銃は地球人類が生み出した最高の文明の利器である 作:ジャーマンポテトin納豆
丸々5日間掛けて訓練をしてから更に6日間、魔物や魔獣の襲撃は無く訓練に費やした。
その間1日2回、一切なんの告知も無しにいきなり戦闘準備命令を出して自身の担当に素早く配置に付く為の訓練も実施した。
まぁやはりと言うか最初の内はかなり慌てて転んだり、混乱して自分の配置を忘れて全く違う所に行ってしまったり全く必要の無い銃座に弾薬が運び込まれたりしてそれはもう酷い有様だった。
しっかりと対応出来る者も居るには居たが全体的に見てやはり手間取っている事が良く見て取れた。
一切の説明無しにしたから多少は反感を買ったがこれが本当の襲撃なら今頃酷い有様になって居ただろうという事を説明すると、全員が落ち込んでそれからは気は抜いているがそれでも直ぐに反応出来る様にはなって居た。
そう言う訳で練度はこの11日間で比べるまでも無い程に上昇した。
空砲程度では今更驚かなくなったし、何より元々弓が得意と言う事もあってか射撃に関してはとんでもなく命中率が高い。
的を用意して撃たせてみるとMG42なんて射撃速度がとんでもなく早く命中率は良くないのだがそれでも平然と的にブチ当てていく辺りそれがどれほど凄い事か分かって貰えるだろうか?
しかも固定目標だけでは無く移動目標にしてもそんな感じなのだから。
最初の内は矢とは大きさや重さ、飛翔速度の違いに手間取っていたがそれも1日もすれば完璧に把握していた。弓と銃では色々と違うから一概には言えないのだがそれでもまだ2週間も経っていないのにこれほどとは、狙撃銃を持たせたらとんでもない事になりそうだ。百発百中も当たり前の様にこなしていくだろう。
8.8cm砲にしてもまだ実弾射撃は行っていないがそれでも照準は目標のド真ん中を狙っているし、装填は手動なのだがそれなのにも関わらず装填速度は速い。まぁそんなに全力でやっても砲身が過熱してしまうしその冷却の関係もあるから多少は落としている。万が一の場合は全力装填して貰うが。
そう言う訳で今の所は出来るだけ早く、配置について弾薬の運搬なども今よりもスムーズに行えるよう、訓練を行うだけだ。
銃座には天井もあるし予め、MG42は250発の弾薬ベルトを、M2は110発の弾薬ベルトが入っている弾薬箱を10箱程づつ置いてあるがもし大挙して押し寄せられたら直ぐにでも無くなってしまうだろう。
そう言う訳で問題は無く進んでいたように思われたのだが雨が降って来たのだ。そう、只雨が降ってきているのならば問題無いのだが壕の中はそうでは無かった。他の場所よりも低い位置に底があるからどんどん水が溜まってしまい、排水処置もしていなかったから溜まって行ってしまう始末。
これぐらいの事なら一番最初に想定出来た事だったのだが完全に
丸々2日間振り続けた雨によって殆どプールの様になってしまい、先ずその排水能力に問題がある事が分かった。そう言う訳で排水用の溝を設置したがそもそも地面は銃座や壕を除いてすべて真っ平とはいかないまでも平らな物だから外に排出しても全く意味が無く、何なら土嚢の隙間から少しづつ漏れだして逆戻りになってしまうと言う始末だった。
幸いなのは銃座を地面を盛り上げてその部分に構築していたから銃座自体が水に浸かり、弾薬や銃自体が汚れたりすることが無かった。それでも壕よりはマシで排水処置をまともにしていないから壕の方に水が流れては行くが地面は完全にぬかるんでしまい、壕が満水になってしまってからは銃座も水に浸かってしまい、まともに移動などが出来ると言う様相では無かった。
しかし更に問題なのは壕だった。
銃座からと、雨、地面に降り注いだ雨が流れ込み、完全に水に浸かってしまい移動なんて出来る様な物ではない。無駄に体力を使ってしまうし何より弾薬を濡らしてしまう事は避けたいし、衛生的にも良くないから何とかしたい。目下は排水用のポンプを呼び出して水を村の外に排水したがこれだけではだた問題の先送りにしかならない。
しかし幾ら考えても具体的な方法は見つからなかった。
この壕を構築した場所が他よりも高い場所にあったのならば排水溝を作って低い方に向けて流せばいいだけの話だったのだがそうではない。
