銃は地球人類が生み出した最高の文明の利器である 作:ジャーマンポテトin納豆
模擬戦後、国王が部屋に日が暮れて晩飯になるまで居座った次の日。
その日は祝勝会だか晩餐会だかを行った。
さて、今現在参加している俺の意見を言わせてもらおう。
今すぐ帰りたい。
と言うのも銃の威力を知った貴族連中の娘達が大挙して押し寄せて来た。
まぁこれぐらいなら想定済みだったしエルフラントさんやクレイドルさんに説明されていたから覚悟はしていた。
実際それ以外にも滅茶苦茶な程の数の勧誘を受けるし、挙句の果てには脅迫紛いのような事を言って来るような連中もいた程。
まぁそう言う奴らはカルマンさんにしょっ引かれて行った。凄いぞあれは。
貴族だなんだと言い張る連中を物ともせずにしていたのは格好良かった。
そんな事をして大丈夫なのか、と聞いたが国王から直々にもしそう言う事があったらカルマンさんの裁量に任せ、俺やエルフラントさん、クレイドルさんを守るよう、と言われていたそうだ。
カルマンさんは笑いながら、
「これは王命ですから。逆らうという事は国王、ひいては国家そのものに反逆するという事です」
とかなんとか。
正直言って迫力が凄かったとだけ言っておこう。
ただ、それ以上に問題だったのはもっと別の物だった。
今現在の俺の状況でもある事だ。
貴族連中の娘共、香水とか化粧品を馬鹿みたいに使っていて物凄い匂いをしてやがる!
そう、化粧品や香水の方が問題だった。
ハッキリ言って臭い。物凄く臭い。簡単に気持ち悪くなるほどだ。
考えてみて欲しい。バスの中でやたらと香水や化粧品の匂いが強い女性が居る事があると思う。
あの密閉空間とまではいかないがバスの中でさえあれほど匂う物なのにそれが数十人も集まってそれぞれが別々の物を使っていたらどうなるか?
答えは簡単だ。ただひたすらに地獄。
しかもド真ん中に居るのだから俺への被害は想像を絶するという事だ。
あの丘での戦いでゴブリン共の死体の匂いにも勝るとも劣らないと俺は思う。
結局俺は簡単に気分が悪くなってクレイドルさんに担がれて速攻で退場。
開始一時間で俺が居なくなるという異常事態になり、その日予定されていた報酬の下賜は予定時刻の二時間遅れで行われる事になった。
「おい、本当に大丈夫なのか?」
「まぁ……さっきよりはマシです」
「そんなに顔色悪くて何を言っているんだか。取り敢えずは横になっておけ」
「すいません……」
一旦部屋に戻ってベッドに横になった。
その時、クレイドルさんは同じく面倒だと言ってそのまま俺の部屋に残りエルフラントさんも男共が寄って来てしつこいからとこちらも俺の部屋に。
気を利かせたカルマンさんが軽食を幾つかと飲み物を持って来てくれたが俺はそれらにも手を付けることはせず起こされるまで眠っていた。
それから4時間後。
揺り起こされ、目が覚めた。
「そろそろ行くぞ。あと30分で始まる」
「あぁ、すいません。起こしてもらって」
カルマンさんに案内されて三人で会場に戻る。
戻りたくねぇ……またあの匂いと戦わなけりゃいけないのか。
なんだか会場の事を考えるだけで憂鬱な気分になって来たぞ。
何となくだがクレイドルさんとエルフラントさんの顔も面倒だと言っているような気がする。
会場に戻ると、先程よりはかなりマシになっていた。
と言うのも窓が全開になっている。風遠しが良くなったことで匂いも抜けて行ったのだろう。
すると後ろから声を掛けられた。
「イチロー、先程はすまなかったな。部下を止める事が出来なかったのは余の責任だ」
「陛下。御心配をお掛けして申し訳ありませんでした」
陛下だった。
今更だけどこの人かなりフットワーク軽いと思うんだけど。
あれか?もう挨拶とか済んだから自由にしているだけなのか?
