銃は地球人類が生み出した最高の文明の利器である 作:ジャーマンポテトin納豆
国王との食事会の翌日、この日は何故だか組まれていた騎士団との模擬戦を行う事になった。
いや、なんでだ。おかしくないか?
そんな訳が分からない事になっている理由なのだが、どうにもゴブリン討伐の時の話を聞いた何処ぞの誰かさんが、
「聞いた話に違いない強さなのか確かめたい。もし嘘をついているのだとしたらそんな輩に報酬金を出すわけには行かない。それにもし嘘だったとしたら取り押さえなければならない」
とかなんとか。
まぁ実際にはそんな大層な理由なんかでは無くただ単に金が惜しいだけなんだろう、との事らしい。
こんな時にも貴族の連中はそう言った事しか考えてばかりで、もし本当だったとしたらその力を何とかして自分が独占したいのではないか、とも。
どちらにせよ碌な事じゃないのは確かだ。
態々教えてくれるエルフラントさんとクレイドルさんには頭が上がらない。
という事で王城の中にある練兵場に来ており、模擬戦の準備を進めている。
この王城すげぇな。収容量が半端じゃない。
聞いた話じゃ食料、武器その他の戦時に備えての備蓄は王城での物資がその半分を占めているんだそうだ。
それに加えてその物資を前線への運搬などを担当する部隊が複数、それに近衛騎士団が駐屯する練兵場。しかもその軍人の人数が運搬を担当する部隊が3000に近衛騎士団が2000の合計5000。
それに魔法使いの部隊、何と言ったか。
たしか魔法師団とかなんとか言っていたな。それが大体500人ぐらい。
これ程の数がこの練兵場には駐屯しているとの事。
と言ってもどうすればいいのやら。
基本的に実弾ばかりで、一応訓練用のゴム弾やらもあるにはあるのだが分厚い鎧を着込まれると効果があるのかどうか怪しいと言わざるを得ない。
しかし実弾なんか使ったら間違い無く殺してしまうに決まってる。
今俺が使っているM4の実弾と言うのはそれなりに殺傷能力を持って居る。それも人であればあるほどに効果的だ。
と言うのも、小さい目標であれば銃なんて使う必要は無いが逆に大きい目標だとそれはそれで威力が足りない。
しかし人間や、人型の魔物や魔獣、それに近い体躯の生物魔物魔獣に対しての効果は絶大だ。当たり所が悪ければ即死。そうでなくても間違い無く戦線離脱を余儀なくされる。
ただそれは堅い鎧なんかを纏っていない、という事が前提になる。
そう言う目標に対しては貫通弾を使ったりすればいいのだがこれ、貫通する威力が高すぎて下手をすると文字通り貫通してしまう。そんな見ず知らずの人の身体に風穴を開けたくはない。
殺さずに無力化すると言われるとそれこそ……あ。
そうだ、催涙弾があったな。
ゴム弾もあるにはあるが、鎧を着込んでいる相手なら間違い無く弾かれそうだ。
ただの鉄製の鎧で薄いなら効果はあるだろうが、ドワーフが作った上にしかもただの金属じゃない。薄いのにも関わらず正気を疑う様な硬度を誇っている鎧もあるらしいしそれが本当だとすれば多分意味が無い。
エルフラントさんやクレイドルさんの鎧を見てみた感じ、呼び出せる防護服の様な密閉性は皆無だと見ていいな。
関節部分には装甲は施されていないし、兜も物によるが結構隙間だらけだ。
あれなら普通に撒き散らせば余裕そうだ。
取り敢えず、催涙手榴弾とスタングレネードを呼び出す。
ガスマスクと耳当て、サングラスを用意する。
まぁ至近距離で浴びる100万カンデラの光を防げるかどうかと言われると分からないが……
サングラスなんて無いと思っていたので驚きだ。
どうやら軍でも使われている物らしく作りも頑丈だし、砂埃も防ぐ事が出来そうな作りだ。
まぁしかしガスマスクとサングラスは併用出来ないのが痛いな。サングラスを掛けながらガスマスクなんてしたら隙間から催涙ガスが入ってきてしまう。
なので先に閃光手榴弾を使って視力を奪ってから催涙弾の使用となるだろう。
本当は室内とかの方が効果が高い上に自身への被害も抑えられる。
だが今回は開けた練兵場のグラウンドの様な場所で行うのだ。風が吹けば催涙弾の煙は流れて行ってしまうし風の向きが自分の方へ流れて来たのならば自滅だ。
閃光手榴弾に関しても同じ。
投げて自分も喰らってしまっては意味がない。
