ、豚肉を浸し置いておく。
次に包丁で枝を削っていく。それもきちんと水で洗い、魚を突き刺し、豪快に炙っていく。まな板も再び洗ってからその上に先ほど調味料に浸した豚肉を置き、人差し指に【紅くなる灼熱/フレイムバースト】でバーナーとして扱い、炙っていく。
いよいよ握りの過程となり、一通り握る。
少しすると、ここで非情にも___
ゴクゴク「ふーーっ ワリ!! おなかいっぱいになっちった。」
メンチが《試験終了》の宣言を告げる。
レツは合格できなくても良いので、作った品を食べてもらいたく、メンチに差し出す。
「悪いんだけど、メンチさん、もう少しだけ食べてください。」
「あら? やっと来たわね。随分時間かかったじゃない。楽しみにしてたんだから___」
そしてメンチが蓋を開けると___
___炙られた照り焼きソースのグレイトスタンプの焼き肉寿司を挟むように、箸休めとして赤身と白身の魚も握られた___
___ゴンの作った物よりさらに一回り小さな『手鞠寿司』だった。
そう、ハンゾーの暴露話に、レツは枝拾いに行ってしまい居なかったのだ。
その品にメンチは顔を歪め、叫ぶ。
「ぉ惜っ……し──い! ニアピン! 超ニアピン! あと半歩!」
「やっぱり、違うんだね…。でも、不合格でいいから、アドバイスください。」
「惜しいっ……! ホント惜しいわ! …けど、分かったわ。」
そしてメンチは真ん中の焼き肉寿司から、食べてゆく。
次に、隣の魚寿司を食べる。
…無言でモクモクと食べ続けながら、メンチは思う。
(まだまだ些細な作業は甘いけれど旨い……!! この肉寿司は照り焼きね。 次に魚がオレンジで作ったのもあって、脂のギトギトを和らげる…
ゴハンが両方ともオレンジだけど仄かに違うのは、肉の方は甘みを強調する為に旬が近い物を。魚は早熟のオレンジをメインに…! これにより肉の方がまた欲しくなる…!)
ここまで食べ続けながら思っているとブハラが話しかける。
「メンチ~~、そろそろ判定を…」
「ダメよ!! こんな強烈なコンボで無限ループを止められるわけがないのよ~~~!!」
ハァ「…でも、カタチはニギリズシじゃないから合格は出せないよ。」
「うん、分かってたからそれはいいよ。」
ここまでブハラが言うと、完食したメンチが叫ぶ。
「ちょっとブハラ!! 勝手なこと言うんじゃないわよ!!」
「でもメンチ、ニギリズシの形をしてないのは試食しないって自分で」
「ぐっ……! でもでもでもこのコだけは、」
「いや惜しいけどさ、ニギリズシじゃないってもう言っちゃったし実際そうだし、このコもそれで納得してるし」
そんな喧嘩とも言えるそれを見ながら、レツは画用紙を二、三枚置きそこに『感想とアドバイスください』とメモし、戻った。画用紙を使って火種にしなかったのは、燃やせるものが現地で軽く手に入るからこその悲劇でもある。様々な事情が絶妙に不幸な方向に歯車が噛み合ったからこそ、二次試験"後半"の合格者はゼロ名になってしまったのだ。
まだ試験官の二人は喧嘩してるが、レツが不合格を認めてる以上、それは覆らないだろう。
「ふぅ~~~……合格貰えたかもしれなかったけどな……」
あとは形を正解するだけというあと一歩の所だったが、そこで終わってしまった試験。
レツは、盛大に息を吐いていると、そこにキルアが話しかける。
「レツが不合格になったのはあのハゲが悪いな。」
「………何かあったの?」
「あ、そっか。あの時、レツは火種を取りにいってて居なかったな。それがよ、294番のハゲがな、作り方を盛大にバラしやがって、片っ端からあの試験官は味見するハメになったんだよ。」
わざと声がやたら大きかったので、数人のじろりとした目線がハンゾーに向かう。
ハンゾー本人は苦虫を噛み潰したような顔をしていた。
「そんなことがあったのか…。(…あの人、闇討ちしたいかも。でも、プライドを優先しちゃった自分のせいでもあるから、逆恨みもいいところだからやらないけどね。)フゥ…。材料が余るのもなんだから、君達の感想も聞きたいな。」
という事でレツはさらに集めてきた材料を全て使い切って、豚丼や、さらに作った手鞠寿司に改めて正確なカタチを知った魚の握り寿司。締めに爽やかさ優先の先ほど保険として採ったリンゴジュースという(お茶もあるが、流石に試験官のテーブルから勝手に拝借はできないし、しなかった。)ラインナップで構成された一通りの昼食を四人に振舞う。
「……美味いわコレ。」
「美味いじゃねーか! で、こっちは……?」
「ホントに美味しい!!」