「なに、部下の失態は余の責任だと言ったであろう?どうか許してほしい」
「大丈夫ですよ。最初から怒ってなどいませんから。それに下賜式の件も態々時間を遅らせて頂いてこちらこそ頭を下げなければならない程です」
それだけじゃなく態々俺の為に謝罪まで言って来たのだ。
流石にこの公の場で頭を下げる事は出来ないのか言葉だけだったがそれでもその気持ちは十分に伝わって来る。
「よいよい。気にするな。して、体調は?見たところ顔色もマシになったと見えるが」
「万全とはいきませんがもう大丈夫です」
「うむ、そうか。ならば下賜式までは出来るだけ楽しんでいってくれ。ではな」
「はい。有難うございます」
幾らか会話して国王は立ち去って行った。
国王が居なくなったことでまた集まって来るかと思ったが今回は流石にそうではなかった。
漸く平穏になるか?と思ったがそうはならなかった。
なんか色んな人が俺に挨拶しに来るんだけどどうすればいいんだこれ。
必死になって挨拶を返したり時には躱したりしてやり過ごす事20分。
漸く下賜式が始まった。
俺、クレイドルさんと並んで俺はクレイドルさんの見様見真似で同じ動作をする。
今は傅いているんだが国王がなんか難しい言葉を言っている。
まぁよく分からないので聞き流しているが。
今更だがなんでこういう偉い人の話って長いんだろうか。
ボケッと聞き流していると、本題の報酬下賜の場面となった。
「クレイドル・ラウナー。面を上げよ」
「はっ」
「オール大平原での戦いにおいて部隊の的確な指揮は誠に見事であった。その功績を讃え銀騎士章の授与、及び金貨150枚を与えるものとする」
「有難き幸せに御座います」
その後に、国王が首に銀騎士章だかなんかを掛ける。
多分金貨はあれだ、これが終わって帰る時に渡される感じだな。
というか金貨150枚って普通に暮らせば暫く賄える金額だぞおい。
遊ぶんだったら5年は余裕だとは思うがただ生きていくだけなら20年は安泰だと思う。人によるだろうが。
……ん?戦いの時に弾薬その他諸々で消費した金額ってそれの数倍くらいだった……
銃を使っているから依頼の消化がめちゃめちゃ早くてしこたま稼ぎまくったような……
それに事あるごとに貴重な薬草やらなんやらを取って来たり色々と稼ぎまくって……
「イチロー、面を上げよ」
「はっ」
「今回の戦いでの一番の功労者に与える報酬だが、余りにも大きすぎる為に中々思いつかなかった。丘での戦いでゴブリンの大軍を見事討伐、ゴブリンロードの直接的な討伐、そしてそれによる国家存亡の危機を救った事。丘での戦いでの死者を最低限まで減らし、自身も治癒魔法を掛けて回ったと聞く。更には本来派遣軍の仕事であるはずの掃討戦への参加。他にも多数あるが此処では紹介しきれぬ」
「これ程の功績を挙げた彼に金銭だけを渡すわけには行かぬ。よって幾つかの報酬を考えた。もし辞退したいものがあるというのであれば申せ。出来るだけ配慮しよう。良いか?」
「はっ」
「一つ、金貨3000枚」
はぁ!?
3000枚って頭おかしいんじゃないですか!?
驚いたのは俺だけじゃない。見守っていた貴族連中も騒然としている。
そりゃ3000枚なんて訳が分からない金額を提示されたら誰だってそうなる。
多分俺の顔もとんでもない事になっている筈だ。
「二つ、彼は名乗る姓が無いと言った。そこでバイタークハイマットの姓を与える。これからはイチロー・バイタークハイマットと名乗るが良い」
次は苗字ですか。
確かに姓が無いと不便な事は結構ある。
これは有難い。
「三つ。貴族位である侯爵位を与える」
予想してたやつだ。
これは思いっ切り断らせていただきます。
縛られるのは嫌だし、今日見て来た貴族連中の争いに巻き込まれるのは御免だ。
「有難き幸せ」
「して、辞退したいという物はあるか?」
「恐れながら申し上げます。爵位を辞退させて頂きたく思います」
「ほう?何故だ?」
「少なくとも私に見合ったものでは無い、と思います」
「ふぅむ、あい分かった。爵位の授与は取り消すとしよう。他に何かあるか?」
「……できれば報酬の金額も減らしていただけると」
「ならん。それは受け入れられぬ。どうしてもと言うのならば爵位か減額かどちらかを取れ」
まぁここら辺が落としどころか。
全部ホイホイ辞退していたら意味が無くなるだろうし。
そうするとどっちを辞退するかなんて決まっている。