そう言う訳で準備した装備は基本は非致死性の閃光手榴弾4つと催涙弾を8つ。これをを中心に、一応M9とマガジンを7本。
催涙弾を閃光手榴弾の倍呼び出したのには理由がある。
と言うのも練兵場のグラウンドの面積は広い。それ故にカバーできる範囲を増やす為だ。
M9のマガジン数の数が多いのはM4を持ち出さないのでM9のマガジンの携行数を増やした。
まぁドワーフ製の鎧に効果があるのかどうか分からないが……
弾かれて変な方に飛んで行ったりしていらない被害が増えそうな気もするので使うのはあくまでも最終手段という事だ。
あと、エルフラントさんにちょっとした書類を準備して貰っている。
万が一対戦相手が怪我をした場合、向こうから仕掛けて来た事なのだから責任を取れなど言われたら堪らない。そしてこの模擬戦で起きた全ての事に対して責任を取らないと確約する事。
だから書類に万が一の時、俺に対して責任を要求するな、という内容の文面とそこに国王のサインを貰う予定だ。
サインしてくれるかどうかは分からないが
もしそう言った状況になって銃火器を寄こせなどと言われたら取り敢えずオール大森林に逃げ込もう。
携行できる武器が通じなければエサになりかねないが。
そんな事を考えながらベストにハンドガン用のマガジンポーチと閃光手榴弾、催涙弾をポーチに入れていく。
それとガスマスクを取りやすい様に吊るしておく。
サングラスはまぁ、胸の辺りにでも挿しておくか?いや、予め書けといて良いか。閃光手榴弾を使ってからじゃないとどうせ煙だから簡単に避けられるに決まってる。
「国王陛下、模擬戦を始める前にこちらを読んで欲しいのです」
「なんだ?何が書いてあるのだ?」
「もしこの模擬戦で何かしらの被害が出た場合、その一切の責任を私に問わないと約束して欲しいのです」
「それは何故か?不都合でもあるのか?それにその言い方であれば周りへの被害が出ることを前提としているような口ぶりではないか」
「説明させていただくと、最悪模擬戦の相手が死んでしまうかもしれません。私の武器には皆様が使うような刃引きをした剣の様な物は少ないのです。直接攻撃する手段ともなると殺すしか出来ません。寸止めも出来ない。一応非致死性の武器を選んではありますがそれも絶対ではなく、死なないかもしれませんが痛みなどを伴う物です。それも対象者だけではなく周りへも被害を出してしまうのです」
「それは何とかして防ぐことは出来ないのか?」
「無理です。ここまで開けた場所ならば間違い無く国王陛下やご観覧されている方々にも被害は出てしまいます。出来るだけこちらも気を付けますが」
「ふむ、良かろう。そもそもこれを言い出したのは我ら側だ。その様な事があれば責任は問わないと約束しよう」
「有難うございます。感謝します。それではこちらにサインをして頂けますか?書いてある説明をもう一度ご自分の目でお確かめになっても構いません」
「分かった。誰か、書くものと国璽を急ぎ持って参れ」
「畏まりました」
それから国王はペンに国璽(本来ならば国の重要書類に押す印鑑なのだが今回は何故かこの書類に使う事に)が届くまで書類に書いてある内容を読んでからサインと国璽を押した。
「ふむ、これで不備は無いか確認して貰えるか?」
「有難うございます。確認させて頂きます」
隅々までしっかりと確認してから問題が無い事が確認された。
「問題ありません。お願いを聞いていただき有難うございました」
「なに、気にするな。それでは色々と期待しておるぞ。どうやら格好も戦闘用の物であるらしい。楽しみだ」
「はい。あ、そうだ。皆様、強い光と煙にはご注意ください。侮っていると痛い目を見る事になりますので」
俺がそう言うと全員が不思議そうな顔をしていたがエルフラントさんとクレイドルさんは何となく察したようだ。
まぁ俺の戦い方を見ていたのだから当然か。
よし、国王からのサインも貰った。
あとは戦うだけだな。
練兵場のグラウンドに立つと、正面に鎧を着た如何にも強そうな人が立つ。
すると兜を脱いだ。
「今回の相手を務めさせてもらう、近衛騎士団一番隊隊長レイトン・キンテットだ。よろしく頼むぞ」
中の人はまぁ言ってしまえば筋肉モリモリの白髪の男性だった。
おぅまじか。この人身長190はあるぞ?