先程も行ったが高低差は無く、それが出来ないのだからしょうがない。
雨が降るたびに態々排水ポンプで時間をかけて排出するしかないようだ。一応、また雨が降って来た時に問題が無い様に底を更に50cm掘り下げて高さ50cmの簀の子を全体に設置。銃座に関しても同じ様な処置を施した。そうする事で直接的に水に弾薬、銃、そして皆が濡れる事は無くなった。それでも限定的だし、水が簀の子を超えてしまえばアウトなのだがそうならない様に前以て排水ポンプで解決してしまえば良い。
そう言う訳で更に2日間、射撃訓練などは行わずに一連の壕の構築、改良を行った。
あと変えた事と言えば8.8cm砲の砲座と銃座の地面と壁をコンクリート製にした程度だ。
もういっその事、銃座から壕に至るまで全てコンクリートで覆ってしまおうかとも考えたが流石にそれ程の余裕は無さそうだったので却下となった。
それに銃座をコンクリートでトーチカなんて作ってしまうと砲撃の邪魔になってしまうから諦めた。それに流石にそれ程の時間は無さそうだしな。
そしてそのような処置を施してから更に3日。
合計して18日の期間が過ぎた。俺が村に来てからは22日が経ち、この森の調査予定期間の3か月の内の凡そ3分の1が過ぎ去ってしまった。
この村の事を最優先にして行動していたから森の調査は全くと言っていい程進んでいない。まぁそれも俺の報酬金が減る程度で済むから命が失われる事に比べれば全く痛くも痒くもない。
3日間もあるんだったらコンクリートトーチカを作ってしまえばよかったかもしれない。
高さを低めにしておけば砲撃照準の妨げにはならなかっただろう。
しかしこれ程までに時間が掛かっている原因は思ったよりも魔獣や魔物の襲撃が無い事が原因だが、訓練に費やせる日数が増えたと考えると±0にはなったのかもしれない。
その間にもエリカさんやネル達の様に狩りを担当するメンバーから色々と森の事を聞いてはメモを残した。
そして今日、漸くその時が訪れた。
まず最初に異変に気が付いたのは壕の中の水が乾き、移動などに問題が無い事を確認してから朝食をエリカさんと共に食べているその時だった。
ふと、空を見上げたエリカさんが異変に気が付いた。
それを聞いた俺は食事を止めて探知を発動したが探知には何も引っかかっていないのにも関わらず、森の向こうが騒がしい。
野鳥が大きな音を立てて飛んで周り、これほど大きな木々が薙ぎ倒されて行く音が聞こえた。幾らグレンデルやキマイラと言えどもこの木々を薙ぎ倒しながら進んでくる事は出来る筈が無い。
そうなると考えられるのはそれらよりもさらに大きな身体を持つ生物の存在だ。まぁ今考えても仕方が無いし、すぐさま村全体に大きな声で戦闘準備命令を出した。
「急げ!もうすぐそこまで来ているぞ!」
「そこにある弾を持って行け!」
「弾薬箱を2つづつ持て!出来る限り最初の段階で弾薬を持って行って時間を稼ぐんだ!」
銃座に向けて走って行く皆と、その怒号があちこちから響き渡る。
弾薬箱を射手、装填手、通信手、運搬係の4人が銃座に置いてある物だと足りないと判断したのかそれぞれ2つづつ持って交通壕の中に消えていく。
そして暫くすると銃座の通信手から本部へ向かって通信が入る。
『こちら4‐8!準備完了!』
『こちら3‐2!準備完了!』
全ての銃座からそれらの報告が終わり次第、各銃座に向けて命令を発する。
「こちら本部。俺の指示を待たずに目標が見えたら射撃を開始しろ。いいか、デカブツが現れる前に小さい奴らが大挙して押し寄せてくる筈だ。先ずはそいつらを片付けるんだ。接近されたら終わりだ。余裕のある内に弾薬の補給を行う様にしろ。弾が尽きてから取りに来ても遅いからな」
「別に小物さえ殺ってくれればデカブツは8.8cmで何とかする。その際忘れないで欲しいのがデカブツの接近を知らせる事だ。それが無ければ何処に向かって撃てばいいのか分からないからな。いいか、もし不味くなったら直ぐに後退しろ」
俺がそう言うと、無線からそれぞれ了解という声が聞こえてくる。
そして俺は無縁機に向かって言った。
「何としてでも生き残って勝つぞ!いいか!?」
すると今度は無線では無くあちらこちらの銃座や8.8cm砲座から声が響いてきた。
その声を聞き届けてから俺は8.8cm砲の元へ行く。