「これは……美しいな。そして確かに美味しい。」
上から、キルア・レオリオ・ゴン・クラピカの感想である。四人は続ける。
「う~ん、お茶が欲しくなるな、これ。」
「確かにこれは、無限に食べれるかのようなループだぜ!」
「すごーい!! ミトさんみたい!」
「君ほどの腕があるなら、メンチを納得させるほどのスシを作れていたのに残念でならない。」
キルアは握り寿司、レオリオは豚丼をかっこみ、ゴンとクラピカは手鞠寿司を食べる。
更にレツは感想を欲し、同じ女性受験者の、80番・スパーや、246番・ポンズなどにも振舞っていた。
ようやく喧嘩が終わった試験官、メンチは結論を出す。
「くぅ………!! 結論として、二次試験”後半”の料理審査、合格者はゼ___」
《──その結論、しばし待たれよ。》
そう、スピーカから聞こえてきたのは、
ハンター協会のマークがついた、審査委員会の飛行船であり、すぐそこまで近付いていた。
少しだけ来るのが速まっているのは、先ほど退席した時に、ブハラがこの状況を予測し、あらかじめ報告し先んじて呼んでいたためである。
そこから結構な高度にある飛行船から飛び降りてきたのは、白髭を蓄えた和装に高下駄を履いた老人であった。
その人物に他の受験者に食事が一通り終わった四人も見つめる。
目の前の人物をメンチが告げる。
「審査委員会のネテロ会長。ハンター試験の最高責任者よ」
そんな大物の登場にざわめきが一段と大きくなる。
二人は会話を続ける。
「ま、責任者と言っても所詮裏方。こんな時のトラブル処理係みたいなもんじゃ。さて、メンチくん」
「はい!」
「未知のものに挑戦する気概を彼らに問うた結果、全員、その態度に問題あり、つまり不合格と思ったわけかね?」
「……いえ、受験生の一人にアタシのファンがいまして、その時点で受験生に求める合格基準を高めてしまい、かつ別の受験生に料理を軽んじる発言が重なり、ついカッとなり、その際 料理の作り方がテスト生、ほぼ全員に知られてしまうトラブルが重なりまして、頭に血が昇っている内に腹がいっぱいになり、最後に先ほど、ファンといってくれた受験生の品を見たのですが、作り方をバラされた時にはこの場に居らず、規定のカタチ”ニギリズシ”ではなかったので、結果としまして、合格者がいないものに……」
フムフム「つまり、自分でも審査不十分だとわかっとる訳だな?」
「……はい。スイマセン! 料理のこととなると我を忘れるんです。審査員失格ですね。 私は審査員を降りて先ほどのファンにアドバイスを送った後、この試験を無効にしてください。」
「ふむ…審査を続行しようにも、選んだメニューの難易度が少々高かったようじゃな。
よし! では、こうしよう。審査員は続行してもらう、そのかわりにファンもいるようじゃし、先達として新しいテストには審査員の君にも実演という形で参加してもらうことにする。__というのでいかがかな?」
そのネテロ会長の発言にメンチはピクと反応する。ネテロ会長は続ける。
「その方がテスト生も合否に納得がいきやすいじゃろ」
そうネテロ会長は締めくくる。しばらくメンチは考えた後、
「そうですね、それじゃ、『ゆで卵』。」
その発言に受験生は驚き戸惑う。メンチは構わず続ける。
「会長、私たちをあの山まで連れて行ってくれませんか。」
「なるほど、もちろんいいとも。」
そして一通り片付けを終え、残骸はきちんと地面に埋葬する。
受験番号順に乗り込むこととなり、レツも飛行船に乗ろうと並んでいると、前の301番の男が後ろに手をやり、指を一本立てていた。その不可思議なシグナルにレツは【凝】を行うと、《二次試験、正式に合格後、話をしたい。》と、【隠】を使ったオーラを文字に変化させて会話を行う念の高等技術、【念文字】で書かれていた。
それにレツは頷くと、男は【念文字】を解除した。
__飛行船は、クモワシの巣、マフタツ山に出発した__
ヒソカがメンチに対して、特に喧嘩を売ってたのは、メンチがそれだけ優秀だったからと思っているのです。ゆえに拙作ではかなりの名声を持っていることにしてます。
トードーがブハラに吹っ飛ばされた時、メンチは「たかが美食ハンターの一撃」と言ってますが、「いや、あなた、そんじょそこらの賞金首ハンターより強いから」というツッコミが入るかと。
少なくとも、同じ一ツ星ハンターのツェズゲラよりは強いのでは?と思っています。
また、イルミさんは変化系と真逆の操作系ですが、この【念文字】の技術は職業柄、利便性が良く、重宝すると思うので、覚えてもらってます。