しかも武器がでっかい大剣……重さだけだったら100kgあるんじゃないか?
そんなもんをぶん回せるとかどんな筋肉しているんだ一体。
余りにも衝撃的すぎて固まってしまったが慌てて挨拶を返す。
「名乗りが遅れました、イチローと申します。生憎と名乗れる姓がありませんのでご容赦下さい」
「イチローか。よろしく頼む。それじゃぁ早速始めようか!」
「はい」
二人でそう頷くと、それぞれ位置に付く。
取り敢えず、右手に閃光手榴弾を握っておく。
「なんだ?武器はその、黒い筒か?」
「秘密ですよ。教えてしまったら意味が無いですから」
「それもそうか」
「両者とも準備は宜しいか?」
「「はい(おう)」」
「それではこれより模擬戦を開始する。両者どちらかが戦闘不能、もしくは降参した時点で終了とします。それでは……」
「模擬戦開始!」
耳栓をしてしまったので周りの音が良く聞こえない。
サングラスも掛けた。
審判の手が振り下ろされた。
様子見なのかレイトンさんは近寄って来ない。
これなら好都合と言える。接近されなければこっちのもんだ。
閃光手榴弾の安全ピンを抜き、正面に向かって即座に投げつける。
続けて右、左と投げて落としていく。
流石に警戒しているようだがもう手遅れだ。
直後、耳栓をしていても突き抜けて来る爆音と閃光が周囲を包む。
流石に耳栓じゃこの至近距離の爆音は防ぎきれなかったか。
サングラスをしていて良かった。まぁ防ぎきれてないんだが。
「なんだ!?何も見えんぞ!」
そう叫びながらも彼は周りへの警戒をしっかりとしている。
これは下手に突っ込んでも逆に斬られるだけだったな。
というか普通だったら方向感覚なんかの見当識を失うはずなんだがなんで周りの警戒が出来るんだ?
続けてガスマスクを装着してから催涙弾を二つ足元に投げつける。
催涙ガスが出始めた。
二つも投げつけられそれなりに濃くなった煙に包まれてしまったレイトンさんは、想像通りとなった。
「ぐわぁぁぁ!?な”ん”た”こ”の”け”む”り”は”ぁ”ぁ”ぁ”!?ゲホッ!?い”、い”き”か”す”え”な”い”!?」
けむりの中で騒いでいる。
そりゃそうか。あれ本当に辛いもんなぁ。
「く”そ”!!な”ん”な”ん”た”!?……ギャ”ァ”ァ”ァ”!?め”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ””!?!?!?」
煙の中で悶絶し続けるがどうしようもない。
取り敢えずもう二個ほど投げておくか。
「あ”あ”あ”ア”ア”ア”ア””ァ”ァ”ァ”ァ”!??!!?!?!?!??!?」
なんだかさっきよりも心なしか絶叫する声が大きくなった気がするのは気のせいじゃないだろう。
それから5分程、催涙弾を煙が弱くなったら投げ込む、ことを繰り返しているとレイトンさんが根を上げた。
「ま”い”っ”た”ぁ”ぁ”!!!ゲホゲホッ!!う”ぉ”え!!!ま”い”っ”た”か”ら”こ”の”け”む”り”を”な”ん”か”し”て”く”れ”ぇ”ぇ”ぇ”!!!」
そう咳をしながら叫びながら必死だ。ついさっきにも閃光手榴弾を投げ入れたので視力は既に奪われていて、何度も浴びている為にフランフランだ。
取り敢えずガスマスクをしているので催涙ガスの中に入って行き、レイトンさんを引っ張り出してくる。
するとどうだ、顔は酷い有様だ。
鼻水涙、涎でドロドロ。
目は充血して口と鼻からは際限なく涎と鼻水が流れ出している。しかも顔は真っ赤になっているし。
なんだか申し訳なくなって来たぞ。
それから取り敢えず井戸の方へ案内して貰って徹底的に洗い流す。
鎧からその下に着込むシャツや肌着に至るまで全部だ。
こうでもしないと本当に取れない。適当にやると後々また痛い目を見る事になる。
そして他の人にレイトンさんを任せて俺は練兵場の方に戻る。