「準備完了!何時でも撃てます」
「了解。初弾は榴弾を装填。小さい奴らの先頭を纏めて吹き飛ばす。装填が完了したらそのまま待機」
「射撃方向は?」
方向は、そうだな……
今砲口を向けているのは第1区画の方向だ。……第2区画に向けよう。
「右に135度旋回。第2区画と第3区画の間に向けておく」
「了解。右135度旋回」
俺の指示によって砲手が旋回ハンドルを回し、右へ135度砲身が向きを変える。
これには理由がある。
第2、第3区画が一番守りにくいのだ。だからその方向を一番に支援しなければならない。
「俯角-5度」
「了解。俯角-5度」
次に仰角、砲身の角度を指示した。
砲身の位置はコンクリートや土を盛ったお陰で2m程地面よりも高い。
だから地面に向かって砲弾を撃てるように-5度の角度を付ける。
多少低く見積もりすぎたがそれでも問題は無い。
ただこの8.8cm砲の欠点は取れる俯角が浅い事だ。せいぜい15度程度しか下に向ける事が出来ない。まぁそれでもデカブツを最優先に狙うからこれは大した問題では無いのだが。
そう言う訳で狙いを付けた。
その凡そ30秒後、探知の範囲内に全方位から多数の反応が急接近して来た。
「全員、700m先注意しろ!全方位だ!引き金に指を掛けておけ!」
無線に向かって指示を出す。
すると先程よりも全体の緊張感がぐっ、と増した。
まぁそれはそうだろう。この戦いに負ければ文字通り餌になってしまうのだから。
探知でもう一度確認すると第3区画の方が魔物や魔獣が突出して突っ込んで来ていた。この分なら第3区画がいち早く銃座が交戦を始めるだろう。
それから暫くすると、第3区画の方から銃声が聞こえて来た。
「砲手、第3区画に向けて右45度旋回」
「了解。右45度旋回」
砲座が指示の通りに向きを変える。
「旋回完了」
「照準を群れのド真ん中に付けろ」
「了解。……照準完了」
指示を出して俺は防盾の後ろに隠れる。
じゃないと爆風や爆炎に巻き込まれて吹っ飛ばされたり破片が当たる。そうしたら死ぬ。
「射撃用意……撃てッ!!」
俺の号令の瞬間に引き金が引かれる。
ドォォン!!!
大きな発射音が響く。
そして砲弾が飛翔していく。数秒後、照準を付けた場所に着弾して土と爆炎を巻き上げる。
ア”あ”あ”ァ”ァ”ァ”ァ”………!!!!
そして魔獣や魔物の絶叫が響く。
「次弾装填!」
「次弾装填完了!」
「左5度旋回!」
「了解!左5度旋回!……完了!」
「撃てッ!!」
ドォォン!!!
再び撃ち出される砲弾は狙った場所にしっかりと吸い込まれて行く。
最前線はMG42とM2の複数の射撃音が響き、どんどん撃ち出される8.8cm砲弾が土と爆炎と共に魔獣や魔物の肉片が飛び散る。
「うぉぉぉ!」
「いいぞぉ!そのままやっちまえぇぇ!!」
8.8cm砲を担当しているメンバーからは喜びの声が上がる。
そして弾薬運搬係は砲弾が3発入っている箱から1発取り出してバケツリレー式に装填手に渡して、装填手は撃ち終わって空薬莢が排莢された瞬間に即座に装填する。
何発か撃ち込んだ後に第2区画、第4区画、第1区画と目標を変更した。
それを10分程続けて砲撃をしていると通信が入った。
『こちら1‐7!デカいのが現れた!恐らくキマイラだ!砲撃支援を頼む!』
第1区画から悲鳴とも取れるような通信が入った。
漸くデカブツがお出ましか。これから本領発揮だ。
今は第4区画に向けて射撃をしていた。
「了解!砲手、右45度旋回!仰角5度!」
「了解!右45度旋回、仰角5度!……完了!」
双眼鏡を覗くと簡単にキマイラを見る事が出来た。
デカいな……体高は4~5mはあるか。
しかしあれだけデカけりゃ外すなんて事は無いだろう。
「弾薬運搬係、装填手、次弾より徹甲榴弾に変更!」
「「「「了解!」」」」
「砲手、照準をキマイラのド真ん中に付けろ!」
「もう付けてあります!」
「良し、撃てッ!」
そして撃ち出される砲弾。
ビィィィィィィィン…………
命中したのはド真ん中、しかも頭に当たった。
しかしながら砲弾は弾かれて独特の音を響かせながら何処かに飛んで行ってしまった。
榴弾とは言っても8.8cmもある砲弾だぞ!?それがあんな簡単に弾かれるなんて想定よりも厳しいんじゃないか!?