「……ならば爵位を辞退させて頂きます」
「うむ。それでは次にその他の人間に対する報酬に移る」
次にあの丘で共に戦った人達への報酬の話となった。
「戦いに参加した336人に対しては金貨200枚をそれぞれ与える。本人が戦死している場合は遺族に支払われるものとする。そして身寄りの無い戦死者に関しては王立墓地へ埋葬し、金貨200枚で墓石を立てる事とする」
何故クレイドルさんへの報酬150枚よりも多いのか。
後々聞いた話だが、この金貨200枚という金額は国王によれば妥当との事。
命を懸けて国家、家族の為に戦った人間を軽んじる事はしない。
そして大抵の場合、夫や父親を亡くした家庭は母や姉が苦労をする。
それは身体を売るという事に変わりない。中にはそうではなく別の仕事に就く者も存在するが出来るだけそう言う事は無くしていきたい、との事だった。
これだけの金額であれば子供や孫が育ち、職に就くだけの期間は安定して過ごせるだろうという配慮からの物だった。
その後、幾らかの時間を国王が再び皆に向けて話をした。
「これにて下賜式を終わる。皆よ、今宵は羽目を外さぬように楽しんでいってくれ」
そして再び始まる宴。
宴と言って良いのか分からないが。
俺は相変わらずあの貴族連中の中に入るのは気が滅入るのでテラスでのんびりと食事を摂る。
酒は飲まないから代わりに水か、果実水を持って来て貰っている。
果実水と言うのは水に果汁やエキスを入れたものだ。オレンジや檸檬などの柑橘系に始まって林檎や葡萄、様々な物がある。そう言えばライチもあったな。
勿論果物そのものもある。しっかりと冷やされていてこれがまた美味い。
用意されていた椅子に腰を掛け、食べ進める。
偶にあの時の戦いの話を聞きたがる人間が来るがそれも大体二種類に分けられる。
本当にあった戦いだと信じている奴とそうでない奴。
ぶっちゃけ前者は前者で面倒だし後者もかなり面倒だ。
そう言えば掃討戦に参加していたとかいう奴も居たな。
なんだったか、
「貴方のおかげで妻と子供の元に帰る事が出来ました。ありがとう」
と言っていたな。
素直に嬉しいと思う。少し話したがなんでもお腹の中にニ人目の子供がいるそうだ。
そりゃ帰れてよかったと思うよ。
幾ら貴族とは言っても未亡人には何かと風当たりが強いのが現実らしいし。
しっかしあの若さで妻子持ちか。
見た感じじゃまだ20かそこいらだろうか。
やっぱり貴族は結婚も早いんだろうか。
「イチロー、隣に座ってもいいか?」
「あぁ、エルフラントさん。どうぞ」
「ふぅ……漸く一息つける」
「大変そうでしたからね」
「貴族の独身連中は女の後を追っかける事しか出来ないのかもな。そうでなきゃあそこまで戦が下手糞なのは有り得ん」
「そうですね」
「というか見ていたら助けてくれても良かっただろう?」
「俺にそんな王子様染みたことは出来ませんよ?出来るのは今の所戦う事だけです」
「なに、そんなことは無いさ。あの時だってゴブリンに攫われそうな私を助けてくれたじゃないか」
「状況が別ですよ。あんなに囲まれていませんでしたし」
「ふふ、化粧品の匂いでダウンしてしまう王子様か。さぞ人気は出ないだろうな」
「お恥ずかしい限りです」
二人で並んで座り、笑いながら話す。
多分エルフラントさんは酔っているのか分からないが顔は少し赤く、素面の時よりも喋る口調が軽い。
胸元が開いているドレスを着ているからほんのりと汗ばんだ北半球も丸見えだ。
端的に行ってしまえばエロい。
ものすっごくエロい。
元々エルフラントさん自身は化粧をしなくても十分にそこらの女性よりも美人なのだが今日はそれを上乗せする様に化粧をしている。
薄化粧程度だがそれで十分な程の破壊力を持って居る。
いやそうじゃない。
何を考えているんだ俺は。
というか大丈夫か?変な輩に絡まれたりしないだろうな?
1人にしたら不味そうだなこれ。
そう思って見ていると少し赤くなった普段のキリっとした顔つきでは無く少しフニャっとした表情をこちらに向けて来ていた。
気のせいでなければちょっと、いやかなり全体的にフニャフニャしているような。
……本当に大丈夫か?この人。もしかして結構酔っているんじゃなかろうな?
「エルフラントさん、どのぐらいお酒を飲みました?」
「ん?んー……グラスを10杯ぐらいか?」
「結構飲んでますね……」
そりゃこんなフニャフニャになるわ。
10杯って相当だぞ?