するとどうだ、大騒ぎになっていた。
なんでも風に流された催涙ガスが運悪く訓練中だった騎士団に直撃してしまったらしくそれはもう酷い有様になっていた。
あちらこちらで催涙ガスによって喉や鼻、目をやられ呻いている。
すると貴族と思われる人間の一人がこっちに顔を赤くして怒鳴り散らして来た。
「おい貴様ぁぁぁ!!!これはいったいどういう事だ!?」
「どうも何も、私の武器のせいとしかと言えませんが」
「なんておぞましい毒を撒いてくれたんだ!!さては帝国の手先だな!?」
「何を言っているんですか。これは毒物じゃありませんよ。それに帝国の手先?仰っている意味が分かりません」
怒る理由は分かる。
そりゃ何十人もがいきなり苦しみ出したりしたらそりゃ毒だと疑うだろう。
まぁそこはしょうがないが帝国の手先って何なんだ?
俺は帝国に言った事もないんだぞ?
「シラを切るな!毒物でないというのならば何なのだ!?どうやって証明する!?」
「全員を水で洗ってください。それと鎧や剣なども全て。そうすれば痛みなども引いてくるはずですよ」
「嘘をつくな!!」
じゃぁ何て言えばいいんだ。
もう怒りで我を忘れているな。
そこでタイミング良く国王が登場。
なんか言って落ち着かせている。
凄いな、あれがカリスマというやつか?
「部下が申し訳ないな」
「いえ、こちらも事前の説明が不足していました」
「それはしょうがないであろう。態々手の内を晒すような事をする奴は愚か者だ。だが模擬戦は終わった。出来れば説明をしてくれると助かるのだが、どうだ?勿論先の書類に書いた通り責任は問わん。まぁ謝罪くらいはしておいた方が良かろうがな」
この国王は物凄く良い人なんじゃないか?
だって普通だったらあんな書類破り捨てて極刑でもおかしくは無い筈なんだが。
「勿論説明させて頂きます。最初に投げたものは音と光で聴覚と視覚を奪う物です。遮蔽物があれば防げるのですが」
「あれか。あれは眩しかったしとんでもない音だったな。太陽を直視して耳元で飛竜が叫んでいるのかと思ったぐらいだ」
「それは本当に申し訳ありません」
「今のは笑う所だぞ?」
今の笑う所だったのか。
そう言うのは分からないから難しいな。
「失礼しました」
「気にするな。それで?」
「二つ目の物は噴き出した煙によって肌や鼻、口、目に刺激を与えて戦力としての能力を削ぐものです。正直あれはやり過ぎたと思っています」
「ふむ。で、毒ではないのだな?」
「勿論です。水で洗い流せますので問題は無いですよ。ただ身に着けていた物全てを洗わないとそれを着たりしたときに軽いですが同じような症状が出ますのでご注意を」
「分かった。それは命令しておこう。おい、聞いていたな?」
「はっ。今すぐに装備などを含めてすべて洗わせるように命じます」
近くに居た執事さんが伝えに行く。
そして幾らか説明した後にレイトンさんが戻って来た。
「おぉ、レイトン大丈夫だったか?」
「出来ればもう二度と体験したくない物でした」
「そんなにか?」
「はい」
「ほほぉぅ……イチロー、先程のを余にも体験させてはもらえんか?」
この王様何言ってんだ。
思わず素の口調で返してしまう所だったが何とか踏みとどまった。
催涙ガス体験は結局流れる事になった。そりゃそうだ。一国の国王がそうホイホイとやっても良いような代物じゃないしな。これ催涙ガス浴びると最悪一日程度は催涙ガスに触れた部分に違和感を感じたり鼻水が止まらなかったり目が痛かったりとしんどい。
身体は倦怠感に襲われてそれどころじゃなくなる。
そうなれば執務など手を付けられなくなるかもしれない。
ああ言った物は一日の遅れで後々に盛大に響いてくるものだったりするからな。
部下の人達が宥めていた。
と言っても国王本人もそこまで本気だったわけじゃなく出来たらいいなぐらいにしか考えていなかったそうだ。