そもそも榴弾ならば直撃した瞬間に炸裂する筈なんだが……
砲弾自体は当たったが信管が作動しない場所、砲弾の先頭部分に当たらなかったのかもしれない。それでも信管が作動して炸裂するとは思うのだが……
流石に信管が起動しなかった原因も理由も分からないがそんな事を気にしている場合じゃない。
角度が悪かったのか、それとも単純に頭部外殻の厚さかそれとも頭蓋骨の強度なのか分からないが8.8mm砲弾が弾かれたという事は変わらない事実だ。
まぁいい、流石に徹甲榴弾ならば貫通出来るはずだ。
それに頭に当たったのは偶々だろうからそれ以外の部位なら貫通出来るだろう。
最悪の場合、硬芯徹甲弾を撃ち込むしかない。
貫通力は高いが破壊力が榴弾や徹甲榴弾に比べると低いから一撃で仕留める事は無理だろう。
「照準そのまま!」
「照準そのまま了解!」
「撃てッ!」
ドォォン!!!
発射音と飛翔音の直ぐ後、キマイラに直撃した。
頭部へは直撃せずに首下の胴体部分に直撃した。砲弾は簡単にその分厚い皮膚と毛皮、筋肉を貫いて内部へ突き進んでいく。
グォォォ……!
キマイラと言えども流石に痛みを感じたのかその場で立ち止まり悶絶する。
すると簡単にその分厚い皮膚と毛皮、筋肉を貫いて身体の内部で信管が起動して爆発した。
比較的浅い角度で入ったのか爆発した瞬間に内側からキマイラの腹部の辺りが破裂し、肉片と臓物、大量の血を撒き散らした。
グウオゥゥァァァァ!!
砲弾が貫通した時とは比べ物にならない程の大絶叫が辺り一帯に木霊する。
そして途轍もない怒りと憎悪を孕んだ目を向けて来るがあれほどのダメージを負ったからか、その場に倒れ伏した。
それ以降ピクリとも動くことは無かった。恐らく絶命したのだろう。
「ウォォォ!!」
「あのキマイラをこんな簡単に倒しちまったぜ!?」
「このまま行けば村を守り切れるわ!」
皆、喜んでいるがその姿とキマイラが本当に死んでいるのかという事を見届ける程の時間の猶予は無かった。
『こちら3‐2!デカブツだ!砲撃支援を頼む!かなり近くまで接近してきている!グレンデルだ!キマイラよりも動きが早い!』
連絡が入った。次は第3区画だ。
「砲手、左180度旋回!照準をグレンデルに合わせろ!」
「了解!左180度旋回!目標グレンデル!」
双眼鏡を覗くとそこには10mはあろうかと思われる体長の二足歩行の馬鹿デカい獣みたいなのがこちらへまっすぐに走って来ていた。
キマイラよりも随分と速いが直線的にこっちに向かって走ってきているのだから当てる事自体は多分そこまで難しくはないだろう。
「撃てッ!」
ドォォン!!!