呂律は回っているがそれ以外が心配だ。
「エルフラントさん、部屋に戻りますか?」
「ん……そうだな。戻るとしよう。心地が良い時に変な男に話し掛けられては台無しだ」
そう言って立ち上がると少しふらつく。
やっぱり結構酔っていたんじゃないかこの人。
ふらつくって相当だと思うんだけど。
「イチロー、すまないが手伝って貰えないか?ちょっと足取りが覚束無い……」
「あぁ、いいですよ」
「部屋まで頼む……」
そう言って体重を幾らか預けて来る。
……今腕に当たった柔らかい物は気にしないようにしよう。
というか俺は変な男じゃないのか。
まぁ送り狼になったりする気はさらさらないんだが。
後々が怖いし。
そして部屋に到着。
階段は危なっかしいので俺が抱き上げて登った。
だって二回も足を滑らせたら自分で登らせる気にはならない。
本当にヒヤッとしたぞ。多分支えて居なかったらそのまま一番下まで転げ落ちていたかもしれない。
「エルフラントさん、部屋に着きましたよ」
「ん……ちょっと待て……鍵は何処だ……」
ガサゴソと鍵を探す。
小さいポーチの中に入っていた。
かちゃりと鍵を開ける音がする。
エルフラントさんをベットに寝かせて終わりかと思いきやそんな簡単には終わらなかった。
「イチロー、ドレスを脱ぐのを手伝ってくれ……一人じゃ脱げない」
「えぇ……そうしたらメイドさんを呼んできますから少し待っていてください」
俺がそう言って呼びに行こうとすると、呼び止められる。
「イチロー、ちょっとこっちに来い」
「はい?なんですか?」
「あのな、酔った女が、それも泥酔している訳じゃない女が男に身体を預けるのは何故だと思う?」
「へ?」
「その男になら何をされても良いという事なんだ。これがどういう意味か分からないわけでは無いだろう?」
「……本気ですか?」
「本気だとも」
まじか!?
まぁ確かに部屋に戻る道中やたらと身体を押し付けて来たりしたからまさかと思っていたが……
いやでも有り得ないんじゃないか?
だってエルフラントさんだぞ?あのエルフラントさんだぞ?
俺が自問自答していると、扉の方からかちゃりとさっき聞いたばかりの音が聞こえる。
振り向くとエルフラントさんが扉の前に立っていた。
「ふふふふ……これでもう逃げられないな?」
「oh……」
1人じゃ脱げないと言っていたドレスを脱ぎ去り、あっさりと下着姿になるエルフラントさん。
逃げようと後ずさりするとベットの端にぶつかる。
……逃げ場が無い。
段々と俺の方に迫って来る。
その姿は何故か迫力があるものだ。
どうする?どうされちゃう!?逃げる?逃げない?迎え撃っちゃう!?
そんなテンパった思考をグルグルと頭の中で巡らせていると俺の手をキュっと握って来る。
そして小さい声で言った。
「お前は、女にここまでさせておいて帰ろうとするのか……?」
流石にこんなこと言われたら無理だ。
抱き寄せる。
「そんな事はありません。少し慌てただけです」
「それならいい……」
「でも、あとで後悔しませんか?」
「その心配は無いから大丈夫だ」
「なら良かった。あとで後悔して欲しくないですから」
まぁ、その後の事はご想像にお任せする。
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「あ、その、初めてなんだ……」
「え?」
「だから、初めてだから優しくしてくれると嬉しい……」
「……善処します」
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ーーーー side コルネー・エルフラント ----
今日は下賜式だった。
私自身は直接国王陛下に呼ばれるわけでは無いが、ドレスを着て会場に立っていた。
しかしイチローが貴族の子女達に囲まれその化粧品や香水の匂いで気分が悪くなって一時間しか経っていないというのにダウンしてしまった。
まぁ確かにあれはキツイ。
団長がイチローを担いで部屋に運んでいく。
私もその後を付いていく。
貴族の男共が何かと声を掛けて来て一緒に飲まないか、一緒に踊ろうなどとしつこくてたまらん。
団長もこういう場が苦手だと言ってそのままイチローの部屋に居座ってしまったが私もそうだから人の事は言えない。
国王陛下が気を利かせて下賜式を二時間遅くしてくれた。
確かにイチローの顔色は悪く、気持ちが悪そうにしている。
イチローの部屋で時間を潰す。
4時間程部屋でのんびりとしているとそろそろ下賜式の時間だ。
イチローを起こして会場に向かう。
そして下賜式が始まった。
国王の話から始まり、団長への報酬。
そしてイチローへの報酬が発表された。