「しかし改めて考えてみると完封と言った勝利だったな。随分と面白い模擬戦であった。だが本当の実力は見る事が出来ていないと言えよう。イチローよ、他に何か実力を見せられるようなものは無いのか?」
模擬戦も終了し一旦全員で集まった。
この場で国王自身が勝者を告げることで云々……と言っていた。
そこでそれが終わってから国王がまた何かを言い出した。
曰く、他にもっと実力を測れるものは無いのか?だそうだ。
と言われてもそうなって来ると射撃や格闘になってしまうが相手を付けたら射撃では殺しかねないし格闘では通じるかどうか分からない。
「あるにはありますが……」
「ほう?ではなぜ渋そうな顔をする?」
「相手が居ると死んでしまうかもしれないのです。そんなことは出来ればしたくない」
「ふむ、相手が居なければ出来ない事では無いという事だな?」
確かにそうだ。
何時もは適当に目標を定めてそれに向かって撃っていたから考えもしなかった。
木だったり適当な丘だったりしたからな。
「そうではあります」
「ならば打ち込み訓練用の人形であれば問題は無かろう。どうだ?」
そんなものがあるのか。
まぁ生身の人間でなければ問題は無いか。
「……それならば大丈夫かと思われます」
「そうか。ならば早速準備させよう」
すると指示を出して早速準備をさせる国王。
はっやいなおい。今やるのか。まぁいいけど。
それから先程まで模擬戦(という名の一方的蹂躙)が行われていた場所に打ち込み訓練用の木で作られた人形がそこに立てられた。
スッゴイなあれ。しっかりと人間の形をしている。
しかし近いぞ。こんなん近距離射撃じゃないか。精々15m程しか離れていない。この距離なら外す方が難しい。
M9ならまだしもM4でならほぼ確実に何処かしらに命中させることは出来る。
「これでよいか?」
「まぁ、大丈夫です」
「ん?何か問題でもあるのか?」
「いえ、これと言って問題はありません。人形とは言っても丸太のような物を想像していたので驚きです。ですが強いて言うならば距離の問題でしょうか」
「距離?遠いという事か?」
「いえ、その逆です。近すぎるのです」
「近すぎる?」
「はい。あまり詳しくお教えできませんが私が普段扱っている武器の射程距離は300m程なのです。ですからこの距離だと近くて驚いただけなのです」
「ふむ。ならば端の方に置き直すとしよう。置く場所に何か意見はあるか?」
「……あそこにお願いできますか?」
「分かった。おい、誰かあの場所に人形を置いて参れ」
「承知いたしました」
そう言って俺が指定した場所に人形を置きに行く。
手間を取らせて申し訳ない。
俺が指定した場所と言うのはこのグラウンドの一角にある斜面になっている場所だった。あそこなら流れ弾の心配も少ない。
しかし地面でも跳弾は起きるから絶対ではない。
あとは向こう側に人間を立たせなければいいだけだ。
ふと周りを見ると多くの人間が集まっていた。
まぁ国王が態々練兵場に来て何かやっているし、いま新しく何かを始めようとしているのだから気になるのも無理はない。
「国王陛下、これから私の戦い方をお見せします」
「うむ」
「その前に幾つか注意事項があります」
「注意事項?」
「はい。まず今私が居る場所より前に誰一人として立たないで下さい。私の攻撃は当たれば下手をすると即死ですから」
「分かった。他に何かあるか?」
「私に近づかないで下さい。危険ですから」
「分かった」
「以上です。それでは始めましょう」
俺がそう言うと、周りが少しざわつき始めた。
まぁこれ程の遠距離でどんな攻撃をするのか誰も見当が付かないのも無理はない。
確かこの世界での遠距離攻撃となると弓か、投石器、あとは魔法攻撃の三択になっていたはず。他に何かあっただろうか?