撃ち出された砲弾は真っ直ぐグレンデルに向かって飛んでいく。
視認出来なかったのか、それとも脅威では無いと思ったのか避ける事無くそのまま突き進んできた。
しかしそれがグレンデルの命運を分けたのだ。
真っ直ぐは避ける事も無く突き進んできたグレンデルに徹甲榴弾が命中する。
右胸に命中してそのまま炸裂。
右胸の辺りを纏めて吹き飛ばし、その威力で後ろに向かってもんどりうって倒れた。そしてそのまま動かなくなる。
グレンデルは動きは素早いが砲弾を当てる事さえ出来れば問題は無い。
しかしながらM2やMG42の銃弾ではダメージを与えられない。掠り傷程度すら与えられない辺りやはり防御力は高い。
暫くの間、銃撃と砲撃を続け、デカブツに関して言えばキマイラやグレンデルだけでは無くゴーレムなどと言った奴らまで現れた。
ジャバウォックまで現れた時はかなり焦った。
こいつ、地面だけでなく木の上も移動出来たのだ。だから照準を付けるのに手間取ってしまったが命中すれば難なく倒す事が出来た。
1体だけという事は無く、2体目3体目と現れて来るものだから大忙しだ。それだけでは無く榴弾を小物に向かってぶっ放したりもするから8.8cm砲は大忙しだ。
銃座も銃身交換を何度も行っているようだし、キマイラなどが放った火球が飛んで来たりして致命傷にはならないが吹き飛ばされて立て直しの時間が必要となったりするが、負傷者は出るものの死者や重傷者は出ずに、全体的にこちらが有利に進められていた。
小さい奴の方は丘で戦ったゴブリンを始めとして、オークやフォレストウルフと余りにも種類が多すぎて全ての種類を断定する事が出来なかった。
まぁそれは構わないし、何よりも俺達が事を有利に運んでいるという事が重要だ。
しかしながらやはり数が多すぎる。丘でのゴブリンとの戦い程とは言わないがそれでも十分に数が多いし、しかも木があるからその陰に居る魔物や魔獣に対しては一切手出しが出来ない。
流石に奴らも分かったのか小さい奴らは木の影をちょこまかと移動し、出来るだけMG42やM2の弾幕に曝されない様にしてきているのだ。
それでも十分に殺す事は出来ているのだが最初の頃と比べると効率が悪い。
銃弾もどんどん消費していくし、弾薬運搬係は常に銃座と弾薬補給所を往復している。MG42の弾薬箱ならいざ知らず、M2の弾薬箱は1つだけでもかなりの重さがある。それを何十往復もするのだから疲労はとんでもない物だ。
MG42の独特な射撃音に加えてM2の重い射撃音があちこちに鳴り響く。
声は聞こえないが恐らく銃座の中では弾薬を早く持って来いと怒号が響き渡っているだろう。
通信として入って来る声にも殆どが弾薬が足りない、という物だった。
今の所はどこも問題は無さそうだがやはり弾薬問題が一番大きい。
俺も定期的に弾薬補給所に行って呼び出して置いてきている。俺が離れても最低限砲撃は行える。弾薬補給所に向かっている時は砲撃を完全に任せて全力ダッシュをしながら速攻で大量に呼び出し、戻ったら8.8cm砲の指揮を再開する。
意外と8.8cm砲弾の消費が多い事だ。
デカブツへの対処も必ず命中させられるという訳では無く、外す事もある。
そう言う訳で3発砲弾が梱包されている箱を弾薬置き場に大量に呼び出す。
硬芯徹甲弾は消費していないから、徹甲榴弾と榴弾を呼び出す。小物へ砲撃もあってか一番消費量が多いのは榴弾だ。
しかしながらその甲斐あってか魔獣や魔物は一定のラインから進めていない。
そんな事を1時間程続けていた時、森の向こうがとんでもなく騒がしくなった。
いや、正確には元々騒がしかったがそれが近付いてきたことによって更に増した、と言った所だろうか
すると村を囲んでいた魔物や魔獣が大慌てで何処かに逃げて行ってしまった。どういう事だ?今更8.8cm砲やM2、MG42に怯えたなんて事は有り得ない。
とすると何か別の要因が考えられる。
それは何なのか?考えられるのは村を囲んでいた魔物や魔獣よりも、それこそキマイラやグレンデル、ゴーレムなんかよりもずっと強い何かが接近してきているという事だ。
ほかにも何かあるだろうが、一番可能性があるのは今の説だろうな。
とするとこの森でそれらよりも強い存在。
白狼一家は有り得ない。森の外側の方に移住したと考えるべきだし、エリカさんの話からもそれは推測できる。
そうなるとあとは竜種となる訳だが、飛竜や翼竜ではないだろうな。
そうなれば騒がしくなるのは空の方であるべきだからだ。それ以外で残っているのは、土竜だ。
「全員、今の内に態勢を整えろ!弾薬の補給や交換用の銃身は今のうちに持って行って置け!」
「それと邪魔な空薬莢は全て空いている弾薬箱に入れて俺の元へ持って来てくれ!」
「いいか!?準備す--------」
ギ”ュ”ゥ”ゥ”オ”ワ”ァ”ァ”ァ”ァ”!!!!!
「「「「「「「ッッッ!?!?」」」」」」」
今まで一度も聞いたことが無い、キマイラやグレンデルなんかとは比べ物にならないぐらいの、とんでもなく重く威圧感のある咆哮が比誘電率抜きでオール大森林中に響き渡った。
そう思うほどの物だった。
かなり大体3km程だろうか?