なんと金貨3000枚に爵位、そして名乗る姓が無いと言っていたイチローに姓を与えるとの事だ。
幾ら何でも大盤振る舞い過ぎる。
確かに本人の功績を考えれば莫大なものになると予想はしていたがこんなにか。
それに爵位だなんて早々与えられる物じゃない。
この二つにも驚きだが姓を与える、という方が驚きだ。
これは爵位よりもずっと与えられることが少ない。
歴代の中でも与えられているのは、3人のみ。
いずれも帝国軍との戦いで武功を上げた指揮官や将軍だ。
そんな三人に肩を並べる程の事だ。
与えられた姓は「バイタークハイマット」。
国王陛下はもし辞退したいものがあれば可能な限り善処するから遠慮せずに言ってくれとも。
普通こんなことにはならない。本来ならば断わる事が出来る様なものではないからだ。
だがそんなことはつゆ知らずのイチローは、爵位の辞退と報酬金の減額を求めたのだ。
しかし国王陛下はどちらか一つだけだという。
多分爵位を辞退するだろうな。
そんな予想を立てたが大当たり。
爵位を辞退して莫大な報酬金を受け取る事にしたようだ。
まぁ爵位があったとしても領地があったりするわけじゃないから税収も得られない。そうなると何かしらの商売で稼がざるを得なくなる。
そこまで考えているとは思えないが。
そして下賜式が終わり再び晩餐会が始まる。
そしてイチローはテラスの方に行って一人でのんびりと食事を摂っている。
主賓がそれでいいのか、とは思うが先程の事を考えるとしょうがないのだろうか。
私は私で周りをまた貴族の男共に囲まれウンザリしている。
こいつら本当にしつこいな。お前なんか覚えている限りじゃ五回はあしらっているはずなんだが。
適当に酒を飲みながら適当にあしらう。いい加減にしてほしいんだがこいつらはこっちの事などお構いなし。
自分の家はどうたら、私の家は云々、お家自慢のオンパレードだ。
自分の事で自慢出来ることは無いのか?と思いたくなるほど家の事しか話さない。
そもそもお前らは当主じゃないだろうが。
前後左右からそんなつまらんことを延々と聞かされるのだからいい加減イライラして来た。
挙句の果てには丘での戦いの後の掃討戦に参加して生き残って帰って来ただの言い始める奴も居る始末。
お前よくそんな事を言えるな?そもそも掃討戦じゃ派遣軍はまともな連携も取れずにゴブリンに一方的に叩かれただけだろうが。
9000も居た兵力を無駄死にさせて半分以下の人数まで追い込んだのはお前達じゃないか。
それで生き残って帰って来ただと?
お前の実力じゃなく、イチローが居たからだろう。
居なかったら9000の兵力は消滅していたんだ。むしろイチローの下に行って頭を下げて感謝をするべきなのにそんな事を考えている奴なんて一人もいない。
あー、本当に嫌になって来た。
薦められるままにドレスを着なければよかった。
胸元が開いているせいか視線も胸元に集まっている。
気付いてないとでも思っているのか?馬鹿な奴らだな。
イチローの所に行こう。あいつの近くに居れば絡んでくる馬鹿は居ないと思う。
しかし飲み過ぎたかもしれない。ちょっとフワフワするな……
思った通りだった。
イチローの隣に座った途端に話しかけて来る馬鹿共は居なくなった。
そこでイチローと話す。
他愛もない話だ。
貴族の女共に囲まれて化粧品の匂いでダウンしたイチローの事だったり、あの時私を助けてくれた事だったり。
知らず知らずの内にイチローと話しているととても気分が良くなってくる。
嬉しくてなんだか幸せだ。
酒のせいでもあるのだろうが素面でも恐らく同じ気分になると思う。
王都に来るまでの間も同じ、イチローの乗り物に乗っていたがあの時も同じ様な気分だった。
イチローも貴族連中と同じで胸元を見たがそれも一瞬。
あんなジロジロ見たりしない所も良い。
だがあれだな。うん、ちょっとムカつくな。
貴族連中に見られるのは嫌だがイチローには見てもらいたいと思う。
なのにこいつは見ることもせずに呑気に私と話しているのだ。
なんだか癪に障るな。
……よし、ちょっと仕掛けてやろうか。
と思って酔っている事を前に出して部屋までの介抱を頼む。
そして部屋についてなんやかんやで、イチローと寝た。
寝たというのは所謂男女のやつの事だ。
うん、ここまで来てあれだが私は処女だった。
ちょっと怖くなって来たぞ。聞いた話じゃ痛いとかなんとか……
大丈夫か?まぁでもなるようになるか。
イチローにも初めてだから優しく頼むと言ったし。
善処しますとか言っていたが心配は無い……と思う。多分……
朝、起きると私は裸だった。
隣には私を抱き締めているイチローが。
……ん?んんん?これはどういう事だ?