まぁどちらにせよこの武器の射程は短い。
弓の種類にもよるが確実に殺すのであれば50m程度が有効射程だ。それも鎧を着ていないのであれば。
もし鎧を着ていればもっと短くなる。
投石器に関しては弓よりも射程は長いがそれでも高が知れている。
そもそもあれって攻城兵器というやつなんじゃないか?野戦でなんて使えそうにもない。装填に時間が掛かるし。
だったら弓の数を揃えた方が良いに決まってる。
魔法に関してはよく分からないが銃火器程の射程は無いとだけしか言えない。
というのも術者によって射程が大きく前後するらしい。
という訳でこんな距離に届くような攻撃なんて想像もつかないんだろう。
まぁ大人しく見ていればいい。邪魔されると危険極まりないが見られる分には問題無いだろう。
それじゃぁ、始めるか。
まず最初はM9……ではなくM4から。
目標(人形)は大体300~350m程離れている。この距離だとハンドガンじゃ無理だ。だがアサルトライフルであるM4じゃ余裕の距離だ。まぁ特に修正を掛けたりしなくても狙えば当たる。
それでも多少の修正は必要だが。
M4を呼び出して、うつ伏せで射撃をするのでバイポットを取り付ける。
うつ伏せになり、しっくりくる姿勢を探る。
まぁ何時も射撃している時の姿勢なのだが。この姿勢を探るのに二週間ほど掛かった。
それが終わったらバイポットの高さを調整して丁度いい高さに。
これ、高すぎても低すぎてもやりずらくなって大変だ。だから適当に出来ない。
それが終わればマガジンを呼び出してM4に挿し込む。
コッキングレバーを引いて初弾を装填。安全装置はまだ掛けたままにしておく。
サイトを覗き込み狙いを付ける。その時、左右上下への修正を忘れない。
そして安全装置を解除して、先ずはセミオート射撃。
レバーをセミオートに持って来てこれで射撃が出来る。
狙いの修正はしてあるから問題は無い。
風が若干吹いてはいるが問題にはならない。
そのままゆっくりと引き金を引く。
適当に引き金を引くと狙いが外れてしまう。
バンッ!!
うつ伏せでの射撃だから砂煙が上がる。
多少視界が悪くなるがまぁ直ぐに晴れるし大丈夫だ。
しかし、やはりなにか引いておけば良かったかもしれない。
薬莢の回収が面倒だ。
でも射撃を見せてしまっている時点で面倒事になりそうな気もするが今更か。
砂煙が晴れて来た。
サイトを覗いてみると、上手い事ド真ん中に当たってくれた。
続けて2発目3発目と打ち込んでいく。
それもしっかりと人形に吸い込まれて行く。
1マガジン分全てを単発で撃ち切る。
マガジンを引き抜き薬室内に弾薬が残っていないか確認する。
よし、問題は無い。
それが終わってから立ち上がる。
取り敢えず薬莢の回収をしてから終わる。
まぁ別にフルオートはやらなくても良いだろう。
「よし、こんな感じでどうでしょうか?」
「な……あ……これは……一体どういう事なんだ……?」
「これが私の武器です」
結局その後はまぁ面倒だったとだけ言っておこう。
銃とその攻撃力を見た貴族連中や騎士や兵士が詰め寄ってきた挙句、なんとかして手に入れようとあの手この手で寄って来てうざかった。
「いやはや、あんな凄い物だとは思っても見なかったぞ」
王城に戻り、部屋でゆっくりしていると何故だか国王が訪ねて来た。
いや、仕事しなくていいんですか?
午前中丸々潰したんだから絶対溜まっていると思うんだが。
「有難うございます」
「例のゴブリンの大軍もあれで全て仕留めたのか?」
「まぁ同じような物ですね」
「そうかそうか」
結局この日は国王が部屋に入り浸っていた。
いや、本当に仕事をしなくていいんですか?
催涙ガスって滅茶苦茶辛いんですよ……
鼻水涙、涎が際限なく溢れて来るし息を吸おうにも鼻は勿論吸えないですから口なんですけど喉をやられるのでせき込んで死に掛けるし。
肌にこう、沁みている感覚がなんとも恐ろしい。しかも痛いし熱い。
外に出て水で洗ったりしても辛い。
暫くはぐったりするしかないのです。