この森の太い木々を無茶苦茶な力でもって薙ぎ倒していくバキバキバキッ!!メキメキメキッ!!という音が此処からでも聞こえて来た。
そしてさらに大きな声で、
グ”ウ”オ”ァ”ァ”ァ”ァ”!!!!!
再び咆哮が響き渡った。
そして移動速度を早めたのだろう、更に木々を圧し折る音が大きく早く聞こえ始めた。そして同時に感じられるのは、重い質量のナニカが歩く様な、重い地響きのような物が身体を揺らす。それは少しづつ、段々と大きくなり始めた。
ズズン……ズズン……ズズン……ズズン……ズズン……ズズン……
その地響きに合わせて砲座を設置しているコンクリートの上のあちこちに転がっている8.8cm砲の空薬莢が何もしていないのに音を立てる。
カラン……カラン……カラン……カラン……カラン……カラン……
接近してきている存在が土竜だとすれば、対抗手段はこの8.8cm砲しかなくなる。牽制目的でMG42やM2の射撃も出来るだろうがどれほど意味があるのか。そもそも牽制にすらならないかもしれない。
しかしM2の弾種は徹甲弾だからMG42の弾よりはマシかもしれない。
そうして必死になって全員で迎撃準備を行う。
8.8cm砲は榴弾を全て格納して、徹甲榴弾と硬芯徹甲弾のみを呼び出す。そして今現在装填されている榴弾を撃ったら次から徹甲榴弾を使用する。それが効果が無い場合は硬芯徹甲弾を使う。それが効かなかったらお手上げだな。どうすればいいのか分からない。そもそもの話、垂直に立てられた装甲200mmを100mの地点から貫通するような砲弾を弾かれたらそれ以上そうすればいいと言うのだ。
土竜と思われる存在が接近してきている方角はあの裂け目のあった方角だ。
北西の方角、第1区画方面。その方向から迫ってきている。
第1区画以外の第2、3、4区画のMG42、M2は全て第1区画に配置した。
銃座があるわけでは無いから交通壕の途中途中に無理矢理銃座を新たに設置した。
合計で50の銃座と8.8cm砲が迎え撃つ訳だがそれでも不安だ。
そして見えて来たのは、体高30m以上を誇る、茶色や所々緑?の鱗に覆われた馬鹿デカい土竜だった。
体高は恐らく35、いや40mはあるな。
体長に関してもその倍はあるだろうか?
そんな土竜がこちらへ向かって来る。
距離は700m。
この距離ならば8.8cm砲を撃てば確実に命中させることは出来るだろうが、あの鱗を貫通出来るかが問題だ。
「砲手!目標正面の土竜!あれだけデカいんだ、ド真ん中を狙え!」
「了解!目標正面土竜!照準を土竜真ん中に合わせます!」
「次弾は硬芯徹甲弾!用意しておけ!」
「了解!次弾硬芯徹甲弾!」
大声で指示を飛ばし、射撃準備を整える。
少しばかり不安の残る距離だがそれでも射撃しなければならない。
600mに入ったら射撃を開始しよう。
「照準完了!何時でも撃てます!
「まだだ!600mまで引き付ける!」
「ッ!?了解!」
段々と近付いて来る。
大きな足音を響かせながら一歩一歩こちらへ近づいて来る。
650m……630m……610m……!!今だッ!
「撃てェッ!」
ドォォン!!!
号令と共に撃ち出された砲弾は真っ直ぐに土竜に向かって飛んでいく。
そして命中。
ビィィィィィィィン…………
しかし独特な音と共に弾かれてしまった。その砲弾は後ろに弾かれて飛んで行ってしまった。
ただ単純に貫徹力が足りていないだけでは無く身体全体が垂直の鋼鉄板とは違い丸みを帯びているから簡単に弾かれてしまう。
クソッ!これじゃぁ幾ら撃ってもただ砲弾を捨てるだけになってしまうぞ!?
「次弾装填完了!」
「撃てッ!」
次々と放たれる砲弾は硬芯徹甲弾だが当たる角度もあるのだろうが1発も貫通することは出来ていない。
表面に傷を付けてはいるがそれだけだ。
どうする……?どうすればいい……?
幾ら考えても焦ってしまって答えは出ない。
そうして土竜はどんどん近付いて来ているのだった。
仰角
物を見上げたときの視線の方向と、水平面とのなす角。
俯角
物を見下ろしたときの視線の方向と目の高さの水平面とのなす角。