必死に頭を回転させて昨日何があったのか必死に思い出す。
あぁ、そうだ私が誘ったんだったな。
昨日の夜の事は思い出せた。
まぁうん、後悔は無い。寧ろ嬉しいし幸せだ。
こう、満たされる感じがする。
呑気な顔で寝ているイチローの顔を見ている。
とふと思った。
……ちょっと待て。ここって王城だぞ?そしてこの部屋は借りている部屋で……
やばい。やばいやばいやばい!?
結構後先考えなかったがこれって物凄く大変な状況だぞ!?
国王陛下からお借りした部屋で男、しかも今回の件の主賓と寝たなんて物凄く不味い事じゃないか!
慌てて飛び起きる。
というかイチローが抱き締めてきているから起きられない。
先ずはこいつを起こさないと!
「おい、起きろイチロー!」
「ん……?んぁ……エルフラントさん……?おあようおあいます……」
「呑気に欠伸をしている場合じゃないから早く起きて服を着ろ!それと片付けもしなきゃ……!」
「服……?片付け……?……あぁ!?」
そこで漸くはっきり目を覚ましたのか慌てて服、昨日の正装を着込む。
私も急いで下着を着て、ドレスを着る……違う違う。ドレスは返すのだから持って来た服を着ればいい。
まぁ多分この後国王陛下に呼ばれるだろうからその時にまた正装しなければならないのだろうが。
二人して大慌てで着替えを済ませて、イチローを一旦部屋に帰らせる。
そして私服に着替えたらか片付けの手伝いをさせる。
イチローの私服は相変わらずあの緑や茶色、黒が混じった斑模様の上下の服装だ。
今思ったがこいつ私服これしか持って無いのか?
ちょっと致命的すぎるぞ。
……今度適当に見繕ってやろう。
そんな事を考えながら片づけを進める。
まぁ元々窓は開けていたから匂いは籠っていなかったし多分大丈夫だとは思う。
それよりも赤いしみがついたシーツだったりの始末はもうどうしようもない。
赤い染みは落ちなかった……
それから取り敢えずイチローには部屋に帰って貰う。
殆どの人間が起き出してくる頃だし本当は居て貰っても良かったんだがまぁ下手に勘繰られるよりは、という事で。
取り敢えず寝るか。
明け方まで行為に及んでいたし、晩餐会の疲れもある。
ぶっちゃけて言うと、片付けのドタバタが終わったあたりから物凄く眠い。
そう思って綺麗なシーツに変えたベットに潜り込む。
匂いを嗅いでみるとちょっとだけイチローの匂いがする。
すると、急に恥ずかしくなって来た。
うぁぁ!?イチローとやってしまったのか!?本当に!?
ベッドの中で悶える事暫く。
でも、何というかこう、いやだという気持ちはやはり湧かない。
アイツは事に及ぶ前に、ちゃんと私に後悔しないかと確認を取って来たのだ。
普通男ならあの状況じゃ理性なんて吹っ飛んで獣になるのかと思っていたから驚きだ。
それほど自分の事ばかりでは無く、私の事も考えてくれていたという事だろう。
優しくしてくれと頼んだ私に配慮してか、そこまで激しくすることも無かったし。
かなり大切に、大事に扱われていたと思う。
そう思うとなんだかとても嬉しくなった。
とそんな事を考えながら再びベットの中でもぞもぞと悶えていると気が付かないうちに寝入ってしまった。
ーーーー side out ーーーー
朝、エルフラントさんに起こされて飛び起きて、色々と事後の後片付けをして。
部屋に戻って、迷彩服を脱いで軽装になると、流石に晩餐会の疲れと昨晩のエルフラントさんとの事もあってかとても疲れていた。
だが後者の疲れはどうにも嫌な物じゃない。
寧ろ心地良い物でさえある。
と思いながらベットに潜り込むこと数分。
あっさりと眠りについてしまった自分だった。
夢見に関しては最高だったと言っておこう。
どんなものかは教えないが。
個人的には書いてくれた感想を見てニヤニヤするのが楽しみなんです。
だから感想くれると嬉しいです。
R18編を書くか書かないか迷う。